ジョージ |
うーん、僕は、たとえば
親子ゲンカしたときは、電話をよく使ったね。
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ノリスケ |
電話。
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ジョージ |
んと、約束事、自分が決めているのでは、
絶対面と向かった場面意外では
ケンカしないこと。
電話のケンカは悲惨なことになるもんね。
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つねさん |
相手の顔が見えないからね。
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ノリスケ |
叩き切る、みたいな。
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ジョージ |
手紙のケンカは、もう最後通牒だし。
メールのケンカはもっと手っ取り早く
悲惨な結果になるし。
だから、ケンカしようと思ったら、
まず面と向かって。
もう乗り込んでいってでもかまわないから
やること? それから僕は、
親子ゲンカは絶対、
1対1で決着つけようよ、っていくから。
それでもね、やっぱりね、
売り言葉に買い言葉で、
絶対その場ではおさまらないよ。
で、他人が間に入って、
仲裁しようがなにしようがしこりは残るし、
もう言いたいだけ言ったら、
それでもうおしまいだよね。
で、うちの家族も絶対、
変に仲裁はしないの。
もうお互いに疲れ果てるまでやるの。
んで、僕が親の家に行くわけだから、
僕は帰るわけじゃない?
必ず帰るの、いったん。
「帰るから!」って。でね、面白いもんでね、
今までケンカしてた人が、
目の前からいなくなると、反省するんだよ。
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ノリスケ |
そうみたいね(笑)。
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ジョージ |
すーごい反省してね、悪いこと言ったな、
とかね、あれは傷つけたな、
とかって思うんだよ。
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つねさん |
あ、それはあるでしょう。
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ノリスケ |
あー、だから出てくっていう行為を、
夫婦はするのか。奥さんなり。
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つねさん |
要するに、熱い頭を冷やすとか。
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ジョージ |
うん、それで、悪いなと思ったら
すぐに電話をかけるの。
昔、親が永福町住んでて、
僕は初台に住んでて。
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ノリスケ |
近いじゃん。
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ジョージ |
京王線じゃん。で、途中で、
明大前で乗り換えになるでしょ。
そこで、公衆電話で
「ごめんなさい、言い過ぎました」
っていうのが、
だいたいのパターンだったもん。
そうすると、その間、
だいたい10分ちょっとだよ。
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ノリスケ |
向こうは、俺が悪かったなって
思い始めてる(笑)。
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ジョージ |
向こう側も、だいたいね、
まずったなーって思うんだよね。
それで、電話かけて。
そうすると、必ずケンカして僕が飛び出して
10分後にかかってきた電話は
おやじが直接取るんだよ。
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つねさん |
ああ、もうわかってんだ。
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ジョージ |
わかってるの。
「ごめんなさい。悪いこと言いました」
「うん、わかってる。
おまえはかわいい息子だ」
っていうんで、もう終るんだよ。
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つねさん |
はっはっはっは。あ〜。なんか、
出来レースみたいなケンカだな(笑)。
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ノリスケ |
なんか、日本人じゃないよね、
その感覚(笑)。
「おまえはかわいい息子だ」って
洋画の吹き替えみたい!
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ジョージ |
でも、面と向かってでないと
絶対にケンカしないことと、
言いたいだけ言ったら、とりあえず‥‥。
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つねさん |
引き上げると。
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ジョージ |
そう、引き上げる。
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ノリスケ |
ゴング鳴らすと。カーンと。
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ジョージ |
そう、カーン! で、ちょっと休憩!
そうすると、その間に
なんとかなると思うけどね。
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つねさん |
あー。
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ノリスケ |
そうだね。
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ジョージ |
うん、だから、たとえばうちの会社で
会議をやって、お互いの意見が
グシャグシャになる状態に
なることあるんだよね。
そうすると休憩するもん。で、休憩して、
やっぱり言い過ぎて悪かったなって思う人が、
コーヒー取りにいって、
コーヒーみんなに注いであげると、
それで終ったりするの。
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ノリスケ |
ははははははは。
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つねさん |
あー。
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ノリスケ |
なんてことない。
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ジョージ |
ほんと、なんてことはないの、
ケンカなんていうのは。そういう終らせ方、
1回冷ますっていうのは大切だなと思うね。
あとは、貸し作ること。
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ノリスケ |
ん? 貸しを作る? どういうこと?
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ジョージ |
貸しを作ること。だから、
わざと負けてあげること。
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ノリスケ |
あ、そういうことか。
ジョージさんが明大前で
電話したっていうのは、
そういうことなのね。
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ジョージ |
うん、でも、それはね、ボク、
負けたつもりじゃなくて、
ほんとに悪かったと思ったの!
