ノリスケ |
そう言えば僕旅行しないとね、
肩こりが取れない。
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つねさん |
はっはっはっは。
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ジョージ |
ババァよねえ。
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ノリスケ |
ストレスってこういうことだなあって
自分の身体がよく言ってるよ。
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つねさん |
去年行かなかったでしょう。
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ノリスケ |
行けなかったの。
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つねさん |
うん。
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ノリスケ |
リゾートも行ってないし
街も行ってない。
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つねさん |
そうだよね。
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ノリスケ |
出張ばっかり(笑)。
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ジョージ |
でも、ニューヨークはねえ、
何年かに1回行きたい。
できれば毎年行きたい。
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ジョージ |
あのね、今度ね、
出費がかさむでしょ?
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ノリスケ |
え? あ。
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ジョージ |
ジョージも将来設計のことを考えて、
無責任な生き方はダメだなあっていうので、
今度マンションを買うことにしました。
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ノリスケ |
あらまー。どちらに。
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ジョージ |
ちょっと都心なんですけど、
四番町界隈。
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ノリスケ |
千代田区ですね。
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つねさん |
あっはっは。
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ノリスケ |
さすがブランド志向ねえ。
千代田区四番町ですって。
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ジョージ |
ま、それはまた、
後日機会のある時にということなんですけど。
それでけっこうお金がいりようなのでね。
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ノリスケ |
相当いりよう(笑)。
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ジョージ |
もう昔のように、
Fな旅っていうの、Fな旅は自粛ぎみ。
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ノリスケ |
FはファーストクラスのFね。
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ジョージ |
行けなくもないんですけど。
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ノリスケ |
そこのさあ、違いを教えてほしいんですけど、
FとCはやっぱり全然違うものなんですか?
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ジョージ |
うん。
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ノリスケ |
相当いいの? 何?
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ジョージ |
うーんとねえ、
例えばね昔はFだと180度横になれ、
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ノリスケ |
今はC(ビジネスクラス)でもなれる。
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ジョージ |
どんどんどんどんハードウエア、
設備的な面はFとCはそんなに
変わりがなくなって来たの。
変な話、今度CのJALの液晶モニター、
あれは11インチになるんだけど、
Fは昔のまんまで6インチか何か。
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ノリスケ |
しかもANAなんか
Yクラスも液晶モニター搭載。
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ジョージ |
そうそうそうそう、そうなんだよね。
ハードウエアの差はなくなり始めてるんだけど、
Fっていうのは基本的に
乗ってるお客さんのルールに
すべての人が従ってるの。
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ノリスケ |
ほおほお。
|
ジョージ |
例えば乗ってる人が、
今寝たいと言えばすぐ寝かせてくれるんだよ。
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ノリスケ |
ふんふんふんふん。
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ジョージ |
ここが明るいと言えばすぐ消してくれるし。
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ノリスケ |
あ、なるほどね。
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ジョージ |
今おなかが空いたと言えば、
すぐお料理が出る。
だけど、Yクラスは
お客さまのルールは一切関係ないわけ。
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ノリスケ |
貨物として乗ってますからね。
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ジョージ |
そう。「お食い」っていう感じでしょ?
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つねさん |
そう。
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ジョージ |
お休みの時間よって
ブチって電気消されたら
もう否応無しに寝なきゃいけない。
これはYクラスで、その中間がCクラスなんだよ。
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つねさん |
うん。
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ジョージ |
Cクラスはお客さまのルールも
聞いては差し上げるけど、
基本的に私たちのルールに従ってくださいよ
っていうのがCクラス。
でも、愛のある旅行はね、別にいいの。
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ノリスケ |
どこでも?
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ジョージ |
そう、どこでもね。
でも、あれよ。
Cクラスに乗っても
ファーストクラスな気持ちで旅行してるよね。
|
つねさん |
ごめん僕はお金出してないからかも
知んないけどあんまり変わんない。
|
ジョージ |
んーっと、この前もCクラスで行って、
ね、久しぶりに長距離で
Cクラスに乗っている人を
たくさん見たんですけど。
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ノリスケ |
すごい言い方ねえ。はいはい。
|
ジョージ |
ああっ、どんどん嫌われるかもしれない。
|
つねさん |
どうぞ。
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ノリスケ |
(笑)
|
ジョージ |
あのね、2通りいる。
Cクラスを使う人。
1種類はね、Cクラスを使って
当然って顔をしてるねえ
|
ノリスケ |
社用族ですか?
