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新宿二丁目のほがらかな人々。
おねぇ言葉や裏声とかで語る別角度批評。

海外旅行、醜い浮世の鬼を切る。その3
オカマの取締役とその秘書、でも。

ジョージ 僕も、せっかくハワイに
行ったからっていうんで、
ハワイでものすごく話題のレストランに
予約をして行ったの。
まだ日本のガイドブックにも出てなくって、
ローカルの人たちが騒ぎ始めたぞ、
みたいな話題のお店を調べて。
つねさん あ、ここはいいよー、みたいな。
ジョージ それこそ、行く3週間ぐらい前に
予約して行って。
で、みなさまもご存知の、
わたくしの、あの、とっても男気のある
カッコイイ女性秘書とわたくしと、
あともうひとり、
2人の共通の手下というのをね。
ノリスケ 3人で(笑)。
ジョージ そう、連れていって。
そうするともう、見るからに、
わたくしと、その彼女がいて、
で、もうひとりの子は
ドライバーとかボディーガードみたいに
見えるわけよ。
とってもほほ笑ましい3人なのね。
ノリスケ なるほどね。もてなす側も
わかりやすくていいよね。
ジョージ わかりやすくていいよね。
でね、レストランのウェーターの人たちもね、
すごく自然になるの。
ノリスケ そうよね、いちばん慣れたかたちでしょ?
ジョージ うん、それで、たとえば彼女なんて
ぜんぜん英語喋れない。
つねさん ていうか、喋らない?
ジョージ 喋らない。どこ行っても日本語で通す。
つねさん ほぉ、男気がある。
ノリスケ それ、男気とは違うんじゃない?(笑)
ジョージ ま、ともかくそういうメンツだと、
ウェーターも、誰を喜ばせればいいのか、
っていうのがわかるんだよね。
さて問題。
誰を喜ばせればいいでしょうか?
つねさん 女性。
ジョージ ウェーターにとってはね、
女性客は、おいしいお料理を食べてもらい、
きちんとニコッと笑顔でサービスを
してさしあげれば、大丈夫、という存在なの。
間違っていないお料理を出して、
間違っていないサービスをするのね。
だけどいちばん喜ばせなきゃいけないのは、
彼女を幸せにする責任を持っている、
エスコートした男性なんだよ。
ノリスケ はぁ〜〜。
ジョージ そう。だからね、彼らはね、一生懸命
僕が素敵な男であるということを
演出してくれるの!
ノリスケ はぁー。
つねさん へぇー。
ていうか具体的に何してくれるのよ。
ジョージ たとえばメニューを開いて、
これってどういうの? って訊くでしょ?
そうするとね、「素晴しいっ!」。
まず「素晴しい!」なんだよ。
ノリスケ えーっと、「お目が高い!」ってやつ?
ジョージ うん。実はこれはこうこうこうこうした
一皿で、で、おそらくこれを
お召し上がりになれば、
ご同行のこの女性も感激間違いなしです、
っていう意味での「素晴らしい!」ね。
ほんとに「幸せになるでしょう」
って言われたもの。
でもうちの秘書、
「私そんなの騙されないよ」だって(笑)。
つねさん わははははは! いいね。
ジョージ そう、だけどね、
すーごいね、楽しいの。
ノリスケ それは要するに、
まっとうな扱いを受けているから
楽しいのねえ。
ジョージ そうそうそうそう。
僕たちのテーブルの担当のウェーターは、
必ず僕の横に立って、
僕の目線でもって話してくれたし!
つねさん へぇ。
ノリスケ ほぉ。
ジョージ で、いちいち、「素晴しい」
「素敵だ」って言う。
で、二言目には、その同行の
彼女のほうを向いて、
今日は素晴しい方のエスコートで、
あなたはとっても美しく見える、
とかって言われるわけよ。
ノリスケ ま、向こうには実情はわかんないからね。
オカマの取締役とその秘書、なんて。
ジョージ ウチの秘書ったら
「でも私キレイに見えても
 ここじゃ仕方がないしー」(笑)。
んで、たまたまね、僕たちの3人の他に、
女性だけ4人のグループがいたの。
ノリスケ 日本人の。
ジョージ そ。日本から来たの。
そうするとね、ウェーターは、
誰が仕切り役なのかわかんないんだよ。
誰が中心で誰を喜ばせればいいのか、
