ジョージ |
それでね、中国語ってすごいね!
彼はね、北京語と台湾の客家の言葉。
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ノリスケ |
ああ、じゃあ、広東語ほど
きつい印象じゃないかな。
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ジョージ |
きつくはないけど。
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つねさん |
きつくはないな。
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ジョージ |
でも、すっごいんだよ。
何百と言葉があるの。人をけなす。
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ノリスケ |
ははははははは!
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つねさん |
そうなの?
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ジョージ |
すごいんだよ!?
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つねさん |
さすが。
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ジョージ |
それでね、わかるの。
なに言ってるかわかんないけど、
ぼくをののしる、汚い言葉なんだろうな、
っていうのがわかるんだよね。
で、こっちはね、向こうがそういうふうに
言いはじめると、英語で人をけなす、
罵倒する言葉なんて、
あんまりボキャブラリーないから、
日本語でしゃべるんだけど、
日本語っていくつか言うと
終わっちゃうんだよね。
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ノリスケ |
あんまりないかも。
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ジョージ |
で、おまえの母さん出ベソ!
とかっていうのは‥‥。
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ノリスケ |
子どものケンカだよね。
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ジョージ |
ぜんぜん、説得力も何にもないしね。
それでたいてい負けてた。
向こうが中国語しゃべりはじめると、
あ、もう負けた、と思ってたよ。
向こうは最終兵器だよね。
泣きながら、中国語で罵倒。
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ノリスケ |
そういう自分が嫌になったりしそうね。
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ジョージ |
そう(笑)。だからちょっと
かわいそうになって許してやったりとかする。
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ノリスケ |
なんでボクをこんなとこまで追い込むんだ、
ってことになっちゃう。
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つねさん |
でも、結局、悪いのは向こうなんでしょう?
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ジョージ |
向こうなんだけどね。
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ノリスケ |
よく考えてみればね。
理詰めで逆ギレするってことは
相手がきっとなんかしてたんだよね(笑)。
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ジョージ |
そういうのがよくあって、
すごいよくケンカしてたよ。
だから、ボクの中には
ケンカをしたいボクもいるのかな? って、
そのとき思ってたもん。
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ノリスケ |
あ〜。でも、
つねさんとはケンカしないってことは
「ケンカしたいボク」はいないんじゃないの?
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ジョージ |
そうかなぁ。年取ってから‥‥。
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つねさん |
なに? 意地悪になった?
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ジョージ |
いや、年取ってから、
頭の中で、ケンカする前の
シミュレーションをするようには
なったかもしんない。
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ノリスケ |
こう言ったらこう出るな、
じゃあこうなったらこうなるから、
ああ、じゃ、言わないほうがいいな、
とか(笑)?
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ジョージ |
そう、それはあるかもしれない。
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ノリスケ |
ここでこんなふうに言ったら、
この人はこういうふうになるだろうと。
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ジョージ |
あと、ケンカしても負けない自信は
できたかもしれない。
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つねさん |
あ、オレ、勝てない自信はあるよ。
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ノリスケ |
だからケンカしないんじゃないの?(笑)
しても、結果が同じだから。
お互いの利害が一致してるのよ。
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つねさん |
そうね。
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ジョージ |
力のケンカは、もうできないけど、
言葉のケンカだったら、
もう絶対負けない自信はあるかもしれないな。
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つねさん |
それは、それだけしゃべれれば
負けないでしょ。
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ノリスケ |
あの、友だちから聞いた話なんだけど、
ゲイの間でも暴力って‥‥。
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ジョージ |
なに? ドメスティック・
バイオレンスってやつ?
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つねさん |
あるある! ほら、××くんが
そうだったじゃん?
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ノリスケ |
ええーっ! あの子が?!
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ノリスケ |
そうなの!?
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ジョージ |
(テープに向かって)
共通の友人の名前がでてきまして。
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ノリスケ |
された?
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つねさん |
ううん、してたの、あいつが。
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ノリスケ |
えーっ!
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ジョージ |
(テープに向かって)
これは、ひじょうに普通は温厚に
見えてですね、紳士的な、
才能豊かな方なんですけれど‥‥。
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ノリスケ |
恋人には殴ったりするの?
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つねさん |
なんか、頭に来ると、
パソコン投げたりするらしいよ。
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ジョージ |
わ〜!
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ノリスケ |
えっ! それ、危険‥‥。
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ジョージ |
星一徹?
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ノリスケ |
それは、チャブ台。
星一徹、パソコン使えないと思う。
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ジョージ |
そうね。ごめんなさい。
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ノリスケ |
ゲイって、男同士だから、
力関係になってったら、
つまり、腕力になってったら、ねぇ?
ひどいことになるわよねえ。
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つねさん |
そうだよね、怖いよね。
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ノリスケ |
うん、でも、男女間ほど、
痴情のもつれで殺人みたいな話は、
あんまりないか。
ちょっと話がずれたけど(笑)。
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ジョージ |
横溝正史の世界にはあるけどね。
痴情のもつれで男同士が。
『病院坂の首くくりの家』でしたっけ?
あるとは思うんですけれど。
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ノリスケ |
『真珠郎』とかね。『犬神家の一族』も。
まあ、それはさておき。
いや、ケンカする人もいるんだって聞いて、
へぇーっと思ったんだけどね。
何も生まないと思うんだけどね、そんなの。
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ジョージ |
恋人同士とかじゃなくって、ケンカした?
昔。たとえば親子ゲンカとか。
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ノリスケ |
怒られて殴られたことはあるけど、
ケンカはしてない。
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つねさん |
ボク、1回だけ、なんか、
うちの母親に対してすごく、
罵倒の言葉を言ったのが許せなくて。
外に出て、っていって、
殴ろうとしたけど、
殴れなくて泣いたことがある。
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ノリスケ |
『鉄道員』みたいな話ね。イタリアのほうよ?
泣いちゃったんだ(笑)。
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つねさん |
なんか、辛かった。あんときしかないけど。
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ノリスケ |
ないってことだよね。ボクもそうだけど。
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ジョージ |
でも、うちは、親子としては
ケンカはあんまりしなかったけど、
仕事一緒にしてたから、
上司と部下と、親子関係が
ごしゃごしゃになるがゆえの
ケンカは多かったけど。
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ノリスケ |
ジョージさんちはちょっと特殊かもね。
恋愛に話を戻すとね、
最初、つきあい始めのころは、
この人は、こんなことで怒る人ってことを
知らない時期があったんで、
びっくりして、思いがけずケンカに
なっちゃったってことはあるね。
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つねさん |
あ、あるある。うん、あるある。
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ノリスケ |
今までの経験で、
こんなことで人が怒るとは思えなかった!
みたいな話なのよ。
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ジョージ |
ある! あるね!
ほら、消防士さん。
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ノリスケ |
はははははは。
ずいぶん古い話にいきました。
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つねさん |
たとえば?
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ジョージ |
洋服屋さんに行って大人買いしたとき。
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つねさん |
怒られたの?
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ジョージ |
怒られた。お金をそんなに
無駄遣いするもんじゃないって。
すごい叱られた。
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ノリスケ |
ケンカになったの? それは。
叱られただけ?
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ジョージ |
ケンカになった。
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ノリスケ |
言われる筋合いないって?
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つねさん |
なんでそんなこと言われなきゃなんないの?
みたいな。
オレの金じゃん、って。
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ジョージ |
そう。
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つねさん |
あんたの金じゃないんだから。
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ジョージ |
そのとおり。
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つねさん |
自分の金使って、なにが悪い? って。
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ジョージ |
そう。あれはね、ちょっとね‥‥。
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