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ジョージ |
おじさんたち。
もう、これはね、すごいね。
ファーストクラスの人でも
要求しないようなことを平気で要求するの。
|
つねさん |
ねえちゃん、ねえちゃんって感じで。
|
ジョージ |
そう。ほんっとスチュワーデスをね、
何か呼びつけて。例えばね、
ピンポーンって押せば来るじゃない。
で、呼んだということは
例えばシャンパンが飲みたいんだったら
シャンパンが飲みたいよって
決めてから呼ぶわけでしょ?
|
ノリスケ |
うんうん。
|
ジョージ |
違うんだよ。呼んどいてから、
何があるの? って聞くの。
何か飲みたいんだけど、何があるの?
そんなことはメニュー見れば
書いてあるでしょうって。
で、説明するんだよ、一生懸命。
説明したらそれから決めるの。
うーん、これも飲みたいけど
白は今日はどんなの?
とかって聞くんだよね。
|
ノリスケ |
やーだ。
|
ジョージ |
そう。そんなの2、3回繰り返したら、
押しても来なくなるんだよ。
|
つねさん |
そうだよね。
|
ジョージ |
ね。来なくなってるジジイとかいたよね。
ざまあみろって感じ。これが1種類。
もう1種類がですよ、ガツガツしてる客。
|
ノリスケ |
ああ、気をつけなくちゃー。
|
ジョージ |
そう。ガツガツしてるの。
もう。どう言うのかなあ、座るでしょ?
座ると前のポケットにあるものを
ぜーんぶ出して来てぜーんぶ見る。
|
ノリスケ |
気をつけなくちゃー。
|
ジョージ |
見ると同時にくれそうなものは
みんなもらう。
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つねさん |
ドキッ。
|
ノリスケ |
気をつけなくちゃー。
|
ジョージ |
内緒でもらう分にはかまわないんだけど、
トランプあるんでしょうかとか。
|
つねさん |
そんなもん。
|
ノリスケ |
遊ばないくせに!
トランプなんか年に1回も遊ばないだろ!
じゃあ、レターセットください、も言うね。
|
ジョージ |
もうすっごいの。
かわいいんだけど
かわいいんだけどね、
ほんっとガツガツして見えるの。
|
つねさん |
度を過ぎたら。
|
ノリスケ |
でもまあ、アテンダントにしてみれば
扱いやすいからいいんじゃない?
ねえ。じゃあ旅慣れた人はいないじゃない。
Cクラスは。
|
ジョージ |
いない。おもしろい(笑)。
でもね、中にはね、1人ね、
僕達の反対側にいた女の子が、
けっこうエレガントだった。
あのね、座って一番最初にね、
自分のボストンバッグの中から
カシミアのストール出して着たの。
で、ひざの上にかけた。
すごーいいいなあと思って。
でもね、その子はそのあと
いびきかいて寝始めたんで。
あ、こりゃちょっと
旅慣れ過ぎかなみたいな感じ。
|
ノリスケ |
いびきはね、止められないんだよね。
|
ジョージ |
でもね、ワタクシたちは基本的に
ガツガツしたいところを
ガツガツしないように
一生懸命見せつつですよ。
基本は笑顔だから。
もう一生懸命愛嬌振りまいて。
愛想も言って。
|
ノリスケ |
嫌われちゃしょうがないしね。
|
ジョージ |
そうするとね、あの機内食持ってくるのに、
あ、そうそうそうそう、
ファーストクラスの機内食は
ワゴンじゃなくって手でこうやって持ってくるのね。
でもCクラスはワゴンなんだよね。
で、何か知んないんだけど、
ワゴンがダーっと一直線に僕達の横まで来て、
僕達のとこからサービスが始まったのよ。
|
ノリスケ |
ああ、よかったねー。
|
ジョージ |
もう笑顔だもん。にこにこ。
|
つねさん |
シンクロナイズド・にこにこ。
|
ジョージ |
もうほっぺたの上がサービス一巡すると
引きつくほど、ヒクヒクして
緊張するくらいずっと笑顔だもん。
いいサービスして! いいサービスして!
