ノリスケ |
ジョージさん、西海岸に
留学経験ありますよね。 |
ジョージ |
あるよー。 |
ノリスケ |
どんな感じでした?
そんなに目立たないもの?
わかんない?
気にしない? |
つねさん |
あなたが、目立ってたんでしょ。 |
ジョージ |
いちおう学校には、
ゲイのサークルはあったよ。 |
ノリスケ |
あー。 |
ジョージ |
サークルというか、
コミュニケーションを
取りあうような組織があったの。
大学で僕が行ってた学部は、
1学年340人ぐらいだったけど、
コミュニケーションとりあってる
連中で40人ぐらいいたからね。 |
ノリスケ |
ああ、けっこう多いね。 |
つねさん |
それはもう、
ストレートのみんなも
知ってて? |
ジョージ |
うん、もう知ってて。 |
ノリスケ |
全国的にはどうかわからないけれど
早稲田にも慶応にもあるよね、
サークルが。 |
ジョージ |
あるある、あるよ。あるね。 |
つねさん |
それは、どういうサークルなの? |
ノリスケ |
あまり詳しくないけれど、
それは社会の縮図なんじゃないの?
主義主張のある人もいるだろうし
そういうのはない人もいるだろうし。
でも基本的には、
やっぱり楽しく大学で
暮らしていくために、
ゲイであることを隠さずに
いられる場所を持つってことと、
情報交換しましょうっていうこと
じゃないかしら‥‥ |
つねさん |
あ、みんなで、
なんかどっか行ったりとか。 |
ノリスケ |
そういうのもあるでしょうね。
でも、やっぱり情報交換が
基本だと思うのよ。 |
ジョージ |
アメリカにいるときはね、
やっぱり、連絡網、
緊急事態の連絡網って
必要なんだよ(笑)。 |
つねさん |
あ、そうなんだ。 |
ジョージ |
たとえば、その、
ふつうの人には言えないことって
あるでしょ?
たとえば僕がもし、
ゲイばっかりが集まるようなところで、
心臓発作を起して倒れたら、
どうするんだ?
っていうと、
誰も僕がそこに行ってることを
知らないわけじゃない? |
つねさん |
うんうん。 |
ジョージ |
でも、そういうコミュニケーションの
ネットワークの中にいれば、
僕が何日か連絡をとれなくなっても
誰かが探し当ててくれるっていう
安心があるの。
あいつが行く場所っていうのは、
あそことあそこと
こんなとこぐらいなのかな? って。 |
つねさん |
ふーん。 |
ジョージ |
あとやっぱりパーティを
たまにやったりとか。
それと、やっぱりね、
ゲイ専門の学校に行かなきゃ
いけなくなるぐらいほどの
障害ではないんだけど、
やっぱりストレスはあるんだよね。
僕の場合には、
アメリカ国民でなくって、
しかも白人でなくってアジア系で
しかもゲイ。 |
ノリスケ |
英語だってネイティブじゃないしね。 |
ジョージ |
そうそう。で、僕ってやっぱ
ハンディキャップだなって思いつつも、
‥‥だけど一応、(テレコに近寄って)
ま、売れ筋だったんです、私、
アメリカでもね(ニヤリ)。 |
つねさん |
けっ(笑)。 |
ノリスケ |
はい、はいはい。
モテモテってことね。 |
つねさん |
うるせぇ(笑)。 |
ジョージ |
だから、
パートナーを探すという点に関しては、
あんまり苦労はしなかったでーす。
ところが、僕の隣の隣の
クラスにいた子っていうのが、
もうね、これがね、
東洋系の子なんだけど、
ガリンガリンで、
英語も下手で、
共産主義の政府から
国費の留学生で来てるから、
自由になるお金も少なくて、
‥‥どうしても、人気がないの。 |
つねさん |
はははは。ややこしい(笑)。 |
ノリスケ |
性格は? |
ジョージ |
性格は暗いんだ、これが。 |
ノリスケ |
せめて底抜けに
明るい子だったらねえ‥‥ |
