APPLE
新宿二丁目のほがらかな人々。
おねぇ言葉や裏声とかで語る別角度批評。

雑誌の話をしましょ。その3
旅行雑誌がつまんないの。

ジョージ そう。でね、昔の雑誌って、
雑誌いっぱい買うと、
保管するのが大変だから、
とくに女の子雑誌は、
必要のないページを破って
必要のあるページを残すんだけど、
中綴じの場合は反対側が残るんだよね。
ノリスケ うん、うん。
ジョージ だけど、その雑誌のその号がもっている
空気感とか主張っていうのを
捨てたくないから、
その反対側も残していたの。
つねさん そのまま。
ノリスケ はいはいはい。
ジョージ あと、目次はかならず残すの。
つねさん へぇー。
ノリスケ はいはいはい。
ジョージ だけど、今の雑誌は、
必要なページを破っておしまい。
ノリスケ 必要なページだけを取っといて、
残りは捨てるということね。
捨てる分量が増えたのね。
つねさん ほとんど捨ててるよね。
ジョージ うん、だから、
1冊が発散している空気感が、
ものすごく薄いんだよね。
ノリスケ うーん。
ジョージ 例外は、特集号だけど、
それ以外は破っちゃうね。
ノリスケ ぼくはもう必要なとこなんかない、
と思って捨てちゃうけどね、この頃。
ウエブに載ってるし、
ぐらいに思っちゃったりとかね。
連載は単行本になるだろうとか。
ジョージ うん、でも、単行本と雑誌はちがうんだよ。
単行本っていうのは、知識でしょ?
だけど雑誌っていうのは、
勢いとか流れとかっていうのがあって。
ノリスケ ああ、そうだね。
ジョージ んで、単行本って、今年買った単行本を、
来年読んでもおんなじ単行本なんだよね。
ノリスケ そうだ、雑誌はちがうね。
ジョージ だけど、今年の8月号を、
来年の8月読んでも‥‥。
ノリスケ ダメだよね(笑)。
ジョージ そう、役には立たないんだよ。
だけど、ほんとにいい
8月の雑誌っていうのは、
5年後に読んだときに、
なんか別のものを思い出すはずなの。
ノリスケ うん、うん、うん、うん、なるほどね。
ジョージ で、今の雑誌って、
5年取っときたい雑誌はほとんどない。
逆に、創刊号の「POPEYE」は、
ものすごく見たいよね。
ノリスケ 見たい。
ジョージ なぜなら、それって、
“ぼく”を作ってくれた雑誌だから。
ノリスケ ぼくはわりとあれ取ってあるよ。
「ガリバー」。
ジョージ ああ! 「ガリバー」ね。
つねさん ああ。
ジョージ ガリバーって、なんでなくなったの?
あれ。
ノリスケ 取材費がかかるわりに広告収入がなくて
売れ行きも伸び悩んだってことじゃない?
だれもあんな贅沢な旅行なんか
行かなくなっちゃったから。
でも「ガリバー」いい雑誌だったよ。
大好き。
つねさん 素敵だったよね。
ノリスケ 今ね、欲しくて、ない雑誌は、
「ガリバー」みたいな雑誌。
だから「Figaro」の旅行特集で
我慢するんだけど、
ガリバーが持ってたのって、
やっぱり人生に対する志、みたいなもので、
まあ‥‥そのままやっちゃったら
格好悪いんじゃないっていうくらいの
気取ったこととかも入るわけだけど、
でも、読みたいの。
なのに、それはね、どこにもないの。
で、しょうがないから
外国の旅行雑誌読むんだけど、
それはまた、ぜんぜん世界がちがうんで、
現実的じゃなかったりするんだよね(笑)。
ジョージ トラベルガイドって、
旅行するのが決まって買うんだよね。
ノリスケ そうね。うん。でも「ガリバー」は、
ちがったよ。
アームチェア・トラベラー向けで。
ジョージ 今の女の子雑誌の旅行の特集っていうのは、
それを見ることによって、
こんど行ったときに役に立つかな?
と思って、それを見ながら
旅行のプランが立つんだよね。
ノリスケ うん。
ジョージ だけど「ガリバー」は、
旅行に行かなくても気が済むぐらいに
完結してたんだよ。
ノリスケ だからね、うっとりして気分が良くなって、
いつか行けたらいいな、
っていうところで満足してた。
秘境の特集もしょっちゅうあったし。
ジョージ そうそう、3号に1号ぐらいは、
おまえ、絶対行かねぇだろう、ここ!?
飛行機チャーターしないと無理だろう!
っていうようなのがあって。
ノリスケ 中米の奥〜の遺跡とかね、
載ってたりするんだよね(笑)。
ジョージ でね、あの雑誌のすごかったのが、
秘境系をやっても、
絶対、探検になんないんだよね。
