ジョージ |
「さぶ」がなくなって
「薔薇族」がなくなって
「アドン」はもっと昔になくなって。
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つねさん |
うん、今あるのは、「サムソン」でしょう?
これがデブ専ね。
あと、若くて筋肉質な感じの「バディ」と
クマ系の「ジーメン」と、
あとはね‥‥。
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ノリスケ |
それで基本は全部?
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つねさん |
ううん、「ザ・ゲイ」。
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ノリスケ |
えっ!? まだあるの?
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ジョージ |
えっ?!?!
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つねさん |
ある。たしか。
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ノリスケ |
東郷健の? 雑民党の?
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つねさん |
うん、まだ出てると思う。
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ノリスケ |
あちゃー。「薔薇族」や「さぶ」が
負いきれなかった何かを
そこが、一身に背負ってる気がする(笑)。
あの人もう立候補してないよね?(笑)
あれ? ジョージさん? ジョージさん!
‥‥ジョージさん? ジョージさん?
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ジョージ |
‥‥‥‥(ぼーっ)。
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つねさん |
パパ!
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ジョージ |
(空を見つめる)‥‥。
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つねさん |
おーい、パパ! もどってきて!
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ジョージ |
(つぶやく)つらいなぁ‥‥。
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ノリスケ |
なんか、えらいとこへ行っちゃったよ、
ジョージさんが(笑)。
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つねさん |
なんか、過去の、なんか、古傷??
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ノリスケ |
いや、東郷健というキーワードに、
「薔薇族」に思う気持ちよりも、
もっとすごいものが
あるからでしょう(笑)。
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ジョージ |
つらいよ‥‥。
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ノリスケ |
あなたは、ああですよ、って言われたような
気がしちゃうのよね、きっと。
勘弁してください、って(笑)。
ジョージ・マイケルや、
トム・フォードを目指す
ジョージさんとしては、
あの湿度や匂いみたいなものは
勘弁して欲しいのよ。
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つねさん |
あ〜。
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ジョージ |
その名前を聞いて、
心臓をわしづかみされるような
感じがした‥‥。
選挙権を初めて与えられたときに、
あの人がいたんだよ。
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つねさん |
見たことないよね、彼の選挙演説。
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ジョージ |
ぼくがカミングアウトして、
いちばん最初の選挙のときに、
たまたまウチのお母様といっしょに
政見放送見てて、東郷健が出てきたのよ。
「あなた、どうすんの?」って言われて。
で、「どうすんの?」の意味が、
最初わかんなかったんだよ。
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ノリスケ |
どういう意味?
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ジョージ |
だって、ぜんぜん赤の他人が
しゃべってるところに
「どうすんの?」って言われて、
「へっ?」って言ったら、
「入れるの? あの人に」って。
「あ、ぼく? ぼくね、
選挙行く気はないけども、
もしこの人だけを落として、
っていう権利があったら、
東郷健に入れるから」
「安心したわ」。
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ノリスケ |
お母様も、みんながそうかと思ったんだ。
この人がアンタの世界のスターなの?
ってことだよね。
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ジョージ |
そう! ほんとに。そう言われたときに、
ワシゃね、ああ、やっぱり、
ふつうの世界の人から見ると、
ノンケの世界との垣根よりも、
東郷健とぼくの垣根のほうが低いんだな、
っていうふうに思って。
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つねさん |
ふふふふふ。
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ノリスケ |
変な心境だけど(笑)。
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ジョージ |
かなりね‥‥。
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つねさん |
ガチョンでした?
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ジョージ |
そう、ガチョン。
ほぉーんとにガチョンだった、あのときは。
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ノリスケ |
今、でもそうなんだけど、
子どもがね、
もし親にカミングアウトしたり、
友だちにカミングアウトしたときに、
パッと頭に浮かぶゲイの姿は、
とってもおねぇさんだったり
するわけだよね、テレビを観てたら。
「あんたも、ああなの?!」って。
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ジョージ |
そう。そう!
