KANA
カナ式ラテン生活。
スペインは江戸時代の長屋みたいさ、きっと。

【26週】

妊娠7ヶ月、どこから見ても妊婦です。
いやもう、電車やバスで、とにかく席を譲られる。
最初に気づいたひとが、パッと立ち上がってくれる。
こういう「あたたかく受け入れられているかんじ」が
いろいろ不安になっちゃう妊婦には、
なによりうれしかったりしています。

そしてこのところ、胎動がものすごいことに。
お腹の全体にわたって、沸騰した鍋のお湯のように
ボコボコ、グリングリンと動きまわっている。
26週の検診でも、エコーをしているまさにそのとき
足でガツーン!と腹を蹴り上げてくれた。
オウ、元気でなによりだ!

しかしプレ・カアチャンは、しおしおのぱー。
血糖値の再検査を命じられてしまったのでした。
なんでも妊娠糖尿病(!)の疑いアリとか。
たしかに、生まれてはじめて甘いものが好きになって
それがおもしろくてやたらむしゃむしゃ食べていた。
体重もドドンと増加。
再検査(100g糖負荷検査、3時間に4回採血)の
結果次第では、医師指導のダイエットがスタートとか。
いやこいつはネタになっていいね、乞うご期待!(泣)

さて、元気を出して、
今回はいよいよ出産事情です。



日本はサムライ産法?

スペインでは、無痛分娩が一般的。
背中(硬膜外というらしい)にチューブをつないで
部分麻酔をして、陣痛の痛みをとりのぞく方法らしい。
経験者によると、意識はちゃんとあるという。
調べたらスペインだけじゃなくて
アメリカやフランス、ベルギーなどでも
80%以上が無痛分娩だとか。

メリットは、まず、あまり痛くないから
リラックスしてお産ができること。
それに、すでに麻酔をしているため、
必要に応じて帝王切開に切り替えやすいこと。
また母体にかかる負担が少ないため、
産後の快復が早いともいわれるそう。
(なので入院が、約1日と短いのだとか)

デメリットは、麻酔薬によるトラブルが
皆無ではないこと。
(実際に友だちは、しばらく腰痛が残った)
そして、わりと簡単に帝王切開されてしまう、
という噂があること。
とくに赤ちゃんの頭が大きく、
母体の骨盤が狭いアジア人の場合。
……って、もろ私じゃん!

こちらの妊婦雑誌を買ってみても、
巻頭特集は「出産って、どれくらい痛いの?」。
もちろん無痛分娩を前提にして、だ。
どうもこちらでは、痛みへの恐怖というのが、
ものすごく強いような気がする。


一方、日本で主流なのは、
麻酔などを使わない自然分娩。
と、血糖値再検査中に友だちになった
妊娠25週のパロマちゃんに教えると
「ええーっ、麻酔なし!?
 そんなの私、絶対ムリ!死んじゃう!」
と、待合室で絶叫。
やがて大きな溜め息をついて、
「さすが、サムライの国ねぇ」
ひとしきり、感動していた。
イヤイヤあのねー。
どうやら、
<自然分娩=ハラキリ>くらいの衝撃らしい。

でも、日本でも「ただ痛みを我慢しろ」ではなく、
自然分娩とあわせて呼吸法やリラックス法を学ぶ
ラマーズ法やソフロジー法、
好きな体勢で出産するアクティブバースなどを
取り入れることが多いらしい。
ソフロジー法は、実はスペイン発祥なんだって。

メリットとデメリットは、無痛分娩の逆かな。
なにより「自然」な分娩というのが
安心できるポイントかもしれない。
麻酔なしがどれくらいの痛さなのかって
ちょっと想像できないけど……。
(でも麻酔のチューブをつなぎっぱなしってのも
 これはこれで痛そうだ)


ところで先日、オランダ在住の知人が
教えてくれたのだけど、
オランダでは約1/3が、自宅分娩なのだという。
スウェーデンでも、約半数が自宅分娩だとか。
自然にしろ無痛にしろ
設備の整った病院での出産が
スタンダードかと思っていたら、
そうじゃないところもあるらしい。

でも日本も、たとえば祖母の世代は、
自宅で産婆さんが取り上げてくれたのだっけ?
その時代ごとに、「これがいちばんいいだろう」
っていうのが選ばれてきたのだろうけど、
いわゆる「先進国」が
一昔前のスタイルに回帰しつつあるというのは
ちょっとおもしろいような気がする。

自宅出産の写真を見たら、
ベッドの上にあぐらのような姿勢で座る女性
(アクティブ・バースの座位分娩)を
パートナーの男性が後ろから
すっぽりと包み込むようにして抱きかかえていて、
かなりきもちよさそうだった。
もし私がオランダかスウェーデンにいたら
喜んで自宅出産をしたかもしれない。
(スペインも日本も自宅出産の割合は約2%)

さらに知人の話によると、
オランダでは国の施策として
産後すぐから自宅にヘルパーさんが来てくれて、
赤ちゃんの世話から家族用の買い物や料理まで
頼めばなんでもしてくれるのだという。
すごいなぁ。
こういうの、スペインにもあったら
うれしいのになぁ。

ちなみにある調査によると、
出生率が世界最低レベルの日本や韓国、
またスペインやギリシャなどの南欧諸国は
「子育ては母親の私的な仕事」という
社会通念が根強いので
子育て支援対策規模も小さいのだとか。
こういうオランダの例を実際に聞くと
納得しちゃいそうです。


さて、次回は初の保健婦面談報告、
そして血糖値再検査の結果報告の予定です。
ドキドキ。

カナ

※内田樹研究室内
 「今夜も夜霧がエスパーニャ」もよろしく。





『カナ式ラテン生活』
湯川カナ著
朝日出版社刊
定価 \700
ISBN:4-255-00126-X



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2006-09-27-WED

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