vol.162
- zukan 3 -
●ベリーベリーラジカル!
──『図鑑に載ってない虫』その3
©2007「図鑑に載ってない虫」製作委員会(うしろに岩松さん)
テアトル新宿ほかにてロードショー中
□ラブシーンもできます‥‥。
『ズカチュー』最終回は、岩松了さん編です。
『図鑑に載ってない虫』では、
チョロリ(ふせえり)に慕われるヤクザの
“目玉のおっちゃん”を演じる岩松さん。
「コワくないヤクザだなあ〜」と、
共演の園子温さんに言われたとか。
ちょっと落ちこぼれヤクザなんですよね、
目玉のおっちゃんは。
鯉のぼりで作ったヘンなシャツを着ても、
なんか憎めない。チョロリの憧れなのです。
ところで、ふせえりさんのお話のなかにも登場した
園子温さん。『HAZARD』のときお話を聞いた
“詩人と呼ばせない”園監督と同一人物ですが、
『図鑑‥‥』では、刀を飲み込む“ツボ師匠”に。
なかなかけっこう、いじられてますよね、ふふふ。
岩松さんにもいろいろと言われてますけど、
みんなに愛されているのね、と微笑ましく‥‥。
では、いま映画界でひっぱりダコ俳優、岩松了さんに、
“岩松&ふせ黄金コンビ”の秘密などを探ってみます。
コワイかな‥‥。
でも岩松さん、まだこの作品を観てないそうです‥‥。
え〜〜? まだですか〜〜!?
思わず、映画から遠〜いところで盛り上がりました。
あしからず。
── 岩松さん、メールなさるんですね。
岩松 ケータイのメールだけね。
── 絵文字も使うんですか?
岩松 いや〜、使わないですね。
でも絵文字使ってきた人にたまに
返して使うことありますね。
── あ〜、コピーペーストしたり?
岩松 えっ?
── あ、いや、いいです‥‥。
どんな絵文字ですか、ハートとか?
岩松 ああ、ハートね。
意外に使いたいの無かったりするんですよね。
結局、顔のマークとか。
── 先日ふせえりさんにお会いしたんですが、
「身体のどこそこが痛い」っていう
メールが来ますって、岩松さんから。
岩松 あ〜「時効警察」の踊りのシーンがあって、
「ウデ痛くならない?」とかメールしました。
── きっとたよっていらっしゃるんだな、と思って。
岩松 だれがだれを、ですか?
── 岩松さんが、ふせさんを。
岩松 たよってるって?
あ〜、ちょっとそういうのあるかもしれませんね。
── 画面上も、なんかこう「おねがい〜」
みたいなオーラが出てて‥‥。
岩松 「つっこんで〜」って。
── そうです(笑)。
ちょっと前の『となり町戦争』を拝見して、
あれは三木さんじゃなくて渡辺謙作監督でしたが。
「そんな映画じゃない」と思って観たら、
岩松さんはやっぱり不穏な空気を
醸し出してて、その場面で、
「あれ〜? そんな映画だったのか‥‥」
って思ったんです。
岩松 それ、どの場面ですか?
── オフィスで事務員の女の子たちと、
くだらない冗談を言い合ってるシーンの、
ゆる〜い空気加減ですけど。
岩松 あ〜、あれは「時効」っぽかったですね(笑)。
── そう思って観てたら後半、緊張してきて。
岩松さんのユルさとコワさの
ギャップが恐いというか。
岩松 そうですか。
この(『図鑑‥‥』)ヤクザは恐くないって
言われたんですよ、園子温に(笑)。
── 園さん、今回、刀を食べる人で。
岩松 園子温が、全然、長いセリフ覚えきれなくて。
「ハイ、OKです」って台本を座布団の下に敷いて、
言い出すとまた言えなくて、
だんだん、三木さんも気を遣って、
「じゃ、まずここまで言ってください」って。
なんか、見事にカットされたんですよ。
── そうだったんですか。
岩松 あれ、ほんとはもっと長いんですよ。
もう全然ダメでね。「もう役者に言えないよ」
とか(園さんが)言ってて(笑)。
── 岩松さんは、セリフはバッチリですか?
岩松 覚えますね。
── 台本は持ち込まない、みたいに?
岩松 持ち込みますけど。
あんまり事前に覚えられないんですよ。
よく覚えてる人いるじゃないですか、
あれができなくて。
現場でしか覚えられない。
でも現場で覚えようと思ったら、
けっこう速く覚えますね。
忘れもしないのは、『ダメジン』のときに、
雨が降ってて、ずっと窓際で電話をしてる
シーンがあるんですけど、
けっこう長いセリフだったんですよ。
もう、言えたときには「ざまみろ」みたいな
感じでしたね(笑)。
あたりまえのことなのに、エヘヘ。
── 心の中でガッツポーズ、みたいな。
岩松 うん、「言えたぜ!」みたいなね、
全部まちがえずに言えた〜!
あんまり長いセリフ無いんだけど、
それは印象的ですね。
ふだん、役者にも覚えろと言ってるから。
さっきの園子温と逆で、
「俺はちゃんと言ったからな」って。
── 見せつけたんですね。
岩松 いや、周りにだれもべつにいなかったんですよ。
ひとりのシーンだったんで。
── 岩松さん、ふせさんとの掛け合いが多いですけど、
長ゼリフとかと違って、
あの間合いとかテンポとかって、難しいですか?
絶妙なやりとりですよね。
岩松 でもたぶんね、ふせさんの方が
うまいんだと思いますよ。
ふせさんがときどき技術的なことを
言ってるのを耳にするにつけ、
「ちゃんと考えてるなあ」と思って。
俺は野放しですね、アハハ。
── ということは、
ふせさんが操縦している感じ、ですか?
