ジョージ |
ちょっと話変わっちゃうけど、
僕、昨日、実家に帰って、
その、父母と一緒にご飯食べてて、
いろーんな話、したのね。
で、年金の話になったときに、
ウチの母曰くね、
自分たちはまだ貰えるけど、
いちばん苦労するのは30代、
40代、50代の人たちよね、って。
そしたらね、オヤジがこう言ったの。
俺らがいちばん美味しいとこ食ったから、
おまえらには残ってないんだよな、
ごめんな、って。
今の日本ってそんな感じ。
今の日本っていうか、
今の地球がそうかもしんないよね。
20世紀に大人だった人たちが、
食い散らかした後の
食べかすしか残ってなくて。
んでね、その後、いろいろ話してね、
こういう結論に達したの。
その、ずっとウチのオヤジたちは、
僕たちのような若い世代を、
アメリカ人みたいで日本人じゃない、
っていうふうに思い込んでたけど、
今になってみたら、今の日本人で、
50代、60代ぐらい
アメリカ人のような日本人はいなかった、
っていうことになったんだよ。 |
ノリスケ |
ほぉーっ。 |
ジョージ |
だってそれまで、
昔っから日本っていうのは、
その、和をもってなんとか、とかね。 |
ノリスケ |
尊しとす。 |
ジョージ |
そう。で、曖昧であることを好んで。
で、独り占めが大嫌いで。
余るほど、絶対つくらないとか?
余ったら誰かに分けてあげたりとか。
そういうすーばらしく
美しい文化があったのに、
戦後、アメリカさんが
やってきたことによって
なんかしんないけどアメリカ人みたいな、
教育も変えたし国の仕組みも変えたし、
会社の仕組みも変えたし。
で、ウチのオヤジなんか、
仕事でもって、アメリカ的なことは、
これから絶対良くないからやめよう、
っていうふうに言うんだけど、
じゃあどうすればいいのか?
って思うと、自分の中に、
アメリカ以外のものが入ってないんで、
どうしよう?
って、仕方がない、って
いうふうに言うんだよね。 |
つねさん |
ふーん。 |
ジョージ |
んで、じゃあ、その、
おじいちゃん、
もっとおじいちゃんの世代の人に
聞けばいいか?
っていうと、その人たちの日本って、
負けた日本だから駄目なんだよ。
そうすると、初めてな僕らのように、
アメリカのようであることが
当たり前のように育ったんだけど、
だけどどっかで心の片隅で
違うんじゃないの?
っていうふうに思った人が、
真剣に考えないと駄目なのかな?
って思うよね。 |
つねさん |
へぇー。 |
ジョージ |
だって、生まれて初めてオヤジに
アメリカ連れてかれて、
フリーウェー見せられて
ハンバーガーとか食わされてね、
どうだ! 凄いだろう? アメリカは、
って言われたときに、
なんで凄いんだろう? と思ったもん。 |
ノリスケ |
ははは。 |
ジョージ |
だって、日本にも
高速道路ぐらいあるでしょう? |
ノリスケ |
それはその前をね(笑)。 |
ジョージ |
そう、前を知らないからね。 |
ノリスケ |
差に驚いた当時のまま、
いまでも驚いたままなんだね。 |
つねさん |
そうだよね。 |
ジョージ |
そんで、その、彼らは、
その前を知らないことが、
ハングリーじゃないって
いうふうに怒るんだけど、
逆にね、なんかね、
その前を知らないことを
幸せと思わないと駄目かな?
と思うよ。 |
ノリスケ |
戦争を知らないおまえらは駄目だ、
って言われても困るっていう(笑)。 |
つねさん |
舗装された道路じゃない、
舗装されてない道を知らないとか、
あるでしょ? |
ジョージ |
困る。
とか、ある意味、それこそ
ハンディキャップだよね。
前の世代にしてみたら、
苦労を知らないお前らは
かわいそうだっていうふうに言うけど、
あなた、苦労しか知らない人って
かわいそうね、っていうふうに、
思えるか思えないかだよね。 |
つねさん |
見方のベクトルだよね。 |
ジョージ |
そう、そうそうそうそう。
ほんっとそう思うね。
ま、居直りっていうのかしら?
居直り、居直らせると、
やっぱオカマがいちばんだよね。 |
つねさん |
ははははは! |
ジョージ |
絶〜〜っ対。 |
ノリスケ |
そうは言いながら、あんたたち、
11月にニューヨークに
遊びに行くんですってね。
だからアメリカってさ、
こないだ鈴木慶一さんがさ、
「ほぼ日」の『MOTHER』の
インタビューで言ってたけどさ、
アメリカは嫌なとこいっぱいあるけど、
音楽とその周りはいいっていう(笑)。 |
つねさん |
あ、だから、それは
そういうもんじゃないのかな。 |
ジョージ |
アメリカはね、やっぱり
ものすごく大っきくて、
ものすごく深いから、
飲み込まれると死ぬ、
底なし沼みたいなもんだから。
でね、それね、アメリカというね、
底なし沼の上にね、
なんか、1本、お箸みたいに
細い棒がね、ポーンと掛かってるの。
で、その上をね、きれーにね、
こうやって歩いてるとね、
なんか幸せかな? って。 |
つねさん |
じぇーんじぇん、OK(笑)。 |
ジョージ |
だから、絶対にね、
飲み込まれちゃ駄目よ。 |
ノリスケ |
アメリカに飲み込まれない
客観性がないといけないよね。
それ、ほんとは日本でもいいんだけど、
僕は、よくわかんないんで
こんど、英語じゃない言葉を
勉強してみようかなって思うの。
何語でもいいんだけど、
ヨーロッパ言語かな。 |
つねさん |
ははは、そっちにきた。 |
ノリスケ |
いや、ヨーロッパから見たら、
どうなのかな? って思って。
世界って、イコール、
アメリカじゃない?
