ジョージ |
そうやって考えると、
ウチのお母さんなんかは、
憧れの生活シーンがないんだよね。 |
ノリスケ |
だから、ロココとモダンが同居する
妙なインテリアになっちゃうのね。 |
ジョージ |
うん。
あ、ま、あるとしたら、
たぶんスカーレット・オハラ
なんだと思うんだけど。 |
ノリスケ |
スカーレット・オハラ!?
風と共に去りぬ!?!?
アメリカの南部の
お屋敷じゃないのよ(笑)。
そんなもん日本に建ててどーすんのよ! |
ジョージ |
でもねえ、理想なのよきっと。
だって、一戸建てに住んでたときって、
もうほんっとに執着してたからね。
丸い階段。グルグルの螺旋じゃなくって‥‥。 |
ノリスケ |
わかります、玄関からこう、
アーチを描いてる階段ね。 |
ジョージ |
そう。それもシンメトリーで、
マトリックスにも出てましたけども。 |
ノリスケ |
っていうことは、
玄関に至る階段もあって、
玄関ポーチが広くて板張りで、
そこに揺り椅子かなんか、
あるわけね?(笑) |
ジョージ |
そうなのよ。で、一戸建てのとき、
そういう夢を実現させようと、したのよー。 |
ノリスケ |
あ、ホントに?(笑) |
つねさん |
うひゃぁ〜。 |
ジョージ |
面白かったんだよー、
田舎で住んでた家って、
これ抱腹絶倒の家で、
おやじが住む家っていうのは、
和風庭園があって、
庭には鯉が泳いでなきゃいけなかったんだよ。 |
つねさん |
ほいほい。錦鯉だ。 |
ノリスケ |
お父さんはね。 |
ジョージ |
で、当然、家は数寄屋造りで、
扉はガラガラガラッて開けなきゃ
いけないんだよ。 |
ノリスケ |
三和土がある玄関。
いつも打ち水がしてあってね。 |
ジョージ |
玄関のところで三つ指をついた奥さんが、
「お帰りなさいませ」。
で、子どもたちも、
「お父さま、お帰りなさい」
っていう景色がないといけないわけよ。
そして中庭があって。 |
ノリスケ |
蹲(つくばい)なんかがあって。
鹿威しなんかもあったりして。
平屋の、シンプルだけど贅を尽くした
和風建築ね。 |
ジョージ |
うん、おやじは、そういう家を造りたかった。
だけど、ママはね、
スカーレット・オハラになりたかった。 |
ノリスケ |
はははははは。 |
ジョージ |
どうしよう?
これはどうしよう?
って、たぶん、一生懸命考えたのよ。 |
ノリスケ |
お互いに譲らなそうだし。 |
ジョージ |
譲らないのね。
そうすると、正面から見ると
数寄屋造りなんだけど、
お勝手口から見ると
スカーレット・オハラなんだよ(笑)。
すっごいお勝手口だったもん! |
ノリスケ |
おそろしい! |
つねさん |
設計した人、偉い!(笑) |
ノリスケ |
あのー、ドリフのステージみたいな
家なんじゃない?(笑) |
ジョージ |
そう、回り舞台よね。まるで。 |
ノリスケ |
ステキ! |
ジョージ |
だから、お勝手口からバーンと入ると、
階段がドァーンとあって。 |
ノリスケ |
お勝手口なのに(笑)。 |
ジョージ |
でも、ダミーだったんだよ?
その階段って。 |
つねさん |
ダミーなの!? それ。 |
ジョージ |
そ。階段の上は物置なの。 |
つねさん |
うひゃー。 |
ノリスケ |
降りてこれないじゃない、
じゃあ、そこから。
長いドレス着て? |
ジョージ |
うん、来れない、来れない。
来れないけど、もう、安心するの。
あ、これで、いつドレスを着ても
大丈夫だわ、みたいな感じ。 |
つねさん |
そんな‥‥。すごいね。 |
ジョージ |
素敵だったよ。
で、グランドピアノ置いてあったし。
お勝手口の入り口に。 |
つねさん |
誰も弾かなさそう‥‥。 |
ジョージ |
だけど、妙なのよ。
数寄屋造り平屋のスケールの中に
アメリカ南部の屋敷を入れたもんだから、
遠近感がめちゃくちゃなの。
しかもシャンデリア買ってきてね‥‥
イタリアまで行って。 |
ノリスケ |
イタリアまで行った!
