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糸井 |
大貫さんは、
『MOTHER3』は触ったんですか? |
大貫 |
最後までやりましたよ。
まず『MOTHER3』をやって、
まえ、途中までやっていた『2』を最初から遊んで、
いちおう『1』までやりました。 |
糸井 |
ああ、そう(笑)! |
大貫 |
さかのぼっていったから、
『1』はちょっとたいへんだったけど。
「速く歩いてくれー」って(笑)。 |
糸井 |
そりゃキツかったですねえ(笑)。 |
大貫 |
でも、3つやってよかったです。
まったく同じものが
きちんと流れてることがわかったから。 |
糸井 |
ああ、それはうれしいなあ。 |
大貫 |
テーマみたいなものを
感じることができてよかったです。
泣いたり笑ったりしたから、
小じわが増えちゃったかもしれないけど(笑)。
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糸井 |
(笑) |
大貫 |
まわりのゲームの好きな人たちが
「いやあ、泣きました」
とか言ってたんですよ。
でも、まあ、自分はゲームで
泣くわけがないとか思っていたんですけど。
そしたら、やっぱり、そうなっちゃって(笑)。
みんな、大げさに言ってるんじゃ
なかったんだなって思いました(笑)。 |
糸井 |
所詮、ゲームだからって思うんですよね。 |
大貫 |
そうそう。
そこまで入り込むとは思っていなくて。 |
糸井 |
うん(笑)。 |
大貫 |
でも‥‥めずらしいゲームですよね? |
糸井 |
そうですか? |
大貫 |
強くなって勝つっていうんじゃないんだもの。
ゲームって、
ふつうは制圧していくものが多いでしょ。
だから、勝つということに慣れているなかで、
こういうゲームは、めずらしいなあと思った。
最後の最後に、そういうものが待っている。
ずっと遊んでいると、
なかなか頭が切り替わらないから
気がついたときは、ショックでしたね。
単純にストーリーがすばらしいとか、
そういうことだけじゃないんだなと思いました。 |
糸井 |
その、大逆転させる説得力、
みたいなものが必要になってきますからね。 |
大貫 |
うん、そう。
こつこつとレベルを上げて、
高いお金を払って、
いろいろアイテムをそろえてきたのに、
まったく違う世界になっちゃうじゃない?
で、ふつうは、ああいう、
いわゆる愛みたいなところに行っちゃうと
ちょっと鼻白むところもあると思うんだけど、
ぜんぜんそうならないというのはすごいですよね。
あいたたたたた、っていう感じ(笑)。 |
糸井 |
(笑) |
大貫 |
ゲームのことになると、無口になりますね(笑)。 |
糸井 |
‥‥いや、そうなればいいな、
と思ってつくってたから(笑)。
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大貫 |
あれは、
ストーリーをまず書くんですか? |
糸井 |
ストーリーでは、ないですね。
まずは、シチュエーションですかね。 |
大貫 |
主人公のおかれた境遇のようなもの?、
細かいセリフとかじゃなくて。 |
糸井 |
そうですね。原案というか、プロットというか。
だから、ひとつの街について、
紙1枚ですむくらいの雑なものですよ。
その紙をめくると、つぎの街が書いてあって。
で、そこにオモチャを置いていくみたいに、
「つぎにこんなふうな
逆さまな街があったらいいぞ」とか、
そういうのを足したり引いたりして、
最初はジェットコースターのコースを
設計するみたいにしてつくっていくんです。
で、それをもとに形にしてもらって、
いろんな矛盾とか行き詰まりとかあるんですけど、
あえてそのままにして進んでもらって、
それを最後にセリフで仕上げていくんです。
だから、まあ、たいへんなことですよ(笑)。 |
大貫 |
たいへんですよね。
ものすごく時間もかかるでしょう? |
糸井 |
作業に費やしてる時間というのは
そんなでもないんですけど、
開発を再開してから丸3年かかりましたね。
とくに最後の、全部のセリフを
入れていく作業はたいへんでした。
なんていうか、
「ナイスなホラを吹いてやりたい」
っていう気持ちがやっぱりあるからね。
リアルなゲームをつくるのとは
またぜんぜん違うものなので。
ことばひとつ書くにしても、
「宇宙」と書くか「ぐんまけん」と書くかで、
サイズってまったく変わっちゃうんで、
遊んでいる人の顔を想像しながら、
足したり引いたりしていくという。
そういう、踊りながらお客を見ている人、
みたいな感じでセリフを考えている時間が
じつはけっこう長いんですよ。 |
大貫 |
はあーーー。 |
糸井 |
もうしない(笑)。 |
大貫 |
もうしないんですか? |
糸井 |
うん。もう、しない(笑)。
すくなくとも、ああいうスタイルのゲームは
ぼくにはもう体力的に無理ですね。
やりたいと言い出す可能性があるのかな? |
大貫 |
(笑) |
糸井 |
あったら、それはもう喜んでやるんだろうね。
つまり、それだけの動機が
生まれるっていうことだからね。
まあ、ちょっと考えらんないけどね。 |
大貫 |
ふーん‥‥じゃあ、もう、
『MOTHER3』で終わりなのかな。 |
糸井 |
そうですね。だから、思えば、
この『We miss you 〜愛のテーマ〜』の詞が
最後の『MOTHER』仕事だともいえますね。
だから、もちろん売れてほしいとは思うけど、
うまく宣伝したから売れるとか、
そういうものでもないような気がするんですよ。 |
大貫 |
うん、うん。
ほんとうにそうです。 |
糸井 |
つくっているときは、
プロモーションでうまく化けるといいな、
とか思うんですけどね。
とくに『MOTHER』関連の仕事は、
長くやっていて実感したんだけど、
こういう感じになるんだろうな、
というところにきちんと動いていきますね。 |
大貫 |
それは、ほんとうにそうですよね。
だから、売るためにやると強く割り切らないかぎり、
落ち着くべきところに落ち着くんですよ。
売るためにやっても必ず売れるわけでもないし。
だとしたら、やっぱり、
しっかりとつくっておいたほうがいいですよね。
揺るぎなく。 |
糸井 |
土台からね(笑)。 |
大貫 |
そう、土台からね(笑)。 |
糸井 |
おかげで、いい曲になりました。
どうもありがとうございました。 |
大貫 |
こちらこそ、ありがとうございました。
(大貫さんと糸井の対談は今回で終わりです。
お読みいただき、ありがとうございました)
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