つねさん |
わ〜〜っ、パチパチパチ。
単行本発売おめでとう! |
ジョージ |
うれしいものねえ。華やぐわね。
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ノリスケ |
たーいへんだったのよ〜。
おまけが。 |
ジョージ |
ノリさんが結局、
こまかい作業してくれたんだものね。 |
ノリスケ |
私たちが尊敬している、
歴史上の人物の誕生日がわかる
カレンダーをつくったんですっ。
素晴しい先人の。 |
ジョージ |
今日はそのことについて
おしゃべりしますっ。
それにしても‥‥
なんか、難儀な男が揃ってるわ、
って感じよねぇ〜。
ま、いい男も多いけれど。 |
ノリスケ |
そ、いい男も多いのよん。 |
ジョージ |
ほんとねぇ。
でも、こういうの選ぶときに、
指折り数えながらあの人もそう、
この人もそう、この人も、とかって、
その、もう完全に確定的な人に関しては、
もうぜんぜん悩むこともなかったのだけれど、
んーっ? あの人って‥‥?
っていうのは、困らなかった? |
ノリスケ |
困った。 |
ジョージ |
困ったよね。 |
ノリスケ |
うん、つまり、
証拠もなにもないわけなの。
判んないわけ、ほんとのところは(笑)。
でも、この広い世の中には
そういうことを研究している人もいて
ずいぶん文献をあたりました。
今、インターネット時代なので、
この文献にはこういうの出てたよ、
って情報がかなり細かく
オープンになってるのね。
そして、日本では、青土社から、
『ゲイ文化の主役たち』という名著が
翻訳されて出ていたのね。
先人を100人集めたみたいな本。
ひじょうに学術的な本なんですけど、
そういう文献を参考に
させていただきましたっ。 |
つねさん |
へぇー。
「だったらいいな」
って人は入れてないの?
|
ノリスケ |
入れてないよ。
ヘミングウェイとかは
「だったらいいのに」っていう希望が、
「そうらしい」っていう
噂になってるんだよね。
そういうのは入れてないよ。 |
つねさん |
そっか。
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ジョージ |
「だったらいいのに」が、
「そうじゃないハズがない」になったりね、
「そうであってほしい」に
なったりとかする部分が、
まずあったりとかして。
ま、それは大抵の場合は
外見的なものであったりとかするんだけど。
そういうふうな、
僕たち側の気持ちに対して、
ものすごくあざとく応えちゃう人って、
いるのよね。 |
つねさん |
あぁ‥‥知らずに演出してしまう?
|
ジョージ |
そそそ。僕たちっていうのは、
女の子なのに、
女の子になりたいわけじゃなくて
男らしい男になりたいと
憧れているわけでしょう? |
つねさん |
うん。
|
ジョージ |
そうすると、
男々しいのは嫌いなんだけど、
男っぽいのは好きなんだよね。 |
ノリスケ |
そこなんだよね。 |
ジョージ |
ね?
で、そこで
繊細じゃない男の人っていうのは‥‥。 |
つねさん |
粗野なのね。
|
ジョージ |
男々しくなっちゃって。
たとえば見た目にクマさんな人なのに、
繊細でない人は、
ほんっとに、どういうの?
冬眠直後のクマみたいになっちゃってね。 |
つねさん |
ほんとうに無精なだけの無精髭、ね。
|
ジョージ |
そういう人見ると、
あー、絶対にそうじゃないんだ、
っていうふうにしか思えないじゃない?
ただね、へミングウェイに関しては、
あれだけの著作を残した人でしょう?
で、少なくとも
小説を書くとかっていう世界は、
男でありながら男の気持ちも
女の気持ちも同時に
書くっていうことだから、
やっぱりどっかで何かが
あるはずなんだよね。
で、それがセクシャリティの方に
向かっていくかどうかはべつとして‥‥。 |
つねさん |
メンタルな部分ね。
|
ジョージ |
そう。それで、僕たちの期待をね、
わかってるぜぃ、みたいな感じを
出すわけなのよ。
なんか知んないけどキューバに
行っちゃってボートに乗っちゃって。
そうかと思うとライオンサファリを
自分でやっちゃうとか。 |
つねさん |
ボクシングをやったりとか。
|
ジョージ |
そー。 |
ノリスケ |
キーウエストにお家を持って、
猫を飼うとか。
しかも美食好きですよね。 |
ジョージ |
あー、そうそう。
で、ああいうのってね、
僕たちが、やりたいんだけど、
やれないことなのね。
んで、中でも僕たちがやりたいのって、
美女を伴って食事に行く、
ということであったり。 |
ノリスケ |
いいわねえ‥‥
まっとうに扱われる感じがね。 |
ジョージ |
ヘミングウェイは、そんなことをね、
軽々とやったの。
半ば、わたしたちは
踏みつけにされたようなものよ。 |
ノリスケ |
どういう意味?(笑) |
ジョージ |
だってー、だって、
最初は期待に応えてくれた
わけじゃない? ね?
