ジョージ |
だけど、地方に行くと、
びっくりしちゃうよね!
どう見ても普通のおじさんが
ゲイバーで飲んでたりとか
するでしょう?
|
つねさん |
しゃべり口調だけちがうの。
|
ノリスケ |
東京ではありえないような
普通の人がいるってことね。
それは、普通の男、という擬態で
生きていかなくちゃいけないからよ。
|
つねさん |
結婚してる人も多いと思う。
|
ジョージ |
ミッソーニかなんかの
セーター着て(笑)。
|
ノリスケ |
要するに、ミッソーニ的な、
変なニットを着てるってことでしょ?
たぶんそれはミッソーニじゃない
と思うのよ。 |
ジョージ |
そうそう。ボクね、昔ね、
岡山のゲイバーに
1回行ったことがあるの。
|
つねさん |
ほぉほぉ。
|
ノリスケ |
それ、なに? 岡山といえば‥‥
梅ちゃんみたいな人がいたとか、
そういうことじゃなくて?(笑)
|
ジョージ |
ちがうの。びっくりしたのは、
まだ若かった頃だよ、すっごい昔だよ。
生まれて初めて見たの。
トレーナーなのに刺繍してあんの。
わかるかな?
|
つねさん |
おばはんが着るみたいな?
|
ジョージ |
そう!
|
ノリスケ |
それも、大っきい刺繍でしょ?
虎の顔とか描いてあるような
やつでしょ?
|
ジョージ |
そう。ボク、そういうのって、
なにわのおばはんしか
着ないのかと思ってたら、
そういうの着たおじさんが
セカンドバッグを小脇に抱えて
やってきたのよ?
ほんっとに普通のおじさんなんだよ?
街ですれちがっても
絶対わかんないようなおじさんが
入ってきて、
‥‥おねぇ言葉でしゃべるんだよ!
|
ノリスケ |
あー、そこの中だけで、
開放されちゃうんだろうね。
|
ジョージ |
うぅわぁーっ! って思って。
んで、んで、そのお店のマスターが、
他の街から来てるボクに
気遣ってくれて、
どういう人が好きなんですか?
って言ってくれたわけ。
「ん〜、まあ、同年代ぐらいから、
ちょっと年上ぐらいですかね」って。
「落ち着いた、普通の
おじさんみたいな感じで、
ま、クマっぽい?」とかって言うと、
「あらっ!? だれそれさん、
ピッタリじゃない!?」
って言われたのが、
その、クマでもなんでもない
普通のおじさんだったの!!!
えぇーっ!! これかっ!?
みたいな。
|
ノリスケ |
そりゃまあ、普通のおじさんがいい、
ってとこだけは、合ってるわよね。
コーヒー頼んだら
味噌汁が出てきたようなものね。
|
ジョージ |
これがね、たぶん、
田舎と都会のいちばんのちがいだよ。
そうやって考えると、
やっぱり表現力を持つかもたないかと、
あと、自分が自分の中身をぶつける
相手がハッキリしていて、
その人が求めるものが
何かということをわかって
自分を表現するかどうかのちがいかな?
って思うんだよね。
ボクも地方に住んだことがあるけど、
やっぱり人目を忍んで逢って、
待ち合わせをしたら、
そのまんまホテルかなんかに行って、
脱ぐとこからお付き合いが
始まるんだと思うんだよね。
|
ノリスケ |
う〜ん。デートなしで、
いきなり、かあ。
|
ジョージ |
でしょ? だって、昼の日中からさ、
男ふたりが、どう見ても
親子じゃないし兄弟でもない人が、
映画館にも行けないし、
散歩もできないし、
メシも食えなくって‥‥。
|
ノリスケ |
1コしかない商店街に、
ウロウロするわけにいかないよね。
|
ジョージ |
そう。
|
つねさん |
で、車社会だから、
ラブホ行って、みたいな。
とりあえず二人になれるのはそこ、
みたいな。
|
ジョージ |
ね。たとえば都会へ出てくると、
それこそ、バーニーズニューヨークで
男の子ふたり歩いてても‥‥。
|
ノリスケ |
化粧品見てても。
|
ジョージ |
そう。キャーキャーいいながら、
あっ! この匂い、わたしの匂い!
とかって言ってても‥‥。
|
つねさん |
無視っていうか、なんか‥‥。
|
ジョージ |
ま、不思議だと思われるだろうけど、
あ〜、ここにもいる、って。
逆に、あ、オカマが来る場所なのよね、
うん、いいんじゃない?
とかって思ってくれる人の、
絶対数が多いんだろうと思うんだよな。
|
ノリスケ |
そうなのよね、昔、ともだちがね、
伊勢丹かどっかで、ベッドを、
同じゲイのともだちに付き合ってもらって
男ふたりで見にいったんだって。そしたら、
「おふたりで使われるんでしたら」
っていうことを大前提で接客された、
って、ビックリしてた。
「おふたり、大柄でいらっしゃるので、
いっしょにおやすみに
なられるのでしたら、
こちらのキングサイズが
よろしいかと」って。
|
つねさん |
はっはっはっはっはっはっ!!
そうなんだ。おそろしいわ。
|
ノリスケ |
フツーに言われたって(笑)。
|
ジョージ |
よく、田舎は純粋で、
都会はものすごく残酷とかね、
言うでしょう?
だけど、場合によっては逆のことが
あると思うんだよ。
よく、子どもは純粋で、
おとなは残酷っていうけど、
じつは子どもが残酷で、
おとなのほうが優しかったり
するでしょう?
地方のゲイの状況って、
けして温かくないもの。
異なるものに対して、きびしいもの。
おんなじ仲間に対しては、
ものすごく温かいけど、
違う人に対しては冷たいよ。
だけど、都会の人って、
おんなじ人ばっかり集めようと思っても
集まんないから、
もう違う人が前提みたいになってる。
オカマに対して温かいっていうのは、
都会のほうだなって思うもん。
|
ノリスケ |
うん、思う。
|
つねさん |
温かいっていうか、なんかその、
楽でいれる、みたいな。
|
ジョージ |
そうそうそうそう。
で、いろんなタイプの人がいる
都会だからこそ、
自分を、やっぱり、自分を売りたい人に
わかりやすくすることが大切で、
それがメトロセクシュアルじゃないかと
思うんだよね。
|
ノリスケ |
う〜ん‥‥そんな、
積極的な話だったのかしら?
|
ジョージ |
ほんとはそのはずなの。
|
ノリスケ |
もとは、でしょ?
|
ジョージ |
もとはね。だけどその中で、
やっぱり今のトレンドで、
最大公約数をまとめて見ると、
お肌ツルツル系になっちゃう、
っていうとこなのかな?
|
ノリスケ |
うん、そういう生き方の問題なのに、
流行だから急に増えるっていうのが
おっかしいんだよなあ。
|