ノリスケ |
最低〜。
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ジョージ |
で、ひとりが言い始めると、
もうその横のテーブルが、
「こっちだって待ってんだっ!」。
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ノリスケ |
言わなきゃソンソンみたいな。
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ジョージ |
「ここ「G角」だろう?
かっこつけんじゃねーっ!」
とかって言い始めて。
もう阿鼻叫喚なんだよ。
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ノリスケ |
最低ー。
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ジョージ |
日本人ってね、やっぱり、文明開化以降、
百何十年も経っているのに、
やっぱりあの白人の前では?
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つねさん |
おとなしくなっちゃう。
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ジョージ |
普通ね、普通、海外で、同じ言葉が喋れて、
自分の言うことをぜんぶわかってくれる
従業員のところだったらば、
もっとおとなしくするのが普通だと思うのよ。
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つねさん |
フレンドリーなんだしね。
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ジョージ |
そう、チップを15パーセントじゃなくて
25パーセントあげるぐらいの
感謝の気持ちを持たなきゃ
いけないわけじゃん。
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つねさん |
はいはい。
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ジョージ |
だのに、そうならないのよっ!
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つねさん |
逆に、日本みたいだから、
チップなんかいらねぇだろう、みたいな。
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ジョージ |
そうなのよ。
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つねさん |
ひでぇ。
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ジョージ |
もう、驚いちゃうよ。そうするともう、
従業員も売り言葉に買い言葉だから、
ぜんぶ商品提供し終わって、
伝票を置くときに、
もうチップ乗っけておきましたから、って、
バーンと置くの。うわ〜! だよ。
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ノリスケ |
ははは!
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ジョージ |
「G角」、おそるべし、ホノルルの「G角」!
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つねさん |
いっそ、行ってみてぇー!(笑)
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ノリスケ |
いやだぁ。
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つねさん |
見るの面白いじゃん。
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ノリスケ |
貴重な1食をそんなことに費やしたくないわ。
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ジョージ |
そうよ。
泣いたもん。もうほんっとに。
日本人の中には、そういうのが
あるのかもしれないと思った。
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ノリスケ |
内弁慶。
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ジョージ |
そう。たとえば、JALとか全日空とかの、
ビジネスクラスのおじさんたちが、
スチュワーデスをまるで
女中のようにこき使うのを見るし?
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つねさん |
ほいほいほい。
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ジョージ |
だけど、アメリカ系とかヨーロッパ系の
エアラインに乗って、
おねえさんたちが白人だと
いうだけでもって‥‥。
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つねさん |
何も言えない、みたいな。
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ジョージ |
そう、自分が言いたいことも言えないで、
ニコニコ愛想笑いをしてるっていうのと
おんなじなんだろうなと思った。
んで、その、怒鳴り散らしてる人たち
っていうのが、
決しておじさんだけじゃなくって‥‥。
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つねさん |
若い子とかも?
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ジョージ |
そう、女の子のグループもそうだよ。
文句を言うんだよ、
「遅い」とか「サービスが悪い」とか。
んで、「こんなんだったら、
来なきゃ良かった」とかって言うんだけど、
海外で日本語の通じる店に
来たかったんだから、
どうもありがとう、今日は日本語で
思いっきり注文ができてすごく嬉しかった、
っていうふうに思わないのかしら。
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つねさん |
なんか、ストレス発散に使われてるね。
気の毒ね。
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ジョージ |
そう、ストレス発散の場所だよ。
かわいそうだったー。
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ジョージ |
たとえば、とある免税店とか、
あるいは昔からある日本料理店とかに行くと、
日系人のおばさんが、日本人観光客を、
人間としてもてなさないお店とかって
あるのよ、たしかに。
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ノリスケ |
はい。
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ジョージ |
日本人って見ると物のように扱う。
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つねさん |
うん、金を吐き出してくれるお財布みたいな。
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ジョージ |
「あんた、買うの? 買わないの?
買わないんだったら向こうへ行って」
みたいな感じで接する店もあるの。
で、あれって、失礼だなっていうふうに
ずっと思ってたけど、
彼女たちを失礼な人間にしちゃった理由は
旅行者の日本人のほうにあるのかな、
と思ったりとかして。
海外に行って、同胞の人に会って、
自分の言葉を理解してくれる人がいたらば、
いつもより余分に感謝をして、
より頭を下げて、
ニコニコするぐらいの気持ちがないと、
海外に行っちゃいけないのかな、
っていうふうに思ったのー。
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ノリスケ |
それね、反省する点がある、自分に。
なぜだか、同胞嫌いになるんだもの。
せっかく海外に行くのにね、
日本人とばったり、って、イヤなの。
わがままよね、われながら。
でも向こうもそうらしくて、
お互いにいないことにしたりする(笑)。
前に行ったリゾートでね、
日本人は僕達と、もう1組だけだったの。
なんだか、打ち解けられなくて。
ほかのみんなはね、ヤァ、とか言ってるわけ。
どっから来た? イタリア?
僕はイギリス、とかやってるんだけど。
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ジョージ |
それは、僕だって、たまにあるよ。
海外に行った、素敵なお店とか、
素敵なホテル、素敵な場所、
っていうふうに言う基準のひとつが、
日本人がいなかった!
っていうのを使うことあるもん。
自分が日本人なのに。
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ノリスケ |
そう、自分の中にそれ、あるのよ。
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ジョージ |
あるね。それでね、それ、
いけないことなんだけど、だけどね、
その、日本人がいてしまっている
空間っていうのがあるんだよ。
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つねさん |
いる、じゃなくて、いてしまう?