んで、あ、素敵、素敵、って思ってたら、
平気でホモが嫌いな顔をしてね。 |
ノリスケ |
嫌いって公言してたらしいよ。
|
ジョージ |
女をとっかえひっかえしつつね。
じゃ、女に対して何をしたのか?
っていうと、ただアクセサリーのように
扱って、いらなくなったら
捨てるわけでしょう?
それって、あんた、わたしたちが
女じゃなくって、男に対して
してしてることとおんなじじゃない、って。
んで、彼はゲイができないことを、
一生懸命ゲイの風体をしながら
やりつつ、だけど、
最後の最後までやり続けたのって、
ゲイとおんなじようなことしか
できなかったわけであって。
そうやって考えると、あー、
ヘミングウェイ、
もう少し素直に生きれば、
あなたは‥‥って思うわけなの。 |
ノリスケ |
素直に生きたら、
小説なんか
書かなかったかも知れないじゃない。 |
ジョージ |
そう、書かなかったと思うから、
まあ、頑張ったねっていう感じっ!
そーんなのがあったりする、今日この頃。 |
ノリスケ |
トルーマン・カポーティは、
そういうヘミングウェイを見て、
もうムシャクシャしてムシャクシャして、
しょうがなかったんじゃない?
カポーティはヘミングウェイが嫌いだった。 |
ジョージ |
だろうね、だろうね。 |
つねさん |
嫉妬なんだろうね。
|
ノリスケ |
だって、カポーティって、
病弱で腺病質で嫉妬深くて、
って人でしょう? |
ジョージ |
たぶん、んと、ほら、
オカマっていうかさ、
僕たちサイドの人も、
2種類の人がいるじゃない? |
ノリスケ |
雑に分けると。 |
ジョージ |
うん、ナルシスティックにストイックに。
|
ノリスケ |
ジョージさん、そうなんですか?
|
ジョージ |
いや、そんなことはないよ。
ナルシスティックにストイックに、
かたくなに生きていくゲイっているでしょう?
笑われることを、ものすごく怒る。 |
つねさん |
三島由紀夫みたいな?
|
ジョージ |
ん、三島由紀夫は違うと思うな。
完全にクローゼットの中に
入っちゃっている人たちとかっていうのは、
やっぱり‥‥。 |
ノリスケ |
守るためにね。 |
ジョージ |
そう、笑われるのが
怖くてしかたがないでしょう?
で、そういうのと、自分を笑って、
まず自分が自分のことをほがらかに笑って、
まわり人を幸せにするほうに、
僕たちの能力を使う人がいるじゃない。
おすぎさんとかピーコさんっていうのは、
ちょっと生き方は違うでしょうけれども、
そういう性格が100%出てきちゃう
タイプになると思うのね。
で、トルーマン・カポーティは
たぶん、あの人、
最初はほんとにクローゼットの中に入って、
すんごい暗かったんだよね。 |
ノリスケ |
そうみたいね。 |
ジョージ |
んで、それがある日突然、
蝶ネクタイをして、
誰が見てもゲイに見えるような格好で、
誰が聞いてもゲイのように聞える喋り方で、
しかも、甲高い声で笑って
自分のことを笑いものにして、
そうすることによって、
まわりの人に認めてもらったわけでしょ? |
ノリスケ |
受け入れられた。 |
ジョージ |
そういう人間から見て、
ストイックなだけの部分で、
ナルシスティックに
しかも他人からとやかく言われると、
怒ったりブン殴ったりするような
男を見たら、
お前には才能があるはずなのに、
なんでそんなおろかな人生を送るんだ?
みたいな感じで見てたんじゃないのかな?