ぜんぜんわかんない。
みんながおんなじように、
日本の若い“女の子”の、
ガーリーでプリティな格好をしているから。
たとえばね、ファミリーレストランに
小学生ばっかり4人来たら、
困るでしょ?
ノリスケ あ! なるほど。
つねさん 要するに、お母さんがいないと。
ジョージ 小学生3人にお母さんがひとりついていれば、
お母さんを一生懸命喜ばせるようにすれば、
3人は喜んでるんだよね。
ノリスケ そうだよね。
ジョージ で、そういう、役割分担のない人たちの
グループを目の前にすると、すごい困るの。
ノリスケ ジョージさんが隣で見ても、
彼が困ってるのがわかるんだ。
ジョージ ほんとに困ったような表情をしてるから、
僕たちのテーブルに彼が来たときに、
「ね、困ってるんでしょう?」って訊いたら、
「そうなんです」って。
「サービスのきっかけがつかめないから
 困っているんです!」。
でも、日本人から見ると、
わかるんだよ、誰がいちばん偉いか。
ノリスケ たいてい、仕切ってる子がいるからね。
ジョージ そう、いるんだよね。
その子がメニューを開いて、
いろいろ説明してるんだよ、
ここにはこういうのがあって、
こうこうこうなのよ、って。
ノリスケ お魚は、これにしましょっ、って。
ジョージ 「実は私、ガイドブックで
 ここ調べたんだけど」
とかって言ってるんだよね。
だから、あそこのいちばんこっち側の
左側の手前の女の子が、
たぶんあそこのリーダーだから、
彼女にいろいろ訊くといいと思うよ、
っていうふうに言ったらね、
うまくいってたよ。
ノリスケ 教えてあげたわけね?(笑)
ジョージ そう。で、ちゃっかりデザートを
ご馳走してもらったもーん。
ワゴン、ガラガラガラッて来て、
ありがとう! なんでもいいから
好きなのをいくらでも頼んでー! って。
つねさん そっか、そっかー。
ジョージ だから、その、
ちょっとしたきっかけなんだよね。
海外に行くっていうことは、
見ず知らずのところに行くわけであって、
それは僕たちにとって
見ず知らずの場所である以上に、
相手の人たちは僕たちのことを
ぜんぜん知らないわけだよ。
で、相手の人が、じゃ、
僕たちの何を知りたがってるかっていうと、
名前を知りたがってるわけでもないし
年収を知りたがってるわけでもないし、
日本から来たっていうことを
知りたがってるわけでもないんだよね。
僕たちの役割を知りたがっているの。
このグループは、誰が偉くって、
誰がたぶんお金を払って、
誰を喜ばせればこの人たちは
いちばん幸せなんだろう、って。
ノリスケ じゃ、男4人でも同じよね。
ジョージ そうよ、男4人で来ても
おんなじことなんだよね。
でも、男4人の場合ね、
わりとわかりやすいんだと思うよ。
つねさん 明らかに年配に見えるとか。
ジョージ そう。
ノリスケ メニューを熱心に見てる人とか。
ジョージ そう。
つねさん 女性がみんなで
キャーキャー喋ってたりすると、
わからないものね。
ノリスケ わかんないと思う。
うん、確かにわかんないね。
ジョージ うん、わかんない、わかんないしね、
しばらくメニュー見てたら、
急にメニュー、パターン!
と畳んで喋り始めるしね。
つねさん わっかんねぇな、ほんとに。
ジョージ あれはわかんないと思ったよ。
ノリスケ 「っていうか、ウェーター遅くね?」
とか言って(笑)。
ジョージ そうそうそうそう。
「おっせぇーよ!」なんて。
おまえらが悪い、っていう感じなのよ‥‥。
だからね、日本の女の子はもっと、
海外出たら頑張ってっ!!
っていうのが、いちばん最初に
言いたかったの。
娼婦に見えるのだけは絶対にやめてっ!!
これが1番目。2番目はね‥‥。
フゥー‥‥。
ノリスケ あ、深いため息ついてる。


あんまりため息つくと、老けますよ。
続きます!

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2003-11-21-FRI
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