ジョージ |
あ〜!(悲鳴)あ〜ん!
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ノリスケ |
‥‥お帰りなさい。
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つねさん |
お帰りなさ〜い。
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ジョージ |
ただいまぁ〜。
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ノリスケ |
ジョージさん、
海外出張帰りよね。
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ジョージ |
ええ。ハワイから戻って来ましたっ。
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つねさん |
ウェルカムバ〜ック!
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ノリスケ |
えっと、社員旅行かなんかだっけ?
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ジョージ |
いや、ちょっと会社のお客さまなぞを
ご招待しつつの、ちょっと大っきい
イベントで行ってきました。
ま、研修旅行みたいなもんだよね。
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つねさん |
お仕事だね。
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ジョージ |
そう、行ってきました。
んで、お仕事のときは忙しかったんですけど、
事前準備でもって、2日ほど先に
行ったんですけどね。
ほぼ1年ぶり? ハワイ。
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つねさん |
そうだね、そのぐらい。
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ノリスケ |
つねさんも行ったの?
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つねさん |
ううん、僕は行ってない。
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ジョージ |
つねさんはお留守番。
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つねさん |
留守番で。お仕事してました。おとなしく。
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ジョージ |
そう、あんたは身を粉にして稼がなきゃ。
で、1年ぶりでハワイに行ってきたの。
それで、まあ、準備といっても、
ほとんど日本で終わってたんで、
打ち合わせを何回かすると
終わってしまったのね。
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ノリスケ |
なんだ、じゃ、2日、オフ(笑)?
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ジョージ |
いいじゃない。
で、ちょっと街に出たんですね。
街に出たんですけど‥‥。
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ノリスケ |
ホノルル?
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ジョージ |
ホノルル。
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ノリスケ |
なんでそんな浮かない顔をしてるのよ?
ハワイ帰りが。
今日は毒を吐きそうな顔をしています。
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ジョージ |
なぜかっていうとね、
とんでもないものをいっぱい見たから。
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つねさん |
たとえば、どんなやつ?
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ジョージ |
ハワイで見るとんでもないものと言えば、
ほとんど、日本人絡みです。ね。
ふ〜〜〜〜ぅぅ‥‥。
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ノリスケ |
深いため息ねえ。
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ジョージ |
まあ、幾タイプかあるんだけど、
その、どゆのかな、
なぜこんなヤツらを出国させたんだと。
イミグレーション。なぜ!? って。
外務省、なんでこんなヤツらに
赤いパスポートを持たせたんだっ!
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ノリスケ |
10年も使えるやつを(笑)。
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ジョージ |
そう、10年も使えるのを。
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つねさん |
で、どういうヤツらなの?
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ジョージ |
ナンバーワン。
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ノリスケ |
ワン! ってことは、
いっぱいあるってことよね(笑)。
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ジョージ |
シリーズよ、シリーズ。ひとぉーつ。
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つねさん |
ひとぉーつ、人の生き血を啜り‥‥
桃太郎侍みたいね。
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ノリスケ |
「ふたぁーつ、不埒な悪行三昧、
みっつ、醜い浮世の鬼を
退治てくれよう桃太郎」?
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つねさん |
そ! そんな感じー。
で、醜い浮世の鬼はどんなだったの?
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ジョージ |
あのね、どういえばいいのかな、
うーん、娼婦にしか見えない
日本のおなごたち。
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ノリスケ |
ああ。外国の空気の中で見ると
日本からそのままのムードの女の子たち、
すごく浮いて見えることがあるわよね。
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つねさん |
女性同士で歩いている子たちでしょ。
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ノリスケ |
あ、確かに女性同士の
友だちで来てる子たちって、
とってもこう、緩(ゆる)いというか、
脆(もろ)く見える。
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つねさん |
脆いんじゃなく、
漁ってる感じなんじゃない?
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ジョージ |
いや、それはいいのよ。
あのね、漁ってるふうなのはね、
娼婦じゃなくって、
ラブを必要としてる渡り鳥だから。
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つねさん |
ああ。
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ノリスケ |
許す?
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ジョージ |
許す。ハワイでボーイフレンド見つける、
っていうんでも、目的がしっかりしてるから。
そうじゃなくて、あのね、たぶんね、
自分たち的にはぜんぜん‥‥
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つねさん |
その気はないのに?
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ジョージ |
そう。なんだけど、
周りから見てると、
娼婦に見えてしまう女の子たち。
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ノリスケ |
わかるわ。
バリの、クタあたりでもね、
自分が悪い男だったら、
こいつらをだませば
金になるって思うような
日本人の女の子、いっぱいいたわよ。
無防備よね。
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ジョージ |
そう、無防備なの。すっごい。
あのね、たとえばね、
日本からホノルルに着く便って、
ほとんどが午前中に着くじゃない?
