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新宿二丁目のほがらかな人々。
おねぇ言葉や裏声とかで語る別角度批評。

ファブ・ファイブに学べ。その9
完ぺきは、つまんないの。

ノリスケ 日本の、美容業界とかって、
じつはゲイじゃない人も多いのよね。
ジョージ オカマ言葉を器用に操る、
物腰の柔らかいノンケの人っていうのが
主流だよね。
ノリスケ とくに美容院がそうよね。
スタイリストは、
男っぽい普通の男よね、多いのは。
ジョージ あのね、日本のスタイリスト、
とくにあの、カリスマスタイリストって、
自分が着たいものを、
スタイリングするよね。
ノリスケ そう。ぜんぜん相手のこと見てない。
前にね、深夜番組で
イメチェン選手権みたいなのがあって。
つねさん あー、あったあった。
ノリスケ まあ、カリスマ1歩手前みたいな
男の美容師やスタイリストが、
対抗でやるんだけど、
女の子がモデルになると、
すっごくきれいにできる。
ところが、男が出てくるとね、
まるっでダメ。
コスプレさせて終わりなの。
ジョージ 男が男の服を選んでも、
その人に着せてみたい
洋服を選ぶんじゃなくて、
自分が着たかった洋服を
選んでるような感じがするんだよね。
女のスタイリストっていうのは、
その人に合ったものを
着せようとするじゃない?
ただ、女性有名スタイリストの
格好っていうのは、
今の女性のファッションの、
ただ中にはないんだよ。
ファッション業界の人の洋服であって。
つねさん 一般じゃないんだ。
ジョージ うん。だけど、
男性スタイリストが着ているものが
売れる時代なの。
不思議なんだよね。
だから、ある意味、
日本の男の子たちの洋服って、
つまんないのかもしれないよ?
ノリスケ つまんないよねー。
ジョージ うん。そういう意味ではやっぱり、
個人的に好きではないけれど、
香港とかシンガポールだとかの
男の子の格好って、
カッコいいなと思うもん。
ノリスケ あー、確かに個人的には好きではないが。
ジョージ だって、主張がある。
あと、アメリカに行けば、
ライフスタイルだとか
訴えかけたいものを
表現する洋服がいっぱい
あったりとかするよね。
楽しいなと思う。
今日、ファブ・ファイブに学んだのはね、
セクシーになるためのポイントは、
レイヤードだってことね。上手な重ね着。
ノリスケ あと、とても仕立てのいいシャツは、
わざとロールアップするのよね。
ジョージ で、パンツの外へ出す。
インテリアもおんなじこと言ってたよね。
同じ色だとか同じ素材とか同じブランド、
コーディネートしないこと、って。
ノリスケ そうそう、
ミクスチャーがいいのよ、って。
ジョージ いろんなものをゴチャゴチャゴチャゴチャ、
混ぜ合わせることによって、
あなたらしさが出るっていうの。
そういうのがほんとの意味での
成熟なんじゃないかな、って思うけどね。
そうやって考えると、たとえば、
コム デ ギャルソンだとか
ヨージ・ヤマモトだとかの洋服の、
わざとしつけ糸が付いてるだとか、
わざと裾がほつれている
だとかっていうのは、
完璧であることは、
野暮につながるっていうところなのかなぁ。
ノリスケ うん、たぶんね。
ジョージ 千利休が、
ある人の茶事で呼ばれていったとき、
庭がきれーに清められているのに、
1ヶ所だけ、うずたかく葉っぱが
盛り上がってるんだって。
ノリスケ ほぉ。
ジョージ 一緒に行っていたお弟子さんが言うには、
「あそこはたぶん
 落とし穴があるんですよ」。
そしたらね、千利休がね、
「落とし穴があるなら落ちてみよう」って、
ドーンと落ちたんだって。
ノリスケ あ、ほんとに落とし穴だったんだ。
ジョージ ほんとに落とし穴だったの。
お茶事に呼ばれるっていうことは、
もう清めてきれーな
服を着て行ってるでしょ?
だから、わざと汚したの。
ノリスケ ほぉー。
ジョージ そしたらば、御主人は、
「私共のおもてなしの心が
 ほんとにわかっていただいた」
と言うんだって。
どうぞこちらへ、ってついて行ったら、
