カナ式ラテン生活。 スペインは江戸時代の長屋みたいさ、きっと。 |
【ヨーロッパ商店街、の話】 その昔、 ひとは自分の国を守るため あるいは自分の国を大きくするために 戦いを繰り返してきたとげな。 わが国の独立は守りたか ばってんよその国は欲しか、なんて ずいぶん勝手な話だけど。 たとえばイベリア半島だけを見たとしても、 現在のスペインはこの紋章に描かれる5つの国 ・レオン王国(右上、ライオンの絵) ・カスティージャ王国(左上、城の絵) ・ナバーラ王国(右下、鎖の絵) ・アラゴン王国(左下、細帯の絵) ・グラナダ王国(中央下、ザクロの実の絵)が それはそれは長いあいだ 戦ったり手を組んだり裏切ったりなんやかんやして、 やっといまのかたちになったものなのだ。 おとなりのポルトガルだって スペインの一部だったこともあるし、 ナポレオンに分割されちゃったこともある。 やっぱりたくさん血を流した歴史を経て、 やっといまのかたちになったのだ。 ユーラシアの西にちょこっとしかないヨーロッパって ずいぶん昔から、こんなことばっかりしてたらしい。 やかましい店主の多い小さな商店街、ってとこかな? こうして別々の国になったことで 言葉が違って意思疎通に四苦八苦したり 応援するサッカーチームが違ってケンカになったり 通貨が違って両替のたびに損した気分になったり 国境っていうのを通るたびに パスポートに押されるスタンプが増えたりした。 ところが最近、どうも事情が変わってきたらしい。 国境は無人で 外国人だろうが犬だろうが出入国検査はないこともあるし ヨーロッパ本土(つまりイギリス以外)の空港では パスポートにスタンプを押さないこともある。 電化製品には欧州各国語での説明書がついているし、 ごくふつうのハミガキ粉やポテトチップにだって 何ヶ国かの言葉が併記されていたりする。 たとえばこれ、 ポルトガルのマクドナルドで見かけた フライドポテト用のタルタル風ソース。 上段の"SALSA PARA PATATAS FRITAS"はスペイン語、 下段の"MOLHO PARA BATATAS FRITAS"はポルトガル語。 ("ソース"を意味するのがそれぞれ"SALSA"と"MOLHO"、 "ポテト"がそれぞれ"PATATA"と"BATATA") 右下の黄色いところには製造者のデータがあり、 どうやらドイツでつくられたものだとわかる。 それだけでも ヨーロッパはひとつになりよるんやなぁと思うんだけど、 なにがすごいって このソース、スペインのマクドナルドにはないのだよ。 ポルトガルのみで消費するものに隣国語も併記するたぁ、 こりゃすごいことじゃなかろうか? スペイン語併記のおかげで正しい用途がわかり、 ぐんとおいしくなったフライドポテトをかじりながら 考えた。 店主たちの仲が悪くて有名だった"ヨーロッパ商店街"、 どうやら本気で、まとまろうとしているぞ。 あと2ヶ月と少しで、 ついに新しい通貨"ユーロ"も流通をはじめる。 2002年1月1日から スペイン、ポルトガル、イタリア、フランス、 ベルギー、オランダ、ドイツ、オーストリア、 ルクセンブルグ、フィンランド、アイルランド、 ギリシャの12の国では、 ガソリンもタバコも水もレストランでの食事も ぜんぶユーロになるんだ。 だからこれからは、 "自分の国を豊かにするため隣国のものを強奪する" なんて暴挙は、そうそうできそうにない。 自分のとこだけの経済が良くても、しゃあないもん。 商店街みんなでがんばらないといけないのだ。 通貨が変わる。共通のものになる。 でも、同じユーロという貨幣で買う それぞれの国のワインやハムやチーズは やっぱりそれぞれの土地で違った味がする。 もちろん言葉も、ひいきのサッカーチームも違う。 こういうのは違ったままがいいな、と思う。 うまくいくといいな、 新生ヨーロッパ商店街。 これまで身勝手だった商店主たちが手をつないだ夢が ウソ、になりませんように。 |
2001-09-23-SUN
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