── |
はい、じゃあ、つぎいってみましょう。 |
ボーズ |
どれどれ? |
── |
ちょいジミですが、
味わい深い、これをいってみましょう。 |
|
ボーズ |
これね、自転車のカゴね(笑)。
ぼくはいま自転車に乗らないから
あんまりないんだけど、
カゴ、入れられるよね、ふつうにね。
止めておくと、空き缶とかね。 |
── |
なんていうか、その、なんとなく
「捨ててオッケー!」
みたいになっているところが
大問題だよね、じつはね。 |
ボーズ |
おかしな話だよね。だからさ、
こういう風景がお馴染みだってことは、
捨てる人に、変な共通認識があるわけだよね。
みんなが、こういう形してりゃ
ゴミ箱だと思っちゃうみたいな。
それってすごいよね。 |
── |
そうそうそう(笑)。 |
ボーズ |
それ、すごいぞんざいな感覚よね。 |
── |
うん。網だし、カゴだし、
なんとなく捨てるっしょ、みたいな。 |
ボーズ |
なんなんだろうね、その感覚。 |
── |
こういうものがあるんだからしょうがない、
みたいな、こう、盗人猛々しい感じの、
開き直りがあるような気がする。 |
ボーズ |
あるよね。入れる人の心理としてはね。
もう習慣でしょ、みたいな。 |
── |
ってことはその、先入観というか、
「間違った固定概念」だよね。 |
ボーズ |
じつはそれに縛られてるってことだ。 |
── |
そうそう。ここにもハンパ不良性がある。
ところかまわずポーイって捨てるんじゃなくて
なんかこう、逃げ道を用意して捨ててるような。 |
ボーズ |
ハンパ不良だね。あとあれ、
先に入ってると捨てちゃうでしょ? |
── |
ああ、破れ窓現象だ。 |
ボーズ |
それなに? |
── |
ええっとね、ニューヨークとかで、
建物の窓が割れてて、
それが割れたままだと、
そこで犯罪が多発するんだって。 |
ボーズ |
あ、まさにそれだね。
1コ缶が捨てられると、
すぐその自転車に集中するもんね。 |
── |
あ、それでいい話があるよ。 |
ボーズ |
なに? |
── |
ぼくの机が汚いんですよ、ずっと。 |
ボーズ |
仕事場の机が? |
── |
そうそう。書類とか積み放題なの。
で、たまにさ、今日は机を掃除するかって
下のほうから整理してみると、
関係ない雑誌とかが、
ぼくの机に不法投棄されてるんですよ。 |
ボーズ |
あはははははは、汚いから。 |
── |
そうそう。あの、一時期、
打ち合わせ机が横にあったのね。
で、事務所に来た雑誌とかを
そこでみんな読むんだけど、
どうやらそれをポイッとオレの机に(笑)。 |
ボーズ |
あはははははははは。
すっごいおかしい(笑)。 |
── |
たぶんね、罪の意識はないと思う。 |
ボーズ |
それはキレイにしとかなかったお前が悪い的な。 |
── |
そうそうそうそう!
でもさ、ほんとうはさ、
それをオレの机に捨てたやつが
悪いはずなんだけど。 |
ボーズ |
悪いね、ほんとはね(笑)。 |
── |
でも、なぜかけっきょく
オレが悪い、みたいな。 |
ボーズ |
悪いね。ああ、おもしろいね。
不良がどんどん不良になる図式みたいだね。
「誰もオレのことをわかってくれねえ!」
みたいな感じで。 |
── |
そうそう。
だから、ちょっとやさぐれ気味。オレの机。 |
ボーズ |
あ、なるほどね。おもしろい。
でもそれ、自転車のカゴといっしょだね。 |
── |
いっしょだと思うんですよ。 |
ボーズ |
そういうことって起こるね。
1コ置いてあると、
オッケーなん感じがして
置いちゃうんだよね。 |
── |
きっと、「捨てるひとり目」に
なるのはイヤなんだよね。 |
ボーズ |
うん。だってさ、明らかに
はじめはなにもなかったとこのわけじゃん。
ただの自転車のカゴだったわけじゃん。 |
── |
うん(笑)。 |
ボーズ |
最初の1コを置いたことにより
ドラマが生まれるわけでしょ、そこに。 |
── |
だよね。1コのあとの2コ目はオッケー、
みたいなへんな共通認識に作用してね。
もしそういう心理がなければ、
すべての自転車のカゴに均等に、
ポツンポツンと捨てられるはずだよね。 |
ボーズ |
でもそうじゃないよね。
ひとつのカゴに集中すんだよね。
だから、ほら、正当化する理由としては、
「ほら、こいつの自転車に
こんなに缶が捨てられてるってことは、
こいつのチャリンコ
3日も置きっぱなしなんだよ!」っていうさ。 |
── |
あああ、なるほどね。 |
ボーズ |
最初に入れたやつが、
「こいつ自転車放置してますよー」
ってことで捨てるわけだ。
で、缶が溜まるほど、
そいつが自転車を置きっぱなしに
してるというわけで‥‥ん?
