ジョージ |
でもね、そのときね、
やっぱり最近ちょっと旅行するのにね、
旅行準備、ラクし過ぎてたかな?
と思ったもん。
日本の旅行社っていうのは、
いろいろ、嫌なこととか、
損なこととかしてるんだろうなと思う。
でね、もっとね、もっとね、
一生懸命頑張って、
ニューヨークに住むの。
ニューヨークに住んでね、
秘書を置く、あそこにひとり。
そしたら、ぜったいこんな
間違い起さないから。 |
ノリスケ |
いいな、それ。
その仕事いいよね(笑)。 |
ジョージ |
うん、いいでしょ? |
つねさん |
じゃ、代り番こに仕事しよっか(笑)。 |
ノリスケ |
でも、チケット取れなかったら、
ジョージさんに殺されちゃうよ(笑)。 |
つねさん |
最初っから取れなかった、
って言えばいいんだよ。 |
ジョージ |
失礼しちゃう! |
つねさん |
(笑) |
ジョージ |
ミュージカルのチケットを
取るとかっていうのは、
もう今は自分でもできちゃう時代に、
旅行代理店の業務って、
いちばん難しいのは、やっぱり‥‥。 |
つねさん |
ケア? |
ジョージ |
うん、向こうに行ってからのケアで、
行くべきレストランの予約は
しっかり取れてるかとか、
劇場のチケットだって、
3ヶ月前に発売なわけだから、
3ヶ月前に買えば、
どこのシートを幾らで
買えるっていうのは、
すぐわかるんだよね。
定価でも買えるわけじゃない?
で、そういうことをしてあげる
サービスとか会社とかを作れば‥‥。 |
ノリスケ |
それこそお金持ち向けのそういう人、
いるみたいだけどね。 |
ジョージ |
うん、いるみたいなんだけど。 |
ノリスケ |
でも、すっごい高いらしいわよ。
契約金が1千万で、とかね。 |
ジョージ |
そう。 |
つねさん |
そうなんだ。 |
ノリスケ |
うん、あるんだよ。 |
つねさん |
へぇ。 |
ジョージ |
あのね、予約が取れないっていう
レストランも、
絶対予約を取ってあげる、
っていうのがあるんだよ。 |
ノリスケ |
ただし、入会条件みたいなのが
あって、芸能人だったり‥‥ |
ジョージ |
いわゆる、あの、
ほんとの意味でのセレブリティ向け。 |
ノリスケ |
は、あるんだよ。 |
ジョージ |
でね、だけどそういう
お金持ちの人たちっていうのは、
自分たちでどうでもできると思うんだよね。
でも、ふつうの人たちに
そういうサービスができるんだったら、
僕ボランティアでもいいと思うもん。 |
つねさん |
でも、ちゃんとしたら
ビジネスチャンスだよね。 |
ノリスケ |
でも、売ったぶんしか
儲からないよ。割が悪いよ。 |
つねさん |
それはそうだ。 |
ジョージ |
うん、儲けようと思ったら
誰もしないんだと思う。
だから、旅行代理店はそこまで
一生懸命しようとしないんだと思う。
でもそれこそ、一生の思い出‥‥
ニューヨークに行きたいな、って思う、
ふつうの人たちのために、
一生の思い出になるっていうことは
そういうことのはずだから。
それこそ、べつにね、
何百ドルも払って、
オペラを観ましょうっていうのが
一生の思い出じゃなくって、
たった、たった18ドルの
エントランスフィーを払って、
プラネタリウムに行くことのほうが、
一生の思い出だったりするわけでしょう? |
ノリスケ |
そうよねえ。
ところで、その日はどうしたわけ?
その後。 |
ジョージ |
劇場追い出されて、
どうしようかなぁ、と思って。
ちょうどその日が金曜日。 |
つねさん |
レイバーズディの
映画の初日だったの。
『キャット・イン・ザ・ハット』。 |
ノリスケ |
『キャット・イン・ザ・ハット』?
知らないー。 |
ジョージ |
コメディ。 |
つねさん |
邦題が『ハッとしてキャット』。
マイク・マイヤーズっていう、
『オースティン・パワーズ』の
主演の子が、猫の格好して。 |
ジョージ |
出てて。で、例のあの、
『アイ・アム・サム』の女の子の
ダコタちゃんが出てるという。
なかなかに面白そうな。 |
つねさん |
『グリンチ』の監督で。 |
ジョージ |
それでも観ようか、っていうんで、
昼間行った劇場に戻ったら、
ものすごい行列ができてたの。 |
ノリスケ |
あらま。 |
ジョージ |
あ、これも観れないや、と思って、
タイムズ・スクエアのあたりを
フラフラしてね。で、ほら、
ウチのお母様が最近タンゴを
おやりになってらっしゃるんで、
タンゴのCDでも買いましょうか、
っていうんで、
あのあたりをブラブラしてたの。 |
つねさん |
それで、ちょうど、前日行った
『タブー』のCD欲しいなと思って、
どうやらインポートであるらしいって。
ところが、
ヴァージンメガストア行ってもなくって。 |
ジョージ |
あのね、その時間帯をね、
何の目的もなくブラブラ歩いてるとね、
日本人の観光客にいっぱい会うの。 |
つねさん |
そうね。 |
ジョージ |
でね、そんときもうひとつ思ったのね。
目的を持って歩いてるときには
日本人に会わないのに、
目的をなくしたとたんに
日本人にいっぱい会うの。 |
ノリスケ |
はははは。 |
ジョージ |
だから、どれほど多くの日本人が、
海外にわざわざ行ったのに、
目的もなく街を
さまよってるんだろう、って。 |
ノリスケ |
お互いに「日本人だ」
って思いながら(笑)。 |
ジョージ |
目的をなくして
さまようときの人間って、
誘蛾灯に群がる蛾のように
明るいところに集まってくるのよ。 |
ノリスケ |
だからタイムズ・スクエアに(笑)。 |
ジョージ |
晩ご飯どこで食べようか?
