大貫妙子、『愛のテーマ』を歌う。 『MOTHER3+』発売記念対談




糸井 『愛のテーマ』に詞をつけて
誰かに歌ってもらおうということになったとき、
ぼくはもう、最初から大貫さんに
歌ってもらおうと思ってたんですよ。
大貫 ありがとうございます。
糸井 それはもう、こっちの勝手な思いこみなんですけど。
だから、断られてもしかたないとは思ってたけど、
頼んでみるだけ頼んでみようと思って。
大貫 そんな(笑)。
なんでも言ってくだされば。
糸井 引き受けてくださって、ありがたかったです。
もう、コンセプトに関わることでしたからね。
なんというか、大貫さんの声が、
考えていたコンセプトにいちばん近くて。
どういうコンセプトかというと、
やっぱりこの歌は、ヒナワの歌、
お母さんの視点なんです。
大貫 うん。
糸井 かといって、お母さんっぽすぎても困るんです。
その、べたべたした癒しみたいになると
非常に困ったことになる。
微妙ですけど、そこがとても重要だったんです。
単に「優しさ」というだけのところに
まとめたくなかったんですよ。
というときに、大貫妙子っていう存在はね、
ちょっとこう、かけがえがないんですよ。
大貫 それは‥‥光栄(笑)。
糸井 できあがった『We miss you』を
きちんと聴いてもらえればわかると思うんだけど、
大貫妙子じゃなかったら誰か、
というのが思いつかないんだよ。
大貫 自分で言うのも‥‥ですが、それ、わかります。客観的に。
おかしな話ですけど、その立場になれば、
私も大貫妙子に頼んだかもしれないなって
なんとなく思うし(笑)。
糸井 そう、そういうことなんですよ。
たとえば、曲のアレンジとか演奏っていうのは
違った場合には、違うテイストとして
成立させるということがありえると思うんだけど、
声って生理的なところも大きいから、
「この人じゃなかったらこの人」みたいに
簡単にはいかないんだよね、やっぱり。
大貫 はい。

糸井 本人を前にして言うのも、なんですけどね(笑)。
この歌には「強さ」が必要なんですけど、
いわゆるマッチョな強さじゃダメなんですよ。
かといって、ものすごく母性的な、
「母の思いは何よりも強し!」
みたいなところに広がっても困る。
たとえば、お母さんの役を上手に演じる人がいて、
その人がすばらしい声をしていたとしても、
それは、この歌には、困るんですよ。
「生きててほしい」ってなっちゃうから。
だから、母性ともマッチョとも違う「強さ」を
きちんと具現化できる人じゃないとダメなんですよ。
するとね、やっぱり、大貫妙子を思い出す(笑)。
大貫 (笑)
糸井 で、最初に神田のスタジオで、
大貫さんに仮歌を入れてもらったときに、
なんていうか、「ロックだな」と思ったんですよ。
それは、ぼくにとって、すばらしい誤算だった。
大貫 そう言ってましたよね(笑)。
でも‥‥どこがロックっぽいと言われたのか、
自分ではよくわからなくて。
糸井 でも、大貫さんの中には
ロックがふつうにありますよね。
大貫 それはもう、ずっとありますね。
もともとロック少女でしたから、私は。
糸井 そう(笑)。
仮歌のあとに「ロックっぽいね!」って言ったら、
「私はもともとロックなのよ」
って大貫さんがおっしゃって、
それはねえ、うれしかったなあ(笑)。
大貫 (笑)


(続きます)

2006-10-30-MON


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