ジョージ |
この前、あの、某外資系の
エアラインのステュワードをやってる人と
話をしてて。最近の日本の若い人たちって、
サービスをしていいのか
わかんない顔をしているって。 |
ノリスケ |
はぁー。期待もしてないのかな? |
ジョージ |
うん、たとえばね、
コーヒーとかをカートに載せて、
通路を歩いてるとするでしょ?
そうすると、たとえば欧米の人だと、
どゆのかな?
それこそ、4列先に座ってる人でも、
目でチラッと見て、合図して‥‥。 |
つねさん |
アイコミュニケーション。 |
ジョージ |
そう、合図して、二コッてして、
近づいたら真先に私にコーヒーね、
っていう顔をしてるんだよ。
で、コーヒーがいらない人って、
ニコッてして、すぐパッと前を向くから、
この人はコーヒーは必要ないんだなって
いうふうに思う、っていうんだよ。
だけど日本の人は、みんな、
斜め下15°ぐらいをジーッと見て。 |
ノリスケ |
困るねー。 |
ジョージ |
で、半分口を開いて? |
ノリスケ |
ウォークマンかなんか聞いてるんだ(笑)。 |
ジョージ |
そう。それで、無表情に、
ボーッとしてるから、
どうしよう? って思うんだって。 |
つねさん |
あ〜。 |
ジョージ |
んで、あの、コーヒーいかがですか?
コーヒーいかがですか?
って言って歩いても、
すぐ近くに行くまでわかんなくて。
真横で、カップいきなりボッと出されるの。 |
ノリスケ |
うぉっ! |
つねさん |
困るね! |
ジョージ |
どうするの?
って訊いたら、無視するんだって、
思いっきり。 |
ノリスケ |
えーっ。 |
つねさん |
あー。 |
ジョージ |
それこそ、そういう人に注ぐ
コーヒーはないと。
これはね、もう深いとこまで来たね。
もう言葉の問題まで越えて、
もう、存在とか自己アピールが? |
ノリスケ |
そんなことで、海外旅行で
何をするんだろうね?(笑) |
ジョージ |
そう。にも関わらず、彼女に対してだけ、
デァーッて一方的に喋るわけでしょう?
自分に必要な人だけにしか、
情報を与えないのがいけないんじゃないかな?
それこそ海外行ってさ、
そんな人が街歩いてても、
誰も声を掛けてくれないだろうし。 |
ノリスケ |
ねぇ、何も面白いことないよねぇ。 |
ジョージ |
誰も声を掛けてくんないってことはさ、
場合によってはいいことかもしんないけどさ、
ポン引きも来ないわけだから。
ま、そういうのに限って
ポン引きだけは来るのかな? |
つねさん |
そう。 |
ジョージ |
で、ノーって顔してないから、
気がついたらお店の奥とかに
連れ込まれてたりとかさ。 |
ノリスケ |
ニヤニヤして(笑)。 |
つねさん |
で、ふんだくられて。 |
ジョージ |
そう。で、そんなのが、
エルメスに大挙してゾロゾロ入って来たら、
お店の人はたぶん気が狂うと思うよ。 |
つねさん |
そうだよね、怖いよね。 |
ジョージ |
いや、彼らは何なんだろう?
宗教団体かーっ!? |
ノリスケ |
あ〜、申し訳ない気持ちで
いっぱいになる(笑)。 |
ジョージ |
申し訳ないでしょう?
