ジョージ |
つねさん的にクイーンって、
ぜんぜんなかった? |
つねさん |
僕はね、ちゃんと聴いたのが
フレディがソロで出したやつ。 |
ノリスケ |
あら、ピンポイントでいくね。 |
つねさん |
うん。で、それこそ、あの、今‥‥。 |
ジョージ |
ああ、♪アイ・ワズ・ボ〜ン・
トゥ・ラブ・ユ〜♪ |
つねさん |
そうそうそう、あれ。あれ、
しばらくカラオケで定番でしたっ。 |
ジョージ |
僕はもうファーストアルバムから
ずっとだもん。 |
ノリスケ |
僕はレコードを
買うことはなかったんだけど、
それこそ『ベストヒットUSA』で、
初めて、音楽に映像が
ついてるっていうものを観たのよ。
びっくりしちゃって! |
ジョージ |
あ〜。 |
つねさん |
そうだよね。僕もそこから
映像に興味が出て
ゴドレー&クレームに
いっちゃったのよ。 |
ノリスケ |
僕も、結局そっちのほうから
ニューウエーブにいったんだけど、
クイーンは、見たいような
見たくないような、
妙〜な、はずかしさがあって。
それこそ、家で見れないじゃん、
っていう。 |
つねさん |
こっぱずかしかったよね、あれね(笑)。 |
ノリスケ |
だって、洋楽の好きな友だちは、
笑う対象として観てたりするんだもの。 |
つねさん |
そうなの? |
ノリスケ |
観たかよ、あれ? っていう。
で、僕は、凝視したい欲望と、
嫌いかも、好きかもっていうわからなさ、
一緒に笑いたい気持ちが
ごちゃごちゃになるんで、
結局正視できなくて、
友達にもコメントができなかったのよ。
そんな思春期の僕でした。 |
つねさん |
ああ。 |
ジョージ |
『ベストヒットUSA』というと、
週末の深夜番組でしょ?
で、家族みんなで、
といってもウチのお父様は、
彼女のとこなんで、
週末の家族っていうのは、
ワタクシと、ゴージャスマミーと、
妹2人。
で、観るのよ、なんかしんないけど、
『ベストヒットUSA』を。
あの、小林克也の濃ゆ〜い、
オープニングのナレーションが始まると、
みんながそれぞれの部屋から
バーッと飛び出してきて、
テレビを観るの。 |
ノリスケ |
お母様、モダンね。 |
つねさん |
しゅごいね。 |
ジョージ |
だって、ウチのお母さん、
エルビス・プレスリーの追っかけやってて
ラスベガスまで行った人だから。 |
つねさん |
トム・ジョーンズも追っかけてたよね。 |
ジョージ |
うん。トム・ジョーンズの
汗つきハンカチっていうの
持ってる人だもん。 |
ノリスケ |
あ、それは、ベストヒットUSAを見る
素養あるね。 |
ジョージ |
でしょう? |
ノリスケ |
フレディ・マーキュリー
好きだったんじゃない? それじゃあ。 |
ジョージ |
それがね、
ウィー・アー・ザ・チャンピオン。 |
つねさん |
はい。 |
ジョージ |
あれがね、初登場1位かなんかになって。 |
ノリスケ |
♪ウィ〜・ア〜・ザ・チャンピオン。 |
ジョージ |
それまでもね、僕は、
クイーンを聴いてたわけよ、部屋で。
あれって、プログレッシブ・ロックと
クラシックの中間みたいな感じで、
音がゴージャスじゃん。
で、ゴージャスが大好きな、
ワタクシんとこのファミリー的には、
あの音はOKだったのよ。 |
ノリスケ |
うんうん。 |
ジョージ |
で、ベル・カントっぽいでしょ? 唱法が。
ウチのお母様も宝塚行きたかった人だから、
‥‥身長が足りなくって
行けなかったんだけど、
ああいうゴージャスな世界大好きでね。
それで、それで、それでね、
その、どういう人が、
このゴージャスな音を
作ってるんだろう? って。 |
ノリスケ |
気になってたんだ、音だけで聴いてて。
ジョージの部屋から聞こえてくる、
あの音は? |
ジョージ |
そうそうそうそう。んで、10位から、
だんだんだんだんときて1位、
クイーン、
ウィー・アー・ザ・チャンピオン!
はっ、クイーンですって。
どんな人なのかしら?
って、みなが固唾を呑んで見守っていたらば。 |
つねさん |
いたらば!! |
ジョージ |
右半分黒、左半分白のレオタード?
ていうかユニタードっていうやつ? |
ノリスケ |
ははははははは! |
ジョージ |
あれを着たフレディ・マーキュリー様が、
胸をあらわにしながら、
汗だくになってね、
お歌いあそばしてるわけよ。
いちばん最初にパーンと出てきたときに、
顔が大写しになったのね。
そしたらウチのお母様が、(呆然とした声で)
「‥‥あぁ、すごい立派なアゴな人‥‥」
って言ったの(笑)。 |
つねさん |
ケツアゴなの。 |
ジョージ |
んで、パーッとカメラが引いたらば、
股間がもっこりなわけさ。 |
ノリスケ |
ははははは。ユニタードだから。 |
つねさん |
わっはっはっは。 |
ジョージ |
そしたら、しーんとしちゃって!
そしたら上の妹がね、(気だるい声で)
「いやぁ‥‥、すごい情熱的」
って言うの。
で、僕、どう答えていいかわかんなくて。 |
つねさん |
そうだよね。 |
ジョージ |
もうそのときには、僕もすっかり
目覚めているわけだから、
フレディ様って、こっち側の人なんだ、って
わかるわけよね。
テレビ見ても、立派なもっこり?
あと、あの、汗が滲みたようなレオタード?
そういうのが気になって仕方がないのね。 |
ノリスケ |
あと、髭を生やしていて。 |
ジョージ |
そう、髭。 |
ノリスケ |
で、鍛えていて。 |
ジョージ |
しかも、短髪。 |
つねさん |
で、胸毛もじょもじょで。 |
ノリスケ |
で、出っ歯なのにナルシシストなんだよね。 |
ジョージ |
そう! 出っ歯なのにナルシシスト! |
つねさん |
あれ、出っ歯だっけ? あれ。 |
ノリスケ |
そう、出っ歯っていうか、
全体がね、こう、カッと出てるんだよね。 |
ジョージ |
イヤミ(赤塚不二夫のキャラクター)系
なんだよね。 |
ノリスケ |
そうそう、シェー! な口元なんだよね。 |
ジョージ |
そう。 |
ノリスケ |
で、なんだかうっとりしてるのよ。 |
つねさん |
はぁ〜。わかる、わかる、うん。 |
ノリスケ |
だからね、余計に混乱したの。
それまで男のナルシシストっていうのは、
細くてきれいな人が。 |
つねさん |
あ、デヴィッド・ボウイみたいな人が。 |
ジョージ |
あるいはのちの
デヴィッド・シルビアンみたいな人が。 |
ノリスケ |
そうそう、そういう人がうっとりしてるのを、
ナルシシストって、思っていたわけよ。
それがね、フレディ・マーキュリーが
出てきたときに、覆されたわけ。
この人、うっとりしてる!
でも変! っていう。
ジョージさんちは、それからどうなったの。
|