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ノリスケ |
ああ、そう(笑)。
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つねさん |
でも、何回かあるうちには、
そういうのもあるわけでしょう。
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ジョージ |
普通のケンカはね。普通のケンカは、
お互い悪いんだよ。
ケンカ両成敗なんだよ、絶対。
だけど、ケンカ両成敗じゃないケンカが、
世の中にはあるの。
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つねさん |
ああ、そう。
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ジョージ |
たまに。うちの、あの、
すけべダディーがするような‥‥。
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ノリスケ |
絶対おまえが悪いっていう(笑)。
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つねさん |
不埒な。
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ノリスケ |
原因が。
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ジョージ |
だって、浮気とかっていうものはねぇ。
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ノリスケ |
そりゃそうだよね。
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ジョージ |
絶対、浮気したほうに非がある。
浮気されたほうは、
圧倒的な被害者なわけじゃん。
で、普通そこで、徹底的に、
私は完璧な被害者なんだから
勝ってやろうと思うと、
落とし所がなくなるんだよね。
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ノリスケ |
あ〜。
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ジョージ |
で、勝ってやろうと思ったその人が、
逆に次の瞬間には加害者になって、
浮気したほうが被害者になっちゃうんだよ。
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ノリスケ |
そうなんだよね。
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ジョージ |
そうすると、泥沼だもん。
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ノリスケ |
泥沼だよね‥‥。だいたいね、
マイナスカードでケンカする強気の人は、
そこに陥る。
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ジョージ |
そう。で、その、被害者面した加害者ほど、
質の悪いものはないからね。
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ノリスケ |
ない。
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ジョージ |
だから、それに気づかない、
それを客観的に見ることが
できない人っていうのは、
すごく愚かしいよね。
ケンカが下手な人だなと思う。
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つねさん |
うん‥‥。
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ジョージ |
だからこのまえ、このまえね、うちでね、
その、ちょっと知り合いが、
浮気をしてどうとかこうとかの話で、
夕食が終ったあとで盛り上がってたんだよ。
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ノリスケ |
家族でね。
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ジョージ |
家族でね。
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つねさん |
3人で。
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ジョージ |
で、お父さんとしてみれば、
もっとひどいこと自分でやってるのに
それを棚に上げといて、
そうだそうだ、あいつはバカだと。ね?
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ノリスケ |
愛する女房がいながら(笑)。
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ジョージ |
そう。浮気なんかけしからんと、
いうふうに言ってたわけです。訳知り顔でね。
そうすると、母がですね、
いやいや、浮気するぐらいは
かわいいじゃないの、と。
男なんて、みんな浮気心があるんだからと。
で、私たちも昔約束したわよね、あなた、
憶えている? と。
浮気するのはバレなきゃいいけども、
どうせするなら、
私よりも圧倒的に若くてきれいな
女じゃないとダメだ、って約束したでしょ?
って。
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つねさん |
「そうやのぉ」って。
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ジョージ |
なんか、昔、そういう話があったんだって。
芸者さんかなんかが、
水揚げしてもらって、
だんなさんのお世話になりたいって、
挨拶に来たらタヌキみたいな顔で。
バカも休み休み言いなさいと。
鏡を見て、あんたが私に勝てると思うんなら、
もう1回いらっしゃいと。
参ったなと思うんだったら、
2度と来るんじゃないのよ、って言ったら
2度と来なかったわ、あはは、
って話をしてたの。
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ノリスケ |
すげぇマミィ(笑)。
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ジョージ |
そしたらおやじがそれ聞きながら、
「あ、わかっております、
今でも心がけております」って言ったの!
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つねさん |
バカおやじ!
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ノリスケ |
あはははははは!
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ジョージ |
バカでしょう?
あ、現在形で言ったよ、
このおやじ、って思ったら、
母が、ニターッとしながら立ち上がって、
「現在形ときたもんだ」って言いながら、
台所に入ってコーヒー入れて出てきてね、
で、あなた、じゃあ、わたくし、来月あたり、
ちょっとヨーロッパのほうに
行かさせていただくことにいたしますので、
よろしゅうございますよね? って言ったの。
それで一件落着だよ。
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ノリスケ |
うんうん‥‥金で解決だ(笑)。
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ジョージ |
そうそうそうそう。
そこは、いったん負けてあげてるの。
うんうん、と。負けたよ、って。
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ノリスケ |
はぁ‥‥。
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ジョージ |
で、大人だなーと思ってね。
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ノリスケ |
大人‥‥。
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つねさん |
いいねぇ。
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ノリスケ |
大人(笑)。
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ジョージ |
極端な例だけど、やっぱり、
人間同士が長く付き合おうと思ったら、
今回は引き分けよ、とか、
ほんとだったら私が1勝になるところ、
いいわ、引き分けてあげる、とか。
あるいは、今回だけは譲れないから、
このまえ譲ってあげた、あの私の勝ちを、
今回、取り戻させていただくわ、
みたいな感じの駆け引きが、
長ーいケンカなんだろうと思うのね。
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つねさん |
なるほどね。
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ノリスケ |
はぁー。
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ジョージ |
他人同士、行き着くところ他人同士で、
考えてみたら親子とか肉親とかっていうのが
いちばんの他人だったりして。
夫婦っていうのは、他人がもっと他人になる
ことだったりとかするかもしれないから。
そうすると、ケンカするのが
当たり前と思わないとね。
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ノリスケ |
うん‥‥。
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ジョージ |
で、今日のケンカに、
コテンパンにやっつけて自分が圧勝したら、
この次のケンカに、逆に自分がやられて、
悲しい思いをするかもしれないって思うのが、
長い付き合いの前提だよね。
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つねさん |
うん‥‥。
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ジョージ |
ね、そういう思いやりに満ちた
お付き合いっていうんですか?
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つねさん |
はぁ。
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ジョージ |
ね!
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つねさん |
ね!
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ジョージ |
へへっ。
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