そんなの海外に出すなよって思うでしょう? |
つねさん |
あ、そういえばさ、
僕、前に地下鉄乗ってて、
目の前でサラリーマンふたりが、
この前海外旅行したんだけどさぁ、
サービスすんげぇ悪くて、
もう腹立っちゃってよぉ、みたいな、
ギャーギャーいってたのね。 |
ノリスケ |
それ系だ。 |
ジョージ |
それ系だよ、絶対。 |
つねさん |
たぶん、だから、
サービスをしてもらいたいっていう。
気持ちがないんだと思う。
おまえら当然だろう、
みたいな言い方でやったりとか。
そしたら、もてなすほうもね、
もてなしようがないじゃない? |
ジョージ |
だって僕らは得するもの。
もう飛行機に乗ってごらんなさい。
あの、飛行機、国際線の飛行機乗るときって、
要所要所、関門があるんだよね。 |
ノリスケ |
ふん、ふん、ふん。 |
ジョージ |
で、そこでどういう表情をして、
どういうふうにするかによって、
その、たとえばみんなが50点分の
得点を持って飛行機に乗るとするでしょ? |
ノリスケ |
はいはいはい。 |
ジョージ |
飛行機に乗るっていうことは、
どこの誰か知らない人が
集まってるわけだから。
で、50点から、
どんどんどんどん10点ずつ足していって、
100点満点の人間になるのか、
10点ずつ引かれて0点の人間になるのか、
なんだよ。で、それは、飛行機が、
ダーッて離陸する瞬間に、もう決まってるの。 |
ノリスケ |
ほぉ。 |
ジョージ |
100点か0点か。絶対よ? |
つねさん |
ほぉ。 |
ノリスケ |
アメリカ横断
ウルトラクイズみたいだね(笑)。 |
つねさん |
ほんとだね(笑)。 |
ジョージ |
ほんとだよね(笑)。
いちばん大切なのは、
飛行機に乗る瞬間を思い浮かべていただくと、
あの長ーいブリッジを
タンタンタンタンと歩いてきて、
機内に入る目の前に
必ずひとり誰かいるでしょう? |
つねさん |
いるね。 |
ジョージ |
そこには誰が立ってるか知ってる? |
ノリスケ |
あ、チーフか。 |
ジョージ |
キャビンアテンダントの中で、
今日の、その、ゾーンがあるでしょ?
そのゾーンのいちばん偉い人が
そこに立ってるの。
そうするとそこでね、
ボーッとして入っていったり、
あるいは、あそこの人に、
「すいません、Jの席はどこですか?」
って訊いたら、もう負けなのよ。
あんたね、って、飛行機っていうのは、
左っ側からAって始まってて、
Jっていうのは‥‥。
2本目の通路を右に曲んなきゃ駄目なのよ?
っていうふうに思われちゃうのよ?
あんた、多分ジャンボに乗ったこと
ないでしょう?
って思われたら、もう終わりよ。 |
つねさん |
それはマイナス(笑)。 |
ジョージ |
チケットを貰ったら、
まず自分のシートは
何番のAなのかBなのかCなのかって
いうことをジーッと見て、
これは、どっち側だな、
こっち側だなって、思わなきゃいけない。 |
つねさん |
あー、もう最初っから。 |
ジョージ |
んで、にこやかに歩きながら、
飛行機の中で待ってくれてる人に、
「おはようございます」だとか
「こんにちは」っていうふうに、
「よろしくお願いしまーす」って言いつつね。
自分の責任を、迷いもせずに
スコーンって歩いていく姿を見て、
この客はオッケー、海外旅行慣れてる、
おそらく飛行機の使い方も
知っているであろうと、いうふうに思うわけ。
そうすると、そのお客さんがどこに座るかを、
彼女は見るんだよ。 |
つねさん |
へぇー。 |
ジョージ |
あ、あそこに座ったんだな。ね?
そこで、すいません、これ、どこですか?
って訊いたり、あるいは、
ブスーッとして入った客は、
絶対に後ろ姿を追わないの。
ここで、マイナス10点、プラス10点でしょ?
んで、今度ね、そのシートの横でね、
ボーッと突っ立ってる、
あるいは荷物を上に乗っけたり下に入れたり、
あれこれあれこれしながら、
なかなか座らない。邪魔。
せっかく後ろ姿を見られたのにも関わらず、
それをやってしまうと、
あ、無駄した、と思って次のお客さん、
こうやって見るからね。 |
つねさん |
ほぉー。 |
ジョージ |
そうすると、まず座るの。
まず座って、どこにこの荷物を
格納するのかなー? と思いつつ、
サッと立ち上がって
こういうふうに行くと‥‥。 |
ノリスケ |
人がいない時にね。 |
ジョージ |
そう。あ、できてるな、っていうふうに。
と、あとは、その、
今日の機内食の内容であるとか
機内誌であるとかを、
パラパラパラパラ見ながら。
そうすると、お客さまが半分ぐらい
入ってきたときに、
スチュワーデスが毛布であるとか
枕であるとか、あるいは新聞であるとか、
そういうものを抱えて歩いてくるんだよ。
これはもう、FでもCでもYでも歩いてくる。
で、そんときにいらぬ顔をしたら
絶対に損なのよ。
私は今日は、飛行機に移動手段として
利用しにきたんであって、
あなたがたのサービスを受ける
この飛行機を利用したんです、と。
べつに私はJALでも全日空でも
ユナイテッドエアラインでも
構わなかったんだけど、
私たちはあなたたちのサービスを
受けにきたんです、っていうために
必ず呼び止めて、
すいません、日本の雑誌は
乗っけてらっしゃいますか? とか、
あるいは毛布をいただけますか?
