OL
ご近所のOLさんは、
先端に腰掛けていた。

vol.71
- game and art 2 -


こんにちは。ICO の続きです。

その世界はなんだか気持ちよくて、
いい湿り気と、ほどよい光と、心地よい音が
やさしく流れているような、
そんな空気の中で進んでいった、
素敵な取材でした。

窓から流れこんでくる夕暮れの色に、
ミーティングルームが染まっていくのと
ちょうど重なりあって、
ICO(イコ) というゲーム全体に流れる
切ないトーンとシンクロしていくみたいに
感じられました。
それは多分、上田さん周辺の、独特の
やさしいトーンだったのではないかと思いました。
で、それが ICO なんだと感じてきました。


イコを語る、 プロデューサの海道さん(左)、
ディレクターの上田さん(右奥)
とマサ斎藤くん(右前)


ICO は「玄人好みするゲーム」
なんて言われてるそうです。
もうご存知の方も多いと思いますが、
ICO はアメリカで数々の賞を獲得しました。
どんな賞かというと
映画界のアカデミー賞に匹敵するような賞や
(FIFTH ANNUAL INTERACTIVE ACHIEVEMENT AWARDS)
本来ライバルであるゲーム開発者たちに
よって選ばれる賞を受賞したのだそう。
(THE 2ND ANNUAL GAME DEVELOPERS CHOICE AWARDS)
つまり、同業者をうならせた、ということなんですね。

この、海外での評価が高いというのも
ICO のユニークさを物語っているようです。
海道さんに受賞理由あたりから聞いてみました。
それからICO がどうやって生まれたか、も
聞かせてもらいました。ではどうぞ。

ゲームの新しい文法

海道: 今回アメリカで賞をいっぱいもらって、
半分はデザインまわりの賞ですけど。
その(受賞理由の)根底にあるのは、
いままでのゲームとは違う
新しいことにチャレンジしてるというか
新しい文法で作られたゲームっていうところを
日本以上に評価してもらったわけなんです。
斎藤: イギリスとかの ICO レビューを見ても、
ワオッ!クール!とかそういう感想じゃなくて
もっと文学的な言葉で、
より深い感想を寄せているんですね。
これまでのゲームの感想とはちょっと違う
っていう感じなんです。
海道: 今のゲームの向かっている方向は、
ハードウェアの性能がよくなって
ビジュアル表現力が上がりましたというので
より精密な絵を作って
より AI というかアルゴリズムが高度化して
シミュレーションがどんどん
できるようになってきましたとか。
リアルな人体モデルに
リアルなアニメーションをつけて…。
ま、どんどん物量が上がっていきますよね。

それで仕事量としても
どんどん大きくなってきたんです。
あとほとんど映画に近づいていきますよね。
ゲームが映画に近づくと、
例えば映画的カメラワークとか
映画的演出とかやってると
それはゲームにマッチングさせにくい。
登場人物が外に行っちゃったりとかすると
ゲームがやりにくくなってしまう。

そういう中で、
映画に近い表現力をいかにゲームにとりいれるか
というところがひとつの課題になってきて。
で、他のゲームは、ちょっとゲームをしたら
長い映像があったりして、
そういった方向にしか行けなかったのが、
上田さんをはじめとした ICO スタッフの
ゲームデザインでは、
違う方向を目指した結果、
ICO はその境界を飛び越えてしまった。
まーしゃ: そうですね。
(ICOは)境界線が見えにくいですね。
どこからどこまでがゲームで、
どこからどこまでが映像でというのが
スムーズに移行している気がしますね。
シームレスというのかな。
海道: 日本のゲームを作っている人、あるいは
海外のゲーム周辺にいる人たちは
ICOを見て「こういうやり方があったのか」と。

それは、言ってみればコロンブスの卵的なものでも
あるかなと思うんですけど。
まーしゃ: そこに目をつけたというか、
そういう表現をしようと
思った何かきっかけといったら変だけど
ずっとそういう方向で行こうと
考えていらっしゃったんですか?

CG ムービーから始まった。

海道: ではこのゲームが上田さんによって
作られた経緯を説明しますね。
まーしゃ: はい。
海道: 上田さんの方で、基本的なゲームの設定とか
こういうゲームにしたいという基本構成が
5年くらい前からあって。
上田: '97年の6月からですね。
海道: そうそう。
彼は企画書から書くんじゃなくて
こういう世界でこういうストーリでっていう
ムービーをまず作っていたんです。
彼は CG アニメーターだったので。

これはおもしろそうだ、というので
スタートしたんです。

当時、プレステで作っているうちに
プレイステーション2が出てきて。
まーしゃ: ごめんなさい。
ここらへんが全然わからないんですけど、
プレイステーション 1と2では
格段に違うんですか?
上田: もう全然!
斎藤: 比べてしまうとやっぱり違うね。
まーしゃ: じゃ、1から2に移行するときは
やっぱり大変なんですか?
海道: そうですね。
ま、大変というのは、
まずそれまで作っていたものが
全然違うハードに移るのでやり直しになることと、
あとは、上田さん的には
ハードの表現力の違いがあるから
このハードだったらこうやって見せた方が効果的、
という、見せるポイントが違ってくるという
バランスとりで
ちょっとつらかったみたいですね。
上田: そう。
ハードの違いで振り回された感じですね(笑)。
こんなとこまで見えるのかってね。
プレイステーションでは、
低解像度であったりとかして、
キャラクタの顔がはっきり見えないから
想像にゆだねていた部分まで
2では描写できるようになって。
あ、見えるんだというので、
そこまでつくりこまなきゃいけない。
‥かと言って、プレイステーション2でも
想像にゆだねる作り方もあると思うので
それはまた違うのかなーと思うんです。

ぼくとしてはこのハードスペックで
めいっぱいのものを、ってことで、
ICO のような表現になっているんです。
例えばシワとかまで表現することが
リアリティを上げることだとは思わなくて。
現状ではこれが限度だと思ってる。
白っぽい表現(女の子の肌の色)というのは、
もっと人間ぽく表現することもできるんですよ。
そうすると現状ではマネキン人形にしか見えない。
もう少しポリゴン数とか描画スピードが上がれば
ちゃんと人間らしく見える表現が
できると思うんですけど
やったところでマネキンにしか
見えないのであれば
少し落としてでもリアリティがあるようにしようと。
まーしゃ: 使える材料、つまりスペックがあるとしたら
どこに山を持ってきて、
どこに力を入れるかという
マッピングが頭にあって‥?
上田: それはハードスペックだけじゃなくて
スタッフとかを考慮した上で
そうなったっていうのはあります。
まーしゃ : 上田さんが最初に作られたという CG の作品は
だいたいこういう感じのさびしい‥。
あ、さびしいというか、
メランコリックなトーンなんですか?
最初からこんな感じ?
上田: そうですね。
海道: 変わらないですけど、
むしろ前の CG の方がゲームっぽい要素が
ありましたね。
レーザー光線があったりとか。
まーしゃ: レーザー光線ですか。
上田: 爆発シーンというサービスカットも
必要だろうと思ってたんですね(笑)。
--敬称略です--
つづく。

さて次回は、ICO の無国籍性についてと
美しい絵とは…というお話です。

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marsha
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2002-08-05-MON

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