みたいな感じで。
でね、そうこうしてるとね。
寝てたんだよ。
ぽんぽんぽんぽんって肩叩かれて
どうしたんだろうって思ったら、
おやすみのところ何なんですけど、
オーロラが今きれいに見えておりますからって
起こしてくれたの。
|
つねさん |
ねえ。
|
ジョージ |
こうやって見て。
|
つねさん |
きれいだったね。
|
ジョージ |
スチュワーデスの
おばさまとはけっこう仲が
よくなったね。
|
つねさん |
僕肩こりなんで、
ベンゲーっていう向こうの
いわゆるバンテリンみたいな塗りクリーム、
|
ジョージ |
まあそれ何ですの?
あとでわたくしも
使わせていただいてよろしいですか?
って言われたね。
|
ノリスケ |
まあ上手。
|
ジョージ |
そう上手。
もうあるとあらゆる小物を駆使して
仲よくなるのよ。
|
つねさん |
そう。
|
ジョージ |
だから、いいサービスをしてもらうのが
当然という立場でもなく、
かといってガツガツしていない、
ちょうど中間くらいだよね。
|
ノリスケ |
うんうん。
|
ジョージ |
これが大切だと思う。
でね、そういうのってね、
基本的にトレーニングしないとダメだよね。
いいサービスをしてもらうトレーニング。
|
ノリスケ |
そこなんだよねえ。この間さあ、
糸井さんのイトイ新聞読んでましたら、
ダ・ヴィンチの横里編集長が名言を吐いたと。
おおたうにさんっていう
イラストレーターが女の子女の子した
イラストを描く人で、その本を選んで来て、
「いやあ、女の子っていいなあと思って」
って言ったんだって。
その人がいろいろ言ってたのが、
ずっとファーストクラスっていいなあって
言いたかったんだけど、
友だちに強引に誘われて乗って
やっと良さが分かって、
ほんとはもっと前から
いいなと言えばよかったって。
そういうの男は足かせがあるね…。
|
つねさん |
そうだよね。
言っちゃダメって思っちゃうみたいな。
|
ジョージ |
ワタクシのお父様、社長がね、
もう立場的に常務の私がファーストクラスで
旅行してるんだから
ファーストクラスで旅行できる立場のはずなのに、
日本男児たるものファーストクラスに
乗りたいっていうのを潔しとしてないのよ。
|
つねさん |
そうなんだ。
|
ジョージ |
そう。そのくせして、お母様。
平気でファーストクラスで行くんだよ。
|
ノリスケ |
(笑)当然なんだ。
|
ジョージ |
で、この前、ハワイに行った時に、
何かあったときのために、
基本的にお父様、お母様、
僕は同じ飛行機に乗れないことになっているのが、
一便キャンセルで、
お父様とお母様の飛行機が
同じになっちゃったの。
お母様がF、お父様がC。
ほいで、お母様。入り口入るでしょ?
同じゲートから入って
前後ろに分かれるんだよね。
で、分かれる時に、
「あんたバカじゃないの?
何で後ろに行くの?
あなたは後ろに行く人生、
私は前に行く人生」。
|
ノリスケ |
わははははは。
|
つねさん |
わははははは。
|
ジョージ |
けだし名言を吐かれてね、お帰りになったの。
|
つねさん |
恐ろしい(笑)。
|
ジョージ |
けっこうね、お父様寝れなかったらしいよ。
ワシは何じゃ、後ろに行く人生なのかって。
|
ノリスケ |
自分で決めたんだもん。ねえ。
|
ジョージ |
そうそうそうそう。素敵でしょ?
