vol.205
- pyramid flower
‥‥with all my love
©Hana Asami/AS-AMID Inc.
□さよなら さんかく‥‥。
ちょっとタイムスリップして13年前、
このコラムのタイトルになってる
“センタン(先端情報技術研究所)”で
仕事をすることになったときのことでした。
「えっと、イーメールはできますか?」
「は‥‥?」
面接でそんなやりとりがありました。
とりあえずブラインドタッチはできるし、
Macで「保存」とかもできちゃうし、
何言ってるんだろ‥‥おじさん‥‥、
えっ? イーメールってなに?
とちょっと口をとんがらせたのを憶えてます。
つまり、
“コミュニケーションネットワーク”という、
単語も、実体も、全然知らなかったとき、
“イーメール”なんてハイカラなものは、
まわりに誰も使ってなかったときでした。
それがつい10年ちょっと前のこと、なんですね〜。
「こんにちは、ようこそセンタン研へ」
遠く離れたビルにいるおじさんからの「手紙」が、
わたしの目の前のデスクトップのスクリーンに
ポッと浮かび上がり、
「お〜〜〜! これか!」
謎の“イーメール”がついに現われた瞬間でした。
なんとも初々しい感覚!
ちょっと思い出してしまいました(笑)。
もうそれからは、
ネットで仕事をするのがおもしろくて仕方なくて、
なぜか「この気持ちを誰かに伝えたい!」
あなたがどこかで「いま」やってることを私も見てる!
そう言いたくてたまらくなり、たまたま、
「ほぼ日」 お料理実況“文字”中継を見つけて、
へぇ〜、楽しそう〜と、
思わず研究室からメールしました。
というか、逆実況したんです。
「おっ、いまじゃがいも、入りました!
あ〜、おいしそうですね〜!
食べたい、ほくほくっ」というぐあいに。
それが「ほぼ日」とのおつきあいの始まりでした。
ずっと変わらず“ごはん”に弱いわたし。
(脳内メーカーは「食」で埋まってますから)
イトイさんと事務所で長々と話をしたあと、
「なんか書いてみない?」ってことになり、
おっかなびっくりで、はじまりました。
それで、コラムの100号くらいまでは、
センタンにウロウロしていたヒマそうな
(じゃないんだけど)研究者をつかまえては、
超難解な話を聞いて頭を抱え込み、
それでもセンタン裏話みたいなのを書いてみました。
自分の頭のキャパを越えているものを、
“言葉”で書くのはほんとに難しくて‥‥。
でも、ロボットとか、バーチャル・リアリティとか、
まわりには興奮する研究の話がうようよあったし、
研究が進むスピード感ったら凄かった!
なにしろ彼らは、この10年間たらずで、
こんなに世界を変えてしまった張本人たちでしたから。
そうこうするうち、月日が経って、
ネットワークもイーメールもコンピューターも、
ふつうに「日常」になっていき(それもスゴイ)、
センタンがやってた「普及」のお役目がおわりました。
私は人工衛星のウェブを作る仕事に
転職したのだけれど、それを書きながらも、
なんだか書ききれてないものが、
胸のなかにモヤモヤモヤモヤしてました。
それはセンタンの司令塔(故・内田俊一所長)が
ぽつりと言ったこんな言葉。
「キミ、技術の発展の裏には“闇”があるんだよ。
光と影があるんだよ、そこを見ないと‥‥。」
コンピューターを使って、
これまで想像もできなかった便利な世界を作る、
それはステキなこと。
でもそれを使うのは「人間」なのだ。
じゃあ、その人間はどうなっていくのだろう‥‥。
それは計算して「解」がでるような、
そんな単純なわけにはいかなくて、
社会に起こる不可解な出来事をみても、人間は、
どんどん闇の深みに向っているように見えました。
どうなるかを見守りつづけないと、と思いました。
なんとなく、怖くて‥‥。
□そこに映画が‥‥。
映画は、もともと大好きで、
映像技術がセンタン研究と密接に関係がある
というのもあって注目していたのだけど、
それ以上に“人間の心の闇をすくいあげ見つめてる”
そう思ううちに、映画人に会う機会が増えていき、
話を聞きながら、どんどんハマりました。
気がつくと抜けられなくなっていました。
とくに、
心のヒダの薄い影を見落とさずにそっと映したり、
あるいは、えぐり出したりしてくれる監督や、
それを体現するタフな俳優たちに、
もっともっと、もっともっと、話を聞きたくなりました。
そんなわけで後半は映画のことを書きました。
ほぼ100回くらい書きましたが全然足りないです(涙)。
いまこの瞬間も“影”は生まれてるし、
いまこの瞬間もそれを“救い、撮ってる”人がいる。
それを観ている“誰か”が救われている。
だから映画は死なないし、これからも、
そんな“光と影”を見つめつづけていきたいです。
□10年間、ありがとうございました!
