ノリスケ |
こないだ、あの、
僕の前の席に座ってる
女性が、あの、ま、恋人と
ふたりで住んでるんだけど、
そろそろお客さまにね、
出せるような食器が
欲しくなってきたね、
って話になって。
食器はちょっとわかるけど、
カトラリーがわからない。
で、僕もわからない。
じゃあ、これはジョージさんに訊くべし
と思って、ジョージさんも含めて、
詳しそうな友だち三人にね、
メール書いたら、
ま、みんなゲイなんだけど、
まぁ、驚いたね!
メール出したのは夜なんですよ。
で、次の日の朝までにね、
全員返事が返ってきたの。
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つねさん |
あはは。
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ノリスケ |
で、全員ね、たっぷり200行ぐらい
あるんですよ。
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つねさん |
そう(笑)。
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ノリスケ |
全員ね、観点ぜんぜん違うのね。
それぞれの暮らしぶりが違うし、
収入も違うし、職業も違うし、
好みが違うから、
答えがばらばらなんだけど、
みごとにばらばらだったんだけど、
ぜんっぶ素敵だった。
あまりに面白かったのでもったいなくて、
糸井さんにまで送っちゃったわ。
糸井さんからは
「きみらの、この、暮らしに
愛情を注ぐ加減、すごい!」って。
たかがカトラリーで‥‥。
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ジョージ |
これだけ盛り上がってる(笑)。
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つねさん |
すごいよね。
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ジョージ |
べつに勉強したくて
したわけじゃないから。
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ノリスケ |
楽しいからやってるよねぇ。
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ジョージ |
でも昔ね、ほら、ウチ、
靴が、すごいじゃない?
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ノリスケ |
すごいです。ジョージさんちに、
靴部屋っていうのがあってですね、
男イメルダですね。
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つねさん |
シュークローゼットと呼んで。
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ノリスケ |
玄関脇に小っちゃい扉があって、
こんだけの扉の幅にクツが入ってるの?
と思ったら、そんなことはない、
部屋のドアでした。
中に姿見まであって。
クツが‥‥百はない?
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つねさん |
百越えてるよ。
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ジョージ |
百ぐらい。
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ノリスケ |
ムカデじゃあるまいし。
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ジョージ |
ひゃ〜。
あのね、べつに靴が
好きなわけじゃなかったんだけど、
やっぱり、足にぴったり合う靴って、
なかなかないじゃない?
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ノリスケ |
シンデレラの例もあるように(笑)。
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ジョージ |
そう。それでね、十何足目かに、
ものすごくぴったり合うクツがあったんだよ。
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つねさん |
へぇ〜。
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ジョージ |
そしてね、もしこのクツがなくなったら
困るって思うの。
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ノリスケ |
あー、思いますね。
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ジョージ |
そうするとね、買いだめちゃうんだよ。
おんなじサイズで違うデザインとか、
いっぱい買っちゃって。
それで、しかも、それを順ぐりに
履いていけばいいんだけど、
ぜんぶ履いちゃうと、
一斉になくなるでしょ?
そのとき履けるものがないと困る、
って思うから、
履かないクツが出始めるんだよ。
それこそ備蓄なんだよね。
それは、コレクションじゃなくって、
備蓄になっちゃう。
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ノリスケ |
そうですね、食料庫
みたいなもんですね。
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ジョージ |
それでね、すんごい反省したの。
おんなじようなことを、僕は、
下着でもやったし、靴下でもやったんだよね。
で、いちばん悲しかったのが靴下でね、
一時期イッセイミヤケが
ビジネスソックスを出してたときに、
ものすごく良かったの。
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つねさん |
へぇ。
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ノリスケ |
アイムプロダクツ。
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ジョージ |
そう。それでね、これも、
なくなると困ると思って、
大量に備蓄したのね。
だけど、あの、
靴下の上のゴムって‥‥。
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ノリスケ |
劣化してくんだ!
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つねさん |
切れるんだ。
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ジョージ |
そう!
それで、しばらくして、
おんなじやつばっかり履いてるわけよね、
備蓄分はなくさないように。
んで、ここぞという日ですよ、
それこそ大きいコンベンションがあって、
どっかステージの上に
立たなきゃいけないときに‥‥。
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ノリスケ |
よし、おニューの靴下をおろそうと。
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ジョージ |
そう、今日はもう決めソックス履いて
行こー! って。んで、履いて、
上にバッて上げた瞬間に、
プチブチーッて。
ゴムがぜんぶ切れてスコーン!
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つねさん |
あの、ルーズソックスに
なっちゃったのね(笑)。
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ジョージ |
そう、ルーズソックスになっちゃったの。
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ノリスケ |
女子高生になっちゃったのね(笑)。
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つねさん |
ほんとに(笑)。
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ジョージ |
えーっ!? と思って。
じゃ、次はどうだ? 次はどうだ?
っていったら、もうね、30足ぐらい、
みんなブチブチ。
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ノリスケ |
悲しい(笑)。
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ジョージ |
あ、これはね、なんて
バカなことをしたんだろうと、
思いました。
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ノリスケ |
劣化するものはね‥‥。
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つねさん |
あぁ、そうだねぇ。
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ノリスケ |
僕もその気配があって、
気に入ったシャツは2枚買っちゃう。
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つねさん |
あぁ‥‥。
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ジョージ |
そう、2枚買って、
2枚を交代交代で着ればいいんだけど、
1枚新品にしとくのよ。
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つねさん |
あー。あ、それはわかる。うん。
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ジョージ |
これを先見の明のある行為というのか、
それとも執着に等しい行為というのかね。
これは難しいところではあるんですけどね。
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ノリスケ |
執着がちょっとあるかもね。
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ジョージ |
あると思う。あると思う。
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ノリスケ |
あの、クローゼットに‥‥。
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ジョージ |
うん、あの糸のついたまんまの
スーツがいっぱいとか、あれこそね、
あれこそ執着の絵柄よ?
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つねさん |
そうね、着もしないのに。
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ノリスケ |
それ、スーツじゃありませんけど、
シャツが何着か。
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つねさん |
あ、俺、もうないや。
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ノリスケ |
うちのにね、そんな買い放題、
好き放題買ってるのをとがめられるの
嫌なもんだから、こっそり買ってきて
こっそりしまったりしてるもんだから、
それが、リスが頬袋にためるようにね、
詰ってきちゃってねぇ(笑)。
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つねさん |
あはは。バレちゃった?
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ノリスケ |
いや、もうわかってると思うんだ、
共有だから、クローゼットは。
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つねさん |
そうだね。
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ノリスケ |
わかってると思うんだけど、
言わないだけでね。
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ジョージ |
僕の場合は、犬っころがいろいろ
骨とかオモチャとかを‥‥。
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つねさん |
あー、いろんなところで(笑)。
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ジョージ |
埋めるでしょう?
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つねさん |
忘れて‥‥。
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ジョージ |
埋めたのを忘れて、
また同じようなものを取ってきて
近所に埋めるみたいな状態。
でも、まあ、そういう執着した部分を
自分で見て、うん、かわいいぞ、
っていう楽しみも、
まあ、たまにはいいかな?
と。物に関してはね。
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ノリスケ |
かわいい範囲ならね。 |