OL
ご近所のOLさんは、
先端に腰掛けていた。

vol.58
- semantic transcoding 1-


お帰りなさ〜い。

QB
ロボットのPongとQBは
「うつくしま未来博」〜「ロボフェスタ関西」と
営業の旅(?)から無事に帰ってきたようです。
どうだったのかしら?はらはら。
まるで母の心境…。

その模様は、このコラムを読んで、
QB製作に参加してくれることになった
学生研究員の小熊さん(ありがとう!)
が作ってくれた貴重なレポがあって、
QBのまばたきのキュートな写真も
見ることが出来ます。
おぐま特派員のQBプロジェクトルーム

QBのことがわかりやすく書いてあるし、
QBが出来ていく過程みんなの奮闘の足跡
よーくわかるんですよ。これ、最高!!
小熊さん、ほんとにありがとうございました。

QBやPongはこれから、
おそらくいろんな形でそのアイディアや
A.I.の機能がさらにバージョンアップし継承されて
気がついたときには、私たちの生活にすでに
溶け込んでいるんじゃないでしょうか。
「ふと、そこにいる」みたいな…。
その登場の仕方もすっごく楽しみです。
みなさんも楽しみにしていてください。

いよいよトランスコーディングです。

さて今日からの話題は、
私たちも賢くなれるという不思議ツール!
トランスコーディングという
長尾さんのもうひとつの研究の話です。

セマンティックトランスコーディングシステムの構成
(AITEC Report H12-4
「人間主体の知的情報技術に関する調査研究 IV」より)
これは、私も何回かプレゼンテーションを聞いて
「あったらいいなー、欲しいなー」と
切実に思ってるソフトのひとつです。

トランスコーディングというのは
PC、携帯電話、PDAなどなどの
使うマシン環境の違いや
異なる言語環境での利用など、
いろいろとインターネット利用が
多様を極めてきている中…、
発信者が「入力」を一回すれば、
いろいろな状況に応じて、自動的に、
コンテンツが変換されていくという技術なんです。

その中でも長尾さんの研究は、
セマンティック・トランスコーディング
と言います。なにやらかっこよいけど
難しそうな名前ですね。
直訳すると「意味的に行うコード変換」。

で、それは何か?

『インターネット上のさまざまなコンテンツを
もっともっと賢く便利に活用するためのツール』

つまりインターネットで
情報を発信する人にも受信する人にも
「賢いゲタ」を履かせてくれるツール

なーんて大胆に言ってしまっていいかしら>長尾さん。

実は、トランスコーディングを紹介する
長尾さんの本格的インタビューサイトが
ガツンとコチラにあるんです。
4番目のストーリーです。
(長尾さんのこともクローズアップ!)

これは、私のインタビューを読むよりも
ちゃんとしていていいかもしれない(笑)。
これを見ると「あーだ、こーだ」と
トランスコーディングのことを説明しなくても
大丈夫かなと思ってるのですが、
ちょっと時間を割いて読んでみてください。

私のインタビューは、言ってみれば、
裏サイトという雰囲気で…。
長尾さんの本音もちらりと出てくるし、
きっと楽しめると思うんだけど。

アノテーション

ひとつだけ、アノテーションという
言葉が話の中に出てくるので、その説明をします。

これは、大事な言葉です。
アノテーションとは、要するに
Web上のコンテンツ(テキスト、画像、映像、音声など)に、
ひとつひとつ加えていく「裏説明」みたいなものだと
考えてください。

例えば、テキストなら、
文節や文法などの分析が裏(別のサーバ上)で、
施されているとか。
画像なら「いつ、どこで、誰が、どういう状況で撮ったもの」
あるいは「赤いセーターを着た女性が手を上げているシーン」
のような情報が、画面には見えないところで
付加されているというものです。

もうちょっと専門的なところに足を踏み入れちゃうと、
アノテーションは、大きく分けて

  1. 言語的アノテーション
      (テキスト文の言語構造など)
  2. コメントアノテーション
      (画像やハイパーリンクなどのコンテンツを
       構成する各要素に対する)
  3. マルチメディアアノテーション
      (ビデオ映像などマルチメディア・データの
       意味的構造を記述)
の3つの種類があるのだそうです。

こういうアノテーション情報があると、
文章を要約、翻訳、検索するなどが
より早く正確にできたり、
例えば「中田選手のハットトリックゴールの映像!」
というような、今見たいと思った映像を
ネット上でたちどころに探し出せたり。

つまり、インターネット上の情報を自分用に
カスタマイズすることがより簡単になる…
という素敵な技術なんですね。

では、長尾さんの「壮大な野望のひとつ」の
トランスコーディングのお話。
はじまりでーす。

Cue!

