ノリスケ |
で、西海岸の
中国人コミュニティにいながら、
ちゃんとその、
ゲイとしての活動はできたわけ? |
ジョージ |
できた。だけど、
そこに行って生活をすると、
カリフォルニア、
特に南カリフォルニアの人たちの、
いっけんフレンドリーなんだけど、
ほんとはフレンドリーじゃないのかな?
っていうのを感じるの。 |
ノリスケ |
ほぉー。それは、
ちょっと排他的なとこがあるということ? |
ジョージ |
うん、あのね、あのね、たとえば、
誰かと知りあうとするでしょう?
紹介されるでしょ?
で、初対面の人と、
私はこうこうこうです、
っていうと、
素晴らしい〜!
巡り合えて良かった〜!
とかって、
抱きしめてくれたりとかするんだよ。
で、すごい受け入れてもらった!
って思うんだけど、よーく見てると、
みんなにおんなじことをしてるんだよね。
そうやって考えると、
彼らの、ものすごく感動的に抱きあったり、
その、言葉を駆使して、
巡り合えて良かったー、
とかって言ってるのは、
日本人が「はじめまして」っていうのと
おんなじことなんだ、って思って。
なんかね、遣る瀬無いんだよね。 |
つねさん |
過剰なナイストゥーミーチューなわけ? |
ジョージ |
そう、どこからどこまでが
「はじめまして」で、
どこからどこまでが、
「ほんとにあなたと知りあえて良かった」
って言ってるのか、
わかんなくなっちゃって。
ちょっとね、閉じこもり気味になったの。 |
ノリスケ |
はぁ‥‥。 |
ジョージ |
んで、いろんな人と、
僕、なんか、最近ダメだよぉ、
こんな感じ、ダメかもしんない、
って言ってたら、
あんた、ニューヨークに来なさい、
って言われて。 |
ノリスケ |
はぁ‥‥。話が思わぬ方向に行ってますが、
面白いです(笑)。 |
ジョージ |
で、そのとき初めて、
あ、ニューヨークって、
『クルージング』の世界じゃないんだ、
って、わかったの。
あの『アドボケート』? |
つねさん |
あの、アメリカのゲイ雑誌。 |
ジョージ |
ゲイのタブロイド紙みたいなのがあって。
ちょっと啓蒙的な、
ゲイ・リベレーションの
一歩手前みたいな情報誌があって。
で、それを見てると、
個人広告というか、
「ペンパル求めます」とか、
「パートナー求めます」とかっていう
文通蘭みたいなのがあるのよ。 |
ノリスケ |
はいはいはい。 |
ジョージ |
で、そういうのを見てると、
住所の半分以上が、NYCなんだよね。 |
ノリスケ |
ニューヨークシティー。 |
ジョージ |
あ! やっぱりニューヨークに
行かなきゃダメなんだ! って。 |
つねさん |
切り替え速いわ! |
ジョージ |
だって、せっかく、ここまで来たら‥‥。 |
ノリスケ |
ぜんぶそこがモチベーションなのね、
この人ね。 |
つねさん |
ほんとだよ。
エロ・モティべーションだ、こいつ。 |
ノリスケ |
ま、自立してるとも
いえますけども。 |
ジョージ |
で、ニューヨークの大学、
どこへ行けばいいんだろう?
って、やっぱり、
また地図を持ってきてね。
で、見たら‥‥。 |
つねさん |
こんなにニューヨークって、
狭いんだ、って? |
ジョージ |
そう、狭いんだ、って。 |
ノリスケ |
マンハッタンにすっぽりすべてが入ってて。
歩けるじゃん、地下鉄あるじゃん、
バスあるじゃん。
そりゃ、カリフォルニアとは違うわよね。 |
ジョージ |
で、やっぱり、大学もブランドよね!
って思うと、コロンビアしかないじゃん? |
ノリスケ |
そりゃあ、そうよぉ。 |
ジョージ |
で、一生懸命トランスファーしないと
いけないと思って。 |
ノリスケ |
南カリフォルニア大学で、
また転入のための勉強をする。 |
ジョージ |
勉強して、レポートもいっぱい書いて、
教授にもコネ作って。 |
ノリスケ |
すごいねぇ。 |
ジョージ |
必死よ? 必死。 |
ノリスケ |
それを、どのくらいの期間でやったの?
