KANA
カナ式ラテン生活。
スペインは江戸時代の長屋みたいさ、きっと。

 
【ユーロ新年が、明けました(2)】

オラ!
ついに私もエウロデビューしたぞ、の巻なる。
エウロというのは、
欧州新通貨 euro のスペイン語読みなる。

ペセタを握りしめて、いざお買い物。
スペインでは2月末までが移行期間で、
この間は従来通りにペセタで支払うことができるのだ。
ただし、お釣りはユーロで返ってくる。

はずなのだけど、
噂では、タクシーや小さな商店などでは
ユーロが足りない
あるいは準備してないよーケロケロ
という理由で、
ペセタでお釣りを返すところも多いらしい。
また、ユーロでお釣りを渡されて
「こんなんわかるかーい!
 頼むから俺にはペセタで返してくれぃ」
と悪あがきをするひとも、少なくないらしい。

お釣りの計算が面倒だからと
カードで買い物をするひとが激増した結果、
銀行のシステムがダウン気味という噂もある。
いったい、街はどうなっているのだ?


さて、ここで、ユーロ入門。

たとえば日本と韓国と中国とシンガポールと
タイとマレーシアとフィリピンなどが
共通の通貨 asia(仮)を導入したとする。
そんでもって、1asia=166.4円だとする。
(これ、現在のeuroとペセタのレート)

海外旅行に出かける飛行機が
シンガポール空港乗り継ぎだった場合、
待ち時間に両替の手間なく
カフェーでコーヒーを飲むことができる。
これ、オッケイ。

九州からフェリーに乗って韓国へ行く。
たまたま車の販売店を通りがかったら、
あら同じ車が日本でよりもだいぶ安いじゃん。
通貨が同じだから、物価がすぐ比較できちゃう。
これも、たぶん、オッケイ。

とうとうasiaが導入された日。
3000円のものを5000円札を出して買ったら
お釣りの表示は 12.02asia(12asia2センティモ)。
さぁこれは正しいでしょうか間違っているでしょうか。
これ、かなりしんどい。

お釣りのコインをじゃらじゃら渡された。
さぁこれは表示金額と合っているでしょうか。
コインに"2"と書いてあっても、
それは2asia(332円)なのかもしれないし
2センティモ(3.32円)なのかもしれないのだ。
これ、けっこうしんどいぞ。

いまスペインは、というか参加各国は
まさにこんな状況のまっただなかにある。
みんなが、通貨の違う国へ海外旅行にやってきて
まだすぐのころ、ってかんじ。


まずはいつものタバコ屋さんへ。
いつもフヤフヤしている看板じいちゃん、大丈夫か?
ドアを押すと、案の定、長い行列。

行列の先頭は、
ペセタで支払ってお釣りをユーロで返されて
さっぱりわからんと固まっているあんちゃん。
フヤフヤじいちゃんが説明している。

「じゃから、その札が5ユーロ、な。
 それはわかるじゃろ。
 そんでそのコイン、それが2ユーロ。
 1枚で2ユーロ、な?
 300ペセタちょっとになるとぞ。わかったか?
 それで、そのギザギザで金色のが10センティモ。
 で、そのちっちゃいのが1センティモ。
 だからぜんぶで7ユーロ21センティモ、
 間違いないか?
 そうか、それを換算するとな、
 1ユーロが166.4ペセタだから1200ペセタになる。
 間違いないだろう?
 なに、計算してみればすぐわかることさね。
 はっはっは、わしゃウソつかんよ。
 いいか? 納得したか?」

思いのほかに流暢な説明に、びっくり。
やるね、フヤフヤじいちゃん。
そして、私の番。

「えっと、バス地下鉄共通回数券を2枚、お願い」
「よう、かわいこちゃん。
 ハイハイ2枚ね。
 ユーロで払うかな?」
「いんにゃ、ペセタでお願い。
 まだペセタにも慣れるかどうかだったのに
 今度はユーロだなんて、本当にしんどいよ」
「そりゃそうだろう、
 わしも同じさ、難しいよ。
 ただこれが仕事だからそうも言ってられんのさね」

ちょうど手元にあったペセタがぴったりだったので
お釣りは発生せず。ちょっと残念。


こうして未だユーロにお目にかからぬまま、
知人へのプレゼントを買いにデパートへ。
この日のデパートは、
主御公現の祝日(スペイン版クリスマス&子供の日)の
直前ということで、あらゆる売り場が大混雑。
目当てのものを手に、店員さんにレジを頼む。

「支払いはカード、現金、どちらですか?」
「現金で。あっ、しかもペセタでいいですか?」
「もちろん。
 まだほとんどのひとが、両替終わってないもの」

ペセタの札を出して、レジを打って、
レジがパッカーンと開いたのはいいのだけれど、
そこからが大変。

「……あら、ないわね。ユーロ」

レジにはユーロ札が数枚、コインはほとんどなし。
隣のレジに行くも、そこもユーロ不足とか。
困った顔で相談される。

「ね、ユーロの細かいの持ってないかしら?」
「いや、これが今年はじめての買い物なんで
 ペセタしかないんですよ」
「じゃ、カードは?」
「今日、持ってこなかったんですよねー」
「うーん、ちょっと待っててね。
 この50ユーロ札を崩せるところ探してくるから」

その間、カードで買うひとがどんどん支払いを終える。
なかには、まとまった額を現金で支払って
小銭分をカードで支払っているひともいた。
ううむ、つわもの。

そして待つこと15分。
「あったわよー!」と、大喜びで彼女が帰ってくる。
しかし、そこからがまた大変。
彼女、8種類もあるコインを出したり引っ込めたり、
なかなか「14.42ユーロ」という
答えに合わせることができないらしい。
これが「2400ペセタ」だったら、すぐなのにね。
さらに待つこと5分。
「ちょっと待ってね」
隣のレジの女性を連れてきて、
教えてもらいながらお釣りを揃え終えた。

「やぁ、はじめて受け取るユーロなんですよ!」
そう言うと、笑いながら
「たいへんよー、なかなか慣れないわよ」
だって。
わいどんがしよっとば見たら、ようわかったばい。



(中央上:1ユーロ=約117円。
 左下:100ペセタ=約70円。
 右下:100円。
 なんせユーロコインはみなピカピカ)



その後立ち寄ったスーパーでは、
20センティモのお釣りだったのに
本来なら存在するはずの20センティモコインが
なかったらしく、
2センティモコインを10枚も渡されたり、
しばらくはこんな小さな騒ぎが続きそう。

でも、来週にはもうスペイン国内での
全流通貨幣の9割がユーロに変わると言われている。
数千万人そろって海外旅行に来たような騒ぎも
すぐに落ち着いてゆくのだろう。


それにしても、スペインではこれまで
5ペセタ単位に端数を切り捨てていたのだけれど
いまのところ1センティモ(1.66ペセタ)まで
きっちり計算して手渡してくれている。

このまま端数まできっちり計算が根づくのか?
やっぱり慣れたら端数切り捨てになるのか?

この数日の、1センティモのために費やされる
時間と労力とののしり声などを見る限り、
やっぱりスペインでは
端数切り捨てにした方が良いと、断固、思うぞ。

2002-01-20-SUN

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