カナ式ラテン生活。 スペインは江戸時代の長屋みたいさ、きっと。 |
【乳飲みコブタの丸焼き、の話】 昔むかし、2000年ほど前のこと。 スペインだって、ローマ時代やったとげな。 まぁローマのひとからは"辺境"、 やっぱり"どイナカ"って呼ばれとったとけどね。 当時、食肉はもうカットして売ってたらしい。 オリーブオイルもビールもワインもあった。 おっしゃれーなソファーベッドもあったんだって。 男はヒゲを剃り、女は化粧をして、 午後は散歩や観劇などを楽しんでいたという。 ……って、 いまと変わらんやん! ちょうどそのころ、 マドリーの北2時間のとこにあるセゴビアって町に 大きな水道橋が作られた。 高さ約28メートル(7階建てくらい? もっと?)、 全長約730メートル(一気に全力で走れないくらい)。 でもって、この石を組み合わせただけの水道橋は 20世紀になるころまで実際に使われてたらしい。 ……って、 ついこの間やん! この「人間なんて2000年でそう偉くはなってないぜ」 ということがよくわかるモニュメントを見ようと 先週末、セゴビアへ行ってきた。 水道橋を見たあとはもうひとつの名所、 ディズニー『白雪姫』の城のモデルとなった 質素なアルカサル(王城)をぐるっとひとまわり。 そして最後にもうひとつの名物、 仔豚の丸焼きを食べにレストランへ入った。 (レストランのパンフレットより。 右手に持った皿で、割るようにして切るのだ) こんがり丸焼きにされちゃうのは、 生後3週間までの乳飲みコブタちゃん。 皮は北京ダックのようにパリパリ香ばしく、 まだ身になりきれなかった柔らかい脂肪は トロトロつるつる口の中をすべる。 これが美味いのなんのって、奥さん。 医者からも勧められてとうとうダイエット中の私も 我を忘れてぜんぶ平らげちゃったわよ。 この日立ち寄ったレストランで いちばん手軽な昼のメニューは以下の通り。 前菜:野菜サラダ(牛一頭分用、くらいの量)または カスティージャ風スープ(かなり濃い肉汁) メイン:仔豚の丸焼き(1/6匹) デザート:アイスクリーム3種 それに山盛りのパンと、ワイン1本。 なんせ、昼にフルコースを食べる国なのだ。 しかも食事の前に、ウェイティング・バーで サービスのワインと つまみの"豚の脂カリカリ揚げ(皮と毛付き)"を わしわし食べてしまっている。 医者から 「コレステロール値が高くなったねぇ。 もう生ハム、チーズ、脂っぽいものはダメだからね。 え、じゃあなにを食べればいいのかって? 日本人なんだから、スシとかサシミ食べてなさい」 と言われてはいるんだけど、 セゴビアで豚を食べずに帰れっちゅうのは無理な話さ。 なあに赤ワインはコレステロール値を下げてくれると みのもんたか、川島なお美が言ってたもんね。 それに、サラダにたっぷりかかってるオリーブオイルも なんか忘れたけど健康に良かったはずだもん。 こうして典型的なスペイン中央部の料理を満喫し、 最後はコーヒーに砂糖をひと袋(10g)入れて飲んで、 あぁもうスペインだぁ!と大満足で帰宅したのだが。 夕方、胃のあたりがムカムカしてきた。 すでにぐったりしていたダンナさんが 「おっ、さすがのお前でも今日はきたか。ようこそ!」 ニヤリと笑った。チッ。 それから数時間は、ふたり並んでうんうん唸っていた。 たとえ赤ワインやオリーブオイルの成分をもってしても あの脂の量は、 日本製の我が繊細な胃腸では消化不能でござった。 でもそのかわり夜食のお茶漬けは、 そりゃもうとてもとても美味しかったのでした。 結論 : やっぱり私は日本人だわ。 まるで旅行から帰ってきて 「あー、やっぱり我が家がいちばん!」 って叫ぶようなオチ。 「そげん言うなら、旅行せんやったらよかとに」 と思ってたけど、 ひょっとすると こう言うために旅行に出るのかもしれないな。 それにしてもあと一年は仔豚の丸焼き、 たとえ夢でも見たくなかとよ。美味しかとけどね。 |
2001-10-11-THU
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