APPLE
新宿二丁目のほがらかな人々。
おねぇ言葉や裏声とかで語る別角度批評。

愛を呼ぶインテリア その3
ジョージ・ママの夢は
スカーレット・オハラ。
ジョージ そうやって考えると、
ウチのお母さんなんかは、
憧れの生活シーンがないんだよね。
ノリスケ だから、ロココとモダンが同居する
妙なインテリアになっちゃうのね。
ジョージ うん。
あ、ま、あるとしたら、
たぶんスカーレット・オハラ
なんだと思うんだけど。
ノリスケ スカーレット・オハラ!?
風と共に去りぬ!?!?
アメリカの南部の
お屋敷じゃないのよ(笑)。
そんなもん日本に建ててどーすんのよ!
ジョージ でもねえ、理想なのよきっと。
だって、一戸建てに住んでたときって、
もうほんっとに執着してたからね。
丸い階段。グルグルの螺旋じゃなくって‥‥。
ノリスケ わかります、玄関からこう、
アーチを描いてる階段ね。
ジョージ そう。それもシンメトリーで、
マトリックスにも出てましたけども。
ノリスケ っていうことは、
玄関に至る階段もあって、
玄関ポーチが広くて板張りで、
そこに揺り椅子かなんか、
あるわけね?(笑)
ジョージ そうなのよ。で、一戸建てのとき、
そういう夢を実現させようと、したのよー。
ノリスケ あ、ホントに?(笑)
つねさん うひゃぁ〜。
ジョージ 面白かったんだよー、
田舎で住んでた家って、
これ抱腹絶倒の家で、
おやじが住む家っていうのは、
和風庭園があって、
庭には鯉が泳いでなきゃいけなかったんだよ。
つねさん ほいほい。錦鯉だ。
ノリスケ お父さんはね。
ジョージ で、当然、家は数寄屋造りで、
扉はガラガラガラッて開けなきゃ
いけないんだよ。
ノリスケ 三和土がある玄関。
いつも打ち水がしてあってね。
ジョージ 玄関のところで三つ指をついた奥さんが、
「お帰りなさいませ」。
で、子どもたちも、
「お父さま、お帰りなさい」
っていう景色がないといけないわけよ。
そして中庭があって。
ノリスケ 蹲(つくばい)なんかがあって。
鹿威しなんかもあったりして。
平屋の、シンプルだけど贅を尽くした
和風建築ね。
ジョージ うん、おやじは、そういう家を造りたかった。
だけど、ママはね、
スカーレット・オハラになりたかった。
ノリスケ はははははは。
ジョージ どうしよう?
これはどうしよう?
って、たぶん、一生懸命考えたのよ。
ノリスケ お互いに譲らなそうだし。
ジョージ 譲らないのね。
そうすると、正面から見ると
数寄屋造りなんだけど、
お勝手口から見ると
スカーレット・オハラなんだよ(笑)。
すっごいお勝手口だったもん!
ノリスケ おそろしい!
つねさん 設計した人、偉い!(笑)
ノリスケ あのー、ドリフのステージみたいな
家なんじゃない?(笑)
ジョージ そう、回り舞台よね。まるで。
ノリスケ ステキ!
ジョージ だから、お勝手口からバーンと入ると、
階段がドァーンとあって。
ノリスケ お勝手口なのに(笑)。
ジョージ でも、ダミーだったんだよ?
その階段って。
つねさん ダミーなの!? それ。
ジョージ そ。階段の上は物置なの。
つねさん うひゃー。
ノリスケ 降りてこれないじゃない、
じゃあ、そこから。
長いドレス着て?
ジョージ うん、来れない、来れない。
来れないけど、もう、安心するの。
あ、これで、いつドレスを着ても
大丈夫だわ、みたいな感じ。
つねさん そんな‥‥。すごいね。
ジョージ 素敵だったよ。
で、グランドピアノ置いてあったし。
お勝手口の入り口に。
つねさん 誰も弾かなさそう‥‥。
ジョージ だけど、妙なのよ。
数寄屋造り平屋のスケールの中に
アメリカ南部の屋敷を入れたもんだから、
遠近感がめちゃくちゃなの。
しかもシャンデリア買ってきてね‥‥
イタリアまで行って。
ノリスケ イタリアまで行った!