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ノリスケ |
だから、ほんとはちがうんだよ、って、
詳しぃーく説明してくと、
かえってびっくりしちゃうだろうけど(笑)。
この人もそうだよ、って言ったら‥‥。
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つねさん |
ええ〜!? って。
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ジョージ |
え〜!? みたいな。そう。
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つねさん |
ま、それはもう、ここでは言えないしな。
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ノリスケ |
「あの男らしい俳優の●●●●も、
ほんとは、そうなんだよ?」
って説明するのはたやすいけど、
理解されないんだな(笑)。
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つねさん |
うん、そうだね。
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ジョージ |
でもそのときのガチョーンが
伝わったんだと思うんだ。
で、母親的にも、悪いことをしたと
思ったんだと思うんだよ。
で、いちおう政見放送終わって、
お茶を飲みながら、
ぼくが雑誌を読んでました。
ウチのお母さんも雑誌を読んでて。
で、そのとき読んでたのが、
「家庭画報」だったんだよね。
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ノリスケ |
うんうん、ハイソな。
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ジョージ |
で、読み終わったあとに、
「アンタも読むだろ?」って
渡してくれたの。
そうよね、みたいな(笑)。
あー、この心配りが、
ちょっと嬉しかったかもしれない、
みたいな。
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ノリスケ |
今日から娘よ、
「家庭画報」いっしょに読みましょ、
みたいなね(笑)。
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ジョージ |
そう。
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ノリスケ |
ちょっとね、話が持ってかれちゃったけど、
そういう、ちょっと特殊な?
雑誌もありつつ、
実際のゲイ雑誌の現代の多勢は、
健康的で明るいけれど
空虚なものがあるものだと。
ところで海外はどうなの?
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ジョージ |
ゲイ雑誌?
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ノリスケ |
はい。
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ジョージ |
あのね、両極化だね。ほんっとにもう‥‥。
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つねさん |
「Advocate」みたいな。
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ジョージ |
啓蒙系。
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ノリスケ |
あー、啓蒙、政治系。
でもさ、こないだタワレコ行ったら
アメリカの雑誌で「OUT」とか
イギリスの雑誌で
「Attitude」っていうのがあって
どっちも、わりと、オシャレな、
たぶんファッションと人の雑誌だった。
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ジョージ |
ああ、あるね。
あるいは、もうほんっとに‥‥。
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つねさん |
エッチ系の。
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ジョージ |
ポルノ雑誌になっちゃうんでしょうね。
でも、アメリカなんかでも、
インターネットの普及で、雑誌のたぐいは、
どんどんどんどんなくなり始めてるよね。
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ノリスケ |
あー、そういうことか。
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ジョージ |
それこそなんで「薔薇族」が
廃刊するきっかけになったかっていうの、
この前ニュースで言ってたんだけど、
いちばんの理由が、
恋人探しがインターネットになったから。
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ノリスケ |
雑誌の需要がなくなっちゃったんだ。
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つねさん |
それでもってたようなもんだから。
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ジョージ |
そう、文通欄がぜんぜんね、
機能しなくって。
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ノリスケ |
うん、うん。
即時性に欠けるからなあ。
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ジョージ |
ぜんぜんダメになって。
アメリカの雑誌でも、
肉欲系の雑誌っていうのは、
後ろのほうが、ほんとに‥‥
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つねさん |
パーソナルアド。
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ノリスケ |
恋人募集ってことね。
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ジョージ |
で、それはもう今、必要がない。
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ノリスケ |
インターネットがあるからだ。
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ジョージ |
でも同時に「Advocate」も、
あんまり今、良くないんだよ。
発行部数がどんどん減ってって。
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ノリスケ |
薄い雑誌だよね。タブロイド新聞みたいな。
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ジョージ |
そう。啓蒙の手段が、雑誌のほかに
いっぱいできたっていうのと、
限りなくメトロセクシャルな雑誌で、
情報というのがカバーされちゃってるから。
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つねさん |
そういうの見なくっても、
普通の見てりゃ済むから。
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