なんか(笑)。
なんかね、違うような気がして。
語学からでもいいから、
やってみたら違うのかな?
って思って。 |
ジョージ |
アメリカ人が、
アメリカの料理だっていうふうに
思ってるものがあるでしょ?
で、これ、ぜんぶ本物が
ヨーロッパにある。 |
ノリスケ |
そうよね。 |
ジョージ |
で、下手すると最近、寿司って、
アメリカの食べもんだっていう
バカ者もいるんだよね。 |
つねさん |
そうなの? |
ノリスケ |
それは、ソニーが
アメリカの企業だっていう
以上ですね。 |
ジョージ |
そうそうそうそう。
だけどアメリカの寿司を食ってね、
寿司をとやかく言われたくないじゃん、
日本人的には。 |
つねさん |
あ〜。 |
ジョージ |
で、おんなじように、
たとえば、アメリカを代表する
料理っていうと、
ステーキ、ハンバーガー。
で、ステーキのオリジナルは、どこ? |
つねさん |
ステーキのオリジナル? |
ノリスケ |
中東? |
ジョージ |
パリなのよ。 |
ノリスケ |
パリなの? |
ジョージ |
パリのカフェ。 |
ノリスケ |
あ、知らなかった。 |
ジョージ |
パリのカフェで、
ハラミのステーキがあるんだよ、
どんなカフェにも、
必ずハラミのステーキがあって。
で、これがね、もぉ、
素晴らしく美味しい。
ハラミのステーキの横に
フレンチ・フライが
てんこ盛りになってて。
でね、それを食べるとね、
あー、やっぱり、
ステーキって美味しいんだ、
って思うよね。 |
ノリスケ |
アメリカのステーキ、まずいもんね。 |
ジョージ |
で、なんで大西洋を越えると、
こんなにステーキって
美味しくなくなるんだろうか?
っていうふうに思うんだけど、
気がつくんだよ、ひとつ。
パリのハラミのステーキの
もうひとつの祖先が
どこにあるかっていうと、
イタリアのフィレンツェにあって。
例のTボーンステーキね。 |
ノリスケ |
イタリア料理のTボーン、
すっごく美味しいもんね。 |
ジョージ |
美味しいんだよ。
それでね、そうやって思うとね、
ニューヨークに行って、
イタリア人の名前のような
ステーキ屋さんを選ぶの。
そうすると、そこは
イタリア人が焼いてるステーキだから、
美味しいんだよ。 |
つねさん |
ほぉー。 |
ジョージ |
旨いんだ。 |
ジョージ |
美味しいんだよ。
シティーホールがイタリア人の経営でしょ、
すっごい美味しい。 |
つねさん |
美味しかったよね。 |
ジョージ |
あとね、フランス人が
やってそうなカフェで、
昼間ハラミを食べると
絶対美味しいんだよ。
そうするとね、美味しいものが
ニューヨークにもあるじゃん?
ってことになる。 |
ノリスケ |
なるほどね。 |
ジョージ |
ま、ハンバーグは、
もともとはやっぱりドイツであって。
ただ、ドイツの人は、
ミンチ状の肉を、
絶対そのまんま焼かないの。
焼くと味が外へ出ていくの
わかってるから。 |
ノリスケ |
どうするの?
煮るの? |
ジョージ |
ソーセージにするの。 |
ノリスケ |
そっか、そっか。 |
つねさん |
あ! そっかぁ。 |
ジョージ |
あるいはコーンビーフにするの。
そうするとね、
ドイツ人とかポーランド人とかの
名前のついたデリカテッセンに行って‥‥。 |
ノリスケ |
ポーランドは肉旨いもんね。 |
ジョージ |
美味しいの。
そこでソーセージ茹でてもらって
ホットドッグを作ってもらうか、
コーンビーフを焼いてもらって
パンに挟んでもらうと、
素晴らしく美味しいハンバーガーと
カツが食べられるの。 |
つねさん |
カツって、ドイツ? |
ジョージ |
ポーランド。 |
つねさん |
あ、ポーランドなの? |
ノリスケ |
カツレツはウィーンなんかも
美味しいよねえ。
ポーランドの肉ってね、
ほんとに腐らせる寸前なんだよ。 |
つねさん |
そうなんだ。 |
ノリスケ |
あの、田舎へ行くと、
肉が腐りかけの状態で
吊るしてあるのよね。 |
ジョージ |
虫が湧いてるでしょ。 |
ノリスケ |
うわーっ!
って思うと、
これがいいんだよ、って。 |
ジョージ |
そういう、なんか、
オリジナル探しをしていくと、
やっぱり、アメリカって
何にもなかったのかなって。
ある意味、アメリカって
百貨店みたいなもんで。 |
ノリスケ |
そうそうそう、本店じゃないの。 |
ジョージ |
ヨーロッパが本店なんだよ。 |
つねさん |
セレクトショップみたいな。 |
ジョージ |
セレクトもされてないのよ。 |
つねさん |
してないんだ。とりあえず
ガサガサ持ってきて、みたいな。 |
ジョージ |
案外、日本がセレクトショップだよ。
その、アメリカほどの規模も
持ってなくって。 |
ノリスケ |
面積ないからね。 |
ジョージ |
そう。 |