ムラノ島で硝子作らせたんじゃないの?
つねさん わっはっはっはっは!
ジョージ でね、ぶら下げたら、
シャンデリアの下で、頭こするんだよ。
何でなのかしら?
あ、天井が低いんだわ、みたいな感じ。
そーんなだったもん‥‥。
つねさん すっごい‥‥。
ノリスケ はぁ‥‥。
インテリアの思想自体が、
借り物なのよねぇ、私たち。
なんかねぇ‥‥。
ジョージ そう、なんかね。
そういう失敗の事例が、
たぶん日本にはいっぱい
あるんだろうと思うんだ。
つねさん あー。
ジョージ たとえばさ、「ポパイ」の歴史、
「ポパイ」「ブルータス」の中で、
昔インテリアってあんまりなかっでしょ?
ノリスケ 多くなかった。
でも、ここ何年よね、増えたの。
ま、「ブルータス」は
ちょっとあったかも知んない。
ジョージ あったんだけど、「ブルータス」の
インテリアのありかたっていうのは、
アメリカのプレッピーとか
ヤッピーとかのライフスタイルを
紹介する一環なのね。
ガラガラガラッてルーバーが降りてくるような、
ロールアップデスクとか、
あるいは、ライティングデスクの類。
ノリスケ に、代表される世界観。
ジョージ アメリカのプライベートスクールの、
寄宿舎に行くと置いてあるような。
ノリスケ それこそ、ヘミングウェイ・ホームに
あるような、ああいうイメージね。
ジョージ そうそう。で、そういうのを見て、
たまたま感心とお金のあった人が、
どこで売ってるんだろう? っていいながら、
横浜の元町とかに
行ってたんだろうと思うんだよね。
ノリスケ あとは横須賀に行ったり、
基地の街に行って買ったりね。
ジョージ 福生とかね、あったよね。
で、いまだに広尾の
ちょっと高輪寄りの方って‥‥。
ノリスケ 白金方面ね、うん、ありますね。
ペニーワイズがあったしね。
ジョージ そうそうそう。あれって、
日本に来てるアメリカ人が、
日本を離れてアメリカへ帰るときに
家具を売っぱらって、
それをリストアして売ってたようなもんでしょ?
ノリスケ 「麻布のナショナルスーパーマーケットの
 売ります買いますボードには
 在住外国人が帰国するときの家具セールがある」
なんて情報があったりね。
そういう情報そのものを
「気分だよね」なんて言ってたりしたのよね。
あー、なんか、むずがゆいけど。
つねさん ふーん。
ジョージ だから、ライフスタイルの紹介の
一環としてファニチャーがあっただけなの。
家具があっただけであって、
インテリアにまでは、
僕たちは感心を持たなかった感じがするよね。
ノリスケ うん、うん、うん。
それ、影響されてるわ。
僕、だって、思い出したけど、
学生の時に生協で買ったもの以外だと、
中古家具屋さん行って、
丸テーブル買ったりしてたもん。
つねさん おお。
ノリスケ 予算、安く済むし、
自分で塗り直したりしてた。ニス。
やってた、やってた。その影響だ。
ジョージ んで、なんか、雑誌でもらいたい情報とか
買いたいものっていうのは、
洋服だとかカバンだとか靴だとかで。
でもそれが全部、それこそ行き渡っちゃって。
美味しいものもいっぱい食べちゃって。
どうしよう、どうしよう、って、
なんか、洋服も買ったしカバンも買ったし、
靴も買ったけど、
なんで豊かな気持ちになれないんだろう?
って、反省モードに入ると‥‥。
つねさん 周り見渡したら‥‥。
ジョージ そうそう。
おやじとおふくろと一緒に住んでたときの、
あの醜悪な家のイメージだとか。
つねさん・
ノリスケ
(笑)
ジョージ そうだ、ちょっと一発
インテリアでも行ってみっか、みたいな。

いやはや、そりゃ、考えるでしょう。
つづきます。

新宿二丁目の方々への激励や感想などは、
メールの表題に「二丁目の方々へ」と書いて、
postman@1101.comに送ってください。

2003-07-02-WED

BACK
戻る