いちばん早い便ってね、
朝の6時半に着くんだよ。
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ノリスケ |
そんな早いんだ。
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ジョージ |
んでね、遅いやつでもね、
11時ちょっと前ぐらいに着くんだよね。
それで、当たり前のように
ハワイのホテルって2時から
3時ぐらいからしか
チェックインできないから、
みんなバスの中か、
あるいはホテルに荷物を置いて、
お昼ご飯を食べに出てくるんだよ。
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ノリスケ |
ああ、朝ご飯というかお昼ご飯というか。
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ジョージ |
時間潰しというかね。
んでね、人前で化粧をするの。
んもう!
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ノリスケ |
それはね、東京にいても思うわよ。
地下鉄で化粧を直してる女を見ると。
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ジョージ |
そう。でもね、しかもね、直してる顔がね、
東京の顔なのよ。
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ノリスケ |
あー、わかる。
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ジョージ |
東京の顔っていうか日本の顔?
せっかくせっかく
ハワイにやってきたんだから‥‥、
僕、化粧直しをすることは
悪いことじゃないと思うんだけど。
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ノリスケ |
そうかしら。みっともないと思わない?
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ジョージ |
もちろん人前は駄目よ。
日本の化粧を取っ払って
ハワイの化粧にするんなら構わない、
って思うのよ。
リセットになるから。
だけどね、人前でね、
日本の化粧を直すのは駄目。
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つねさん |
戦闘服系みたいな気合いの入った化粧?
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ノリスケ |
違うと思う。
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ジョージ |
んー、あのね、ハワイで戦うということは、
素肌になるということのはずなのね。
そうは思わなくって?
だから、ハワイで日本式の化粧を
すればするほど、
戦闘してないことになるんだよ。
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つねさん |
あそっか。
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ジョージ |
せっかく日付変更線まで越えて、
飛行機に7時間乗って
ホノルルにやってきたのに、
なんでもう1回あんたたち
日本に戻んなきゃいけないの? って。
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つねさん |
あ、気持ちというか、かたちが。
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ジョージ |
人前で化粧をしているという出来事プラス、
出来上がっていく顔を合計すると、
あ、この子たち、
キャバクラの子なんだ、
っていう感じになっちゃうの。
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ノリスケ |
あ〜。
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ジョージ |
ハワイのディスコの入り口で、
ただで入場料払ってくれる男の子を
探してるみたいな女性みたいに
見えちゃうの。昼間なのに。
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つねさん |
あ〜ん。夜でもないのに。
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ジョージ |
そう、いちばん恐ろしかった景色は、
ワイキキの海岸の、
木でできたベンチに座ってね、
しかもオナゴがあぐらをかいてね、
化粧してたの。
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つねさん |
うそ、あぐらかいて‥‥!?
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ジョージ |
しかも、ラメ入りパール系のやつ。
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つねさん |
変な意味で無防備すぎ。
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ジョージ |
すごいでしょう?
私はそれで、ちょっと、ガツーンとやられて。
んで、その日1日のテーマが、
ワイキキの街の中に溢れる娼婦を探せ、
っていうことになっちゃったの。
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つねさん |
わははははは。
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ジョージ |
そうするとね、いるの。
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つねさん |
いっぱい?
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ジョージ |
わらわら。
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つねさん |
わらわら。
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ジョージ |
下着のような姿のオナゴたちとか。
どういえばいいんだろう、
東京の街に今年の夏溢れていた
キャミソール系の女の子たち?
イエローキャブの子たちがよく着ている。
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ノリスケ |
フリフリだけど胸元が見えて‥‥。
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つねさん |
ノーブラで、みたいな。
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ジョージ |
そう。うん、でね、あのね、
健康的じゃないの。
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ノリスケ |
病的に見えちゃうんでしょうね。色白いしね。
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ジョージ |
ハワイに来たから
肌を露出したいっていうのはわかるんだ。
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ノリスケ |
それはべつに間違ってないですね。
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ジョージ |
だけどね、露出の仕方がね。
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つねさん |
方向性が違うの?
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ジョージ |
健康的な露出になればいいのに‥‥。
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つねさん |
淫靡な‥‥。
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ジョージ |
うん、エッチ系っていうの?
まだね、男の子が欲しくて欲しくて
仕方がない、ムンムンしたような雰囲気で
歩いていれば、
まだバランスが取れているのに、
顔はね、どよーんとしていて、
フェロモンがなくってオーラもなくって、
首から下だけがムンムンしてるの。
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ノリスケ |
それ、キメラよね。
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つねさん |
あ〜。合成体みたいな(笑)。
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ノリスケ |
うん、合成体。 |