つねさん |
でも、知り合った直後って、
まだサンフランシスコ
行ってたよね、たまに。 |
ジョージ |
サンフランシスコ、
パルアルトのときの友だちとは、
けっこう交友があって。
っていうのが、やっぱり、
アメリカの生活に
ぜんぜん慣れてなかったから、
すごい相談をした人たちがいるんだよね。
で、その大学に、やっぱり、
ゲイのコミュニティがあって。
当時で250人ぐらいいたのかな? |
ノリスケ |
すごいね。 |
つねさん |
そんないたんだ。 |
ジョージ |
うん。それで、その、
そんときの人たちって、
いつだろう?
5年前? ‥‥僕、
サンフランシスコ行ったのって‥‥。 |
つねさん |
えっとね、そのぐらい前。
うん、僕たちが
付き合いだした直後ぐらい。 |
ジョージ |
んとね、んと、エイズで死んだ子が、
ピークだったんだよ、その5年ぐらい前が。 |
ノリスケ |
死んじゃうのが? |
ジョージ |
うん、1年で、友達が、
30人ぐらい死んだの。 |
つねさん |
あ、あ‥‥ |
ジョージ |
んで、その、そんときのコミュニティに
いた子たちっていうのは、
もしエイズで死んだら、
火葬して、灰をサンフランシスコベイに、
‥‥。 |
つねさん |
撒いて? |
ジョージ |
撒いて下さい、っていうのを、
みんなね、遺書として残してて。
んで、その時は、
20何人分、みんな燃やして。
サンフランシスコベイでフェリーに乗って、
撒くっていうセレモニーをやったの。
それに行ったの。
2泊4日で行ったのね。 |
ノリスケ |
そのためだけに行ったのね。 |
ジョージ |
うん。で、みんなタキシード着て、
こうやって(船から灰を)撒いて。
んで、なんか‥‥ウン。 |
ノリスケ |
切ない話だね。 |
ジョージ |
そう、ある時代が終わったんだね、
とかって言いながら帰ったの。
だから、やっぱりね、
コミュニティとして濃密だったのは
サンフランシスコだった。 |
ノリスケ |
なるほど。その時代背景もあったの? |
ジョージ |
小っちゃい街で。
んと、やっぱりアメリカって
東海岸がエスタブリッシュメントで、
東海岸にいられなかったゲイが、
逃げて逃げて逃げて西に辿り着いたのが
サンフランシスコだから、
その、異端がいちばん
濃密なんだろうと思うんだよね。 |
つねさん |
うん、うん。 |
ジョージ |
それで、あのね、
ニューヨークの
ゲイコミュニティっていうのは、
一種居直りみたいな、
ストレートにはない才能を持った私たちは、
自分に正直に、
自分に強く生きていかないと、
生きていけないんだ、
みたいな強さがあるんだよ。 |
ノリスケ |
アンディ・ウォーホルみたいにね。
ロバート・メイプルソープみたいにね。 |
つねさん |
はぁー。 |
ジョージ |
だけど、サンフランシスコの
ゲイコミュニティって、
なんかね、はかないの。
切ないんだよ。
で、逃げてきました、
もうここから先は
行くところがありません、って。 |
ノリスケ |
あるとしたら天国です、みたいな。 |
つねさん |
ははは。悲しい。 |
ジョージ |
そう。ここで、
私たちは一生を終えましょう、
っていう、なんかすごいウエットで
はかなーい部分があって。 |
ノリスケ |
はぁ〜! |
ジョージ |
それはね、その感じはね、
けっこう好きだった。 |
ノリスケ |
そういう背景を知ってると、
昨今のニュースが
ちょっと違う目で見れる。 |
ジョージ |
あのサンフランシスコのね。 |
ノリスケ |
みなさんご存知でしょうか、
今、あの、サンフランシスコ市? |
ジョージ |
市長が、勝手に。 |
ノリスケ |
勝手に、カリフォルニア州も
シュワちゃんも認めてないのに。 |
つねさん |
同性愛で結婚を。 |
ノリスケ |
認めるという。
で、市役所で、
結婚証明書を出してくれる。 |
つねさん |
それに殺到してるんだよね。 |
ノリスケ |
殺到してて。徹夜で並ぶような、
あの、なんていうんだろう、
お祭り騒ぎとでもいったらいいのかな。 |
ジョージ |
あれ、たぶんね、
ゴールドラッシュだと思うよ。 |
ノリスケ |
ねぇ。 |
つねさん |
あ〜。 |
ジョージ |
で、免罪符を求めて、
西に西に、っていうような感じよ。 |
ノリスケ |
いい話よね。
最初に、いちばん最初に証明書をもらった
カップルっていうのが、
79歳と83歳の、
レズビアンのカップルなんだよね。
50年、連れ添った仲なんですって。 |
ジョージ |
そう。 |
つねさん |
すごいよね。 |
ノリスケ |
おばあちゃん同士よね。 |
ジョージ |
ふつーのおばあちゃんだったでしょ? |
ノリスケ |
そうなの。 |
つねさん |
そうなんだ。 |
ノリスケ |
そうなの。ふつーのおばあちゃん2人。 |
ジョージ |
そんでね、そのね、その、
勝ち取ったっていう感じじゃないんだよ。 |
つねさん |
あ、とうとう、ようやく‥‥。 |
ジョージ |
これで2人は死ねる。 |
ノリスケ |
そうそうそう、そんな感じ。 |
ジョージ |
っていう感じなんだよね。
切ない。
今まで我慢に我慢をしてきたものが、
「認められた」んじゃなくって、
ここで「許された」みたいな感じだよね。 |
ノリスケ |
そうそう、そんな感じ。うん。 |
ジョージ |
あれ、すーごい素敵だった。 |
ノリスケ |
でね、サンフランシスコ市役所には、
その後10日間で、
3000組を超えるカップルが、
証明書の発行を求めて、並んだの。
その並んでる人たちの表情が穏やかで。 |
つねさん |
へぇー! |
ノリスケ |
踊りながら待ってたりするの。
社交ダンスみたいなやつなんだけど。 |
ジョージ |
そう。 |
つねさん |
あ、そうなんだ。 |
ノリスケ |
うん、仲良さそうに。 |
ジョージ |
ニューヨークは
戦うゲイがいっぱいいるけど、
サンフランシスコには、
何か、救いを待っているゲイが
いっぱいいるような感じがするよ? |
ノリスケ |
聞いたらべつに、それは証明書であって、
法律的な効力があるわけでは
ないらしいんだけどね。
保険の受取人になれるかどうかっていうの、
そういうのじゃなさそうなんだけど。
でも、いいんだな。 |
ジョージ |
うん、そう。
そんな感じがした。なんかね。 |
ノリスケ |
ええ話やな。 |
つねさん |
しみじみと(笑)。
|