カナ式ラテン生活。 スペインは江戸時代の長屋みたいさ、きっと。 |
【同性も別人種も。家族の新形態】 ニュースなどでご存知の方も多いと思うが、 この夏、スペインでは 同性カップルの結婚が合法化された。 それ自体は世界で3番目らしいのだけど、 同性カップルに対して 養親となる権利や遺産相続の権利まで かなりきっちりと「婚姻」に伴う効果を認めたのは ほとんどはじめてという画期的なことだという。 スペインは、なんども書いてきたように えらく極端な国だ。 1975年のフランコの死まで 「女は家庭を守る良妻賢母であるべし、 簡単な計算ができれば学問はいらない」 というのが統治の基本姿勢で、 実際に 妻の重要な行動(長期旅行や銀行口座開設)には 夫の許可が必要だという法律まであった。 たった30年前ですよ、奥さん。 離婚が認められたのが1981年、 母体の生命を脅かすなどの特殊な場合でなくても 中絶が認められたのは、1992年になってから。 また離婚に関してはようやく今年、 これまで必要とされてきた 1年間の別居という条件がなくなった。 逆にこれまでは双方が離婚に合意していても、 1年間別居してからではないと 離婚も、もちろん再婚もできなかったのだ。 それがいまや、 閣僚の半分は女性であり、 そして「世界3番目の同性結婚合法」の国だ。 さらには今月、外国人の同性カップルでも 片方がスペインに住んでいれば結婚できるという 大胆な方針も発表された。 バカンスシーズンの真っ最中、 婚姻届出の殺到が予想されるバルセロナでは 受付窓口を通常の三倍に拡張して態勢を整えたという。 スペイン国内だけでなく 隣国フランス(車で数時間、飛行機で2時間)をはじめ いろんな国から 多くの同性カップルがやってきて、 「晴れて」結婚することになるだろう。 保守的カトリック教徒や それを主要な支持基盤とする旧与党PPなどは 口を極めて非難するけれど (改正法案も上院では否決され、下院で差し戻し可決)、 私は それでハッピーになるひとがいっぱいいるのなら 単純にうれしい。 結婚してみて、それがけっこう好きである私は、 そう思う。 (ちなみにスペインでは夫婦別姓なので、 結婚しても姓は変わらない。 また外国人の場合、母国での結婚の効果は その国の判断による、とされている) さらに、もうひとつの報告。 この数年、スペインでは、 国際養子縁組が盛んに行われている。 これは旧東欧や南米やアジアの貧しい国々からの 養子希望者を引き受けるもので、 国民的歌手のイサベル・パントハという ワイドショーに本当に毎日出てくるおばちゃんも ペルー生まれの女の子の養親となっている。 とくに、このところ圧倒的に多いのは 中国との養子縁組だ。 数年前、国営放送TVEが 中国での養子希望者の厳しい現実を伝える ドキュメント番組を放送した。 それがすごい反響を呼んだのがきっかけで、 中国から養子を迎えようとする家庭が急増した。 もちろんそれだけではなく、 中国の場合、養子縁組成立までの期間が短いことや、 中国がシングルマザーを養親と認める 数少ない国であることも、理由に挙げられる。 ともかくこのところマドリードだけでも 年間で約600人もの中国人の赤ちゃんたちが 新しいファミリーの一員として迎えられている。 実際に最近では、街を歩いていて、 スペイン人カップルにメロメロに可愛がられている 中国人のちびっこたち(約9割が女の子)を よく見かけるようになった。 これからきっと、アジア人全体を指す蔑称として 「中国人!」というひとたちが減ってくるだろうな。 だって大切な家族や友だちが、 中国オリジンのスペイン人なのだから。 スペインに来る外国からの移民も、 ますます多くなる一方。 (って、私もそのひとりなのだけど) 実はスペインの出生率は、EU諸国でも最低レベル。 それがこの数年少しずつ上昇し、 昨年久し振りに日本を上回る1.3台になったのは 移民による出産の増加が大きな要因と言われる。 レアル・マドリーと人気を二分するクラブ アトレティコ・デ・マドリーの最新CMのテーマも、 移民の夢と誇り。 移民は今日のスペインを構成する ひとつの大切な要素となっているのだ。 というわけでこの夏、スペインの各地では、 移民の親子や、 正式に結婚して夫婦(なんというんだ?)になった 同性カップルや、 その同性カップルに迎えられた養子や、 あるいは中国人の赤ちゃんのベビーカーを押す シングルマザーの姿などが、 わりとふつうに見かけられるはずだ。 いいね、いいね。 たまたまいまのところゲイではないけれど 外国人としてやはりマイノリティーに属しながら この国に生きる私としては、 どんどん居心地がよくなるような予感が、する。 いろいろ問題もある、のだろう。 でも、他人を見て不快だとかいうレベルじゃなく 自分自身についての切実なところで ハッピーなひとが増えるのは、 すごくいいことなんじゃないかと、思っている。 カナ
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2005-08-22-MON
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