OL
ご近所のOLさんは、
先端に腰掛けていた。

vol.1
-light and shadow-

こんにちは。
わーい。とうとう私も携帯電話持ちになりました。
今頃何言ってんの?とどつかれそうですが、
今日届いたばかりのほかほかなのでうれしくて。

電子メールは仕事で使い始め、
かれこれ3年と7カ月になります。
エキスパートと呼ばれて
「いえいえ」なんて謙遜して貫禄を見せたり、
メールアドレスの無い人のことを
「サイバー難民」と呼んで
優越感を味わったりもできたのですが、
携帯電話には出遅れました。

「公衆の中で、そこに居ない人に語りかけるなんて」
というアナログ発想的な違和感があって
踏み切れなかったのです。

でも周り中で「居ない人と話す」という現象が起き始め、
もう「違和感」なんていってるバカは
取り残される状況になってきたし、
私も取り込まれる時期がやってきたのでした。

ほんのはずみだったんです。
近くのスーパーマーケットにネギを買いに行ったとき、
抽選会で鐘鳴らされて「おめでとうございます」と言われ、
契約しちゃいました。

簡単にモバイラーになった。
深く考えていたのがバカみたい。

こんな風に、世の中のサイバー化は進んでるのか。
昨日までの違和感とはサヨナラして、
今日からはサイバーとナカヨクする。
ヒタヒタとデジタルの波は押し寄せる。

と語ってたら、
遠く金沢の70歳になったばかりの父から電話。
「コンピュータ買ったよ。メール出せるように
正月に帰ったらセッティング頼む。」
ですって。
おお、とうとう実家もサイバー化される時代が
やってきたのか。すごいです。
父は理科系の人だけど化学の方だから
デジタルには弱いはず。
大丈夫かなぁ。

そんなことで書き始めましたが、
「先端」なところからの「末端」なメールの
始まり始まりです。
アラタメマシテ、ヨロシクオネガイシマス。

さて、今日のお題は「光と蔭を見つめよ」です。

実はこのメールを始めるに当たって
こんなことを書いていたのです。

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ここでよく耳にする言葉のひとつは

『研究開発』

デスクトップ日本の研究開発はどうも哀しい、
トホホな状況らしいよ。
あれ? 優秀な大学があって、
日本人は
頭いいとか言われてなかった?

うーん、研究者の
やってることそのものは
IQ高くて私にはさっぱり、100回説明されても
わかんないことをやってるんだけど、
どうやら「システム」が問題なんだって。

例えば、ソフトウエア先進国のアメリカは
研究開発(R&D)がとてもうまくいってる。
お金も政府やメーカさんからたっぷり出るし、
研究したものはしっかり製品化されるまで面倒みるし、
いいもの作れば大学も儲かるし、
研究者もお金持ちになっちゃうし、
政府もお金出したからってうるさくしないし。
ハッピー、ハッピーみたいよ。
そんなR&Dの産物が今あなたが見てるブラウザだったり、
OSだったりして大成功だってよくわかる。
マーク・アンドリーセン(Netscape創始者)も
ビル・ゲイツも生まれてくる。
つまり、土壌がいいわけだ。
素材もよくて肥料も良い。
そりゃ、りっぱな製品が生まれ、
リッチマンも生まれるよね。
産・官・学連携プレー(産業、官庁、学術機関の
協力のこと)ばっちり。

それに比べるとわが小舟。ちょっと寒い。
日本の研究開発システムの
どこが弱いのかっていう問題は根が深いらしい。
どうも風通しが悪い。
産・官・学もうまくつきあってないらしいし。
隣人とつきあうのって難しいね。
合う人合わない人いるし。ジェラシーもあるか。
秘密主義? ケチ? 結局人間性なのかなぁ。
そんなことかなぁ。
いやいや、それはアメリカだって同じでしょう。
日本は、お金をもらうと足枷みたいのが
どっちゃりついてくるし、大学では
製品化して儲けるような仕組みにはなっていないし。
せっかく良い種があっても育たない。
ふむ。
「日本の情報産業をどうすべきか」って問題は
他にもいろいろなところに問題があって
一筋縄ではいかないらしい。
どうしたらアメリカみたいにいい流れを
作ることができるんだろう。
いやー、難しい。難しく考えるから難しいのか。
いややっぱり難しい。
コトは情報技術だけに留まらず、
カルチャー論争まで起こってしまう。

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早速これを読んだ隣の部屋の「司令塔」から
雷が落っこちました。

「君は『陰』の部分を見落としている!
こんなことを書いていたら君のオツムの程度が
ばれるでしょう。アメリカは競争社会で、
R&Dでは見事な業績を納めているが、
見過ごしてはいけない敗者がいるんだ。
リッチマンが出ると同時に多くのプアマンを
生みだしている。
スラムができるのもこういう部分があるからなんだ。
日本を見てみなさい。スラムがないでしょう
(らしきものはあっても)。
アメリカのやり方がいいのか
日本の中流大量生産型の、
言ってみれば「平等主義」がいいのかはわからないのだよ。
君のように一面だけを見て
書けばいいというものではなーい。
ものごとには「光と陰」があるのだ。」

しゅん。
だってだってシステムのことだけを考えてたらさ、
・・・ぶつぶつ。

でも確かに「司令塔」の言う通りです。
私の大好きなNew Yorkを見ても貧乏と金持ちの境目が
歴然とある。
しかし、日本はちょっと貧乏もちょっと金持ちも
同じ道を歩いているように思える。
目を剥くほどの勝者も出ないかわりに、
敗者になって食うに困る人がゾクゾク出る状況ではない
(最近はリストラという名で排出している状況ですが)。
やっぱり、アメリカのやり方がベストで
「さあ日本も完全競争型に」と簡単にはいかないのです。
陰の部分を見落としていました。ごもっとも。

少なくとも現在は
「Information Superhighway 政策」を展開して
アメリカは元気があります。
日本も追いつけ追い越せと必死なのですが、
今までのように「追いかける」という精神では
うまくいかないことを自覚し、
「何を、どうやって」と悩んでいる最中なのだと思います。
どんなシナリオを書くのでしょうか。
でもなぁ、
果たしてシナリオを書こうとしているんでしょうか。

この間、イトイさん(darling)と
「デジタル社会においては、コンテンツこそが大切であり、
日本的文化を打ち出せる
おもしろいツールになるのではないか」
と話していたのを思い出しました。
いや本当は「こんなお茶の間的なホームページの発想って
日本らしいよね」としゃべっていたわけですが。
こうやっていろんなおもしろい実験をやってみることで
道を探ることは大切なことだと思います。
その実験はネットワークコンピューティグの発達によって
個人にも参加可能な時代だと言えます。

というわけで今回の参考文献は

「中流が消えるアメリカ」稲葉陽二 著 (日本経済新聞社)
「アメリカ 黄昏の帝国」進藤栄一 著 (岩波新書)
「アメリカ産業社会の盛衰」鈴木直次 著(岩波新書)

でした。「光と陰」を見つめて下さい。

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なにしろ「先端」の中の「末端」から見たことなので、
見方的には独断でアバウトなところがあります。
ですからすごい専門家が読んだら
「違うぜ」と思われることも多々あるかもしれません。
その点はご理解・ご了承下さい。
どうかほんのご参考に。
ではまた。

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福嶋真砂代
先端なところにご興味のある方はこちらへ
http://www.icot.or.jp

1998-12-26-SAT

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