つねさん |
あー、悲しい。 |
ジョージ |
で、しかもゲイだったんだよ。 |
ノリスケ |
ゲイだっていうのはわかったんだ。 |
ジョージ |
だってサークルには来てたもん。 |
ノリスケ |
あら! |
ジョージ |
だって彼がなんで
アメリカに留学に来たかっていうと、
当時彼の国で
ゲイだってみつかると‥‥。 |
ノリスケ |
逮捕されちゃう? |
ジョージ |
そう、もう、すぐ
強制収容所行きだったんですって。
だから頑張って勉強して
アメリカにやってきたの。
あー、もう天国に来たーっ、
って思ったのに
天国じゃなかったんだよ。 |
ノリスケ |
そっか。そこは天国のはずだったのに。 |
ジョージ |
それって、天国が
見学できてるだけであって、
自分は天国の住人じゃなかったわけ。 |
ノリスケ |
はいはいはい。 |
ジョージ |
もうそういう子なんていうのは、
大変なわけさ、ストレスが。
そういう子をなぐさめてあげたり
カウンセリングをしてあげるのも
サークルの役割だったの。 |
つねさん |
ああ、友だち同士で。 |
ジョージ |
友だちどうしで。 |
つねさん |
ああ、でも、いいねぇ。 |
ジョージ |
パーティがあると必ず呼んであげて。
僕はサンフランシスコの
南っかわのほうの、
某大学にいたんだけど、
情報が入るのね、
どうやらサンフランシスコの
北側のほうには‥‥。 |
ノリスケ |
素晴しい楽園が? |
ジョージ |
そう、そのガリガリの
アジア系の男の子が
好きな人がいるらしいぞーっ!
って。
すると彼を呼んできて
パーティしてあげて、
マッチメイキング(仲人)
してあげるんだけど、
あっさり断られたりとか
するんだよ(笑)。
でも、そういうことを
よくやってたの。
今インターネットで
簡単にできることなのかも
しれないんだけどね。
当時はそういうふうに、
みんなが肌を寄せ合わないと
できないことが多かったの。 |
ノリスケ |
そう、僕もまさしく今
インターネットのことを思っていたの。
今って、地方の、ほんとうに田舎にいて、
中学生でゲイに目覚めた
男の子がいたとしても、
彼が所属する場所は
インターネットにあるかもしれないの。 |
ジョージ |
うん、そうなんだよね。 |
ノリスケ |
昔みたいな孤独にはならないと思うのよ。
悩みを打ち明けたり、
恋人みたいなものを作ったり、
何かを経験したりすることは、
たやすいのかもしれないなと
思うんだけどね。
で、このNYの高校だけど。 |
ジョージ |
この学校っていうのはたぶん、
ひとりの人間が許容できる
ストレスのレベルを超えて、
どっかでもってポキンと
折れた子たちが集まる場所なのかな?
だって、たとえば、
この学校にいる間は幸せかもしれないけど、
この学校を卒業して出ていく
社会っていうのは、
ゲイ専用の社会じゃないじゃない? |
ノリスケ |
そう、それ思う。 |
ジョージ |
で、ゲイ専用の社会も、
あるにはあるんだけど、
ゲイ専用の社会も、また、
器は小っちゃいんだよね。 |
ノリスケ |
その中にもまた社会があって、
それはそれで、
同じようにとても
面倒臭いと思うんだよね。 |
ジョージ |
で、ほーんとうに
自分の人生のことを考えたらば、
どういうのかな、あえて自分と違う
価値観の人と協調しあう訓練を、
なるべく早いうちから
しなきゃいけないかなと思うんだよね。
だけど違う価値観の人たちが、
何人も集まってるということは、
もうそれだけでストレスなわけだから。
ストレスを、なんか、んと、発散、
解消っていうんじゃないな、
ストレスをコントロールすることが
できるような人間関係だとか、
自分の中にあるものだとか、
そういうのを大切に作らなきゃ
駄目かなと思うよ。 |