でも、だからなんなんだよ! |
── |
あははははははは!
だからって、捨てていいのかよ! |
ボーズ |
あ、これはおもしろいわ(笑)。 |
── |
なんなんだろうね、
持ち主が来ない感ってのがあるのかな? |
ボーズ |
あるのかな?
「そんなやつはこうしてやれ!」ってこと? |
── |
いや、だからさ‥‥。 |
ボーズ |
なんで「こうしてやれ!」に
なるんだよ、ってことだよね(笑)。 |
── |
ははははははははは、
ダメだ、おもろい(笑)。 |
ボーズ |
それはあれだな、
「いじめられるやつにも理由がある」
みたいな話になってきちゃうよね。 |
── |
ああ、いじめに通ずる。たしかに。 |
ボーズ |
理由はないのに。 |
── |
正当な理由、ぜんぜんないよ!
「いじめられるほうも悪い!」
「ゴミを捨てられる自転車も悪い!」 |
ボーズ |
そうだよなあ(笑)。
なんか、似たようなこと、ほかにもあるよね。
ゴミの不法投棄はだいたい似てるよね、きっと。 |
── |
不法投棄するくせに、
妙な小理屈があるんだよな、きっと。
だから、社会のルールは破るんだけど、
自由気ままに捨てるわけでもないというか。
タバコの吸い殻とかもそうだもんね。
歩きながら捨てるんだったら
点々と落ちてていいはずなのに、
そうじゃないもんね。
特定の排水溝に溜まってたりする。 |
ボーズ |
なにかあるよね。
つまり、いちおう、どこかでは
悪いとは思ってるわけだよね。 |
── |
これ、日本人特有? |
ボーズ |
いやあ、どうなんだろう。
チャリンコのカゴ現象が
外国でも見られたらおもしろいね。
でも、見た記憶ないなあ。 |
── |
なさそうな気がするね。 |
ボーズ |
あ、空き缶というか、
自販機的なものが少ないのかもしれない。
あと、あれだ、チャリンコのカゴが、
ゴミ箱に似てるのが日本特有なのかも! |
── |
すげえ仮説(笑)。 |
ボーズ |
ほら、外国の自転車だと、
籐のカゴとかついてそうじゃない? |
── |
ああ、籐のカゴには
空き缶捨てづらいなあ(笑)。 |
ボーズ |
でしょ(笑)?
ゴミ箱風だから入れられるんだよ。
だから、チャリンコのカゴをつくるときに
ゴミ箱っぽくなくすればいいんだ。 |
── |
そうだそうだ、それだ! |
ボーズ |
デザインを、なにか捨てたくないような
感じにすればいいんだよ。
だから‥‥‥‥角張ってればいいのかな? |
── |
そんなんでいいのか(笑)。 |
ボーズ |
なんだろう、なにがゴミ箱っぽいんだろう。
丸っぽいのって、ゴミ箱っぽくない? |
── |
メッシュでしょ、メッシュ。 |
ボーズ |
あ、メッシュね。
それはゴミ箱っぽく見えるよな。
メッシュで丸っぽいからいかんのだ。 |
── |
ていうかさ、メッシュで丸っぽいのが
チャリンコのカゴなわけじゃんか。
チャリンコのカゴが
メッシュでなにが悪い! |
ボーズ |
うはははははは。 |
── |
これ、なんの話だ? |
ボーズ |
ていうかさ、百歩譲って、
デザインがゴミ箱に似てたとして‥‥。 |
── |
だからって捨てていいのか! |
ボーズ |
って話だよね! |
── |
おんなじこと話してるわ(笑)。 |