カナ式ラテン生活。 スペインは江戸時代の長屋みたいさ、きっと。 |
【スポーツマン・シップにのっとれ!】 オラ、アミーゴ! 今日もカッと怒ってはすぐに忘れちゃってるかい? そんな感情の激しやすいあなたには、 スペイン語がぴったり。 だって、あらゆる汚いことばがあるんだもの。 三つ編みの似合うような可憐な女の子までが 怒ったときやうれしいときやすごくいいと思ったとき、 こんなことばを吐きちらすの。 直訳すると 「性交!」 「売春婦の息子!」 「売春婦な母!」 「うん○!」 「ちん○!」 「キン○マ!」 もう、直訳すらできません。 外国人が使うとどうもおかしなかんじになるので (だって「ヤベーよ」って言う外国人を想像すると なんかちょっと変でしょ?) 使うことはあまりないんだけど、 聞いてておもしろいしなんせよく耳にするから 「教えて、教えて!」と訊いてまわったりしている。 そのたびに 「日本じゃなんて言うの?」 と質問されるんだけど、いつも答えにつまるのだ。 だって、とてもかわいいものを見つけたとして、 「やーん、どキン○マかわいいっ!」 なんて言わないもんねぇ。 (まさか流行ってたりしないよね??) それに呪いことばのように使うもの、 「チクショウ」とか「コンニャロ」とか 「シバキマワスド、ワレ」も使わないよね、そんなに。 日本は、ずいぶん礼儀正しい国なのだ。 スポーツの中継を見ていると、 日本での感覚との違いにびっくりさせられる。 ちなみにスペインで人気のスポーツは、 日曜日によく試合中継があるもので考えると サッカー、テニス、バスケットボール、 ハンドボール、水球、バレーボール、 F1、バイク、自転車、柔道、空手、新体操などなど。 実は柔道って、シドニーオリンピックで スペイン人選手が金メダルを獲っているのだ。 そのシドニーオリンピックの試合中継、 私は短い旅行先だったはずのアメリカの兄宅で、 ぎっくりした腰をさすりつつベッドに寝て見ていた。 するとびっくりしたことにこの中継、 あまりにもアメリカの選手だけしか映さないの。 たとえば水泳のレース、 日本なら「第1のコース〜」というところから 順に映してゆくと思うのだけど (この頭の中の声は、芸能人水泳大会のおりも政夫?) アメリカでは自国の選手のレーンしか映さない。 きっと出場人数も多いのだろうし、 中継は独占だから充分な放映時間もないんだろうけど、 それにしても、 実際のレースじゃなくて放送の問題とはいえ スポーツマンシップにのっとってねぇなぁと思った。 だって 「1回くらいはすべてのレーン、公平に映そうよ」 って、なんとなく思ったりしない? でも、そのくらいで驚いていたんじゃ ここスペインではやっていけないのであった。 もう、ここでの放送ときたら、 あきれるほどにスポーツマンシップにもとるのだ。 まずとにかく、自国の選手をベタベタに応援する。 「信じられないくらいに素晴らしい」 「彼はスペインの宝です」 いや、これはいいのだ。 日本でだってプロ野球の地元局では きっとおなじような放送をしているのだから。 ところがスペイン、 応援するきもちが先の方で曲がってしまって 試合相手の不幸を見て大喜びするようになってしまう。 つい先日行われたテニス全仏オープンの準決勝、 対戦したのは スペインの若手有望株、金髪の貴公子フェレーロ選手と 前年優勝のブラジルはグスタボ・クエルテン選手だった。 男前が好きな私はもちろん中継を見ていたのだが、 スペイン人のサーブがフォールトと言われると 「あっ、今のフェレーロのサーブは入ってましたよ。 なんてこった! なんて無能な審判なんだ。 あぁ今日はまったくツイていません」 なんてやみくもに怒ったり嘆いたりするし、 逆に対戦相手のサーブがフォールトになると 「よし! ここで追い上げたいところですね。 だからもう一回ミスしてくれればいいのですが。 どれ……、 いいぞ! やりました、またミスしました! これでダブル・フォールトです、素晴らしい!」 なんていうはしゃぎようなのだ。 しかも、これは実況担当者だけではない。 昨年のテニス、デビス・カップの決勝戦、 スペイン対オーストラリアの試合は よりによってスペインで行われてしまった。 案の定、観客席はピーピーガーガーと大騒ぎ。 ポイントを取れば指笛ヒュウヒュウ、 取られればブーブーブーイング。 審判が 「静粛に。」 と鶴の一声を上げたってちっとも効果がないばかりか 「お前がうるさいぞー!」 なんて野次られたりしていた。 しまいには、 客席全体でワーイ!と大ウェーブ。 な、なんかちがーう。 おーいスペイン人、 ちったぁスポーツマンシップにのっとれよーっ! っていうか、 これってラテンシップ? こうして見てみると、 日本人はほんとうに礼儀正しい。 約束の時間にそんなに遅れないし、 約束をやぶったらちゃんと謝って言い訳するし、 車線の合流するところではちゃんと交互に入るし、 前に入れてもらったらお礼の表現をするし、 ブラジャーの紐はあまり見えないようにするし、 食べかすや爪楊枝を床にポイポイ捨てないし、 犬のウンチはちゃんと拾って捨てるし、 トイレに行ったら手を洗うし、 教室で発言するときは挙手して指名を待つし、 おねえちゃんを見てやたらに口笛吹いたりしないし、 ヒマワリの種を吐き捨てながら食べ歩かないし、 バスが信号無視したりしないし、 列が長くても大声で文句を言わないし、 人前でブシャーッと鼻をかんだりもしない。 長崎で曾祖母と祖母と母といっしょに暮らしてきた私が ごくふつうにすること、たとえば レストランの席を立つときに椅子を元に戻すことでも 「いいの、いいのよ! 落ち着いて!」 などと、スペイン人にとても慌てられてしまうのだ。 日本シップ、ばんざあい! こんなかんじじゃ、 外食しても出てきた食器を大きさごとに揃えて重ね、 自分がこぼしたところはきちんと拭いて席を立つ うちのおかんなんか、 どれほどびっくりされることか。 ここまでくると、日本シップというよりも としよりシップ? うーん、なんだか膏薬みたいになっちゃったけど、 とてもすてきなシップだと思うのでした。 けっこういいよ、日本人。 |
2001-07-09-MON
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