ノリスケ なんない、なんない。都会の雑誌なの。
つねさん 決して、川口浩にはならないの?
ノリスケ なんない、なんない。
どっちかっつうと、
ユーミンが秘境に行くの。
‥‥どっちにしても、古いけど(笑)、
男性誌にも女性誌にもないテイストだった。
ジョージ 男・兼高かおるみたいな雑誌だったよね、
ぼくのイコンだもん、兼高かおる。
ノリスケ うん。なんとかですのよ、
とかって言われて、芥川さんになって、
はぁ〜、って言いたいんだよ(笑)。
ジョージ 「わたくしが先日この国に
 まいりましたときに、
 わざわざ、国王がお出迎えに
 なってくださったんでございますのよ」
ノリスケ 「とっても背のとっても大きい方で、
 裸なんですけれどもね、
 大きなサファイアの指輪をなさって、
 あ、これがお出迎えの儀式で
 不思議な木の根の
 絞り汁をいただくんですの」
つねさん そりゃもう「はぁ〜」って
いうしかないよね(笑)。
ジョージ ほんとに、エレガントでらっしゃったの、
とかいって。
ノリスケ でも、それでOKでしょ?
ジョージ そう、OK。
ノリスケ それ聞くだけで満足なんだよ。
つねさん たしかに。
ノリスケ そういう人、そういう雑誌、ないんだよ。
テレビの旅行の番組でも、
ぜんぜんそんなことないもんな。
ジョージ ないよ、だって‥‥。
つねさん 今、なんか、キャピキャピの
わけのわからない子が出てきて、
きゃー! とか、ふーん! とか、
へぇー! とかぐらいしか言わないよ。
ジョージ あのね、兼高かおるは、
すべて知っていたの。
つねさん うん。
ジョージ で、見知らぬところに行ったとしても、
知っているの。
だけど、今の旅行番組って、
たとえそれがソウルであっても
パリであっても? 何回も何回も‥‥。
つねさん 同じ子らが行っているにも関わらず。
ジョージ おんなじ子が行ってるのに、
すべて知らないことが前提なの。
ノリスケ そうだね、ビックリばっかりしてるもんね。
つねさん あー、うそぉ、えー!? はぁー! って。
ジョージ バカか、おまえら、って。
つねさん ほんとに(笑)。
ジョージ ね。
つねさん たしかに、それはある。
ノリスケ でもね、知識が付け焼き刃じゃダメなのよ。
こないだ土曜の昼間の情報番組で、
グルメルポをしてる女の子が、
「わあー、おいしー」だけじゃイカンと
いうことになったのか、
「美味しんぼ」の主人公みたいな
台詞を言うのよ。
それがあまりにウソっぽいわけ。
「この紅茶っていうのは、
 やっぱりファーストフラッシュですか?
 香りが違いますもんね。
 この栗はイタリア産の生栗を
 一度ローストしてから
 シロップにつけてるじゃないですか?
 やっぱり!
 もうぜんぜんちがいますよね」
とかって言い出すわけ。
それがね、まったくウソっぽいの。
んなことわかるわけねえだろっ!
構成作家さんは、「やだー、おいしー」な
レポーターがいやだったんだろうけど、
まったく鼻白むのよ。
ジョージ 棒読みだったりするんでしょ。
ノリスケ そう! 棒読みなの。
つねさん で、あとで、
ファーストフラッシュってなんですか?
って訊くんだよ。
ジョージ いや、訊きもしないよ。
つねさん そうか。
ジョージ はいっ、OK! っていったら、
もうすべて忘れてるわよ。
リセットしないと、頭入らないもん、
その子。
つねさん ああ、そうか。
ノリスケ そうそうそう。そんな子がやってるの。
ジョージ やっぱり、兼高かおる、いいなぁ〜。
ノリスケ 兼高かおる、あなたがやれば?
つねさん 兼高ジョージ。
ジョージ やりたーい、すごーく‥‥。
つねさん 「声高ジョージ」はどう?
ノリスケ 「かりたか‥‥」(笑)。
ジョージ いやぁん、もぉ、ほんとに。
世の中すべて、兼高かおるが
いなくなったのが敗因よっ!
ノリスケ 世の中すべてと言いますか(笑)。
つねさん ははははははは!

兼高かおる。知らない人もいるんじゃ‥‥
次回のためにGoogleで検索しておいてください。
つづきます。

ジョージさん、つねさん、ノリスケさんへの激励や感想などは、
メールの表題に「ほがらかな皆さんへ」と書いて
postman@1101.comに送ってくださいね。

2004-11-21-SUN

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