お風呂が沸いてたんだって。
ノリスケ ほぉ〜!
よくできた話ですねぇ。
つねさん できすぎ君。
ジョージ おんなじような話でね、
フランク・シナトラは、
完璧に身繕いをした後に、
必ずどっかひとつ外すんだって。
ノリスケ ほぉ〜。
ジョージ たとえば、ワイシャツの襟を、
片っ方だけわざと外へ出したりとか、
ネクタイをよじったりとか、
袖のボタンをひとつ、
わざとちぎって
みるだとかってするんだって。
ノリスケ へぇー。
ジョージ 完璧でおしゃれなのは
誰にでもできるけれども、
完璧が崩れて、
しかもおしゃれであるということは、
最高にセクシーだって
いうふうに言うんだよ。
で、そういうのって、
やっぱどっかにあるんだと思うんだよ。
ノリスケ 今日もジョージさんは、お家なんですけど、
長年着たボロボロの
トレーナーを着てます(笑)。
袖がボロボロで、
プリントはガビガビになってる
トレーナーを着てますね(笑)。
ジョージ ボロボロでハゲハゲですっ。
でも、早くこれ、
袖が取れればいいなと思って。
そしたらもっと楽になる。
わざとボロボロになっているのは
好きじゃないけど、
ボロボロになったものって、すっごい好き。
ノリスケ こないだ見かけた
コム デ ギャルソンのスーツ、
釜で煮て、プレスして、干して、
乾燥さしたっていう、
クッチャクチャになってるやつよん(笑)。
もぉのすごくカッコ良かった。
ジョージ ウチのおやじんちにあるペルシャ絨毯は、
買って5年間、
絨毯屋に預かってもらったの。
絨毯屋さんでは、現地でラクダさんに
その上をずっと歩かせて‥‥。
ノリスケ ウンチとか、バサバサさせてんだよね。
ジョージ そうそうそうそう。
それで1回きれいにしたやつだよ。
つねさん ふーん。
ノリスケ そうそう。踏みしめて日に晒して
水に濡らし乾かし、みたいな。
それが最上級なんだってね。
ジョージ で、買ったときの値段と
おんなじぐらいの値段が、
5年間の預かり賃でかかるんだよ。
ノリスケ その例のスーツも、オリジナルの状態より
高いんだよ。ボロボロのほうが高いの。
ジョージ そういうのあると思う。
ぼくのスーツもね、
今のかたちにするまでに、
4着ぐらい作ってるんだよ。
ノリスケ パターンを?
ジョージ お店の人から言われたんだけど、
作ったらまずそれを着て、
一晩寝てください、って。
ノリスケ ほぉ〜。
ジョージ んで、朝起きたときに、
目覚めが良かったらその形を、
ボディにしましょう、って。
で、今のがそう。
つねさん そうなんだ。
ノリスケ へぇーっ。ゼニア?
ジョージ ゼニア。だから、
パジャマぐらい
着心地が良いことが大事だって。
だって、寝る時間より長い時間、
ほんとは着てるわけだから。
だから、深めていくと、
どんどん深いんだけど、
その、フェチとかマニアとかに
ならない深まり方であれば
いいんだろうけども、
まあ、ここが難しいところよ。
んで、ま、今日の本題へ戻していくとさ、
やっぱりあの、ファブ・ファイブの
能天気さと勢い?
ノリスケ 勢いあったね。決断速いしね。
ジョージ 誰も深くは考えてないんだけど、速い。
でね、捨てるの!
いちばん最初に、ワラワラ物捨てるよね。
つねさん そうそう。あ! これ、ダメ、って。
ノリスケ 洋服、インテリア、ぜんぶ。
ジョージ ‥‥つねさんもやってもらったら?
ノリスケ そうよ、あんたのオタク部屋。
つねさん えぇ?‥‥てへへ。
ノリスケ でも、ストレートガイじゃないから、
ダメかもよ(笑)。
ジョージ ファブ・ファイブが必要なオカマって、
どうなの? それって。
つねさん ワシ?
ジョージ 存在価値は、どう?
つねさん ノンケ?(笑)
ジョージ ノンケに近いよなぁ‥‥。

ゲイにもいろいろ、と。
このテーマは今回で終了です。
次回をお楽しみに〜〜!!

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2004-02-20-FRI
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