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糸井 |
大貫妙子という人は、
自分の土台だけを延々とつくり続けてきたと
おっしゃいましたけど、
これ(『We miss you 〜愛のテーマ〜』)も、
そうとうしつこくつくったって、
立ち会ったスタッフから聞きましたよ。 |
大貫 |
いや、そんなでもないです。 |
糸井 |
そんなでもないですか。
でも、歌入れに昼から12時間でしょ?
そのあと、ボーカルのベストテイクを選んで
調整するのに朝までかかったって‥‥。 |
大貫 |
自分の作品だったら、もっとしつこいです。 |
糸井 |
うわあ(笑)。 |
大貫 |
でも、さすがにそこまでは
やっちゃいけないなと思って。
ちょっと心残りです(笑)。 |
糸井 |
スタッフもそうですけど、
ずっといっしょに作業してた
HAL研の酒井(省吾)さんが
「すごかったです。ゲーム業界はまだまだ甘い!」
って感心してました。
ぼくなんかは古い人間ですから、
「あの時代の人はみんなそうなんだよ」
って言ってたんですけどね(笑)。 |
大貫 |
そう。ほんとうはまだ
ぜんぜん足りないぐらいなんですけどね(笑)。 |
糸井 |
ほんとうなら、もっとやるんですね。 |
大貫 |
もちろん手を抜いたわけではないですけど。
たとえばステージでも、頼まれたことでも、
ひとつひとつを丁寧にやるということは
やっぱり譲れない部分なんですね。
どんな小さな仕事でも最後まで見届けたい。
人に預けちゃうともう責任がとれないですから。
だから、それはもう、自分の信念。 |
糸井 |
そういう、一個一個が土台づくりなんだね。 |
大貫 |
そうなんじゃないかなと思う。
けっきょく、そう考えると、
自分は音楽をつくってなくても
よかったのかもしれないですね。
自分の土台を磨いてさえいれば。 |
糸井 |
ああ、そうか。
たまたまいま音楽っていうものを
テーマにしているけれども。 |
大貫 |
そうです。
音楽じゃなくてもよかったのかもしれない。 |
糸井 |
で、そうじゃない人もいますよね。
音楽じゃないとダメだという人。 |
大貫 |
はい、います。 |
糸井 |
音楽の場所にいるのが自分だ、
っていう人ですよね。
でも、大貫さんはもうちょっと音楽かと思った。
というのは、大貫さんは頭じゃなくて、
ボディで音楽を鳴らしてるじゃないですか。 |
大貫 |
うん。そうなんですけどね。
でも、それもまあ、
「こういうことをやりなさい」と
誰かに言われてるような
背中を押され続けてるような
感じはします。 |
糸井 |
うん、わかってる。 |
大貫 |
歌うことって、
誰にでもできるようだけれども、
この声で歌うっていうのは
生まれ持ったなにかだと思うので、
それはあるときから、
すごくありがたいというふうに
思うようになったんですけれど。 |
糸井 |
代わりがいないって言われることほど
すばらしいことはないですもんね。 |
大貫 |
そうですね。そう、ほんとうに。 |
糸井 |
AじゃなければBって言われる中の
BやCでありたくないですよね、やっぱり。 |
大貫 |
そうですね。 |
糸井 |
それを歌い手で言われる人って、
やっぱりそんなにはたくさんいないですよ。
とくにポップミュージックの分野では。 |
大貫 |
だとしたら、やっぱり、
ありがたいですね。
(続きます)
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