とか言いながら歩いてるの。
おじさんと、若い女の子3人の
日本人のグループがいたのね。
んで、上司風の男の人が、
何食べたいんだ? とかっていうと、
んー、そろそろなんか
スパゲティでも食べたいです、って。
お、あそこにイタリア料理屋があるぞ、
って指さしたのが、
オリーブ・ガーデンっていうね、
んー、日本でいうと、ファミレス?
ま、ファミレスの料理が、
けして悪いとは言わないんですけど、
ここは、まずいです!
フォークでグルグル巻き付けようとすると、
巻き付けてるはなから、
みんなマカロニに
なっちゃうっていうような、
スパゲティのお店です。ね。 |
ノリスケ |
あ〜。もそもその茹でおきの。 |
ジョージ |
そこを指さして向って行くの。
もうこれはね、まるでね、
八甲田山死の彷徨のような景色ですっ。 |
つねさん |
あはははははは!! |
ジョージ |
いけない、そっちに行っては
いけないんだぁーー!!
って思うんだけど、
ま、言う立場に、
私はあるわけではないので。 |
ノリスケ |
そんなふうにうろうろしてたのね? |
ジョージ |
そしたらね、すっごい
へんてこりんなCD屋さんが
あったんだよ。 |
ノリスケ |
へぇー。 |
つねさん |
僕が入るって言ったの。 |
ジョージ |
で、僕ね、なんかね、
嫌だなーって思って。 |
ノリスケ |
なんか変な雰囲気だったの? |
ジョージ |
そう。なんか、オタクな感じ?
あの、秋葉原か‥‥
中野のブロードウェーみたいな感じ。 |
ノリスケ |
「タコシェ」みたいの? |
つねさん |
もっとデカいんだよね、ちゃんと。 |
ジョージ |
なんか、ホコリっぽーいんだよ、雰囲気が。 |
ノリスケ |
ふーん。 |
ジョージ |
で、バーン! とドア開けたら、
ほんっとにホコリっぽいんだよ。
なのにこの人、ズンズンズンズン
奥に入っていくの。
で、僕ね、第一声がね、
「お父さん、ダメ、これ。
ダメかもしれない」って(笑)。 |
ノリスケ |
この人は、オタクの血が騒いで、
何か見つけられるかもしれないって
思ったんだよ、勇敢にも。
探してたCDはあったの? |
つねさん |
なかったんだよね。 |
ジョージ |
なかったんだよ。
『タブー』のCDはなかったの。 |
つねさん |
インポート入ってないってことで。
ところが‥‥。 |
ジョージ |
で、なんか奥の方へ入っていったら、
楽譜がいっぱいあるんだよ。 |
ノリスケ |
へぇー。 |
ジョージ |
で、しかも、見てると、
ラテンっていうコーナーがあったんだよ。
あら! これじゃないの、と思って。
んで、見てたら、なんか、
タンゴのね、楽譜がいっぱいあんの。 |
ノリスケ |
へぇー。 |
ジョージ |
うちのお母様から、
日本では、あんた、
タンゴの楽譜って、
絶対手に入んないのよ、って。 |
ノリスケ |
聞いてたから。 |
ジョージ |
先輩に楽譜をコピーさせてもらうのに、
お金を払わなきゃいけないぐらいなの、
って聞いてたから、
これよ、これ、と思って
ダッダッダッダッて買って。 |
つねさん |
何冊か買って。 |
ジョージ |
で、買いました。 |
ノリスケ |
どうだった? |
ジョージ |
お褒めの言葉を頂戴しました!
ここ数年、稀に見るほど、
お褒めの言葉を頂戴しました。 |
ノリスケ |
おぉ〜!(笑) |
ジョージ |
誰にも貸してやるもんか、
こんなすごい楽譜!
とかっていうぐらいに、
お気に召していただいたんですね。 |
ノリスケ |
はぁー。 |
ジョージ |
だから、目的のある旅も
素敵だけども、
たまに寄り道する旅も素敵かな? |
ノリスケ |
それ、ご褒美だね。
ちょっと嫌なことが続いたからね。 |
ジョージ |
そうそうそう。
だから、あれはほんとに、
完璧じゃなかったから、
やってきた幸福だよ。 |
ノリスケ |
神様が、かわいそうに、
チュチュチュチュ〜ンって
つねさんをおびき寄せて、
ホコリっぽい方に(笑)。 |
つねさん |
そうそうそうそう(笑)。
なのに、僕の御褒美はなくって、
こっちにあったという。
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