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新宿二丁目のほがらかな人々。
おねぇ言葉や裏声とかで語る別角度批評。

愛を呼ぶインテリア その4
買いたくて、買えなかった日々。
ノリスケ ジョージさんは、1回捨てた?
かなり捨てた? そうでもない?
ジョージ 僕はね、僕は、明確なイメージがあって、
そこに向かって突き進んできたからなあ。
ちょっとは捨てたけどね。
あのね、当然、今のように、
お金があったわけではないでしょう。
昔っからね、こういう家に住みたいっていう
ビジョンは持ち続けていたの。
ほら、これ‥‥
(スクラップブックを出す)
ノリスケ あ、切り抜きだ!
家具の写真が切り抜いてあるよ〜〜。
こんなに?
つねさん あ、すごーい。
こんなこと、してたんだ。
20代のころから?
ジョージ そう。こういうのが、大好きって。
変わらぬ自分のイメージっていうのをね、
雑誌で切り抜いてね。
で、どれかひとつを買いたいな、
っていうふうに思って、
ずっと頑張ってたんだよ。
インテリアプラン。
こういう部屋を作りたいな、
こんな家具を買いたいな、
とかっていうのをね、ずっとやってたの。
ノリスケ なるほど。
最初に実現したのは、
どんなことだったの?
ジョージ 自分がお外から帰ってきて、
お出迎えしてほしい椅子が
どうしても欲しかったんだよ。
ひとつだけね。
で、それは何だろうな、
っていうふうに思ったときに、
衝撃的に僕を変えたのが、
アルフレックスのマレンコだったの。
ノリスケ マレンコねー! 
ちょっと時代を感じるわね。
三連?
ジョージ ひとりがけ。
ひとりがけのアームチェアーが欲しくって。
しかも、キャラメル色のレザーの革張りで、
オットマン付きっていうのが欲しかったのね。
そしたらそれのさ、値段を調べたら、
ワンセットにして、85万円ぐらいなわけよ!
つねさん ふがぁ〜〜。
ジョージ ひとりぐらし始めたときに、
僕がいくらでもって
全部の家具を揃えたかって、
10万円ぐらいで揃えたわけであって、
それから考えたらもう、
ぜんぜん違う次元の話なんだよね。
だけど、なんか、
買いたくて買いたくてしかたがなくて。
家具売り場とかに行くとね、
そればっかり見てね、
ああ、こういうのがある部屋に
いつかは住むんだな、と思ってたよ。
ほら、これ見て。
僕が28くらいのときに
切り抜いたやつだけど、
これ、今のこのソファなの。
B&Bの。
つねさん へぇー、すごい。
ノリスケ アルフレックス系が好きなのね。
ジョージ すごいでしょう?
これは僕、12年経って、
自分のものになったんだよ。
つねさん ほぉー。12年越しの思い。
ジョージ そう。
ノリスケ このスクラップブックがね、
これがまた、Time Manager社の(笑)。
ジョージ そう、いちばん高くて
手に入らないやつよん。
ノリスケ 伊東屋さんに売ってます(笑)。
つねさん ぬははははは。
そういうところは、20代から
ジョージさんだったわけねえ。
ジョージ そうよっ。
こういう偏執狂的なところが
あるわけですけど、でもね‥‥。
つねさん (ジョージさんに聞こえないようにボソッと)
普通のお兄ちゃんじゃねぇよな。
ノリスケ (小声で)うん。
ジョージ だから、自分がこういうとこに住みたいな、
と思うようなイメージは
ずっと変わってない。
ノリスケ そうか。
ジョージ 捨てるものもあるけども、
ほとんどのものが捨てないで済んでるよ。
ノリスケ そうか。
つねさん 生かせてるんだ。
ジョージ 他人に勧められて買ったものとか、
今流行ってるからどうとかこうとかって
いうふうにして買ったもの、ひとつもないから。
ノリスケ うん、うん、うん。
ジョージ とか、んとね、そうだね、
たとえば、ウチの会社の子が引っ越したり、
あるいは家買ったり部屋買ったりして、
どういうインテリアプランにしたら
いいでしょうかー、とかって、
訊かれるでしょ?
そうするとね、いちばん最初にね、
どうすると思う?
とくに家買ったりするときって、
一生に一度の問題なんで。
ノリスケ どうするだろう? なにかを参考に?
雑誌でもないよね。人ん家でもない。
ジョージ 答えはね、
「ホテルを見て歩く」ことなんだよ。
ノリスケ そうか!
つねさん どのホテルの内装が好きか?
ジョージ 東京で言うとね、
まずパークハイアットでしょう?
で、フォーシーズンズホテル行くでしょう?
ノリスケ 椿山荘。見せてくれるの?
ジョージ 見せてくれるよ。
ホテルに行って、
お部屋見せてもらいたいんですけどーって。
あとパークハイアットとオークラを見るのね。
で、これで、アメリカ人が大好きな
ヨーロピアンのイメージのフォーシーズンズ、