っていうと、あ、この人は
サービスをしていい人なんだって思われる。 |
つねさん |
あー。
|
ジョージ |
で、貰ったら必ずそれを読む、
あるいはブランケット貰ったら、
腰の上に入れたり、
首の下にいれたりしながら、
こういうふうにいろいろ試行錯誤してると、
ああ、あの人はやっぱり、
サービスをしてもらったら、
それを楽しむことができる、って思うの。
で、そうしてるうちに、
ガターンって降り始めるでしょ?
ドアがね。そろそろ離陸の準備だよ。
離陸の準備のときに、
スチュワーデスは機内がどういう状態かを
見る。みんなベルトをしているかどうか。
で、そのときに、自分たちを
見てくれているスチュワーデスの顔を
必ず見るんだよ。目と目が絶対合うから、
パッと。ニコッてしたり。 |
つねさん |
はぁ〜。 |
ジョージ |
ああ、あの人だ。
今日、この機内の中では、
あそことあそことあそこ、あれだけ。
あれはサービスをしてあげよう、
っていうふうに思うから。
そうすると離陸。で、100点取れるんだよ。 |
ノリスケ |
なるほどね。向こうも、
ちゃんとサービスしたい人にして、
満足いく仕事ができるほうが
いいわけだもんね。 |
つねさん |
うん、だってね、したくもない人に‥‥。 |
ノリスケ |
ねぇ。辛い思いをしてもしょうがないよ。 |
ジョージ |
うん、サービスをしてあげて感動しない人は、
絶対サービスの対象になんないし、
あとは、ほんとにもう出張でね、
寝かしてくれっていう人は、
そんなことはしないわけであって。 |
ノリスケ |
うん、わかるもんね、見てればそれ。 |
ジョージ |
うん、ノーサービスの客にも
サービスはしないの。
だけど、自分はサービスをして欲しくて
ワクワクしてて、たとえば、
いつもYだったのに、今日はC!
そんときはね、もう寝る時間も惜しんで
サービスを受けたくなるわけよ。
にも関わらず、そういうふうな、
シグナルを出すことを忘れてしまったら、
サービスをするのに、
いちいち声を出さなきゃいけなくなるの、
すいません、って。
これはさー、辛いよ?
で、いちばん最初にシグナルを出しといて
100点満点のお客さんになってれば、
すいませんって呼ばなくったって、
カートでガラガラガラガラって来たら、
自分の横に止まってくれるの、パーンと。
コーヒーいかがですか?
食前酒いかがですか?
って言ってくれるの。
で、真っ暗になって寝てる間にもね、
その人のところにだけは来て、
たとえばブランケットを
掛け直してくれるとか、
ミネラルウォーターのボトルを
横に置いておいてくれるとか、
してくれるんだから。 |
つねさん |
で、その人の横へ来て、
オーロラが見えますよ、
って言ってくれるとか(笑)。 |
ジョージ |
言ってくれるの。
たとえば、知らない間に来てくれて、
ミネラルウォーターのボトルが
置いてあったら、それを飲んで、
飲み終わったやつをギャレーに持っていって、
どなたかわかりませんけれども、
どうもありがとう、っていったら、
この次はチョコレートがやってくるのよ。 |
ノリスケ |
はははははは。 |
つねさん |
うぉー(笑)。 |
ジョージ |
で、人間ってそういうもんだよね。 |
つねさん |
ま、そうだよね。
やっぱり喜んでくれた人に‥‥。 |
ジョージ |
いちばん最初にスチュワーデスの人に
喜んでもらったから自分が喜べた。
あ、なんか、海外旅行を
エレガントにするっていうのは、いいな。 |
ノリスケ |
得意分野にいっちゃった(笑)。 |
ジョージ |
ほぉ〜んとに得意かもしんない、
これだけは(笑)。 |
つねさん |
ぐぃ〜んって、なんか、
ねじ曲げて言っちゃった(笑)。 |