思い立ってから、移るまで。 |
ジョージ |
4ヶ月。 |
つねさん |
へぇーっ! |
ノリスケ |
はやっ! |
ジョージ |
なははーっ!!
だって、そんな時間の
無駄遣いしたくないもの。 |
つねさん |
ははははは! |
ノリスケ |
一刻も早くNYC! |
ジョージ |
そう、ニューヨーク行かなきゃ〜!
行かなきゃ〜!
行くわよぉ〜! みたいな。
それで、一生懸命頑張って、
転入できることになったのよ。 |
つねさん |
そうなんだ。 |
ジョージ |
転入のための勉強の合間に、
地下鉄の路線図見るわけよ。
まだ自分がどこ住むか決まってないんだよ?
で、起点は大学として、
大学のキャンパスから地下鉄で1本で、
いやぁ〜、クリストファーストリートの
すぐ近所に行けるじゃん!
と思ったら、もう必死。 |
つねさん |
おそろしい(笑)。 |
ジョージ |
あれほど勉強した時期は
なかったかもしれない。 |
ノリスケ |
人って、モティべーションが大事なんだね。 |
つねさん |
すごいね。 |
ジョージ |
そぉー。 |
ジョージ |
でね、飛行機に乗って移動よ。
西海岸って、太平洋で日本と
繋がってるようなもんじゃない? |
つねさん |
ん〜‥‥。 |
ノリスケ |
ま、環太平洋だからね。
同じ文化圏であることを研究する
学問があるくらいだからね。 |
ジョージ |
そう。でも、
カリフォルニアからNYCへは、
大陸を横断するわけでしょう?
もう日本とつながってる感じがしないわけ。
すごく遠くに行く感じがするわけよ。
もうね、帰れない、って思って、
飛行機、まだパンナム飛んでた頃、
いちばん安いので行ったから
ナイトフライトよ。
ロスアンジェルスを夜中に出て、
NYCに早朝に着くんだよね。 |
ノリスケ |
まあ、グレイハウンドで
行かないだけ、いいね(笑)。 |
ジョージ |
行けるもんですか、
そんな面倒くさい。 |
ノリスケ |
私ともあろう人が? |
つねさん |
え、グレイハウンドってなに? |
ノリスケ |
バス。 |
つねさん |
ああ。横断バス。 |
ジョージ |
(無視して)ナイトフライトで、明け方ね、
窓の外がバーッと明るくなり始めると、
マンハッタンが見えるんだよ。 |
つねさん |
あぁー、「ここが私の‥‥」(笑)。 |
ノリスケ |
感動的ね。 |
ジョージ |
ああ、ここだーっ! って。 |
ノリスケ |
これこそが真のガンダーラ。 |
つねさん |
光り輝いてる!(笑) |
ジョージ |
そう。寝れないわけでしょう?
もう、どんなとこに行くのかしらーって、
ぜんぜん寝れなくって、
機内の音楽プログラム聴いてて、
マンハッタンが見えたときに、
フォリナーってわかるかな?
その当時に流行ってた音楽がね、
ダーッとかかってくるの。 |
ノリスケ |
ま、感動的‥‥。 |
ジョージ |
で、未だにそれを聴くと‥‥。 |
ノリスケ |
あの風景を思い出すのね。 |
ジョージ |
そう、上陸っていうの? |
つねさん |
あ〜、あの、島が見えるぞー、みたいな。 |
ジョージ |
北米大陸は、
もうすでに上陸してるんだけど、
よし、来た!
ゲイの本場にやって来たーっ!!
っていうのがね、
すっごいブワーーーッて
よみがえるもの。 |
ノリスケ |
結局、今のジョージさんの
心のふるさとは、
どっちなの? |
つねさん |
両方なの?(笑) |
ジョージ |
ニューヨークかもしんない。
っていうのが、西海岸は入口だったけど、
ニューヨークで僕は人間を作ってもらったな、
と思うもん。
戻りたいと思ったのはニューヨークであって、
ロスアンジェルスやサンフランシスコじゃ
なかったから。でも、もしかして、
もしかしてほんとに一生懸命
サンフランシスコで頑張ってたら、
サンフランシスコの人に
なってたかもしれないけどね。
|
やっぱりニューヨークに行きましたか。