壮大な野望のひとつなんです。

マーシャ 長尾さん、
どっちに重心置いているんですか?
ロボットとトランスコーディングと。
ナガオ 6月までは、
こっち(トランスコーディング)だったんです。
ちょっとトランスコーディングとか重要だし。
ビジネスの話も出てきたり…。
マーシャ あっ、そうなんですか!?
ナガオ そうそう。
何社かの大手新聞社から話があったりして。
マーシャ トランスコーディングを使おうと?
わー!そうですかー。
そうですよね。
(トランスコーディングを使った)
要約って読みたいですよね。
時間無い人なんかは、特にねー。
ナガオ トランスコーディングは、
絶対これから必要になると思うんです。
マーシャ 思いますね。
ナガオ 僕の壮大な野望のひとつなんです。
マーシャ 何年ぐらいやってるんですか?
エージェントのあと…。
ナガオ トランスコーディングは、
IBM来てからだから、去年の7月から。
マーシャ あ、そんな短いの?まだ…?
ナガオ ええ。
アノテーションの話は
もっと前からですけどね。
マーシャ じゃ、トランスコーディングと呼び始めたのは?
ナガオ IBMに来てからですよ。
マーシャ ふーん。そうなんだ。
ナガオ トランスコーディングっていう名前
知らなかったですから…。
マーシャ あれ?そうなんですか(笑)?
ナガオ IBMで使われてる言葉ですから。
マーシャ IBM用語?
ナガオ そうですね。
確かにIBM用語っぽいとこあります。
信号処理の人は、コード変換のことを
「トランスコード」と言って、
以前から使われている言葉です。
信号伝送をコード変換するっていうのは。
でも、コンテンツの変換
という意味で使うようになったのは、
IBMです。
マーシャ セマンティックっていうのは…?
ナガオ セマンティックって言ったのは、
僕なんですけど。
マーシャ うん。
ナガオ だから、
セマンティックトランスコーディング
っていうのは僕の造語なんです。
マーシャ 「意味的な」っていう?
ナガオ ええ。
つまり、アノテーションっていうのは、
意味的な情報だから。
マーシャ うん。
ナガオ それに基づいて
トランスコーディングするっていうのは
もっと意味に踏み込んだ
トランスコーディングだよ、

っていうね。

自分の文章に責任持たなきゃいけない。

マーシャ でも、それって
すごいキリの無い世界だと思いませんか?
つまり、毎日毎日すごい量の新しい情報が
インターネットで生れているわけで、
それにいちいち
アノテーションするっていうのは
作業量が多過ぎるというか…。
コンピュータがやるんだから、
そんなの関係ないよって言われれば
そうなんだけど…。
ナガオ でも人間の知恵が
一体どこに入って行くべきかっていうのは
ある意味で、キカイ的な処理を
サポートするっていうのもあるでしょ?
マーシャ うん、うん。
ナガオ だから、機械ができるところまで
やるんだけど
どうしても解決できない。
マーシャ できないところ、ありますよね。
で、デモでみせてくれたみたいに、
手でこう、手でっていうか、
マニュアルでやんなきゃいけない部分って
いっぱいありますよね。
ナガオ はい。
マーシャ それをやるのって、
結構、膨大な作業だな…と。
ナガオ うん。でもね。
やりようによってはね。
例えば、新聞社みたいなところだと、
新聞記事を書いている人が、
ある程度ツールを使えて
自分の書いている文章を
校正するような感じで
アノテーションしていけば、
そんなに手間は増えないですよ。
マーシャ そうかー。
ナガオ 大体、その校正してる過程で、
自分の文章のエラーに
気がつくかもしれないし。
マーシャ うん、うん、うん。
ナガオ だからエラーに気がつくっていうことが
とても重要なことで
やっぱり、自分の文章に
責任持たなくちゃいけないなと思うんです。
  * * * * * *

ドキッ!文章に責任…。

アノテーションをするには、
長尾さんが開発しているアノテーションエディタを使うと、
スラスラルラララ〜とアノテーションが出来るのです。
だから、ご心配なく。

でも、文章を書いていて
よく間違ってしまうところですが、
形容詞がちゃんと掛かるべきところに掛かっているか
なんていう問題があります。

例えば、「赤いきれいな花の帽子」っていうのは
赤い帽子なのか、
赤い花なのか、
はっきりしないですね。

書いた人は「きれいな花」のついた「赤い帽子」

という意味にしたかったのに、
「赤いきれいな花」の「帽子」

という解釈のアノテーションを
機械がやってしまったら、
自分の意図の通りに
修正しなければなりません。

そういう部分を「書き手」が手動で修正していく
ことによって、自分の文章の間違いに気がつく
というわけなのです。

では、次回に続きますね。
marsha

2001-08-26-SUN

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