ジョージ |
ガーシュインの音って、
ほんとにゲイの音だよ! |
ノリスケ |
そうよねえ! |
ジョージ |
ンンンンン♪
(巴里のアメリカ人、の1節を歌う)
って、もう、あれは‥‥。 |
ノリスケ |
ンンンンン♪
(引き続き歌う) |
ジョージ |
ほがらかさんが好きな世界、
普通の男は苦手な世界、
ほがらかさんが大好きな世界のひとつに、
ミュージカルっていうのがあるの。 |
ノリスケ |
なんでこんなに好きなんだろうね。 |
ジョージ |
ガーシュインっていうのは、
ミュージカルなんだよね。
あの音って。
歌のないミュージカルだよね。
ノンケさんがミュージカル苦手なのは、
たぶん、こっ恥ずかしいから? |
ノリスケ |
タモリさんは攻撃するぐらい嫌いだよね。 |
ジョージ |
オカマの人生って、
こっ恥ずかしさの連続だから‥‥。
だって、少なくともね、
誰からも祝福されない男2人が、
好きだよ、とかっていうのって、
こっ恥ずかしさの連続なわけじゃない?
恋愛における過剰さとかね。 |
ノリスケ |
そうねえ‥‥
思想家に多いのがびっくりしましたね。
ヴィトゲンシュタイン、
ジョン・ケージ、ミシェル・フーコー、
ロラン・バルト。有名ですよね。 |
ジョージ |
たぶん、そのいろんなことを考えた、
そのいちばん最初のスタートは、
自分の存在を考えたんだと思うよ。 |
つねさん |
あー、そうかもしれないね。 |
ジョージ |
キリスト教社会で、生まれ育って、
男が好きだった自分‥‥。 |
ノリスケ |
そうか。学問として
昇華しないわけにはいかなかったんだ、
頭良いぶん。
フーコーは同性愛についての本も
出してますからね。 |
つねさん |
それで、あれでしょ、たぶん、
バランスとったっていうか。 |
ノリスケ |
『性愛の歴史』もそうだっけ?
『同性愛と生存の美学』?
ゲイの思想家は、
研究として、その中の1コだよ、
ってことを紛れ込ましたのかな。 |
ジョージ |
‥‥あ、ホロヴィッツって素敵よ。
ホロヴィッツって、この人が、
かなり年取ってから
プラトニックの恋人がいて。
ずっとね、肉体労働者が大好きだったの。
体の大っきい。んで、最後ね、
トラックの運転手だったはずなんだよ。
長距離トラックの。 |
ノリスケ |
へぇー、切ないね。 |
ジョージ |
うん、せつない。ほんでね、
その長距離トラックの運転手は、
お母さんと一緒に住んでいる、
いわゆるアメリカの典型的な、
知的でない肉体労働者なのに
ゲイという人でね。
でね、ホロヴィッツって、楽屋でね、
もう、ブルブル震えるくらい
緊張するんだって。 |
つねさん |
へぇー! |
ジョージ |
もぉ、緊張して。
ステージに上がる5分前に、
必ず彼に電話をかけるんだって。
電話かけて、ほんで、
これからステージに上がるんだけど、
って言うと相手が、
「震えてない? 今日もあなたは、
世界中の人間を感動させるような
ピアノが弾けるんだから、
頑張ってね、僕は愛しているよ」
って言うと、
ピタッ! と震えが止まって、
その瞬間に神様が降りてくるんだって。 |
ノリスケ |
あぁ〜っ!! |
つねさん |
うぁ、すげぇな、泣けるよ。 |
ジョージ |
そんで2時間のステージを
ブワーーーッッッて弾いて、
楽屋に戻ると倒れるんだって。
んで、倒れた彼を、
彼が迎えに来るっていうのが‥‥。 |
ノリスケ |
トラックで(笑)。 |
ジョージ |
そうかも(笑)。 |
つねさん |
かっこいいっ!! |
ノリスケ |
ホロヴィッツが選んだ人なんだよね、
やっぱり。素敵。 |
ジョージ |
だからホロヴィッツは、
彼に電話がかかるところじゃないと
コンサートできなかったんだって。 |
つねさん |
そうなの。 |
ジョージ |
うん。 |
ノリスケ |
でも、プラトニックなんでしょ? |
ジョージ |
プラトニック。 |
つねさん |
でも、相手は一応ゲイだったんだ。 |
ジョージ |
かと思えば、
オスカー・ワイルド
みたいな人もいたよね。 |
ノリスケ |
これは文学、極端なほうに
行っちゃう人ですよね。
ランボーも、ま、そうだよね。
ディバインは、まあ、
入れてみました(笑)。 |
ジョージ |
ディバインみなさん
ご存知なのかしら‥‥。 |
ノリスケ |
まず「ピンク・フラミンゴ」で
検索してみて下さい。
監督のジョン・ウォータースもね。 |
ジョージ |
これは、異形の人だよね。 |
ノリスケ |
うん、異形代表。 |
ジョージ |
かたや、ヴィスコンティ。 |
ノリスケ |
絢爛豪華系ですね。 |
つねさん |
アラン・ドロンが
成り上がったきっかけの人。 |
ジョージ |
ロック・ハドソン。 |
ノリスケ |
エイズで死んだ、最初のスター。
あ、でも、クラウス・ノミのほうが
早かったかもしれない。
わかられないかしら。
ドイツ人の音楽家なんですけど。 |
ジョージ |
ロック・ハドソンって、
すごい若い金髪の男の子が
大好きだったんだよね。 |
つねさん |
で、マッチョなの。 |
ジョージ |
そうそうそう。それで、んとね、
死ぬ直前までつき合ってた
男の子っていうのが、
すっごい立派な男の子だったらしいの。
ロック・ハドソンが
みるみる憔悴していって、
みるみる体が衰えて行くんだよね。
んで、そのロック・ハドソンは、
自分のことをどう思っているのか
聞きたがるわけじゃない?
そうすると、彼は、
肉体のこととかそういうことは
一切言わないんだって。
で、ロック・ハドソンに対して、
水の匂いがするね、とか、
海の匂いがするよ、とか。
これね、エイズで死ぬ直前の
人っていうのは、なんか、
ほんとに水の匂いがするんだって。
プールっぽい匂いというか。
死に行く人に対して
なおも肉感的な言葉でもって、
自分の彼を支えたらしいんだよね。
そういうことを聞いた。 |
ノリスケ |
ふぅ〜ん。 |
つねさん |
へぇ〜、すごいねぇ。 |
ノリスケ |
ロック・ハドソンって、
最終的にはカミングアウトしたの? |
ジョージ |
しなかった。しなかったけども、
看取ったのは男の子。 |
つねさん |
でも、自伝っていうか、
あれ、死んでから出たのか。 |
ジョージ |
死んでからだよ。でも、
ロック・ハドソンって、
一時期アメリカで最も
セクシーな男性だったんだよね。 |