KANA
カナ式ラテン生活。
スペインは江戸時代の長屋みたいさ、きっと。

 
つるつるホセと、木彫りのホセ


オラ、アミーゴ!

まずは、前回お伝えした
レアル・マドリー対FCバルセロナの大喧嘩の結果から。

あの"20代なのに中年の魅力ムンムン"なMFフィーゴと、
"甘いマスクの照れ屋さん"FWラウルの息はぴったり。
こいつはマドリー優勢かと思いきや、
バルサの"黄金の長い足"FWリバウドも黙っちゃいない。

ともに2点ずつ決めたところで試合はロスタイムへ。
そのとき、
リバウドのシュートがゴールネットに刺さった!
マドリーファンが頭を抱えて神を呪ったその瞬間、
オフサイドにてノーゴールのコール、
それにて試合終了。

そりゃもうあーた、
新聞もテレビもこの話題一色だわさ。
疑惑の判定? それとも明白なオフサイド??

どうやらマドリーと宿敵バルセロナとの間には
このようにして
ちゃんと禍根が残るようになっているのでありました。



そして翌日、多くのマドリー市民が顔を見合わせて
「あれ、オフサイドだったよね」
と確認しあっているそのとき、
ダンナの同僚のホセだけは
そのベビースターラーメンのキャラクターのような
ツルリとした顔の満面に最高の笑顔を浮かべていた。

ダンナが、
「ホセ! アトレティ、昨日も勝ったんだって?」
と声をかけたからだ。

アトレティコ・デ・マドリー。
常勝軍団でお金持ち(現実には借金王だけど)の
レアル・マドリーを嫌うマドリー市民が
熱狂的に応援するチームだ。
このあたり、
私がアトレティを阪神タイガースにたとえるゆえん。

ところが昨季、
経営側のゴタゴタもあったりしたせいか
チームはびっくりするくらい負けつづけ、
今季からはついに2部リーグへ降格。
これがまた阪神っぽいでしょ。

今季も"ラス・パルマス大学チーム"などと対戦しては
あっさり負けちゃって、
こりゃ来季は2部B(プロとはいわれない)まで
落ちるかと思われてたんだけど、
やっと最近、調子が上がってきたのだ。

頑張れ、アトレティ。
ベビースター風つるつる顔のホセが
がっくりうなだれる姿を、今年は見たくないんだ。



ところが、同じくレアル・マドリーは嫌いでも
アトレティが2部へ行こうがどうしようが
ちっとも関係ねえや、っていうホセもいる。

ホセという名前はとても多くて
一家に必ずひとりはいるんじゃないかと
思うほどなんだけど、
これは、八百屋のホセのこと。

母性すら感じてしまう大きな大きなビール腹と、
木彫りのように深く刻まれた顔の皺。
いつも心の底から私たち夫婦の心配をしてくれる、
(小さいけど)大きくてあたたかなおじちゃん。

この木彫り風ホセが愛するのは、
もうひとつの在マドリーサッカークラブ、
ラジョ・バジェカノ。

マドリーの下町にあるスタジアムは、
収容人員が1万5千という小ささ。
レアル・マドリーのスタジアム(約9万)はもちろん
アトレティのスタジアム(約6万)と比べても、
まさに"町立市民サッカー場"といった趣。

しかもゴールネットのすぐ後ろは低い板塀を挟んで
普通のピソ(アパート)が並んでるから、
しょっちゅうボールが外へ飛んでゆき、
ときにはピソのベランダに干された洗濯物を直撃する。
なんて下町情緒。

噂によると、選手に支給されるユニフォームだって
年にほんの数枚で、あとは自腹で購入するんだそう。
試合後によく行われる相手選手とのユニフォーム交換、
けっこうドキドキしてるに違いない。
家計を考えちゃったりして。

そんな下町チームの試合観戦につきものなのが、
カタツムリ料理のバル。
昔からラジョのファンが集まるバルなのだ。

ところで今年のカタツムリちゃんたち、
例年よりもだいぶ大きめ。
そういえば、10円玉ほどの大きさのものもいる。
去年はそんなの、あまりいなかったもんなぁ。

雨が多かったから大きくなったということなので、
おそらく天然の露地カタツムリなんだろう。
美味しいわけだ。
これが勝った試合の後だと、なおさら美味いんだよね。
だから頑張れ、ラジョ!



って、節操のない私は、
やっぱりテレビ中継もスター選手も多い
レアル・マドリーのファン。
でも、
アトレティが好きな"つるつるホセ"のファンで、
ラジョが好きな"木彫りホセ"のファンで、
もちろん
スペインでプレーする日本人のファンでもある。
なんでも好き、なんでもファン。

えーっと、
こういうの、なんていうだったっけ?
そっか、 "ドン・ファン"だ!

2001-03-13-TUE

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