ジョージ |
‥‥うちの父がですね、
あの、健康を気づかって、
お散歩を召されるわけです。
万歩計をつけて、1日何歩っていう
ノルマがあるわけですね。
で、手帳にね、
律義に毎日毎日書いてるのよ。
何歩歩いた、何歩歩いた、って。
で、ほら、昭和初期の人じゃない。
そうすると、もし歩けない日のために
っていうんで、貯金をするのよ。
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つねさん |
ああ!
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ジョージ |
たとえば1日5,000歩っていうのが
ノルマだったとしたら、
今日は5,100歩歩けたっていうと、
100歩を貯金にするの。
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つねさん |
ほぉ、おぉ、ほぉ。
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ジョージ |
で、何日歩くと、お、
今日は貯金ぜんぶ合わせたら
5,000歩になるから休める、
って休むんだよ?
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ノリスケ |
ははー。
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つねさん |
へぇー。ちょっと
ベクトルがちがう(笑)。
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ジョージ |
そういうヘンテコリンな、
なんか目標設定もあれば、
あるいはあの、たまにね、
散歩に行ってくるよ、
って夜におっしゃって。
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つねさん |
別のところに‥‥。
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ジョージ |
それでタクシーに乗られてですね、
飲みに行かれたりとか
されるようなんです。
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ノリスケ |
散歩ねぇ。
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つねさん |
で、そういうときは?
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ジョージ |
そうすると、その、
お店の女の子がですね、
万歩計を腰につけて、
ずーっと歩いたり、
こうやって手にもって
振ってくれたりして、
5千何百歩ぐらいになるまで
協力をしてくれるの。
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ノリスケ |
はははははは、ダメじゃん。
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つねさん |
ははははははは。
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ジョージ |
そんなことがしばらく続いた
ある日にですね、
うちのお母様が、お父様のクツを
ご覧あそばしたわけですね。
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ノリスケ |
まぁー!
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ジョージ |
で、ひとこと言いました。
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つねさん |
あら、あなた?
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ジョージ |
あら、あなた、いっしょうけんめい
歩いてらっしゃるのに、
なんで踵がきれいなのかしら?
あ、これはしまったと。
で、それからしばらくのあいだ、
お飲みに行かれると、女の子たちが、
踵をですね、こうゴシゴシゴシゴシと、
サンドペーパーで‥‥。
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つねさん |
擦ってんの!?
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ジョージ |
そう。適度に削ってるんですね。
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つねさん |
はっはっはっはっは!
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ノリスケ |
よっぽどいいお客さんなんだねぇ(笑)。
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ジョージ |
そう。というようなことがございました。
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ノリスケ |
それ、当時の目的が、完全にどっかいって。
まだ、貯金は良かった、じゃあ。
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ジョージ |
貯金まではね。そう。
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つねさん |
まだ許せる、みたいな(笑)。
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ジョージ |
そう。でね、手帳をジーッと見ると、
普通にゴチックで
数字を書いている日もあれば、
イタリックになってる数字もあるのね。
で、お父さん、これ、なんで?
って訊いたら、
(小声で)イタリックは
ニセモノの数字なんだよ‥‥。
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つねさん |
も、バレバレじゃーん、みたいな。
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ジョージ |
あー、すごーい。でもそれ、バレない?
っていったら、誤差の範囲やから、って。
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ノリスケ |
なにが!(笑)
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つねさん |
そういう問題じゃないって!(笑)
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ジョージ |
ちょっと待って!?
ボクも気がつくっていうのは
誤差じゃないと思うぅ‥‥!
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ノリスケ |
それに、そんなことする
意味ないじゃないね、
べつに。自分の中でしかないじゃない。
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ジョージ |
でもね、なんかね、やっぱり、
何かのこだわりなんだろうね。
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つねさん |
それを残したいとか? そういう。
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ノリスケ |
達成感がほしいのかな?
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ジョージ |
ん〜、数字における達成感っていうの、
男の目標設定なんだろうと思うよ。
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ノリスケ |
数字に魔力があるんでしょうね、きっと。
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ジョージ |
あると思う。だって、会社っていうのは、
男が作った男の遊び場だと思うんだよね。
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つねさん |
うん。
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ノリスケ |
おぉ。
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ジョージ |
だって絶対、女的発想で
できあがってないじゃない。
女的発想でできあがるとしたら、
あ、でも、このまえ話を聞いた、
某会社の仕事の仕方っていうのは、
女の仕事の仕方だよね。
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ノリスケ |
あ、某会社のね。
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ジョージ |
うん。みなさーん、この仕事に
関心のある人集まってー! って、
ハーイ! って、バーッと集まって
ああじゃないこうじゃない、ていうのは、
決して男が作った会社じゃないんだよね。
同好会だから。
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つねさん |
うん。
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ジョージ |
男が作った会社って体育会系で。
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つねさん |
もう上下‥‥。
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ジョージ |
トップがいて、上下関係がしっかりしていて。
で、同好会っていうのは
何勝何敗にはこだわらないんだよね。
だけど体育会系は、何勝何敗が全てなんだよ。
で、去年全勝したのに、
今年1敗でもしたらば
今年はダメっていうのが、
体育会系じゃん。
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つねさん |
それ、質じゃないのね。
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ジョージ |
だから男のルールだよね。
で、男が作った遊び場所の会社の中には、
数字がそこら中に転がっている。
売上目標いくらで、
新規顧客獲得何名とか、
もうね、それが行き着くと、
目標2,500店! みたいな世界に
なってくわけでしょう? ああいうの、
女の人が見てて、なんか、切ないなとか、
うざったいなとかって思うのかな?
って、思ったりするよね。
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つねさん |
うーん‥‥。
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ジョージ |
少なくともボクの中ではそういうふうに
言う人がいるから。
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つねさん |
うぜぇ、みたいな。
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ジョージ |
だって、その目標数値って、
どうやって決めたの?
どうせできる数字でしょう?
目標じゃないじゃん、そんなの、
とかって思うんだよね。
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つねさん |
ああ。
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ジョージ |
で、毎月毎月その数字がどうなったって
一喜一憂するでしょう?
一喜一憂したって、それ、
一喜一憂ゴッコじゃん、って。
利益が出てて潰れなきゃいいんでしょう?
あんたたち、とかって
思う自分がいるんだよ。
だけどそれを、その場で言ってしまうと、
おじゃんなんだよね。
だから、そこはほがらかさんだから、
そうですよね、とかって言って、
ここはこういうふうにして、
ああして、とかっていう‥‥。
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つねさん |
人格が、別の人格が(笑)。
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ジョージ |
そう、言うの。言いなさいっ!
とかって言ってくれてるから。
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つねさん |
あ〜。
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ジョージ |
で、言うと、なんかすごい自覚があって、
それでリーダーシップがあって、
とかって褒めてくれるの。
で、褒めてくれるのを聞きながら、
いやべつにそういうことで
褒めてもらわなくたって
いいんだけどー、とか。
まあ、苦手なことしたら
褒めてもらってもいいかなー、
ぐらいのつもり? だったりとかする。
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つねさん |
へぇー。
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ジョージ |
うーん。ね、男の人って。
もう少し楽にいけばいいかな、
とかって思ったりするよ。
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ノリスケ |
大変そうだよね。
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ジョージ |
大変そうでしょ?
大変そうとしか言えないでしょう?
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つねさん |
ほんとだよね。
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ノリスケ |
そうなんだよ(笑)。
大変そうとしか言えない。
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ジョージ |
大変そうなんだよぉ? 大変なの。
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