ご近所のOLさんは、 先端に腰掛けていた。 |
vol.92 - Tokyo International Film Festival - ●第17回東京国際映画祭でした。 (グランプリ受賞作品『ウィスキー』。 感激のハコボ役のアンドレ・パソスさんと ファン・パブロ・レベージャ監督) 吉田拓郎さんの歌じゃないけれど 「祭りのあと」ってやっぱり淋しい。 『第17回東京国際映画祭』のメイン会場だった 六本木ヒルズ界隈をいま歩くと、 まさに「祭りのあと」のちょっと冷んやりした空気。 そこここに飾られていた立て看板「東京国際映画祭」の 「ト」の字も無くなり、 アリーナ会場では次のイベントの準備が始まっていたり、 映画祭の華やかでワクワクする空気の残り香を探しても もうどこにも無いのでした。いちだんと寒くなったし…。 さて、以前から仕事で知り合いだった、 『デジタルde<みんなのムービープロジェクト>』 で活躍された境真良さんが、 今年の映画祭の事務局長に就任されて、 映画を心底愛してる境さんパワーが加わると、 きっとひと味もふた味も違う映画祭を見ることができるぞと ワクワクドキドキ取材をさせていただいたのでその話を。 六本木は落ち着きを取り戻したけれど、 私の胸のドキドキはいまも継続中。 いろんな映画や人にに出逢って、 私の中の何かが変化しはじめていることは確かです。 その変化の原動力をご紹介しますね。 案内ブースでは、親切なボランティアの皆さんが どんな質問にも答えられるように連日スタンバイ。 「日刊TIFFニュース」もここで配られました。 毎日、元気な呼びかけが楽しかったです! さぁ〜今日もがんばるぞ! って感じ。 オープニングセレモニー取材受付の列です。 豪華出演者の方々がレッドカーペットを歩いている間、 取材登録をしたり、段取りを聞いたりして セレモニー開始を待つこと約4時間。 続々と世界中の記者が集まりました。 ようやくセレモニーが始まり、小泉首相の挨拶や、 オープニング作品『隠し剣、鬼の爪』舞台挨拶もあり、 とても華やかに進んでいました。 新潟県中越地震が起きた瞬間、 このセレモニー会場もかなりの揺れを感じて、 隣にいた台湾プレスの黄さんと 「うわぁ揺れてる〜」と言い合っていました。 ちょうど奥田碩経団連会長のスピーチ中のことで、 MCのジョン・カビラさんが、直後、 「It was an earth-moving speech!」とみんなの動揺に 素早く対応したフォローに「さすが〜」と肯きつつ、 まさに“アースムービングな”映画祭の始まりでした。 でもあの地震があんなに大変なことになろうとは このときは知らずにいました。 ●「アジアの風」吹き荒れる! 今年の東京国際映画祭の柱は4つ。 「コンペティション」部門、 「特別招待作品」部門、 「アジアの風」部門、 「日本映画・ある視点」ほか部門 でした。 私は「アジアの風」部門に注目して、 いくつかの映画を観て、いくつかの記者会見に 参加しました。 その中から特にアンテナにひっかかった作品を ピックアップしますね。 □「アジアの風」トークイベント出演の監督のみなさん 『恋愛中のパオペイ』リー・シャオホン監督、 『見知らぬ女からの手紙』シュー・ジンレイ監督、 『可能なる変化』ミン・ビョンクク監督、 『ジャスミンの花開く』ホウ・ヨン監督。 □『大統領の理髪師』イム・チャンサン監督 最優秀監督賞、観客賞を受賞しました。 「イム監督は主演のソン・ガンホさんと どうやって出会ったのですか」と 記者会見で質問すると、監督は、 「ソン・ガンホさんが適役だと思い、 『殺人の追憶』撮影中のソン・ガンホさんに プロデューサーが脚本を送り、 ソン・ガンホさんが読んでくれて 4日後にはOKの返事が来ました。 韓国で4日で返事をもらえるというのは 異例の早さなんです。」 とうれしそうに答えてくれたイム監督の 学生さんのような若い風貌にびっくりでしたが、 映画は、大統領のお抱え理髪師となった平凡な男が 歴史の波に翻弄されながらも父親として力強く生きる という骨太な映画。2005年春にロードショーです。 □『恋愛中のパオペイ』リー・シャオホン監督(中央) この映画はいまの中国をおもしろい角度で 切り取っています。 中国映画のイメージがまるで変わってしまいそうな チャレンジングな作品で、 とてもアヴァンギャルドでポップな作り。 メッセージ性も強く、急速に変化している 中国の激動の中で生活している人々の 心理的な変化が伝わってきます。 リー監督の前作『べにおしろい』とはまるで 趣きが違うのでびっくりなのですが。 ティーチインで監督にまた質問しました。 「映画の中である衝撃的なこと(ネタバレなので伏せます) が起こるのは、何かのメタファーとして、ですか?」と。 リー監督の答えは「新しい命の誕生と希望を表わし、 いまの中国に見る希望を込めて作った」 ということでした。 公開未定ですが、期待している作品です。 音楽を小室哲哉さんが担当していたりします。 □『ビヨンド・アワ・ケン』記者会見 ジリアン・チョン、パン・ホーチョン監督、 タオ・ホン、ダニエル・ウー。 すみません。映画を観ていないのですが、 ポストウォン・カーウァイと期待されている パン・ホーチョン監督(アマノッチに似てる?) の意欲作。『美少年の恋』や『李欧』の ダニエル・ウーさんが注目の香港映画。 公開未定です。観たいよ〜。 □『狼の誘惑』記者会見 キム・テギュン監督、チョ・ハンソン、 チョ・ハンギョン、カン・ドンウォン。 2005年春公開の韓国映画です。 あの『火山高』のキム・テギュン監督が インターネット青春恋愛小説を映画化したもの。 期待でいっぱいの記者会見はさすが満員でした。 それもそのはず人気沸騰のキャスティングなのね。 □イ・ビョンホンさんへの質問 「特別招待作品」の『誰にでも秘密がある』 の紹介を他のサイトで担当したので、 質問しなくちゃ、と記者会見に出かけました。 集まった記者の数はなんと1100人!!!! さすが韓流は嵐のような勢いです。 他の、わりに親密度の高い、 かなり内容について突っ込んで訊くことが できる記者会見とはまったく違い、 まさに「マス・コミ」という感じです。 写真を撮るのも、もうもみくちゃくちゃ。 ふふふ、友達の台湾プレスの宋さんが 日本プレスから逆取材を受けていました。 なんだかおもしろかったです。 チャン・ヒョンス監督、イ・ビョンホンさん、 チェ・ジウさんが登場して、 熱気に負けそうでしたけど、 ドキドキしながら質問しました。 でもやはり緊張して、ほんとに聞きたかったことの 半分くらいしかつっこめない。 本当はイ・ビョンホンさんの深層心理にある お笑い系(ではないか)というところを探りたかった のですが、実にまっとうな質問に終ってしまったのは 残念でした。でもビョンホンさんの頭の良さで、 私の質問を10倍くらいに広げて答えて下さったのには 感謝でした。ありがと〜。 私の質問は、 「『Happy Together』以来のコミカルな役柄を 演じられて楽しかったですか?難しかったですか?」 (な、なんと、簡単な…) イ・ビョンホンさんは、 「『Happy Together』というドラマでは、 キャラクターそのものが非常に面白い役なので、 僕の演技によって変化をつけることができました。 対して『誰にでも秘密がある』の方は、 キャラクターそのものが面白いとか、 セリフそのものが面白いというよりも、 状況自体が面白いという設定でしたので、 その点が大きく違うと思います。 この映画は軽快で愉快な映画なので、 僕も軽く明るい気持ちで挑戦しました。 なので、特に大変だった点はありませんでした。 でも難しかったところは…、 どのくらいの演技をお見せしたら いいのかという点でした。 ロマンティックコメディーの場合は、 僕が今までやってきたリアリティーのある演技とは違い、 オーバーにならないようにする必要がありました。 ですので、そのサジ加減が難しかったですね。」 と手振りを交えながら丁寧に答えてくれました。 非常に明快! 「サジ加減」です、キーワード。 (通訳:根本理恵さん) 印象的だったのは、チャン・ヒョンス監督が 「隣の大スターたちは慣れているだろうけど カメラのフラッシュに僕は慣れてない」と 目を白黒させて照れていた姿。 とても謙虚でカワイクて微笑ましくなりました。 ところで『誰にでも秘密がある』は、 “量子コンピューティングコンセプト”が入ってる “パラレルリアリティ”なコメディだと私は思います。 そういう視点で見てみると、 表面的な人気の騒ぎの奥にある面白さが 味わえるのではないかと思います。 必見! 11月27日公開です。 ●グランプリの『ウィスキー』 というわけで映画祭は嵐のように過ぎ、 私も映画祭中何キロか走り、何キロか痩せ、 また日常にもどり、何キロか太りました(笑)。 いろんなことをゆっくり思い出しながら書いているのですが、 そうそう、大事なことを忘れずに。 グランプリ、主演女優賞のW受賞の『ウィスキー』は、 南米ウルグアイの映画です。 “ウルグアイの映画事情はとても厳しく、 映画産業が存在しないと言うほど” という状況の中で作られた作品。 記者会見上で監督は、興奮しながらも冷静に、 実はウルグアイの総選挙が ちょうど会見の翌日行われるという、 ウルグアイにとって大きな意味を持つ日に このような大きな賞をもらったことはとても 感慨深いと話していました。 これからウルグアイが変わっていくことに 注目してほしいと、真剣に訴えました。 私はこれが映画の持つ、 ひとつの大きな価値だと思います。 つまり、心に響く作品を観ることで、 まったく知らない国の時間や空気や人の温もりを感じて、 思いを共有できるということなんです。 すぐに翌朝、新聞を開き 「ウルグアイ大統領選、初の左派政権誕生」を知り、 これの意味するところを考えるようになりました。 さて“まるで南米アキ・カウリスマキ!” という『ウィスキー』は、 2005年春、渋谷シネ・アミューズにてロードショーです。 これはぜひ!
ちょっと詰め込みすぎました。 お読みいただき多謝、多謝。 Special thanks to Masayoshi Sakai and Noriko Sugaya (Tokyo International Film Festival 2004), Emi Saito(Moviola) and Toshiba Entertainment. Photo by Marsha, All rights reserved. ©2004 Marsha |
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2004-11-25-THU
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