そんな感じがするな。 |
ノリスケ |
ヘミングウェイ、小さい頃は
女の子みたいに育てられたって話もある。
だから必要以上に
男っぽくなりたかったのかも。
カポーティと「表・裏」みたいな感じね。
ほんとは、同じものを持っていたのかも。
|
つねさん |
マリエル・ヘミングウェイも
ごついよね(笑)。
|
ノリスケ |
そういえば、ヘミングウェイの息子の
グレゴリーは、
自分を「グローリー」って呼ぶ
トランスジェンダーだったのよ。
69歳で公然わいせつ罪で捕まって
刑務所で、それも
女性刑務所で死んでいるの。
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つねさん |
せつないね。
|
ノリスケ |
むかしね、僕、キーウエストに行って、
ヘミングウェイの家を訪ねたんだ。
周りにはね、ヘミングウェイ・インとか、
そういう名前の小っちゃい
一軒家を改装したペンションというか、
民宿だよね、がいっぱいあって、
ゲイが経営して、
ゲイが泊まりに来てるんだよ。
ちょっと因縁めいたものを感じるわね。
|
つねさん |
あ、そうなんだ、へぇ。
|
ジョージ |
そうだよ。だってアメリカの
ゲイにとっても、
キーウエストっていうのはね。 |
つねさん |
聖地なの?
|
ジョージ |
聖地だし‥‥。 |
ノリスケ |
ま、ちょっと清里だったけど(笑)。
ムードは清里だった。行ってみたら。 |
ジョージ |
そうそうそう。それがね、
オカマの世界っていうのは、
どっかでウソ臭くって
チープな世界でしょう?
たとえばさ、世の中でいちばん
大っきいマーケットって、
「健全なファミリー」だから、
健全なファミリーをターゲットにした
夢の世界はディズニーランドになって。
あそこには何兆円っていうお金が
つぎ込まれるわけでしょう?
だけど、ゲイっていうのは、
ものすごく小っちゃな隙間だから、
ま、でも、強固な隙間なんだけどね。
んで、それをターゲットにした
夢の世界っていうのは、
せいぜい、数億円くらいで
できあがってくディズニーランドだから。
これって、ほら、ノンケの集う
キャバレーのグレードと、
オカマバーのショー? |
ノリスケ |
違いますね(笑)。
これは違うよね。 |
ジョージ |
これこそが、なんか‥‥。 |
つねさん |
全てを語ってる。
|
ジョージ |
そう。ほがらか性よ、
っていう感じがする。 |
ノリスケ |
最大でワハハ本舗かしらね(笑)
あそこのショーは
それを拡大したものですよね。 |
つねさん |
そうだよね。
|
ジョージ |
ただ、どういうんかな、
たとえば、僕たちを代表する
イメージとしてのヘミングウェイを
上手に商売化した、“Papas”とかね。 |
つねさん |
おぉー。
|
ジョージ |
“Papas”のパパは
パパ・ヘミングウェイだからね。 |
ノリスケ |
パパって、自分で名乗ってたの?
パパ・ヘミングウェイって、
誰が言ったの? |
ジョージ |
これはね、諸説があるんですけど、
誰も言ってくれなかったんだけど、
自分が言ったんだって‥‥。 |
ノリスケ |
自分で言ったのかぁ‥‥。 |
ジョージ |
そうなの。それでね、それでね、
自分でニックネームをつける人間って、
オカマっぽいでしょう? |
ノリスケ |
僕をパパって呼んで(笑)。
|
ジョージ |
そう、そうなんだよ。
パパ・ヘミングウェイって。
それを“Papas”だよぉー!? |
ノリスケ |
“Papas”っていうのは、
荒巻太郎さんが立ち上げたブランドよね。
マドモアゼルノンノとかで
ひじょうに有名な人ですけど、
彼が立ち上げた男性向けの、
カジュアルウエアブランドです。
とっても人気があります。
大きいサイズで、チェックです。
半ズボンです。自然素材です。 |
ジョージ |
あるいは‥‥84色展開の
ポロシャツとかね。 |
ノリスケ |
あぁ‥‥もうね、くすぐるんですね。
|
ジョージ |
くすぐります。何をくすぐるかというと、
女の子の、可愛くありたいっ!
という気持ちをね、
くすぐってくれるわけですっ! |
ノリスケ |
メンズ・ウエアですけどね。
|
ジョージ |
そうなんです。 |
つねさん |
そうね、確かにね。
あんた、むかし持ってたもんね、いっぱい。
|
ジョージ |
うん、今日も着てましたし。
持っております。 |
ノリスケ |
このごろの“Papas”は
日本の男の老人、じいさんたちは、
お洒落をしなさい、しかも可愛くありなさいと、
三國連太郎を使って広告しているわね。 |
ジョージ |
考えてみれば三國連太郎、
日本のヘミングウェイだよね。雰囲気が。 |
つねさん |
そうね、雰囲気だよね。
|
ジョージ |
本物のヘミングウェイは、
ハバナシガーをくゆらせながら、
カジキマグロを捕ってたんだけど、
日本のへミンウェイは‥‥
「釣りバカ日誌」よ。 |
ノリスケ |
スーさんだよ(笑)。 |
つねさん |
気にしないんじゃないの?
ナルシストじゃなさそうだもの。 |
ジョージ |
そうね。そうね。
|