ジョージ |
恋愛関係でやめてしまったことって、ある?
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ノリスケ |
やめる? リセットっていうより、
フェードアウト系だよねぇ。
そのときはそうは思わなかったんだけど、
ひどいことをしちゃったんだなって、
後で気がついたこととかは、あるよ(笑)。
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つねさん |
そうなんだ。
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ノリスケ |
心の傷だよ、それって。
あの人は大丈夫だったんだろうか、って、
ときどき思い出して、申し訳なくなるの。
18のときに、初めてこっちの世界で
恋愛をして。
相手は貧乏な年上の苦学生で(笑)。
ほんとは勉強しなきゃいけないのに、
なんかそういうことになってしまって。
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つねさん |
溺れてしまったのね。
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ノリスケ |
そうみたい。それで僕は、当時、
ぜんぜん世間知らずだったんで、
恋愛をゲーム、とまでは思ってないけど、
成就した段階で、
‥‥飽きちゃったんだよねえ。
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つねさん |
やな子!
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ノリスケ |
ひととおり付き合って、
ああ、だいたいわかった、と思った時期が、
向こうは、慣れてきて、
人前で肩をくんだり
したくなった時期だったの。
でも、ふつうのオフィス街でよ?
そんな場をわきまえないの、アリ?
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つねさん |
世間知らず同士だったのねえ。
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ノリスケ |
それで僕は、急に冷めちゃったんだよ。
「もう、ひとりで大丈夫だからバイバイ!」
みたいな感じになって、振ったの。
相手はものすごいショックだったらしくて、
しばらく泣いて暮らしてたらしいのねえ。
その人の友だちから、真剣に相談されて。
ずっと様子がおかしいんだけど、って。
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つねさん |
で?
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ノリスケ |
「知らないっ!」って。
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つねさん |
ひどいぃぃ!(笑)
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ノリスケ |
「具合でも悪いんじゃないの?」
みたいに(笑)。
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つねさん |
いやっ、ひどいっ、それぇ。
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ノリスケ |
で、そのときは、
ほんとに何とも思わなかったの。
自分が人を傷つけてるなんて。
だって飽きちゃったんだもん、って。
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つねさん |
傷つけてるって思ってなかったんだ。
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ノリスケ |
思ってなかった。
しょうがないじゃないの、終わりは終わり!
くどくど言いなさんな、みたいな。
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つねさん |
すげー。やなガキ。
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ノリスケ |
それは、ほんとうに、あとからわかったの。
青くなった。ひどいことしたって思った。
ごめんなさいと謝りたかった。
でももう取り返しがつかなかった。
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つねさん |
ま、いいやぁ、ってことでしょ?!
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ノリスケ |
しあわせに生きてたらいいな、と思う。
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つねさん |
もうぜんぜんそのあとは?
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ノリスケ |
ない。
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つねさん |
接点なし?
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ノリスケ |
なし。うん。
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つねさん |
じゃ、もともと、ゲイじゃないんだ?
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ノリスケ |
うん、たぶん、知らなかったんだと思う。
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ジョージ |
ああ、思い出した。いまの聞いてて。
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つねさん |
何を?!
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ジョージ |
僕はね、22か3くらいのときかな?
ちょっとお声掛けしてくれた
おじさまがいらして。
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つねさん |
はい。
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ジョージ |
けっこう大切にしてくれたの。
んでね、その人のお友だちが、
某デザイナーさんで、
僕、特殊体型だったから‥‥。
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ノリスケ |
特種体型(笑)。
それは体重MAXのとき?
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ジョージ |
マックスではなかったけど、
大っきいの。
肩幅だけが張ってて、
ま、デブだったのよ。
で、そのデザイナーさんがやってる
ブランドの洋服は、
絶対入らない体だったの。
そしたら、彼は、その友だちの
ブランドで、お揃いのを着たかったのよ。
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ノリスケ |
はぁー。おそろい!
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ジョージ |
で、デザイナーさんに頼んで。
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つねさん |
特注で。
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ノリスケ |
えっ? プレタポルテよね?
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ジョージ |
そう。なのに、特別に
オートクチュールなわけよ。
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ノリスケ |
あっらー。
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ジョージ |
特種体形用でお揃いの服を作ってくれたの。
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ノリスケ |
あっらー。
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ジョージ |
で、作ってくれて、できたその日に、
会う約束をしてたんだけど、
‥‥ちょっと新しい人ができたの。
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つねさん |
わっはっはっは!
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ジョージ |
だから行かなかったのよ。ね。
行かなかったんだよね。
それが、すんごい、
ショックだったらしくって。
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ノリスケ |
そりゃショックよ。
今の僕にはわかる(笑)。
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つねさん |
向こうは、そんな心変わりなんか
想像してないわけでしょ?
それまでずっと。自分のこと好きで、
ハニーと思ってたわけでしょ。
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ジョージ |
そうなの。その後ね、半年後くらいかな、
そのデザイナーさんと、
たまたま飲み屋さんで一緒になって。
おまえ、とんでもないヤツだな、って。
アイツはね、おまえのこと忘れらんなくて、
3ヶ月間、君が着るはずだった洋服と
一緒に寝てたんだぞ、って言われたときに、
ものすごい悪いことをしたって
思ったのと同時に‥‥。
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ノリスケ |
同時に?
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ジョージ |
気色わるっ、って思った‥‥。
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つねさん |
うひゃー。
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ジョージ |
それからね、1年ぐらいして?
けっこう体型とか雰囲気を
着実に変える人だったのね、僕。
その1年で、ムチっとして、
かつ、締まってね、
色黒系になったのよ。
アラブ系日本人? みたいにー。
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ノリスケ |
なんじゃそりゃ。
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ジョージ |
っていうふうになり始めたときに、
その人とバッタリ会ったの!
でも、彼は気付かないの!
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ノリスケ |
そんなに変わっちゃったの!?
それ、どうかと思うなぁ。
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つねさん |
ははははは。
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ジョージ |
ほんとに変わったの。
そこまで好きだったはずの僕に、
彼は気付かなくて、
誘ってくるんだよ!
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ノリスケ |
あぁっ! かわいそう‥‥。
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ジョージ |
もう辛くって、僕はもう、
ほんとにすぐいなくなりたいんだけど、
彼は、なんか、ご馳走までしてくれるの。
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つねさん |
ひゃ〜、知らずに。
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ジョージ |
マスター、こちらに1杯、みたいな。
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つねさん |
あぁ‥‥。
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ノリスケ |
気がつかないんだ‥‥。
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つねさん |
悲しい‥‥。男の性ってやつ?
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ジョージ |
んでね、そしたら、友だちがやってきて、
僕の名前を呼ぶのよ。
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ノリスケ |
名前を。お〜い、ジョージ、
みたいに呼んだら‥‥。
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ジョージ |
そうそうそうそう。そしたら‥‥
君は!? とかって。
はいっ、お久しぶりです、って言ったら、
飲んでたお酒、ビシャッ!
ってやられたんだもん。
(手をパン! と叩いて)
あ〜! これはほんとに
終わったんだぁ〜! みたいな。
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つねさん |
でも良かったね。彼的にもスッキリしたし。
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ノリスケ |
良かったね。スッキリしたね。
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ジョージ |
そのときにね、やっぱり、終わるときは、
しっかり終わらないといけないなって。
思えば、卑怯だよね。
洋服ができ上がったその日だよ!?
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ノリスケ |
ほんとね。
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