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ジョージ |
いてしまっている。
今回もハワイで、けっこういいバーがあって、
そこにいたの。そうすると、
基本的に白人が多く集まるバーなんだけど、
何組かの日本人のグループがいたのね。
何組かは、とても、アメリカのホテルの
バーで飲むということを知っている人たち
だったんだけど、
そうじゃないグループもいて。
あのね、日本人が3人以上集まると、
バカ笑いをするの。ゲラゲラ笑うの。
ゲラゲラっていうかね、ガハガハ笑うんだよ。
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つねさん |
胸が痛い‥‥はい。
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ノリスケ |
そうねえ、つねさんも、お酒が入ると、
大声になりますものねえ。
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ジョージ |
世界的に、人の前で笑うとか、
人の前で話すことのスタンダードが
あるはずなんだよね。
他の人の迷惑にならないという。
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ノリスケ |
教養。
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ジョージ |
あの、クスクスでもないんだろうけど、
抑制のきいた忍び笑いみたいな。
その中で、気になるんだよ。
邪魔なの、笑い声は。
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つねさん |
その人たち、緊張感がなくなって
騒ぐっていう感じ?
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ジョージ |
うん、緊張感とかそういう問題じゃないな。
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つねさん |
関係ないの?
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ノリスケ |
そもそもね、いいリゾートのお客様、
ゲラゲラ笑ってないよ。
ランチでもディナーでも朝ご飯でも、
笑ってない。静かにしてる。
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ジョージ |
静かだよ。それでね、笑うにしてもね、
さざ波のような笑いなんだよ。
ザワザワザワーとして、ふふ〜〜〜って、
さざ波のようなの。
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ノリスケ |
でもね、アメリカ人の団体さんがいたの、
リゾートに、4人で。
ものすごーく太ったおばさんと、
ものすごーく太ったおじさん×2。
ゲラゲラ笑ってた(笑)。
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ジョージ |
そうすると、さすがに白人でも
場違いな印象になるでしょ?
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ノリスケ |
うん(笑)。
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ジョージ |
日本人の笑い方はね、
男が笑ってると、スケベな笑い方に
聞こえるわけ。
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ノリスケ |
「ふえっへっへっへ」。
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ジョージ |
人を揶揄する笑いとか、
卑猥なことに対する反応っていうのは、
世界共通なんだよね。
で、そういう笑い方をするの。
でね、女の子何人かが集まって
笑ってるときは、ヒステリーに見えるんだよ。
かんしゃく持ちが笑ってるみたいに見えるの。
で、そういう人たちが、ひとりもいなかった
空間っていうのがこの前あって。
そこには日本人はいたんだよ?
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つねさん |
にもかかわらず。
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ジョージ |
日本人はいたんだけど、その‥‥。
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つねさん |
ちゃんとわきまえてて?
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ジョージ |
うん、楽しくお酒を、ゆったりした気持ちで、
しかも、海辺のすぐそばで、
ピアノの弾き語りを聞きながら
楽しんでいるという空間の中に
溶け込んでいる日本人がいたんで、
すーごい嬉しくて楽しかったの。
ところが、しばらくしてると、
たぶんね、けっこうな会社の役員さんと、
その部下とその取引先みたいな人たちだと
思うんだ、おじさん5人ぐらいやってきて、
これね、お店入って来るなり、
ガハガハ、ゲラゲラ、ゴホゴホし始めて。
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つねさん |
壊しちゃったの?
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ジョージ |
そう。もう帰ったもん。
んで、みんなが見るんだよ、そっちのほうを。
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つねさん |
でも、本人たちはわからず。
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ジョージ |
わかんない。
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ノリスケ |
はぁー。
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ジョージ |
だから、これもいちばん最初の
女の子の話といっしょで、
やっぱり、他人が自分たちを
どういうふうに見てるのかって。
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ノリスケ |
客観的な目がないってことだね。
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ジョージ |
そう。んで、その、感覚的に研ぎ澄まされて、
そういう場に慣れていないと、
誰かが見たそういう目線とか
態度とかっていうのを、
自分たちは黄色人種で日本人だから、
あの白人のやつら、バカにしやがって、
とかって思って、
もっともっと自分たちは立派で、
金を持ってるんだっていうことを
アピールしたくなったりとかして、
下手するとドンぺリとか抜いたり
ヘネシーとか飲んだりとかしちゃって、
なんか成金が来て、金だけ持ってる猿が
お酒飲んでる、とかって言われるんだよね。
で、そうじゃなくて彼らは、
人種とかそういうことを度外視しても、
この場にいてほしくない人たちが、
いてほしくない態度と
いてほしくない空気を運んできたから、
出てってほしいというふうな顔を
しただけだと思うんだよね。
で、そういうのがなんか、
悲しいなーとかって思ったりもしたの。
です。それがふたつめ。
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つねさん |
うん。
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ノリスケ |
はぁ‥‥。
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ジョージ |
で、3つ目はね‥‥。
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ノリスケ |
いっぱいあるのね(笑)。
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ジョージ |
そう。
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つねさん |
言いたかったことがいっぱいあったのね。
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ジョージ |
あんまりね、買いたいものも
なくなった世の中?
ま、いっぱい買ったからって
いうのもあるんだけど。
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つねさん |
はいはい。
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ノリスケ |
はははははは。
世の中のせいにしないでね(笑)。
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つねさん |
ほんとに。
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ジョージ |
その、でもほら、なんか、
欲しいっていうか‥‥。
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ノリスケ |
糸井さんがおっしゃるように、
欲しいものが欲しいのよ、だから。
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ジョージ |
そう。でね、3つ目は、お買い物。 |