ジョージ |
ハワイの高級ブランド店の
素敵なとこっていうのは、
ドアが開けっ放しになってるんだよ。
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つねさん |
ほい。
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ジョージ |
アラモアナショッピングセンターでも
そうだし、ワイキキでもそうだし。
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つねさん |
ほいほい。
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ノリスケ |
ニューヨークと違うの、そこですね。
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ジョージ |
そう、ニューヨークとかね、
パリとかに行くでしょう?
パリのルイ・ヴィトンに行くと、
ドアを開けないと入れないんだけど。
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ノリスケ |
開けてもらわないとね。
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ジョージ |
そう。
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つねさん |
黒服さん立ってるよね。
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ジョージ |
そう。でもハワイはね、開いてるの!
開きっぱなしなの!
だから焼き肉の臭いも
どんどん入って来ちゃうんだけど、
開けっ放しなのよ。
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つねさん |
あ、言われてみればそうだな。
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ジョージ |
そう、開けっ放しっていうことは、
誰もがつい入っちゃうっていうことじゃない?
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つねさん |
うん、ふらふらと。
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ジョージ |
でね、アラモアナショッピングセンターの
ルイ・ヴィトン、品物がないのよ、
ぜーんぜんないの、ないんだけど、
日本人いっぱいで。
で、一緒に行ってた方というか、
お客さまの中でね、
なかなか気っ風のよろしい
女性経営者の方がいらっしゃって。
自分の会社の女性従業員、
30何名いるらしくって、
彼女たちみんなに、おみやげを買う、
っておっしゃるの。
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つねさん |
ヴィトンで?
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ジョージ |
ルイ・ヴィトンで。
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ノリスケ |
すごい‥‥。
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つねさん |
すっごーい。
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ジョージ |
んで、その、おみやげだから、
同じくらいの人には、
違うものじゃいけないわけよ。
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ノリスケ |
争いの種になるわよね。
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ジョージ |
そう。で、勤続何年の人にはこれ、
って、だいたい5つぐらいの階層にわけて。
1階層1種類で6コぐらい
買わなきゃいけないわけよね。
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つねさん |
すごい。
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ジョージ |
でね、その、ん、ハワイの
ルイ・ヴィトン行くときには、
『ほがらか』買って! 単行本、
っていうような感じよ。
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ノリスケ |
どうやったらまっとうに
相手にされます、って書いてあるからね。
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ジョージ |
そう。
ところが、その女性経営者。
お店に入ってったら、
いきなり、カウンターの中まで入ってって。
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つねさん |
ズカズカ。
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ジョージ |
棚に飾ってある、小っちゃいポシェットを
ガサッとわしづかみにして、
従業員の手首をつかんでよ?
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つねさん |
「あんた、ちょっと、これ!」
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ジョージ |
「これ! シックス! シックス!
シックス!」って言ってるんだよ?
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つねさん |
はははははは!
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ジョージ |
まあ、6コちょうだいっていうのは、
伝わらなくはないと思うんだけど。
でね、彼女、すっごい怒ってるの。
鬼のような形相で怒ってるんだよ。
表から見たら、これ、
とんでもない状況になってるぞ、と思って。
で、やっぱりいちおう僕のお客さまだから、
どうなさいましたか、って聞いたの。
楽しい気持ちで帰っていただかないと
いけないと思うから。
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つねさん |
なんで怒ってたの?
なんか、クレームつけてたの?
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ジョージ |
「売らないのよ、この子たち、私に!」
って言うの。
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ノリスケ |
売らなくてよろしい。
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ジョージ |
そう、ほんとに、売らないんだよね。
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つねさん |
怖いね、なんかね(笑)。
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ジョージ |
店員に、どうしたんですか?
って訊いたら、同じ種類のものは、
数に限りがあるんで、
ひとりのお客さまに2コまでっていうふうに、
私たち決めさしていただいてるんですよ、
って言うわけです。
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ノリスケ |
いまどきは、転売目的っていうのも
あるからね。
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ジョージ |
そしたらば
「まー、ほんとに貧乏臭いわ、
いくつあるのよ? いくつあるの?