ムラノ島で硝子作らせたんじゃないの? |
つねさん |
わっはっはっはっは! |
ジョージ |
でね、ぶら下げたら、
シャンデリアの下で、頭こするんだよ。
何でなのかしら?
あ、天井が低いんだわ、みたいな感じ。
そーんなだったもん‥‥。 |
つねさん |
すっごい‥‥。 |
ノリスケ |
はぁ‥‥。
インテリアの思想自体が、
借り物なのよねぇ、私たち。
なんかねぇ‥‥。 |
ジョージ |
そう、なんかね。
そういう失敗の事例が、
たぶん日本にはいっぱい
あるんだろうと思うんだ。 |
つねさん |
あー。 |
ジョージ |
たとえばさ、「ポパイ」の歴史、
「ポパイ」「ブルータス」の中で、
昔インテリアってあんまりなかっでしょ? |
ノリスケ |
多くなかった。
でも、ここ何年よね、増えたの。
ま、「ブルータス」は
ちょっとあったかも知んない。 |
ジョージ |
あったんだけど、「ブルータス」の
インテリアのありかたっていうのは、
アメリカのプレッピーとか
ヤッピーとかのライフスタイルを
紹介する一環なのね。
ガラガラガラッてルーバーが降りてくるような、
ロールアップデスクとか、
あるいは、ライティングデスクの類。 |
ノリスケ |
に、代表される世界観。 |
ジョージ |
アメリカのプライベートスクールの、
寄宿舎に行くと置いてあるような。 |
ノリスケ |
それこそ、ヘミングウェイ・ホームに
あるような、ああいうイメージね。 |
ジョージ |
そうそう。で、そういうのを見て、
たまたま感心とお金のあった人が、
どこで売ってるんだろう? っていいながら、
横浜の元町とかに
行ってたんだろうと思うんだよね。 |
ノリスケ |
あとは横須賀に行ったり、
基地の街に行って買ったりね。 |
ジョージ |
福生とかね、あったよね。
で、いまだに広尾の
ちょっと高輪寄りの方って‥‥。 |
ノリスケ |
白金方面ね、うん、ありますね。
ペニーワイズがあったしね。 |
ジョージ |
そうそうそう。あれって、
日本に来てるアメリカ人が、
日本を離れてアメリカへ帰るときに
家具を売っぱらって、
それをリストアして売ってたようなもんでしょ? |
ノリスケ |
「麻布のナショナルスーパーマーケットの
売ります買いますボードには
在住外国人が帰国するときの家具セールがある」
なんて情報があったりね。
そういう情報そのものを
「気分だよね」なんて言ってたりしたのよね。
あー、なんか、むずがゆいけど。 |
つねさん |
ふーん。 |
ジョージ |
だから、ライフスタイルの紹介の
一環としてファニチャーがあっただけなの。
家具があっただけであって、
インテリアにまでは、
僕たちは感心を持たなかった感じがするよね。 |
ノリスケ |
うん、うん、うん。
それ、影響されてるわ。
僕、だって、思い出したけど、
学生の時に生協で買ったもの以外だと、
中古家具屋さん行って、
丸テーブル買ったりしてたもん。 |
つねさん |
おお。 |
ノリスケ |
予算、安く済むし、
自分で塗り直したりしてた。ニス。
やってた、やってた。その影響だ。 |
ジョージ |
んで、なんか、雑誌でもらいたい情報とか
買いたいものっていうのは、
洋服だとかカバンだとか靴だとかで。
でもそれが全部、それこそ行き渡っちゃって。
美味しいものもいっぱい食べちゃって。
どうしよう、どうしよう、って、
なんか、洋服も買ったしカバンも買ったし、
靴も買ったけど、
なんで豊かな気持ちになれないんだろう?
って、反省モードに入ると‥‥。 |
つねさん |
周り見渡したら‥‥。 |
ジョージ |
そうそう。
おやじとおふくろと一緒に住んでたときの、
あの醜悪な家のイメージだとか。
|
つねさん・
ノリスケ |
(笑) |
ジョージ |
そうだ、ちょっと一発
インテリアでも行ってみっか、みたいな。 |