カナ式ラテン生活。 スペインは江戸時代の長屋みたいさ、きっと。 |
インチキママ気分の日 オラ、アミーゴ! 今朝は、グッときちゃったよ。 せっかくブエノスアイレスに着いたってのに いないんだもん、かあさん。 「ママァー」(アクセントはうしろの"マ")、 マルコは声を限りに叫んだのさ。 そう、これ、『母をたずねて三千里』のおはなし。 先月の『アルプスの少女ハイジ』に続き、 こちらで現在毎朝放映中なのだ。 8時45分頃テレビをつければ、 スペインでも20年以上親しまれている 『カルピスまんが劇場』のはじまり、はじまり。 『ドラえもん』、『マジンガーZ』、 『キャプテン翼』、『ドラゴンボール』なども 20代のスペイン人ならまず主題歌を歌えるだろう。 そして今はやっぱりポケモン。 ちびっこたちの夢は、 "マエストロ・ポケモン"(ポケモン・マスター) なのさ! そんなちびっこのひとり、 天使のような巻き毛が可愛い2歳のYちゃん。 そのYちゃんのママが、私の遊び友達。 しばらく前まではベビーカーを押して、 今は小さな手をひいて、 3人いっしょに買い物やバルでの一杯を楽しむ。 子どものいない私の インチキママ気分体験チャンス。 インチキママの目でみるスペイン、 まずは"おともだち"の多さにびっくり。 だってまわりを見渡すと、 ベビーカーを押すパパの姿や、 公園の芝生にパパママ並んで腰をおろして チュウの間にオムツを替える姿なんてのが たっくさん目に飛び込んでくるんだもん。 実はスペインの出生率は、日本と同じくらい低い。 人口は約4千万だから 赤ちゃんの絶対数なんてそんな多くないはずなのに、 街で赤ちゃんの姿を見かけること、見かけること。 スーパーやデパートで。 マクドナルドやバルで。 午前零時の移動遊園地で。 日本では街でそんなにたくさんの赤ちゃん、 見なかったような気がするんだけどなぁ。 さてさてインチキママ、まずは、 狂牛病騒ぎですっかりガラガラのマクドナルドへ。 対策のため慌てて発売されたマックポークを注文、 セットのドリンクはビールで。 席には最初から使い捨て灰皿が置いてある。 それがスペインの、マクドナルド。 Yちゃんとポテトをわけながら、 ホンモノママとおしゃべり。 やがておなかいっぱいになったYちゃん、 ちびっこの常とてカラフルに彩られた遊び場へ。 そこでは子どもたちが走ったり転んだり頭打ったり、 すべり台を取り合ったりの大騒ぎ。 でも同じくらいやかましいのが、 パパママが座っている席。 とにかくスペイン人、しゃべるのが大好き。 恋人でも女同士でも男同士でも、 コーヒー1杯で軽く2時間はしゃべっている。 "男はだまって"どころか "男はしゃべってなんぼ"。 スペインに来る日本人男性よ、 男はたくさんの言葉を使って口説きけないと 女にゃもてないぜ。 そして遊び場では。 あ、Yちゃんと男の子、同じすべり台に狙いをつけた。 ケンカになるかな? と、男の子が当然のようにYちゃんに譲ったではないか。 おぉ、まだ言葉もカタコトなちびっこでも すでに心はレディーファーストなんだ! なんてこったい。 大人の私、3歳のちびっこ紳士に、クラッ。 遊び場でついでにオムツも替えて、 次はママたちのお楽しみ、ウィンドウ・ショッピング。 Yちゃんはママたちの手を離しては飛び出し、 猛スピードであちゃこちゃに突撃しつづける。 でも、ぶつかったおじいちゃんも、 スーツを着たおじさんも、 綺麗なおねえちゃんも、 みんなニコニコ顔でゆるしてくれる。 しゃべりかけたり、 なぜかポッケに入っていたアメ玉をくれることも。 そうじゃなくてもとにかくスペイン人、 ちっちゃな子と目が合ったら、 なにはともあれニッコリ笑ってくれる。 なんだかよく聞き取れない若者語を飛ばしつつ 若気の至りでずいぶんかっこつけて歩いてる 10代後半20代前半のあんちゃんたちですら、 Yちゃんの突撃を受けると ラテンの真骨頂たる親しげな笑顔とともに ちゃんと相手をしてくれる。 さらにはYちゃん連れの私たちのために さっと道を譲ったりドアを開けたりもしてくれる。 この際、 インチキママが見馴れない東洋系外国人で 和服のよく似合う、しがないずん胴体型だとしても 別に躊躇することはない。 屈託ない笑顔でドアを押さえるあんちゃんの、 白い歯がキラリ。 インチキママ、クラリ。 ドアの向こうへ再び駆け出すYちゃんをよそに、 ホンモノママとインチキママふたり、 ついついうっとり顔であんちゃんの後ろ姿を追う。 夜になり、バルで夕食前の一杯。 Yちゃんはちびっこだから 食べちゃこぼし、飲んじゃこぼし、だけど 誰も気にしない。 だって床を見たら一目瞭然。 大人だって煙草の吸い殻や食べかすを どんどん捨てちゃってるんだから。 たとえば公園やサッカー場ではおやつとして ヒマワリの種を食べるひとが多いんだけど、 みんなカミカミペッペッ、 カラをそこら中にまきちらしている。 そんな彼らの足元は、 我が家で飼ってたインコのカゴと同じ状態。 だからちびっこのお行儀の悪さを責めるひとはいない。 もちろん善し悪しは別にして、ね。 それにだいたいそもそも、 あまり他人のことにかまうひとはいないみたい。 夜10時、私は帰って夕食の支度をしなくっちゃ。 バラ色のほっぺと青い小さなピアスが可愛いYちゃんに 熱烈なチュウをしてもらって、 インチキママ気分デートはおしまい。 ホンモノママいわく、 「うちのダンナは スペインじゃ子どもの面倒みてくれない方だよ。 夜遊びのときとか面倒みててくれるけど、 週に1回くらいしかできなくなっちゃった。 それでもまぁ、 "育児ストレス"とかって感じたことはないけどさ」 そしてその話を聞いた ごく日本人な我がダンナ、 「バルなんて煙草のけむり充満してるし不衛生やから 子ども、可哀相やん。 えーっ、絶対あかんよ、 お母さんが子ども置いて遊ぶなんて」 こりゃ、たいへんそうだ。 |
2001-03-27-TUE
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