OL
ご近所のOLさんは、
先端に腰掛けていた。

vol.114
- Praha! 2 -



黄金の夢が見たい!
---- 『プラハ!』



『プラハ!』渋谷Q-AXシネマでレイトロードショー

前回にひき続き、
チェコ映画『プラハ!』です。
加藤武史さんの配給の裏話をど〜んとお届けします。
チェコ人とのほのぼのとしたやり取りに、
手作りのあたたかい感じがしていいですね〜。

□映画『レベロベ』との出会い

── いよいよ、配給のお話ですが、
   どうやってこの作品を見つけて、
   配給することになったのでしょう。


加藤 そんなにすごいイキサツがあるわけじゃ
   ないんですけどね(笑)。
   もともと僕は、ある出版会社にいたんですけど、
   そこはチェコの絵本などを出す出版社で、
   「もぐらのクルテク」とかをやっていたんです。

   昔から僕も読んでいたんですけど、
   それがチェコの本だというのは、
   わりと最近、大人になってから知ったんです。
   それで、おしゃれなんだけど素朴なところもあって、
   それが北欧のものとも、フランスとかとも
   ちょっと違う。なんともかわいらしいというか、
   魅力のある国なんだなあとぼんやり思っていた
   ところがあったんです。

   それとチェコは、
   アニメーションが有名な国でもあって、
   パペットアニメーションが素晴らしいです。
   かわいくてシュールなチェコ独特の世界に、
   すごく興味があったんです。

   「かわいくて、おしゃれで、ベタな」
   という感じというのは、
   アニメとか旅行雑誌とかぐらいでしか
   知らなかったのですが、
   じゃ「映画はどんなのがあるのだろう」と
   ネットで調べはじめたのが、じつは始まりです。

   そしたら意外にあって、
   『ダークブルー』とか、
   『スイート・スイート・ビレッジ』とか、
   そういういい映画が、ポツポツとあったんだなと
   思い出して、もっと調べていたら、
   その中に、原題が『レベロベ(REBELOVE)』
   という映画があって、
   そのタイトルに惹かれたんです。

   「REBEL」と「LOVE」を合わせて、
   「反抗」と「愛」みたいな、
   そういうことだと思うのですが。
   (チェコ語だと文字が若干違います)
   写真がホームページにアップされていたんですね。
   それがすごくおしゃれで、
   ミュージカルシーンの写真にびっくりしました。
   こんなにかわいらしくて、いい映画があるんだ、
   というのが、いちばん最初の興味だったんです。

   でも、僕は長年配給をやってましたけど、
   自分で買い付けをするということは、
   やったことがなくて、
   それまでに一本くらいビデオ作品を
   買ったことがある程度だったんです。
   それはスウェーデンものだったのですが、
   結構簡単な手続きだったんですね。

   で、『レベロベ』は
   まだあまり知られていない作品なので、
   ひょっとしたら買えるのかなと思って、
   製作会社とか、向こうの配給会社とか、
   どんどん調べていったんです。
   そしたらあるとき、ひゅっと日本のサイトに
   繋がって、見ると、「チェコ映画祭」で、
   ちょうど2日間だけやっていたんです。
   で、そこから人を辿っていって、
   「この作品に興味があるんだけど、
   配給する方法はないだろうか」と
   映画祭の人に相談しはじめました。


── 何年の「チェコ映画祭」ですか?

加藤 2003年だったと思います。
   「映画祭」といっても小さいものだったんですけど、
   ほかにロードムービーとか、チェコ独特の
   幻想的なものとか、抽象的なものが多かったんです。
   この作品だけが、とても作り込まれていて、
   珍しい感じだったんですね。
   飛び抜けて色がかわいかったです。

   で、そのときの字幕は、
   わりと忠実に訳されて、
   少し硬い感じだったんです。
   そのとき配給の話があったらしいですが、
   それで一つ流れていて。
   そこに僕がニコニコしながら電話をかけたので、
   映画祭の人もいろいろと
   協力してくださることになって、
   チェコの配給会社を紹介してくれたんですね。




── 初めて観たときの感想はどんなでした?

加藤 映画は、ミュージカルのシーンがかわいくて、
   恋愛のところは、ちょっとおバカなくらい
   突拍子もない感じで好きになっていくのが、
   笑ってしまったんですけど(笑)。

   最後には、もう一度、歴史に振り戻される
   というか、悲しい時代を経たあとに、
   ロシアの占領によって暗い時代に入っていく。
   実際にはもっといろいろあったんだろうな、
   となんとなくわかったんですけど…。

   だから、思ったよりは、
   バックボーンが広い作品じゃないかと。
   …ということをなんとなく思いつつ、
   ひょっとしたら、そういう周辺のところまで
   伝えることができたら、
   政治色が強いとやめてしまった配給会社とは
   違う売り方ができるのではないかなと、
   「これは進めてみよう」と思ったんです。


□いよいよチェコとの交渉が…。

加藤 で、ここからは、チェコ人が相手になるので、
   わりと大変だったんですけど(笑)。
   僕が作品を知ったのは、2003年くらいで、
   これが作られたのは、2001年くらい。
   チェコTVという会社だったのですが、
   ほとんどやる気が無くて(笑)。
   2年前の映画をいまさら買うって言われても、
   って、あまり興味を持ってもらえなくて。
   すごく「たらい回し」されてしまって。


── 買いたいって言ってるのに?

加藤 そう。
   そう言ってるのに「ウチじゃない」みたいに
   あまり相手してくれなくて。
   そこで面倒くさいと思ったんでしょうね。
   製作会社に話を振ってくれたんです。
   それがエスプロ・アルファ・フィルム
   という会社で、担当の人が若いお兄さんでした。
   その会社は4人でやってる、って言うんです。
   その辺にグッと来てしまって。
   「4人でやってるんだ…」って。
   映画会社って、普通何百人とかでやってるのか
   と思ったら、なんだかパン屋さんみたいな感じで。
   「4人か…」って。
   で、メールや電話で話したりしたんです。


── それは、英語ですか?

加藤 そうなんですけど。
   僕もそんなに英語がものすごく得意なわけじゃ
   無いんですよ。
   チェコのプロデューサーのステファン君も、
   そんなに英語が得意じゃなくて。
   二人でコントやってるみたいな感じになって。
   一つ一つ、単語を聞くたびに、
   「ちょっと待ってくれ」って
   情けない感じで(笑)。

   僕も専門用語をあまり知らないので。
   たとえば「シンクロ二ゼーション・ライツ」とか
   言われると、辞書を調べてから、
   「オー、オー、わかったよ」って。
   向こうもそんな感じなんです。
   そうやって繰り返しているうちに、
   「買いたいのか、わかったよ、会って話そう」
   ということになって、
   チェコに行ってみたんです。


   つづく。

雰囲気、伝わってきますね〜。
いよいよ次回は、
「加藤さん、チェコへ行く」です。
お楽しみに。


Special thanks to Takeshi Kato and
Tomoko Ogawa (Unplugged).
All rights reserved.
Written by(福嶋真砂代)

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2006-04-28-FRI

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