カナ式ラテン生活。 スペインは江戸時代の長屋みたいさ、きっと。 |
ネットサーファーの草分けで、雀荘で知りあったダンナと 突然スペインに引っ越してしまったカナさん。 かつて日本にあったかも知れない、 いまスペインにある風情を、気楽に書き送ってもらいます。 とにかく、この国の人たちは、たのしみ上手。 落語の世界は、あんがいいまではスペインにあるのかも? |
【預かりもの】 ツレアイの永遠のアイドル掛布雅之 背番号31。 のような顔をしているときが多い。 もちろん、 多くの女児がそこを通過するという ガッツ石松顔のときもある。 しかも、唸る。 ちょうど酒癖の悪いオヤジが 飲みすぎたとき、あるいはそれ以上に、 「グウェェェェ!」「ムゲギギギグ」など ありえない声を出しながら いまも隣で大いに唸っている。 なのでニーニャを 「おーい、オッサンオッサン」 と呼んだりするときもある。 実際、外出先で顔を覗きにきたひとたちによく (スペインではアジア系の赤ちゃんは大人気)、 「まぁ大きくて、愛らしい、男の子!」 と言われている。 ピアスをしていないせいもあるのだろう、 そう自分たちを慰めているのだけど。 そんなニーニャだけど、 いやもう、可愛い! というか、その存在がむしょうに愛しい。 乳をくれ乳をくれろよワーンワーンと 大粒の涙をぽろぽろこぼされた日にゃ、 そのいたいけなかんじに 胸がキュウンとなる。 こんなに小さくて弱々しい生き物が。 あれはもう1ヶ月も前、 この世界に出てきたばかりのニーニャが まだ血も拭われないまま 私の胸と肩のあいだのあたりにのせられて ぷるぷる震えているのを見たときにも 同じように、胸がキュンとなった。 ああ、 こんなに小さくて弱々しい生き物が、 私たちのところに、やってきたんだ。 しっかりしてるけどときに短気なツレアイと 呑気すぎてたいがい抜け作ででも小心者の私と そんな頼りないふたりにのもとに、 この弱っちい生き物は、 そのむきだしの小さな命を投げ出したんだ。 カミサマだかなんだか、本当にありがとう。 そう思ったし、いまもつくづくそう思う。 だって こんなに可愛くて愛しい存在が、 私たちだけで作った子であるはずがないもの。 彼女はきっと どこか大きなところからやってきたのだ。 だから、いわゆる「授かりもの」、 っていうかむしろ「預かりもの」、 そんなかんじがひしひしとする。 友人の、ちひろちゃんのママによると、 実際、ある地方では 歳を数えるときに「つ」が付く年齢 (ひとつ、ふたつ、みっつ……など)までは コドモは神様の子どもである、というらしい。 そこではだから 10歳になると人間の子どもになるということで 盛大なお祝いをするのだという。 ほら、やっぱり「預かりもの」だ! それと、先日読んだ 『オニババ化する女たち』(三砂ちづる)に 素敵な詩が引用してあった。 カーリル・ギブランというひとの作品らしい。 「子どもはあなたの子どもではない。 あなたの弓によって、生きた矢として放たれる。 弓をひくあなたの手にこそ、喜びあれ」 「子どもは明日の家に住んでいるので、 あなたはそれを訪ねることも夢みることもできない。 ただ、その弓をひくあなたの手に喜びあれ」 自分たちの子ではない、 明日の家に住む「預かりもの」のニーニャを、 だからこそ 慈しんで育てられたらいいなぁ。 いずれ大海に還る彼女が 元気いっぱい、飛び出せるように。 オウ、乳ぐらい、なんぼでも飲めや。 カアチャンの乳首はちぎれそうに痛いけど、 とくべつ、許しちゃうぜ! しかし、なんで君は 両手を宙に持ち上げた格好のままで スヤスヤ眠れるんだろうね? ※内田樹研究室内 「今夜も夜霧がエスパーニャ」もよろしく。
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2007-01-12-FRI
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