ジョージ |
そう。でね、昔の雑誌って、
雑誌いっぱい買うと、
保管するのが大変だから、
とくに女の子雑誌は、
必要のないページを破って
必要のあるページを残すんだけど、
中綴じの場合は反対側が残るんだよね。
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ノリスケ |
うん、うん。
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ジョージ |
だけど、その雑誌のその号がもっている
空気感とか主張っていうのを
捨てたくないから、
その反対側も残していたの。
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つねさん |
そのまま。
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ノリスケ |
はいはいはい。
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ジョージ |
あと、目次はかならず残すの。
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つねさん |
へぇー。
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ノリスケ |
はいはいはい。
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ジョージ |
だけど、今の雑誌は、
必要なページを破っておしまい。
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ノリスケ |
必要なページだけを取っといて、
残りは捨てるということね。
捨てる分量が増えたのね。
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つねさん |
ほとんど捨ててるよね。
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ジョージ |
うん、だから、
1冊が発散している空気感が、
ものすごく薄いんだよね。
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ノリスケ |
うーん。
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ジョージ |
例外は、特集号だけど、
それ以外は破っちゃうね。
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ノリスケ |
ぼくはもう必要なとこなんかない、
と思って捨てちゃうけどね、この頃。
ウエブに載ってるし、
ぐらいに思っちゃったりとかね。
連載は単行本になるだろうとか。
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ジョージ |
うん、でも、単行本と雑誌はちがうんだよ。
単行本っていうのは、知識でしょ?
だけど雑誌っていうのは、
勢いとか流れとかっていうのがあって。
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ノリスケ |
ああ、そうだね。
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ジョージ |
んで、単行本って、今年買った単行本を、
来年読んでもおんなじ単行本なんだよね。
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ノリスケ |
そうだ、雑誌はちがうね。
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ジョージ |
だけど、今年の8月号を、
来年の8月読んでも‥‥。
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ノリスケ |
ダメだよね(笑)。
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ジョージ |
そう、役には立たないんだよ。
だけど、ほんとにいい
8月の雑誌っていうのは、
5年後に読んだときに、
なんか別のものを思い出すはずなの。
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ノリスケ |
うん、うん、うん、うん、なるほどね。
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ジョージ |
で、今の雑誌って、
5年取っときたい雑誌はほとんどない。
逆に、創刊号の「POPEYE」は、
ものすごく見たいよね。
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ノリスケ |
見たい。
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ジョージ |
なぜなら、それって、
“ぼく”を作ってくれた雑誌だから。
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ノリスケ |
ぼくはわりとあれ取ってあるよ。
「ガリバー」。
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ジョージ |
ああ! 「ガリバー」ね。
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つねさん |
ああ。
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ジョージ |
ガリバーって、なんでなくなったの?
あれ。
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ノリスケ |
取材費がかかるわりに広告収入がなくて
売れ行きも伸び悩んだってことじゃない?
だれもあんな贅沢な旅行なんか
行かなくなっちゃったから。
でも「ガリバー」いい雑誌だったよ。
大好き。
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つねさん |
素敵だったよね。
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ノリスケ |
今ね、欲しくて、ない雑誌は、
「ガリバー」みたいな雑誌。
だから「Figaro」の旅行特集で
我慢するんだけど、
ガリバーが持ってたのって、
やっぱり人生に対する志、みたいなもので、
まあ‥‥そのままやっちゃったら
格好悪いんじゃないっていうくらいの
気取ったこととかも入るわけだけど、
でも、読みたいの。
なのに、それはね、どこにもないの。
で、しょうがないから
外国の旅行雑誌読むんだけど、
それはまた、ぜんぜん世界がちがうんで、
現実的じゃなかったりするんだよね(笑)。
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ジョージ |
トラベルガイドって、
旅行するのが決まって買うんだよね。
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ノリスケ |
そうね。うん。でも「ガリバー」は、
ちがったよ。
アームチェア・トラベラー向けで。
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ジョージ |
今の女の子雑誌の旅行の特集っていうのは、
それを見ることによって、
こんど行ったときに役に立つかな?
と思って、それを見ながら
旅行のプランが立つんだよね。
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ノリスケ |
うん。
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ジョージ |
だけど「ガリバー」は、
旅行に行かなくても気が済むぐらいに
完結してたんだよ。
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ノリスケ |
だからね、うっとりして気分が良くなって、
いつか行けたらいいな、
っていうところで満足してた。
秘境の特集もしょっちゅうあったし。
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ジョージ |
そうそう、3号に1号ぐらいは、
おまえ、絶対行かねぇだろう、ここ!?
飛行機チャーターしないと無理だろう!
