カナ式ラテン生活。 スペインは江戸時代の長屋みたいさ、きっと。 |
【ドレミファ太陽、ラ、シ、ド!】 オラ! ほぼ日ブックス#009、見ていただけました? 肩の力どころか尻子玉まで抜いてしまう アホアホスペイン人絵巻き、 新世紀最初のクリスマスプレゼントに最適! ……とかなんとか。 とにかく、気に入ったら買ってくださいまし。 読者カードをいただいた方、ありがとうございます。 スペインから絵はがき届けますので、待っててね! さて、今日の脱力スペインの話は、音楽なり。 スペインの音楽といえば 真っ先に思い浮かぶのがフラメンコ。 そして、フラメンコに欠かせないギター。 生ギター(エレキじゃないやつ)の生産と 教授については、 スペインは世界最高峰のところにあるということ。 よく知らないのです、興味あるかたゴメンナサイ。 というわけで フラメンコの唄い手やギターの弾き手、 あるいはクラシックギター奏者や音楽家の分野では スペインにはとても優秀なひとがたくさんいるらしい。 そういえば、 "世界三大テノール"のひとりホセ・カレーラスも スペイン人。 どの体格がいいおじさんか、わかんないんだけど。 そんでもって、ポピュラー音楽の世界で 彼らと同じくらいに世界的な知名度があるのが、 フリオ・イグレシアス。 といっても御年58歳、 日本なら加山雄三的なポジションなのかな? いまでも、週末の夜の音楽特番などに 貫禄たっぷりで出てきては見事な腰つきを見せ、 そこらの細っこい若造を圧倒しまくっている。 で、その細っこい若造のひとりが、 エンリケ・イグレシアス。 フリオ・イグレシアスの息子で 2年前に『バイラモス』をヒットさせた。 日本では西城秀樹がカバーした、あの曲。 いまでも1、2を争う人気若手歌手だ。 ところが昨年、インターネットで 「エンリケは口パクだった! ほんとうはこんなに音痴で英語もできない」 という疑惑の音声ファイルが流されてしまい、 記者会見の場で実際に歌ってみせなきゃならないほど 思いがけない騒ぎに発展した。 それを聴いても、真相はわからずじまいだったけど。 エンリケはともかく、 若いにーちゃんねーちゃんが歌うポップスは とにかく単純明快気分爽快あんたもそうかい、 ってのが多い。とくに夏なんて。 この夏、爆発的に流行ったのは、 「私は踊りたいの」という曲。 歌うのは、黒髪のねーちゃんと金髪のねーちゃん。 ボトムはぴっちりぴちぴちパンツ、 トップは辛うじて隠れてますか? という衣裳。 そんでもって 「私は踊りたいのよーっ、一晩中ね! 踊って踊って踊ってそんで、 踊って踊って踊っちゃうんだからっ」 みたいな歌詞で 腰をフリフリ、胸をプリプリ。 たまに、ユサユサおっぱいがついついポロリ。 どの要素をとっても、単純きわまりない。 これが、実に売れた。 ちびっこたちも真似して踊ったというし、 バスに乗ればジャージ着た10代の女の子から 杖をついたおばあちゃんまで口ずさんでいたもの。 つい振り返って見たおばあちゃんはすごく楽しそうで、 「ばあちゃん、まだまだ踊りますかい!」 拍手を送りたくなった。 スペインでは若い子ほど服や化粧が地味で、 年をとるごとに女性らしさを増してゆくから、 女として生涯現役なのかもしれない……って、 当たり前といえば当たり前のことやけど。 スペインではやる音楽は、 このように単純なものが多い、と、思う。 もちろん、世界のテクノの聖地イビサ島があったり ロックもあるし、いろいろな音楽があるんだけど、 テレビやラジオでよく耳にする曲は、単純だ。 「夏休み、夏休みっ、 僕の夏休み、君の夏休み、 みんなの夏休み、僕たちの夏休みっ!」とか 「夏を生きるのよ、生きるのよ夏を。 踊るのよ夏を、夏を踊りつくすのよ!」とか 「君がいなくなって 僕のこころははりさけそうさ。 あぁ愛しの君、僕のすべて、君こそがすべて」とか。 しかも、リズムももろに、どポップ。 お客さんがスタジオで観覧する音楽番組を見ていると、 手拍子をウラじゃなくてオモテで打つひとも多い。 つまり、4拍子の曲だったなら 洋楽によくある「弱・弱・強・弱」じゃなくて 演歌や歌謡曲の主流だった「強・弱・弱・弱」。 たとえば『TSUNAMI』の 「なーーみだーーみせーーずにーー」で (・・打・・・打・・・打・・・打)のウラじゃなく (打・・・打・・・打・・・打・・)のオモテになる。 田舎の親戚の集まりのカラオケ大会風、というか。 いやぁ楽しいわ、スペインポップ。 なんせ、アホらしいほど陽気だもんね。 そう思っていたら、驚愕の事実を発見。 理由は、音階の表わし方にあったのだ! えっと、日本でもお馴染みの"ドレミファソラシド"って 実はイタリア語なのだよね。 で、スペイン語とイタリア語は兄弟分の言語だから、 音階だって、ほとんど同じ表わし方。 違うのは、たったひとつの音だけだ。 スペイン語でのドレミは、 "do, re, mi, fa, SOL, la, si, do"。 つまり"ソ"だけが、なぜか"ソル"に変わるのだ。 こうしてなんでかいっこだけ変わっているこの"SOL"、 スペイン語で「太陽」という意味でもある。 ということは、スペインの音階って "ド、レ、ミ、ファ、太陽、ラ、シ、ド" なんである。 そりゃ、陽気にもなるってもんばい。 さらに、ギターを練習してみようと 友人からスコア(楽譜)を借りてみてまた仰天。 日本で見ていたスコアは、英語から借用して コードは"C, D, E, F, G, H, A, B, C"で書いていた。 明るいドミソなら、"C major"(シー・メジャー)。 学生時代にバンドをやってたんだけど、 意味なくラッキーストライクをくわえては 「ここはGでいこうぜよ」 なんて言ってたわけだ。 ところがスペインでは、 やはり、ここでもスペイン語をかたくなに通すのだ。 英語のを借用したりなんか、しない。 "シー・メジャー"は"ド・マジョール"である。 マジョールは「主要な」という意味もあるから、 「Gでいこう」という上のセリフを スペイン人の陽気なギタリストが言うと、 「ここは一発、 太陽の表通りズンズンズンでいこうぜ!」 ってなかんじになる、 のかもしれない。 イエー。 ラッキー真ん中どストライク。 なんかわからんけど、ストライクにハッピー! ではみなさんもご一緒に。 さんはい、 "ドレミファ太陽、ラ、シ、ドッ!" |
2001-12-02-SUN
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