カナ式ラテン生活。 スペインは江戸時代の長屋みたいさ、きっと。 |
【日本人はヘンタイ?】 前回、日本人、とくに男子は どうも海外ではスケベだと思われてるらしいぜ、 という話をした。 そのイメージを世界中に広めたのは 「サムライ、ニンジャ」時代に やや間違って解釈されてしまった "GEISHA"ということばだった。 そして、いま、新たな日本語が、 スペインをはじめ世界中で 「日本人、とくに男子はやっぱり○○だ!」 というイメージを 怒涛のごとく広めつつあるのをご存知だろうか。 ……って、タイトルでバレちゃってるか。 そう、それは"HENTAI"です。 ヘンタイと言っても、 日本語で「変態!」というときに 私たちが思い浮かべる意味とは、ちょっと違う。 たとえば、"HENTAI"より一足先に定着した "OTAKU"ということばの場合と同じ。 日本では暗いイメージも伴う「オタク」だが、 海外では単なる「日本の漫画のファン」を 意味することが多い、らしいのだ。 実際にスペインでも 日本文化好きのあんちゃんたちが、 "Soy Otaku."(僕、オタクです!)と とってもうれしそうに屈託なく、 ときには誇らしげに、自己紹介してくる。 ここ日本から遠く離れた異国の地では、 マジンガーZ好きも、オタク、なんである。 さて、それでは"HENTAI"は どういう変貌を遂げたかというと。 うーん、言いづらいなぁ。 えっとですね。 言っちまいましょう。 それは、ポルノ・アニメです。 とくに、いわゆる「萌え」系の。 えー!って思うでしょ? でも実際に、ヤフーの英語版には"Hentai Anime"、 同じくスペイン語版には"Animacion y comics/Hentai" というカテゴリまであるんだよなー。 (ちなみにスペイン語版ではカテゴリ自体が 18歳以上用に指定されてます、ご注意!) それは私の感覚からみるとたしかに「変態」だけど、 それにしても「ヘンタイ」ということばが 即ポルノ・アニメを示すようになったのは ものすごいことだ、と思う。 ひょっとしたら、いま、若い世代では 「日本人の女子」のイメージは "GEISHA"から"HENTAI"(の登場人物)に なりつつあるのかもしれない。 イ、イヤだな……。 でもこれも、間違いなく日本文化だ。 だって、ヘンタイ・アニメは やっぱりすごく日本的だという印象を受けるから。 第一に。 ひょっとしたら思い違いもあるかもしれないけど、 伝統的に欧米の漫画は 動物などを主人公にして、 空想の世界を描いたものが多い。 ミッキーマウスとか、スヌーピーとか、 トム&ジェリーとか。 主人公が人間の場合でも、 バットマンやスーパーマンやスパイダーマンや、 途中から人間じゃなくなって やっぱり「ありえない」話になってしまう。 ところが日本のアニメは、 ふつうの人間が主人公になる。 ふつうの人間の、喜んだり悲しんだり、 そういうふつうの生々しい「生」が描かれる。 ドラえもんは人間じゃないけど ストーリーの軸になるのはダメなのび太だし、 巨人の星だってキャプテン翼だって ふつうの男の子がすごく頑張ってるのであって ユニフォームに着替えたら いきなり強くなる、とかいう 「ありえない」設定なわけじゃない。 というわけで、 「ふつう」の女の子 (だから、「ふつうさ」を強調するために モデルなんかだとまずやらないような 眼鏡をかけてる設定がやたら多いんだと思う)が 主な登場人物となるヘンタイ・アニメは、 やっぱり、 すごく日本っぽいのだ。 第二に。 これは友人に 会うたびに訊かれているような気がするのだけど、 「なんで日本のポルノ・ビデオでは 必ず、嫌がる女を無理やりヤルっていう 設定なんだ?」 という事実。 (実はスペインはヨーロッパで2番目かなんかに ブロードバンドが普及しているらしく、 インターネット経由のダウンロードで こういうのを楽しんでいるひとも多い) スペインではアダルト・ショップにも カップルで入ることが多いし、 ポルノ・ビデオもカップルで見る、らしい。 カップルのそれぞれが楽しんでこそ いいセックスができるんじゃないか、 そう言われると、 どう返しようもない。 ヘンタイ・アニメも、 主流は「嫌がる女の子を無理やり」なんだそうだ。 それはスペイン人から、 そしておそらく多くの外国人から見ると、 とっても日本的な設定なんである。 あっ。 ここまで書いて、やっと気がついた。 これって前回書いた 「日本人の女といふものは 男が風呂に入れば しずしずと後について入ってきて 男の体を無言で洗ってくれるのだ」 という おかしな日本人女性のイメージと まったく重なるではないか! 他でもない、 日本人のイメージを作り出していたのは やっぱり日本人だった、の、かな……。 ううむ。 これもまた、日本、なんす、 間違いなく。 (ちなみにこの回、 Magazine ALC2月号「世界・欲望図鑑」用原稿に 着想を得て書きました) カナ
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2004-12-23-THU
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