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新宿二丁目のほがらかな人々。
おねぇ言葉や裏声とかで語る別角度批評。

浮気について考える。その6
鏑木伯爵夫妻のように。
ジョージ わたくしが大好きな三島由紀夫の、
代表作の『禁色』。
ノリスケ 『禁色』。難しい男色小説ですよね。
ジョージ そう、男色小説。お読みになりました?
つねさん いや、すいません。
ジョージ 面白いよ。これの中のね、
鏑木(かぶらぎ)伯爵っていうのが
出てくるんだよ。
これは、主人公のホモの男の子を、
好きになってしまう伯爵なんだけどね。
で、この伯爵が、
男色かであることを隠して
ずっと生きてたの。
で、鏑木伯爵夫人っていうのが、
またね、その主人公の美青年をね、
好きになっちゃうんだよ。
三角関係になるのよ。
んで、最初はね、
そのバランスをじょーずに取りながら、
両天秤にかけて。
つねさん その男の子が?
ジョージ そう、男の子がね。
まあ、黒幕がいたんだけど。
じょーずに付き合うんだよ。
つねさん ところが‥‥。
ジョージ ところが、その主人公の青年と伯爵が、
やってるところを、奥さんが見るんだよ。
奥さんは、二重のショックじゃん。
自分の好きだった男の子、
浮気の相手にしようと思ってた男の子が、
自分のダンナとできていて、
しかもダンナはホモだった! っていう。
もう、ウワーッて自己崩壊しちゃって、
しばらくね、逃げるんだよ。
逃げるんだけど戻ってくるの。
なんで戻ってきたかっていうと、自
分の愛は、性を超越しているという、
訳の分からない理論でもって、
戻ってくるわけさ(笑)。
ノリスケ 仮説を立ててきたわけだ(笑)。
ジョージ 仮説を立てて。
で、「わたしを愛した鏑木は、男だ」と。
ね?
「その男の鏑木に愛された彼は、女だ」と。
「その彼を好きなわたしはレズなんだ」
ノリスケ うぅ‥‥。
つねさん すげぇ‥‥。
ジョージ で、ならば
「手を握りあうだけでも、愛は通じる」
っていうので戻ってくるんだよね。
つねさん すげぇ歪んでるわけね。
ジョージ で、戻ってきた後に、
このね、伯爵夫婦っていうのはね、
ものすごい仲が良くなるの。
なんで仲が良くなるかっていうと、
嫁さんのタイプと亭主のタイプが
おんなじだっていうのがわかって!
で、2人でいろんなところに行くと、
「ね、あの子、どう思う?」
「んー、ちょっとお尻が小さいな」
とかっていうんで、
盛り上がれるわけよ(笑)。
つねさん どっかのカップルみたい(笑)。
ノリスケ ホモになっちゃった(笑)。
ジョージ でもね、その、言い得て妙だったのが、
ほんとうに仲の良い夫婦というのは、
同性愛の夫婦である、って。
ノリスケ 糸井さんがよく言ってらっしゃいますね、
ウチはまるでゲイのカップルだって(笑)。
ジョージ そうだよね、あそこはまるで
ゲイのカップルだよね!(笑)
つねさん でも、ある意味、精神的な部分てね、
肉体的に男好きとかじゃなくってもね。
ジョージ んー、そうなんだよねー。
で、ホモの人たちっていうのは、
ほとんどの部分が、
精神的な部分で人を愛するしか
ないわけじゃない?
特に、タイプなんだけど
ノンケとかっていうね。
これは手が出ない存在なわけでしょう?
ノリスケ わかるわあ。
ジョージ そうすると、心の恋愛なんていうのは、
肉体を伴う恋愛なんかよりも、
ずーっと‥‥んー、どういうんだろう?
重みがないっていうとあれだなぁ‥‥
戯れな感じ。
ノリスケ 戯れな感じね(笑)。
ジョージ っていうのは、あるよね。
んー、なんかね。う〜ん、浮気ねぇ‥‥。
つねさん (笑)
ノリスケ 浮気をするときって、そこでは本気なんだよね。
つねさん それは、どうなんだろう?
ノリスケ タイミングが重なることを言うの?
こっちをひとつ持ってたのに、
こっちと出会ってしまったので、
っていう、こう‥‥。
つねさん でも、すごいひんしゅくを
買うかもしれないけど、
彼氏とか彼女のことを
すごく大切には思ってるけど、
遊んじゃったっていうのと、
さっきのジョージさんの友だちみたいに
本気になってとか、
レベルとかがぜんぜん違うじゃない?
ノリスケ 色々だよね。
つねさん だから、それをなんかこう、
総じて浮気って括られて、
いいのかどうか、
っていうのがある。
ノリスケ 僕、昔の男はっていうと、
両方ちゃんと愛情深く、
違う方向かもしれないけど、
接してたわけだよね。
ジョージ あのね、んー、心の中に
男もあって女もあるわけじゃん?
で、乱暴な言い方かもしんないけど、
女であるときって、待ってるんだよ。
たとえばセックスの性向が男性的な人でも、
待ってるときは女なんだよね。
で、待つということは、
自分を棚上げして相手のことを
ずーっと思ってるわけじゃない?
で、思ってる相手が、
自分の知らないとこで
誰かとよろしくやってるっていうのは、
ものすごく許せない
出来事だと思うんだよね。
で、そうやって考えるとさ、
例えばさっき言った、
僕のおばあちゃんの
ボーイ・フレンドの奥さんっていうのは、
決して待ってなかったと思うんだよね。
自分なりに愛し続けて。
攻め続けてたわけじゃん。
で、ウチのおばあちゃんもおばあちゃんで、
決して待つことはなくって、
攻めてたんだよね。
ボーイ・フレンドであり夫である彼も、
待ってないわけだよ。
愛し続けてるわけだ、両方ね。
そうするとね、その中にはね、
たぶん、浮気という感覚は、
無いんだと思うんだよね。
みんながそれぞれの役割分担で
愛し続けてたりとか、
するような感じがするよね。
ノリスケ 奥さんがいるのに
好きな人ができちゃった友だちがいるのね。
悩んで、そっちとの関係を、
それこそ運命的な感じだったらしいんだけど、
始めたくてしょうがなくて、
もう、ほっときゃ始まっちゃうだろう、
っていうときに、悩んで、
誰にも相談できなくて。
で、占いに行ったんだって(笑)。
そしたら、「大丈夫です」
って言われたんだって。
「あなたは、こっちの関係では
 ダンナさんだけど、
 こっちの関係では奥さんです」
って言われたんだって。
つねさん あー。じゃ、両方うまくいきます、
っていうふうに?
ノリスケ ぜんぜん違うことを
別のとこでやるんだから、
「当然、大丈夫です」
って言われたって(笑)。
つねさん 当然なの?(笑)
ノリスケ でね、ゴールしたんだって(笑)。
ジョージ ゴール! ゴール!!
つねさん で、その後どうなったの?
ノリスケ わかんないけど、何も言ってないから、
そのままだと思うよ。
で、ちなみに、その新しいほうも、
家庭があるわけなのよ〜。
つねさん あー、ダブル不倫なわけだ、ある意味では。
ノリスケ そうそうそう。っていう例も。
占い師、なるほどな、と。
上手いこと言うなー、
タロットかなんかで見たらしいんだけど。
「あ、大丈夫です」って言われたって(笑)。

大丈夫なんですか! つづきます。

2003-05-29-THU

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