|
ノリスケ |
男ってそうだねー。
|
ジョージ |
男ってそうなんだよー。
韓国とかに旅行に行く時も
うちのお父様は飛行機はCクラスなんだよ。
というのは、飛行機は他人に見られないって
いうふうに思ってるんだよね。
|
ノリスケ |
うん? うーん。
|
ジョージ |
で、向こうのホテルは
一番いい部屋に泊まるんだよ。
で、これは何かがあった時に
お客さんを呼んで来たり、
おネエちゃんを連れて帰る時に。
|
ノリスケ |
ああ、そういうことね。
|
ジョージ |
いい部屋に泊まりたいっていう
見栄があるんだよね。
|
ノリスケ |
社会なんだ。
|
ジョージ |
そう。そういう見栄はOKなの。
だけど、人間が一番見られてるのは
どんな部屋に泊まってるかよりも、
どういうふうに移動してるかの方が
見られてるはずなんだよね。
|
ノリスケ |
立居振舞いの方だよね。
|
ジョージ |
そう。
|
ノリスケ |
着てるものと歩き方と
どこに向かって進んでるかだよね。
|
ジョージ |
そうそう。だってほんとに前だもん。
|
ノリスケ |
そうなんだよね。前に向かってね。
|
つねさん |
うん。
|
ノリスケ |
前にバリに行く時にCに乗って、
アマンに行った時に
まだ早かったかなって反省した。
|
ジョージ |
あら。まだ早いと。
|
ノリスケ |
まだ早いと。
|
つねさん |
あん時すごく悩んでたよね。
|
ノリスケ |
悩んだ。忠告してくれた人がいたのね。
そういう楽しみは、まだとっておいても
いいんじゃないかって。
たしかにそういうところは、あったよ。
|
ジョージ |
でもね、1回経験はすべきだと思うよ。
|
ノリスケ |
1回してよかった。
|
ジョージ |
うん。その、常習性が付くかどうかは別として、
|
ノリスケ |
それは逆になかった。
|
ジョージ |
だから僕、出張する時に
なるべく1回はうちの男の子でも女の子でも、
新幹線に乗ったらグリーン車に
無理矢理乗っけたりとかするもん。
で、横に座ると勉強になんないから、
わざと離れたところに座らせて。
人それぞれによってね、
グリーン車に乗ったっていうことに対する
意味付けが違うの。
おもしろいなーって思うよ。
グリーン車に乗れたという
事実そのものがうれしかった子
っていうのがいるんだよ。
で、そういう子は上昇志向が強いだけであって、
たぶんバリバリ仕事をしてることに対する
意味あいが大きい子なんだろうと思うんだよね。
|
ノリスケ |
うん。
|
ジョージ |
だけど、女の子とか乗せると
別の感度というか
別の感覚でグリーン車というものを
捉えるんだよ。例えば、指定券見せて
どこそこで降りるんだってことが分かってれば、
寝てても駅に着く直前に
見に来てくれたりとかするじゃない。
|
ノリスケ |
お手拭きと、あとちょっと
お茶が出て来たりとかね。
|
ジョージ |
そう。
|
ノリスケ |
ちょっとしたことなんだけどね。
|
ジョージ |
それとグリーン車に乗ってると、
グリーン車に乗ってほしくない人たちの
立居振舞いが気になって仕方がなくなるんだよね。
普通車に乗ってると
たとえ酔っ払いが酒盛りしていても、
それは仕方がないっていうふうに思うんだよ。
|
ノリスケ |
うんうんうん。
|
ジョージ |
だけどグリーン車に乗っていて、
例えば夏休みか何かにグリーン車に乗ると、
平気で子供が騒いでたりとかするんだよね。
そうすると何でこんなところに
子供を乗せるんだろうって思うんだよね。
|
ノリスケ |
思いますね。
|
つねさん |
うん。
|
ジョージ |
で、そういうのをね、
何で子供を乗せるんですかねえって考えられたら
すごくいいきっかけなんだよ。
|
ノリスケ |
うんうん。
|
ジョージ |
僕達もこういうところで変なことをしたら、
何であんな若いやつらが乗ってるんだろうって
おじさんたちが思うよねって言えばね、
グリーン車に乗ることの意味っていうのは
分かってくれるの。
|
つねさん |
うん。
|
ジョージ |
そっちの方にね、意識を持って行ってくれる子と
一緒に乗るとね、乗って良かったなーとか思うよ。
|
つねさん |
うん。
|
ジョージ |
ほらほらさっきその場のおしゃれ、
その場の人たちがするようなおしゃれが
一番のおしゃれっていう話したけど、
それは海外旅行だけじゃなくって
例えばレストランね。
|
つねさん |
うん。
|
ジョージ |
レストランでさー、
一生懸命おしゃれしてきたんだけど、
そのレストランにふさわしくない
おしゃれしてくる女っているじゃん。
一生懸命いいサービスしてもらおうとするんだけど、
そのお店がするべきでないサービスを
一生懸命求める人たちっているじゃない。
ああいうのすっごい見苦しいなと思う。
ね。
|
つねさん |
ね。
|
ジョージ |
おもしろいよねえ。
|
ノリスケ |
旅行行かなきゃダメだねえ。
|
つねさん |
旅行は行きましょう。
|