今の最先端の癒し系、コンフォート系の、
モダンなパークハイアット、
日本人が昔っから否応なしに
焼きつけられている、
西洋の上質のイメージのオークラ。
「どれがいちばん好き?」
っていうのを訊くの。
で、このね、どれが好きかっていうのは、
僕がどうこう言っても
絶対に変えられないから、
守ってあげないといけないんだよ。
んで、たとえば
フォーシーズンズホテルが
好きって言ったらば、
泊まるんだよ。1泊だけ。
それもね、なるべく良い部屋に泊まるの。
泊まったときに、デジカメでも
普通のカメラでもいいから、
自分が好きな景色をどんどんどんどん撮るの。
そうするとね、見るだけじゃわからない、
自分が好きな空間の機能であるとか
ディテールであるとかっていうのが、
ものすごくよくわかるんだよね。
で、それをもとにしながら、
考えていくんだよ。
だから、これはね、みんな、できること。
ノリスケ できるね〜。
ジョージ うん。で、ロビーだけでも、
ほんとに雰囲気は違うから。
ノリスケ ホテルねぇー。
つねさん 面白いね、それね。
渡辺篤史の建もの探訪、
みたいな番組を参考にするのかと思った。
ジョージ んーとね、ワタナベ様の建もの探訪なぞを
見ておりますと(笑)、
今日はなんか面白くなかったぞー、
って思うのは、
台所とかガレージとかから、
イメージが膨らんでいる家。
あれ、家じゃないんだよ。
ノリスケ デカい台所だったり、
デカいガレージだったりするんでしょ?
ジョージ そう、うん。すっごくつまんないの。
で、なんでかっていうと、
そこは機能がむき出しに
なっているわけであって、
機能っていうのは、
それこそお金をかければ、
いいに越したことはないし、
新しければ新しいほど、
いいに越したことはないから。
ノリスケ そうね、技術の進歩ってもんがあるからね。
ジョージ だから、あんまりね、
家とかインテリアを考えるときに、
キッチンとかガレージばっかり考えると
だめなのよ〜。
どこぞの人のように、
自分が自慢できるのは
台所にあるものだけっていうのは、
ん〜‥‥ダメ!
ノリスケ やだ、わたしのことじゃない(笑)。
ジョージ なんでかっていうと、
人が休みに帰る部屋は、
ホテルの機能を持っていれば
それでいいわけであって。
つねさん ああ、寝て、くつろぐっていう。
ジョージ うん。ホテルに台所はないでしょう?
台所のことは最初に考えなくていいんだよ。
ノリスケ うん、まずは、考えなくていい。
ジョージ ホテルの安い部屋っていうのは、
家賃の安い部屋といっしょなんだよ。
で、ホテルの高い部屋っていうのは、
家賃の高い大きな部屋と
いっしょなんだよね。
そしたら、ホテルのいちばん安い部屋って、
何があるの?
つねさん ベッドとテレビ。
ノリスケ トイレとお風呂。
ジョージ うーん、そうそうそう。
いちばん安いよね。
そういうもんじゃん、
ワンルームマンションって。
ノリスケ そうだね。
つねさん そうだねー。
ジョージ んで、そのホテルに泊まって、
おんなじようにベッドとテレビと
お風呂とトイレしかない部屋、
泊まり比べて、
この部屋がいちばんいいぞって
思う部屋は、何がいちばんいいの?
ノリスケ 寝室が別になってる。
ん? ってことじゃなくて?
寝るだけだから‥‥
ジョージ 「ベッドの寝心地」がいいんだろうね。
ノリスケ そうか、そうそう。
違います、枕から何から。
ジョージ そう。そしたら、
そういう小さな部屋で
上質な生活を送りたかったら、
何を買う?
ノリスケ いいベッドを買わないといけない!
なるほどね!
つねさん ほぁ‥‥。
ジョージ だよ。で、ベッドさえあれば、
最小限の生活ができるわけだよね。
その部屋がちょっと広くなると、
何がプラスされる?
つねさん 机?
ノリスケ 座るところ?
ジョージ うん、こっから先はね、
2タイプに分かれるんだよ。
ビジネスホテルが高級になっていく部屋と、
シティホテルと呼ばれるものに分かれていくの。
高級なビジネスホテルは
広々としたデスクと
座り心地のいい椅子があるの。
ノリスケ ありますね。
ジョージ で、シティホテルは、
座り心地のいいソファが
置いてあるんだよね。
ノリスケ そうだよね。うん。
つねさん あー。
ジョージ で、これはね、自分の生活を考えればいい。
つねさんは自宅で仕事をする人だから
机なんだと思う。
ノリさんは外で仕事をする人だから
ソファか、チェアなんだと思う。
自分は、部屋で仕事をする人なのか、
それとも部屋に仕事を持ち込まない人か。
二者択一だよ。

僕はソファだ〜。つづきます。

2003-07-04-FRI

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