vol.124
- Damejin 2 -
●“脱力系”というよりもはや“解脱力”‥‥な
---- 『ダメジン』をよろしくお願いしますの2
テアトル新宿にてレイトロードショー
□“脱力”の上を行く“解脱力”‥‥
しりあがり寿さんの題字が
なんともほのぼのとしている『ダメジン』、
の監督、三木聡さんのお話、第2回です。
初日の舞台挨拶に行ってきましたが、
レイトショーにもかかわらず、
立ち見、座り見(床にも!)のお客様で溢れかえる、
ダメじゃない雰囲気がモリモリでした。
主演の佐藤隆太さん、緋田康人さん、温水洋一さんと、
マドンナ役の市川実日子さん、そして三木聡監督と、
ダメな方々‥‥じゃなくて楽しい方々の登場で、
めちゃくちゃ楽しいトークが繰り広げられました。
その模様は、ダメジンブログにアップされると
いうことで、お楽しみに。
自分で原宿で作ったダメジンTシャツを着ている、
この映画の発起人でもある緋田さんと、
夏を意識した黄色のTシャツでキメてきた温水さんが、
とてもチャーミングでしたね〜。
体調が悪いと伺ってた三木監督でしたが、
赤いTシャツでキュートに登場。
トークの冴えもいつもどおりで、
ほかの人の小さな話を全部拾って返してました。
だからですね、ちょっと観たことないほど、
あったかい舞台挨拶だなあ、と感激でした。
小さいころ、教室の隅で目立たなくて、
何をやってもダメな生徒がいて、
友達の間でもパッとしないんだけど、
そんな子ほど気になる、三木さんがいる。
「あいつ、ヘンだけどおもしろい」
みたいなやさしい気持ちで気にかけてて、
そういう気持ちが、ずっといまも
「小ネタさがし」にも生きているのだろうと、
なんか、そんなふうに思うわけです。
だから、会う人みんな、
三木さんファンになっちゃうみたいで、
私もすっかりそのひとりであります。
では、三木さんのユルくて鋭いお話をどうぞ〜。
今日のポイントはこちら。
3. 『ダメジン』を作ったときの心境が、気になる
4. なんか「3人」というのが、気になる
□『ダメジン』を作ったときの心境が、気になる
── 『ダメジン』を作ったときの、
三木さんの心境って映画に現れているものですか。
たとえば「これから映画だー」みたいな波を感じて
いらしたのかなと。
三木 やっぱり現れてますね。
それでよく思うのは、
ある種の「恐怖感」を持って観る、
つまり、技術的には至らないこともあったりするし、
いまの見せ方が上手だったりもしますし。
‥‥知らないですけど(笑)。
“原始的に”っていうとアレですけど、
いろんなことを考えたり、とにかく、
これはくだらないんじゃないかとかを
一生懸命考えてたんで。
40歳過ぎて作ってるんですけど、
“若い”というか‥‥。
もっと他のこととかを考えるようになっちゃう前の
自分を観るということはね。
佐藤(隆太)くんとも話してたんだけど、
「今、もう一回やれ」と言ったときに、
その勇気があるのか、ないのか‥‥というのは、
ありますよね。
純粋にくだらないことがやりたいという
「想い」だけが、前に出た状態で、
いまものが作れるのかどうか、ということです。
逆に言うと「もう、ここには戻れない」
というのが、厳然としてあるわけじゃないですか。
ある種の恐怖心に近いものがあると思いますね。
── それは、当時に抱いてた恐怖心じゃなくて、
「いま、もう戻れない」という恐怖心なんですね。
三木 そう、後者のほうの恐怖心。
「もう、これを越えられないんじゃないか」という。
やっぱり、『ダメジン』がいちばん好きという人も
スタッフの中にいて。
そうすると、俺は『ダメジン』を一生越えられない
ことになってるのかなと、思ったりしますよ。
変な言い方ですけどね。
「越えるか、越えないか」っておかしな話ですけど。
── (笑)初回の勢いというか、さっきおっしゃってた
思い切りの良さというのは、すごく感じます。
三木 そう。
それが2002年のあの夏の気分なんだと思う。
『亀』*のときは2003年の春の
上野(樹里)くんと俺の気分。
『プール』*は6月の気分。
いくらフィクショナルなものとは言え、
フィルムに焼き付けるということは、
何らかのそういう気分が映るんですね。
「時効警察」の気分は、あの気分だし。
それを考えると、2002年の夏の気分が、
いまの自分に対してのある種の恐怖心を、
なんか突きつけるものがあるわけです。
これが、公開が逆になることの大きな意味
というか‥‥、不思議な気分ですけど。
── 『ダメジン』の中に感じるのは、
「インド」とか、彼らの「ほぼ乞食」な状態に
“厭世観”が漂っていて、もっと言うと、
“生命の根源”みたいな、
「生きてるだけで幸せ」みたいな気分。
で、『亀』は平凡に生きてるけど、
“平凡”の楽しみ方を探す、みたいな感じで、
『プール』はさらに現代人としての悩み炸裂で。
そう観ると、『ダメジン』はいい意味で、
“プリミティブ”だなあという気がします。
三木 そうかもしれないですね。
見返したときに、公開に向けてどういうコピーを
付けようかなと。
別にコピー付ける気は無かったんですけど(笑)。
「解脱力」はどうかなと思ってて。
── “解”(げ)が付くんだ!