これは何コあるのっ!!」
って、言い始めてね。
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ノリスケ |
かわいそうなジョージさん。
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ジョージ |
あー、やっかいなことになったぞーと思って。
あの、今日はたぶん埒があかないと
思いますから、明日出直してきましょうよ。
って言って。僕、店員に、
「何コあるの?」ってこっそり訊いたら、
荷物がついたばっかりだから
今日1日では売り切れることは絶対にない、
って言うんでね。
要は、それぞれ6コ買いたいっていうことは、
2コずつ売ってくれるわけだから、
3人連れて行けばいいわけよ。
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ノリスケ |
そうだね。
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ジョージ |
で、社員2人用立ててさ。
で、買った。買ったんだけどね、
買ったら買ったでもって、
全部を違うパッケージに入れてもらわないと
困るって言い出して。
リボンをかけてもらわないと困るとか。
んで、ま、そういうことは
言われればするよね。
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ノリスケ |
しますよね。
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ジョージ |
するんだけど、店員としたらば、
お客さんから言われてするっていうのは
恥ずかしいわけじゃない?
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ノリスケ |
気がつかなきゃいけないわけだからね。
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ジョージ |
おっとりと、すいませんね、
こんなにいっぱい買っちゃって、
っていうふうな立場をとれば、
向こう側から、いやいや、わかります、
プレゼントなんでしょ、って言うのよ。
プレゼントなんでしたら、
ぜんぶ違ったお箱にお入れしましょうか?
っていうふうに言ってくれるに
決まってるのに、
クレジットカード出して、
「箱に詰めて頂戴!」って。
それは。金色のクレジットカードって
いうのはわかるんだけど、
プラチナではなかったのよ?
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つねさん・ノリスケ |
わははは!
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ノリスケ |
それさ、日本語なわけね(笑)。
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ジョージ |
日本語。で、日本語言ったあとに、
僕のほうを見るのよ?
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ノリスケ |
訳せと。
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ジョージ |
ジロッ、訳せ、っていうような顔で。
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つねさん |
ひぇー(笑)。
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ジョージ |
で、プレゼントらしいんで、
あの、おわかりだと思うんですけど、
箱に詰めていただきたい、って、
おっしゃってます、っていうと、
もうすっかり彼女たちは、
僕がかわいそうな人になってて、
そのお金を払う人のことは、
悪者になってるんです。
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ノリスケ |
いちばん偉いはずなのにね。
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ジョージ |
損でしょ?
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ノリスケ |
損だねぇ。
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ジョージ |
お金まで使って、悪い人になっちゃって。
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つねさん |
だって、30コでしょう? うわぁ。
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ジョージ |
それで、今すぐやれって言うの。
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ノリスケ |
えぇー!? いいじゃない、あとでも。
あ、帰る日だったの?
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ジョージ |
いつ帰るかっていうと、
2日後に帰るんだよ?
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つねさん |
じゃあ、明日でもいいじゃん。
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ジョージ |
そう、だから、
今すぐはたぶん無理だと思いますから、
明日来ましょうよ、って言ったら、
いや、だってもう荷造りしなきゃ
いけないんだから、今すぐやれ!
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ノリスケ |
はぁ‥‥。
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つねさん |
はぁ、怖い(笑)。
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ジョージ |
で、しかも、疑うのよ。
なんかひとつ欠けてても嫌だから、
私見てるっ! っていうから、
あ、じゃあもうこっから先は、
たぶん通訳必要ないと思いますので、
私帰らしていただきます、って、
みんな撤収したんだよ。
んで、そのあとぶらぶらブラブラして。
化粧品買ったりお薬買ったりとかしつつ、
小1時間ぐらいして戻ってきたら‥‥。
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ノリスケ |
まだ睨んでた?
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ジョージ |
まだいた。
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ノリスケ |
見張ってた?(笑)
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ジョージ |
仁王立ちになって見てた!
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つねさん |
いーっ。こわ。
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ジョージ |
なんでなんだろう? って。
いいお客さんになろうと思うと、
お願いします、っていう態度を
しなきゃいけないのに。
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つねさん |
だから日本人ってバカにされるの?
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ノリスケ |
んー、それってどうなんだろう?
そういうお客を繰り返し見てきた店員は
「日本人だから」って
バカにするようになっちゃうの?
それとも、向こうは、
お客さんはひとりひとり別だから、
まあ、一瞬そういう目で見るかも
しれないけど、
ちゃんと接すればちゃんと返して
くれるんじゃないの?
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つねさん |
いやー、どうだろう? |