ジョージ |
だから、まあ、たまたまここでは、
なんか全部がソファになっちゃったけど、
僕ね、女の人の部屋に、
すごくキレイなかたちをした堅い椅子、
レストランに置いてあるような椅子、
アーリーアメリカンでもいいし、
曲げ木のがあったじゃない。
ああいうのをね、一脚置いておくのって、
すごくいいと思う。
あと、玄関。
今も入り口のところに
椅子をひとつ置いてあるけれど。 |
ノリスケ |
柳宗理。 |
ジョージ |
そう。前の家のときには、
入り口に大きい鏡を置いて、
その前に、一脚椅子を置いてたんだよ。
かたーい椅子を。
で、なんでそうしたかっていうと、
体がグタグタグタグタしたときに、
お出かけ前、その椅子に座るの。 |
ノリスケ |
シャキッとする? |
ジョージ |
シャキーンと鏡に映るので、
自分のシャキンとした体を
思い出すんだよね。 |
ノリスケ |
で、でかけると。 |
ジョージ |
で、その椅子に座って、靴を履いて。
座った姿を見て、立った姿を見て、
家を出てくんだよ。
で、たとえば最近の日本の家の傾向って、
ダイニングテーブルを持たないで、
ソファにして低いテーブルで、
そこで座ってなんでもかんでもするでしょ? |
ノリスケ |
そうですよね。 |
ジョージ |
そうすると、お行儀良く座れる椅子が
一脚もない家って、
いっぱいあると思うんだよね。
だからこそ、デスクがなくってもいいから、
テーブルがなくってもいいから、
シャンとした椅子ひとつ、っていうのが
いいと思うのよ。
それってけっこう使い勝手いいもんだよ、
ハンドバッグちょっと置いたり、
ジャケットをちょっと掛けたり
することができるから。
お行儀悪くできることばかりが
家の機能では、ないのよ。 |
ノリスケ |
きゃあ、ごめんなさい。 |
つねさん |
すいませんっ。 |
ジョージ |
ほんっとに昔ね、まだ世間知らずだった頃、
アメリカの高級ホテル行って、
バスルームの中に
椅子が置いてあったのにはビックリしたもんね。 |
つねさん |
ほぉ〜。 |
ジョージ |
バスルームの、洗面台の横のところ、
鏡の前に椅子が置いてあって。
女の人はこの椅子に座ってお化粧をするんだ、
って思ったもん。
んで、面白いもんでさ、
洗面台の前って、いちばん明るいんだよね。
家の中でいちばん明るい場所って、
洗面台の前なんだよ。
んで、洗面台の前に座って、
ヒゲを剃る前にボーッと顔を見てると、
ほんっとに間抜けな顔に見えるの。
あー、顔作んなきゃ。
そう思うのよ。 |
ノリスケ |
鏡の前で笑顔の練習。 |
ジョージ |
前の部屋はあったでしょう?
洗面所に椅子が。 |
ノリスケ |
今はない? |
ジョージ |
今は置いてない。
今は、クローゼットの中が鏡張りなんで、
否応なしに自分のからだが映ってしまうんだよ。
メシはどういうところで食ってる?
部屋の中で。 |
ノリスケ |
ローテーブルにソファ。 |
つねさん |
僕、ちゃぶ台。 |
ジョージ |
ちゃぶ台ね。ちゃぶ台、素敵だよ。
あれは万能テーブルだよね。 |
ノリスケ |
ウチ、狭いから。ソファがあって、
細長ぁいローテーブルがあって、
横に並んで食べてる。 |
つねさん |
あの、こないだ買ったやつ? |
ノリスケ |
そう、イデーで買ったやつ。 |
ジョージ |
毎日、寺内貫太郎一家ってやつだよね。
同じ方向、みたいな。 |
つねさん |
あはは、「家族ゲーム」みたいな。 |
ノリスケ |
そう、そうそう。
慣れたら、どうってことないですよ。 |
つねさん |
でも、べつにねぇ、
それは僕も嫌いじゃない。 |
ノリスケ |
最初ね、テーブルを頂いたんですよ、
引越し祝いにアクタスで。
で、そこで食べてたんだけど、
同居人が、ずっとテレビを見てるんですよ。
ここに僕がいるのに、
横向いてTV見て食べてるから、
じゃあ、これ、やめましょうと。 |
つねさん |
悲しいよねぇ(笑)。 |
ノリスケ |
でしょ? やめましょうと。
テレビを向いて横並びにしましょう。
って諦めたら習慣になりました。 |
ジョージ |
ウチも、ね?