三木 “脱力”の上を行くんです。
「解脱力」ってすごいなと自分でも思ったりして。
今の福嶋さんの話聞いていると、
“厭世観”とか‥‥、“解脱に近い脱力”
ということだと思うんです。
“厭世観”というか、
ある種の“理想”なわけですね。
一切のシステムから、
なんとなく縛られない感じとか、
人間関係の関係性も、深く入らずに、
お互いそこにいるだけの関係なんだけど、
介入しないというのは、理想でもあるし。
だから「イマジン」とか、
(『ダメジン』はイマジンから
インスパイアされているタイトルでもある‥‥)
「インド」とかに結びついていくのは、
そいういうシステムから解放されている感じの
理想郷的な街を作ろうと、当時思ったんです。
『ダメジン』で描こうとしたのはね‥‥。
だいたい物語の前半は、
街の中を3人が歩いて行って、
街の全貌がわかるというのがひとつあって、
いわゆる「ストーリー」を追って、
というのじゃなくて、
「見学してる」感じですね、3人で(笑)。
□なんか「3人」というのが、気になる
── 「3人」っていうのがいいですよね。
現代のダメな人ってわりとツルまなくて、
暗くダメになっちゃうこともありますが、
ツルむとダメでもパワーありますね。
「ダメパワー」みたいな。
三木 「3」というのはわりと好きな関係性なんです。
シティボーイズをやっていた、
というのがあるんですけど、
基本的にはコントだと3人がいいんですね。
ボケを2人にするとか、
つっこみを2人にするとか、
1人が正しいと思ったら、
そっちに1人がつくもんだから、
関係が逆転することがあるじゃないですか。
そういうことの「3」って
意外に有効な方法論だったり
するなと思うんです。
── キャストは、
三木作品のレギュラー的な方々に加えて、
佐藤さんと市川さんという新鮮なお2人‥‥。
このあたりの意図ってなにかありましたか。
三木 「若い」という設定です。
ヌクちゃん(温水さん)が25歳、
という設定だったので、
若い子を入れとかないと‥‥というので。
そのときに緋田くんから、
佐藤くんというおもしろい役者がいると聞いて。
市川くんは、フランス映画のごとく、
1人だけきれいな人がいるという図式のほうが、
いいだろうと単純に思ってて、お互いのために。
‥‥というのがあります。
── フランス映画をよく観るんですか。
三木 いや、そんなことないんですけど(笑)。
イメージだけで、
フランス映画らしいんじゃないかと。
雑なイメージなんですけどね(笑)。
つづく。
とにかく、笑いの止まらない楽しい話の連続で、
思い出すだけで「ふふふふ」となります。
リョウスケ、ヒラジ、カホルの3人。
佐藤隆太さん、緋田康人さん、温水洋一さんの
ダメな大人トリオですが、
なんと、温水さんは「25歳」の設定です。
え〜〜!?
ほかにもキャストは豪華メンバーで、
篠井英介さん、吉岡秀隆さん、伊東美咲さん、
ふせえりさん、笹野高史さん、岩松了さん、
山崎一さん、片桐はいりさん、麿赤兒さん、
岡田眞澄さんと、さらにもっと‥‥なのです。
次回は、
5. ネタはいつ考えるのか、気になる
からです。
それとそれと、忘れちゃいけないニュース。
テアトル新宿の上映が1日2回になりました。
レイトが1回だけだと、終電も気になるし。
でもこれで、1回来ると2回は観られます。ん?
(7/1 〜 7/14 限定です)
詳しくはダメジンサイトでチェックしてください。
★ダメジン
*文中、『亀』は『亀は意外と速く泳ぐ』、
『プール』は『イン・ザ・プール』のことです。
Special thanks to Director Satoshi Miki
and Unplugged. All rights reserved.
Written by(福嶋真砂代) |