リードとってるんでしょうか。
岩松 うーん。どうなんだろうな。
リードとってる場合が、
半分以上かもしれないですね。
── 作品が変わっても、その
コンビネーションみたいなのは、
変わらないんでしょうか。
岩松 そうでしょうね、変わらないと思いますね。
── 『ダメジン』でふせさんと初めてコンビを‥‥、
あ、あれはコンビじゃないですね。
岩松 『ダメジン』のときは、
ふせさんとそんなに絡んでないはずです。
職員の1人でしょ。僕は工場長で。
笹野(高志)さんと絡みはあっても(笑)。
さっきの長いセリフの電話のシーンは、
笹野さんに電話してんのね。
「つきあってる男同士」の話で、
猫をあげるとか、あげないとか。
── そうでしたね、妙に色っぽくて(笑)。
笹野さんに、前に伺ったんですけど、
「三木さんの作品がわかるっていうのは
変な人ですよ。
ふつうわかりませんよね〜」って。
「でもなんかわかっちゃうんですよね、
わかったら最後、
もうその世界に入り込むしかない」
みたいな話をして下さって。
岩松さんの舞台を拝見したことが
いっぱいあるんですが、すごくシリアスな方
だという印象を持ってて。
岩松 シリアスなんですよ、ははは。
── ふせさんは、「コワイですよ」って。
岩松 ふせさんは、舞台で使ってますからね。
── どう恐いかっていうと、
10分間のシーンを1ヵ月くらい稽古するって。
岩松 そうですね。
── そういう恐さを秘めたコメディですか。
岩松 そうありたいと思ってますけど、
けっこうやってるときは楽しくやってるんで。
── 俳優として他の監督の作品に出るということは、
岩松さんにとってどういう意味なんでしょう。
岩松 基本的に、自分がホンを書いたり、
演出したりするのと、役者をやるのは、
生理的に違うと思うんですよね。
いろんな言い方ができると思うんですけども、
片や責任をとらなきゃいけないのと、
一方責任をとらなくてもいい、
というのは恐らく自分のなかにあって。
それは、無責任をやってるというわけでは
ないんですけど、まあ、言ってみれば、
自分のコトだけ考えてればいい、っていう
ことじゃないですか。
こっち(演出など)は、みんなのことを
考えなきゃいけないので、すごく神経遣うし。
だから、ひじょうに楽しくできるというか、
自分のコトだけ考えてればいいと言いながら、
人にリアクションしたりしなきゃいけないので、
そういう意味では、それも逆に楽しいかな、
っていう感じなんです。
── 楽しんでる状態が多いんですね。
岩松 多いですね。
イヤミのように言われるんですけど、
舞台に俺、役者で出るじゃないですか、
そうすると、
「岩松さんがいちばん楽しそうだった」って。
「それもマズイだろう」って感じなんですけど。
── もしかしたら岩松さんはこんな人だと、
思われてるかもしれないです、若い人たちには。
岩松 ただのヘンなとっつぁん、へへ。
── 三木さんも、これでもかというくらい、
容赦なく下げてきますけどね。
岩松 あ〜、一時期、うんこネタ、多かったですね。
── (笑)‥‥。
岩松 俺、そんなに気にしたことなかったけど、
三木さんにある時、
「すいません、またうんこネタで」
って言われて。
あ、そう言えば、うんこネタばっかり
やってるひとだ、って気がついたくらいだから。
── 言われてはじめて。
岩松 ええ、言われて気づいたぐらいですから。
── 三木さんとは、やっぱり影響しあう
みたいなところはあるんですか。
岩松 どうなんでしょうね。
映画のメイキングのビデオを撮るとき、
よく「三木さんに一言」とか言わされるじゃない。
そのとき必ず言うのは、
「ラブシーンもできます」
みたいなことをいつも言うように
してるんだけど(笑)。
── 採用されたことは?
岩松 ナイですね(笑)。
── ちなみに誰とがいいですか。
岩松 美女がいいですね、ハハハ。
── ふせさんとは?
岩松 ふせさんだと照れるかもね。
── なんか夫婦みたいですよね、もう。
岩松 「時効」の熊本さんと又来さんは、
夫婦といっても通りますね。
── 過言ではないですね(笑)。
おわり。
又来さんと夫婦のように仲良しな熊本さんも、
「時効警察」のスタジオが遠くて、
撮影の朝が早いと参ってた模様です。
それにしても時効課は、熊本部長はじめ、
な〜んかリラックスしてて、なごみましたよね。
今日もそんな雰囲気たっぷり味わいました。
でも日本語を正確に、ちゃんと話さないと
つっこまれまくってましたが‥‥。
めちゃくちゃ汗かきました。
ただ私はちょっとサネイエっぽいかも(笑)。
どうも「時効遊び」が身体から抜けません‥‥。
ぜひともラブシーン! 期待してます。
で、そろそろ岩松さん、『図鑑に載ってない虫』は、
ご覧になったころでしょうか。
感想もお聞きしたいです‥‥。
「糸井さんによろしく〜」とのことです>ダーリン。
*ふろく*
菊池凛子画伯による
「図鑑に載ってなさそうな虫」の絵の拡大。
ん?
*お知らせ*
宝島社「この映画がすごい!」(6/21号)
板尾創路さんに江戸川乱歩原作の映画化、
『人間椅子』についてインタビューしました。
ぜひ読んでくださいね〜。
★『図鑑に載ってない虫』
★カメイが行く
★宝島社
次回は、諏訪敦彦監督が、フランス映画の
『不完全なふたり』トークで再登場!
素敵ですよ〜、映画も、諏訪さんも。
お楽しみに。
Special thanks to Ryo Iwamatsu,
Nikkatsu and Unplugged. All rights reserved.
Written by(福嶋真砂代)
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