食卓があるけど、
ソファにローテーブルで食べるよね。
で、そんとき注意しないといけないのが、
いつまでたっても
食卓になりっぱなしになること。 |
ノリスケ |
そうです。お醤油が出っぱなしだったりします。 |
つねさん |
あ、ごめんなさい‥‥。 |
ジョージ |
今日はなんかチンタラしたいんだな、
っていうときには
そういうふうにさせるんだけど、
例外的にここでメシを食うんだよ、
ってわからせるための工夫が要るの。 |
つねさん |
あー、あれね。 |
ノリスケ |
なになになに?‥‥あ、お盆! |
ジョージ |
こういう木のトレーがあって。 |
ノリスケ |
コンランショップのでしょう。 |
ジョージ |
そう。 |
つねさん |
わははは。
あんたよく知ってるわねえ。 |
ジョージ |
この上に、お料理を載せるの。
それで持ってくるの。 |
ノリスケ |
あ〜! |
ジョージ |
そうすると、このトレーが、
テーブルなんだよ。
可動式ダイニングテーブル。 |
ノリスケ |
大っきないいお盆。 |
ジョージ |
そう。それで、食事が終わったら、
これを全部下げれば、
一瞬にしてここは、
ダイニングテーブルじゃなくなる。
リビングテーブルになる。 |
ノリスケ |
なるほど。配膳のための。
それも、でも、
日本家屋には、あったものですよね。 |
ジョージ |
そうなんだよ。
インテリアにこだわるっていうと、
家具を買いましょうとか、
模様替えしましょうって
いうことになるんだろうけど、
インテリアをほんとに考えるってことは、
そこでの生活の仕方を
考えるということなの。 |
ノリスケ |
ほんとはね、リビングテーブルと
ダイニングテーブルは別にあって、
できればリビングルームと
ダイニングルームが
別になってたほうがいいんだけど、
スペースの都合で、たまたまひとつなの。
そのほうが合理的だから。 |
ジョージ |
そしたら、食事をするときは、
テーブルクロスを敷いてみましょうとか、
テーブルクロスが大袈裟で
しかたがなかったら、
それこそランチョンマットでもいいし、
風呂敷を半分に折ってでもいいから、
今この瞬間からここは食卓、
食事が終わったらこれをかたせば、
もういっかい元へ戻るから、
っていう考え方が、多分、
インテリアを考えるということだと思うんだよ。 |
ノリスケ |
目的に合った場所を作ること。 |
つねさん |
それね、やろうとしたんだけど、
1回で挫折よ〜。続かなかった。 |
ノリスケ |
自分んちで?(笑) |
ジョージ |
気合いいるからね。
でもね、お盆は絶対いいよ。
すごくいい。 |
つねさん |
お盆はいいね。 |
ノリスケ |
さっそくコンランショップに行くわっ。
あ‥‥そもそも、
お盆を置いておく場所がない(笑)。 |
つねさん |
わはははは。 |
ジョージ |
冷蔵庫の上は? |
ノリスケ |
冷蔵庫の上ね。片づければね。
「サルのおせっかい」箱買いして、
段ボールごと置いてあるのよ〜〜! |
つねさん |
ウチ、冷蔵庫の上に電子レンジ。 |
ノリスケ |
なにかを捨てれば
キッチン片づくかしら(ぶつぶつ)。 |
つねさん |
捨てれないんだよねぇ。 |
ジョージ |
(ため息)僕ね、この人の家に
初めて行ったときにね、
世の中には古本屋さんみたいな
家があるんだ、って思った。 |
ノリスケ |
あー! 凄いもんね。
つねさん家。
と、言いつつ、うちも、ひどいけど。
本棚まるごとひとつ、美術書よ〜。 |
ジョージ |
仕事が仕事だから、
資料なのかな? って思ったんだけど‥‥
どう見てもこれは資料じゃなくって、
欲しいからあるだけなのかな?
っていうのがいっぱい、ね? |
ノリスケ |
ジョージさんの家は、
本棚やCDが見えない。なぜ?
あんなに吸収しているあなたが。
CDやビデオは、あの棚? |
ジョージ |
僕は全部、CDケースを捨てるんです。 |
つねさん |
そう。コレクターとしては、
えらい困るんですけどっ。 |
ノリスケ |
(棚を覗いて実況中継)なーんと、
CDがファイルに入ってます!
ライナーノーツと対になって、
きっれ〜〜〜いに、ファイルされてます!
はぁ〜! 「わかればいい」んだ。 |
ジョージ |
そう。なくしさえしなけりゃ、いい。
形はどうでも。 |
ノリスケ |
すさまじい。だから片づくのね。
あ、300連奏CDデッキが2台。
はあ〜〜。 |
つねさん |
アダルトビデオも
パッケージ捨てちゃうもんなあ‥‥
(ぶつぶつ)。 |
ジョージ |
どんどん捨てます。 |
つねさん |
それはね、偉い。
僕、できないよ。 |
ノリスケ |
はぁ〜、お〜。
本はどこにあるの? |
ジョージ |
本は、基本的に必要なとこだけ
ひっちゃぶって、あとは捨てるから。
ぜんぶスクラップブックの
状態になっている。
それで、どうしても必要な本は、
会社持ってっちゃうの。 |
ノリスケ |
なるほどね。ライブラリー。
みんなで共有して、と。 |
ジョージ |
そう。 |
つねさん |
うまいね。 |
ノリスケ |
いや、そうじゃないと、
この部屋の美しさは維持できない。 |
つねさん |
うん、そりゃそうだ。 |
ジョージ |
そうやってね、僕のことを言うけどね、
僕ね、ほんとは整理整頓が嫌いな人なの。 |
ノリスケ |
んあ?? |