っていうようなのがあって。
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ノリスケ |
中米の奥〜の遺跡とかね、
載ってたりするんだよね(笑)。
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ジョージ |
でね、あの雑誌のすごかったのが、
秘境系をやっても、
絶対、探検になんないんだよね。
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ノリスケ |
なんない、なんない。都会の雑誌なの。
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つねさん |
決して、川口浩にはならないの?
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ノリスケ |
なんない、なんない。
どっちかっつうと、
ユーミンが秘境に行くの。
‥‥どっちにしても、古いけど(笑)、
男性誌にも女性誌にもないテイストだった。
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ジョージ |
男・兼高かおるみたいな雑誌だったよね、
ぼくのイコンだもん、兼高かおる。
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ノリスケ |
うん。なんとかですのよ、
とかって言われて、芥川さんになって、
はぁ〜、って言いたいんだよ(笑)。
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ジョージ |
「わたくしが先日この国に
まいりましたときに、
わざわざ、国王がお出迎えに
なってくださったんでございますのよ」
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ノリスケ |
「とっても背のとっても大きい方で、
裸なんですけれどもね、
大きなサファイアの指輪をなさって、
あ、これがお出迎えの儀式で
不思議な木の根の
絞り汁をいただくんですの」
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つねさん |
そりゃもう「はぁ〜」って
いうしかないよね(笑)。
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ジョージ |
ほんとに、エレガントでらっしゃったの、
とかいって。
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ノリスケ |
でも、それでOKでしょ?
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ジョージ |
そう、OK。
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ノリスケ |
それ聞くだけで満足なんだよ。
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つねさん |
たしかに。
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ノリスケ |
そういう人、そういう雑誌、ないんだよ。
テレビの旅行の番組でも、
ぜんぜんそんなことないもんな。
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ジョージ |
ないよ、だって‥‥。
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つねさん |
今、なんか、キャピキャピの
わけのわからない子が出てきて、
きゃー! とか、ふーん! とか、
へぇー! とかぐらいしか言わないよ。
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ジョージ |
あのね、兼高かおるは、
すべて知っていたの。
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つねさん |
うん。
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ジョージ |
で、見知らぬところに行ったとしても、
知っているの。
だけど、今の旅行番組って、
たとえそれがソウルであっても
パリであっても? 何回も何回も‥‥。
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つねさん |
同じ子らが行っているにも関わらず。
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ジョージ |
おんなじ子が行ってるのに、
すべて知らないことが前提なの。
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ノリスケ |
そうだね、ビックリばっかりしてるもんね。
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つねさん |
あー、うそぉ、えー!? はぁー! って。
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ジョージ |
バカか、おまえら、って。
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つねさん |
ほんとに(笑)。
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ジョージ |
ね。
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つねさん |
たしかに、それはある。
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ノリスケ |
でもね、知識が付け焼き刃じゃダメなのよ。
こないだ土曜の昼間の情報番組で、
グルメルポをしてる女の子が、
「わあー、おいしー」だけじゃイカンと
いうことになったのか、
「美味しんぼ」の主人公みたいな
台詞を言うのよ。
それがあまりにウソっぽいわけ。
「この紅茶っていうのは、
やっぱりファーストフラッシュですか?
香りが違いますもんね。
この栗はイタリア産の生栗を
一度ローストしてから
シロップにつけてるじゃないですか?
やっぱり!
もうぜんぜんちがいますよね」
とかって言い出すわけ。
それがね、まったくウソっぽいの。
んなことわかるわけねえだろっ!
構成作家さんは、「やだー、おいしー」な
レポーターがいやだったんだろうけど、
まったく鼻白むのよ。
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ジョージ |
棒読みだったりするんでしょ。
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ノリスケ |
そう! 棒読みなの。
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つねさん |
で、あとで、
ファーストフラッシュってなんですか?
って訊くんだよ。
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ジョージ |
いや、訊きもしないよ。
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つねさん |
そうか。
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ジョージ |
はいっ、OK! っていったら、
もうすべて忘れてるわよ。
リセットしないと、頭入らないもん、
その子。
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つねさん |
ああ、そうか。
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ノリスケ |
そうそうそう。そんな子がやってるの。
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ジョージ |
やっぱり、兼高かおる、いいなぁ〜。
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ノリスケ |
兼高かおる、あなたがやれば?
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つねさん |
兼高ジョージ。
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ジョージ |
やりたーい、すごーく‥‥。
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つねさん |
「声高ジョージ」はどう?
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ノリスケ |
「かりたか‥‥」(笑)。
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ジョージ |
いやぁん、もぉ、ほんとに。
世の中すべて、兼高かおるが
いなくなったのが敗因よっ!
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ノリスケ |
世の中すべてと言いますか(笑)。
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つねさん |
ははははははは!
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