10年って、なんかびっくりだけど、
こんなにつづけてこられたのは、
前半は、研究者のみなさん、
後半は、映画関係者のみなさん、
話を聞かせてくださったみなさん、
そして「ほぼ日」編集部のみなさんと、
読んでくださったみなさんのおかげです。
心から感謝いたします。
すべてのことがめっちゃ楽しく、
たくさんのことを学びました。
「ほぼ日」ほど素敵なメディアはないです!
□さて、これから‥‥。
さいごに、お知らせなどいくつかさせてください。
●お知らせ、その1
もうすぐ、映画ライターの仲間と一緒に、
「映画インタビューサイト」を立ち上げます。
ここでやっていたみたいに、
ゆるゆるな感じで、映画監督や俳優さんの、
かなりオフオフなお話を聞きたいなと思います。
ときには街に出かけてロケもあるかも‥‥。
そこでですが、ご出演いただける方、
「俺(私)の映画の話を聞いて!」という方、
また一緒にサイトをやりたい方、
さらにスポンサーになって下さる方(重要)、
ただいま大募集しております。
スタートするときには、きっと「ほぼ日」で、
お知らせさせていただければと思います。
どうかよろしくおねがいします!
●お知らせ、その2
またセンタン系の(まーしゃが聞く)、
科学者インタビューの連載がはじまりました。
「よこがお」
独立行政法人 産業技術総合研究所、
情報技術研究部門の研究者にフォーカスして、
ロングインタビューをしています。
日本のコンピューター界の先頭を走っている、
鋭くて、おもしろい人たちを紹介します。
またまたセンタン話なので頭は大変ですが(笑)、
新しい発見の連続を楽しみながら、
わりにのんびりゆるゆるやってますので、
ぜひ、お読みくださいね。
●お知らせ、その3
「映画トークイベント」をやります。
来年の初夏くらいになると思いますが、
桑沢デザイン塾で、映画監督をお招きして、
映画のお話をたっぷり伺おうと思います。
ここでやっていたインタビューをもっと時間をかけて、
さらにライブで(めっちゃドキドキですが)やる感じです。
読者のみなさんにひとつお願いがあるのですが、
これまでインタビューした映画関係の記事のなかで、
この人の話をもう一度聞きたいと思う人がいたら、
ちょっと教えていただけるとうれしいです。
もちろんご感想だけでも、大歓迎です!
●お知らせ、その4
そして、宇宙。
これは壮大な夢なんですが、
「お茶の間に“宇宙”を!」な〜ていうテーマで、
テレビの宇宙バラエティ番組があったらな〜と思うんです。
宇宙のことを、もっと日常的に感じたり考えたり、
それが地球のことを大事にすることにつながるなら、
もっとたくさんタイムリーな話を聞いたり、
マニアックでオタクな“宇宙自慢”をしたり、
ゆる〜く宇宙を語れる番組を作りたい、
なんて思っています。子どもたちのためにも。
こちらも一緒にやる方、募集中です。
いつかリアルになりますように!
いろいろ書いちゃいましたが、
そろそろおわかれです。
では、つづきはブログとかで!
★シネマクロニクル(ブログ)
★MA&CO.(marsha's homepage)
★REALTOKYO(cinema picks書いてます)
もういちど、みなさん、
ご愛読ありがとうございました。
またどこかでお会いしましょう。
いちばん最後になってしまいましたけど、
だーりん、ありがとうございました!
心からの愛と、感謝をこめて。
まーしゃ
*最終回にむけて、
イラストレーターの浅見ハナさんが、
「10年間、お疲れさまの気持ちを込めて、
それと、これからの希望と諸々の成功を祈って」
トップの絵『pyramid flower』(named by marsha)
を描いてくださいました。
ハナちゃん、ありがとう!
★浅見ハナ
*メールは、
postman@1101.com
marsha2222@gmail.com
いずれでもお送りください。
Special thanks to ITOI darling,
Yoshiaki Takei, Mogi-chan, all hohonichi staff,
my friends and my family.
Illustration by Hana Asami and
writing by(福嶋真砂代).
All rights reserved.
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