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糸井 |
『愛のテーマ』に詞をつけて
誰かに歌ってもらおうということになったとき、
ぼくはもう、最初から大貫さんに
歌ってもらおうと思ってたんですよ。 |
大貫 |
ありがとうございます。
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糸井 |
それはもう、こっちの勝手な思いこみなんですけど。
だから、断られてもしかたないとは思ってたけど、
頼んでみるだけ頼んでみようと思って。
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大貫 |
そんな(笑)。
なんでも言ってくだされば。 |
糸井 |
引き受けてくださって、ありがたかったです。
もう、コンセプトに関わることでしたからね。
なんというか、大貫さんの声が、
考えていたコンセプトにいちばん近くて。
どういうコンセプトかというと、
やっぱりこの歌は、ヒナワの歌、
お母さんの視点なんです。 |
大貫 |
うん。 |
糸井 |
かといって、お母さんっぽすぎても困るんです。
その、べたべたした癒しみたいになると
非常に困ったことになる。
微妙ですけど、そこがとても重要だったんです。
単に「優しさ」というだけのところに
まとめたくなかったんですよ。
というときに、大貫妙子っていう存在はね、
ちょっとこう、かけがえがないんですよ。 |
大貫 |
それは‥‥光栄(笑)。
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糸井 |
できあがった『We miss you』を
きちんと聴いてもらえればわかると思うんだけど、
大貫妙子じゃなかったら誰か、
というのが思いつかないんだよ。 |
大貫 |
自分で言うのも‥‥ですが、それ、わかります。客観的に。
おかしな話ですけど、その立場になれば、
私も大貫妙子に頼んだかもしれないなって
なんとなく思うし(笑)。 |
糸井 |
そう、そういうことなんですよ。
たとえば、曲のアレンジとか演奏っていうのは
違った場合には、違うテイストとして
成立させるということがありえると思うんだけど、
声って生理的なところも大きいから、
「この人じゃなかったらこの人」みたいに
簡単にはいかないんだよね、やっぱり。 |
大貫 |
はい。
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糸井 |
本人を前にして言うのも、なんですけどね(笑)。
この歌には「強さ」が必要なんですけど、
いわゆるマッチョな強さじゃダメなんですよ。
かといって、ものすごく母性的な、
「母の思いは何よりも強し!」
みたいなところに広がっても困る。
たとえば、お母さんの役を上手に演じる人がいて、
その人がすばらしい声をしていたとしても、
それは、この歌には、困るんですよ。
「生きててほしい」ってなっちゃうから。
だから、母性ともマッチョとも違う「強さ」を
きちんと具現化できる人じゃないとダメなんですよ。
するとね、やっぱり、大貫妙子を思い出す(笑)。 |
大貫 |
(笑) |
糸井 |
で、最初に神田のスタジオで、
大貫さんに仮歌を入れてもらったときに、
なんていうか、「ロックだな」と思ったんですよ。
それは、ぼくにとって、すばらしい誤算だった。 |
大貫 |
そう言ってましたよね(笑)。
でも‥‥どこがロックっぽいと言われたのか、
自分ではよくわからなくて。 |
糸井 |
でも、大貫さんの中には
ロックがふつうにありますよね。 |
大貫 |
それはもう、ずっとありますね。
もともとロック少女でしたから、私は。 |
糸井 |
そう(笑)。
仮歌のあとに「ロックっぽいね!」って言ったら、
「私はもともとロックなのよ」
って大貫さんがおっしゃって、
それはねえ、うれしかったなあ(笑)。 |
大貫 |
(笑)
(続きます)
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